- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001140187
感想・レビュー・書評
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深緑野分さんの「ベルリンは晴れているか」という小説で、主人公の女の子が小さな頃から肌身離さず大切にしていた本がこれ。
ドイツのある小さな町に住む母子家庭の男の子“エミール”が、ベルリンに住む叔母さんとお婆さんの家に遊びに行くことになる。エミールはお母さんから交通費と“お婆さんにあげるお金”を渡され、「絶対になくしちゃだめよ」と言われて、一人電車に乗る。
ところが、電車で眠ってしまったうちに、そのお金が盗まれてしまい、エミールは“犯人はあいつだ”と目星をつけた、山高帽を被った男の跡を付けて、叔母さんの家の最寄り駅ではない所で降りる。
お婆さんと従兄妹が予定の駅に約束の時間(18時頃)に待っていたのに、ほったらかしで、犯人を追いかけ、そこで出会った男の子たちが“探偵団”を結成し、犯人探しを手伝ってくれた。エミールは正直、「お金が盗まれて良かった」と思ったくらいワクワクする冒険をした。
話の展開が面白いかどうかより、「子供たち一体何時まで遊んでるの?」(遊びじゃないけど)というほうが気になった。だって、お婆さんたちと駅で会うはずだった時間が18時で、それよりもあとから始まった探偵ごっこでしょ。で、調べてみるとドイツの夏は日が沈むのが22時半くらいで20時、21時頃まで子供たちが外で遊び回っているらしい。ふーん、そんな時間にリアルどろ警?リアル逃走中(のハンター側)?確かにワクワクするかもしれない。
どんでん返しなどは無くて、子供たちが追いかけていた男が本当に犯人で、捕まえた子供たちは警察に褒められて、賞金までもらうという、“子供は善良”という人生観にたったハッピーエンドで、今の大人の私には物足りなかった。けれど、1928年に書かれたこの児童書をナチスの時代にも肌身離さず大切にしてきた「ベルリンは晴れているか」の主人公のことを思うと感動する。
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前回読んだ、「点子ちゃんとアントン」の3年前に書かれた本書(1928年)は、まだ世界恐慌前の、新しいものに囲まれ目覚ましい発展を遂げたベルリンを舞台に、主人公の男の子「エーミール」を初めとした、子どもたちの活き活きとした個性が、爽やかな余韻を残してくれる、子どもに語りかけるような、ケストナーの文体を見事に日本語で表した、池田香代子さんの訳も楽しい作品となっております。
そうした個性は、『女なんてあわれなもんよ』と、如何にもな知ったかぶりを得意気に言う姿に、却って、可愛らしさや明るさがある「ポニー」や、『てやんでい』が口癖の「グスタフ」、皆のまとめ役の「教授」、素直な寝言に微笑ましさがある、ちびの「ディーンスターク」等々、様々でありながら、その中でも考え方の違いから浮いてしまう子達も、当たり前のように同等の視線で描いているところが、如何にもケストナーらしいなと感じつつも、そんな平等性の素晴らしさは元より、ただ優しいだけではない点に、更なる彼の素晴らしさがあることを、ここでは、より強調しておきたい。
というのも、今の世の中で感じられる、ひとつの閉塞感として、その人らしさとして認めてあげながらも、時にはそれは違うと判断が出来、尚且つ、その人を傷つけずに理解へと促せるような、的確な線引きを行える人が少ないような気がしており、ここでは、それをケストナー自身の人生と重ね合わせることで、より説得力を増しながらも、明確なのは、子どもだけでなく、大人にも平等性を唱えていることである。
例えば、お父さんの人間性を表した教授の言葉に、『父さんがいっしょにいても、おんなじことをするかなって、いつも考えろって。きょうも、そうするだけだよ』があるが、この言葉は、お父さん自身がそうした人格者で無ければ、まるで説得力の無いものとなってしまう事に加え、彼と教授とが、父と息子でありながら、対等な関係性を位置付けていることも良く分かる台詞である点に、家族のひとつの素晴らしさが垣間見え、そうした教えを受けているからか、教授自身の大人顔負けの台詞として、『道徳的には、おまえが正しいよ。だけど、裁判所はおまえを有罪にする。ここんとこ、おとなだって、わかってないやつはいっぱいいる。だけど、そういうことなんだよ』が挙げられ、これには、思わずハッとさせられるものがあった。
また、そうした親子の対等性は、エーミールとお母さんも同様であり、父を幼い頃に亡くした彼は、それ以来、自分が周りの子どもたちからも見劣りしないように、お母さんがどれだけ身を粉にして働いているのかを、よく理解しており、そんなお母さんに応えてあげたいと行動で示す彼の思いは、まさに二人だけだからこそ、上下関係ではない共に生きていく対等で大切な存在であることを裏付けた、読んでいて、とても心が温かくなる関係性だと感じつつ、それぞれの自由を認めながら言いたいことも言い合える、懐の深い素敵な関係性でもあり、それは、彼の思いに寄り添ったケストナーの言葉からも感じられた、生きていく上でとても大切な、相手の気持ちに寄り添い、それを思うことなのです。
『エーミールはお金を思って泣いたのだ。母さんを思って泣いたのだ。これがわからないような人は、どんなにごりっぱな人でも、たいしたことはない』
私も同感です。 -
冒険探偵小説ですね。
子供の頃、エミールの冒険小説はシリーズになっていて「探偵」という言葉に引かれて手にとって読んだのが最初でした。
作家のケストナーはドイツの人で物語は第二次世界対戦の少し前です。ケストナーは後にナチスに迫害されますが、負けずに創作活動を続けた英雄でも有ります。
エミールシリーズの最初の物語で、田舎からおばあちゃんの住むベルリンに旅立ちます。旅の途中で荷物を奪われ事件に捲き込まれ、エミールはベルリンに着いて、仲間たちと事件の解決に奮闘する物語です。
ユーモアに溢れ、新しいものが好きなケストナーが街のいたるところで思い描いた興味溢れる物語です。
エミールの冒険小説が図書館で今もなお読まれていてとても嬉しく感じました。「飛ぶ教室」もケストナーの作品ですから愛される作家さんですね。 -
主人公エーミールが、お母さんから預かったお金を泥棒に盗まれてしまい、それを仲間たちの手を借りて取り返そうとする活躍劇。多種多様な読み物を知っている今読んだらすごくシンプルに感じるかもしれない。でもストーリーは面白いし、雑味のないストレートな”The児童文学”という感じがすごく好きです。
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本屋Titleの辻山良雄さんが、イラストレーター大桃洋祐さんにお勧めして、大桃さんが一気読みしたとXに呟かれていた本。Titleも辻山さんも大桃さんも大好きなわたしは即図書館予約、そして一気読みしました今。めちゃくちゃ面白かった!!
最後のシーンは思いがけず泣いた(ティッシュ5枚分、なかなかの号泣) 。健気でうぶで、心強くて優しい気持ちで溢れてる。わたしはユーモアたっぷりで笑えるのに温かくてたまらない文章に弱い。
訳者あとがきからは、著者ケストナーさんのお人柄が想像できて、更に泣けた。池田さんは物語の舞台である第二次世界大戦前のベルリンを「新しいものがまだ新しかった時代」と表現されていて、ケストナーさんのこの本からは、その新しいものたちが、読むわたしにも新しい新鮮さを持って飛び込んできた。わたしからしたら古いもののはずなのに。ケストナーさんって、訳者の池田さんって、すごいんだなあ、、!と、わたしが特に感激したのはこの部分だった。
わたし、外国文学あまり読まんのやけど、もし読書を始めた小3-4頃にこの本を読んでいたらもっと外国文学の扉が開いてたかも。こういうのを名作と呼ぶんやろうな。読めて良かった! -
ああ~、これは本当に傑作だった。
ケストナーだから当たり前、なのかもしれないけど、本当に。
子ども向けの類書をいろいろ読んでいると、派手にするためにありえない設定をしたり、スリルを増すためにわざと愚かな手を打って自分から危険な目にあったりするものがほんとうに多いんだけど、これはとても自然に物語が始まる。エーミールは貧しい家の子だから、お金を大切にしなくちゃと思うあまりに、ふところの封筒を何度も服の上からたしかめてしまって、それがかえって泥棒の目をひいてしまうわけで……。
でも、盗まれたとわかったあとのエーミールの判断力と行動力ときたら。コミュ力もすごいよね。昨今の児童書だと、「こんなこと人にはいえない」とひとりでかかえこんで、秘密にするあまりどんどん事態を悪化させるというのがよくあるけど、バスで出会ったおじさんにもちゃんとお金がないことを話して助けてもらうし、初対面の少年たちも仲間にしちゃうし、果断にして聡明なリーダーぶりにほれるわ~。
心配しているおばあさんにもちゃんと伝言するしね。
りっぱ。「少年たち」が、ホームズのベイカーストリート少年団みたいなストリートチルドレンなのかと思ったら、そうではなく、みんな普通の家の子で、ちゃんと夜は家に帰るし、親を心配させないように話をするし、そこらへんもよい。そうやって大人を味方につけてうまく利用する事は大切ですわ。
それにしてもケストナーさん、いいとこ取りで最後めちゃ笑いました。 -
高橋健二訳のハードカバーで読了。文体のせいか読みにくく、所々飛ばしそうになって後戻りした。話は親孝行少年の冒険譚で破綻ないが、予想通りのラストで、『飛ぶ教室』のほうが面白かった。
当時の大統領ヒンデンベルクが出てきたり、街には鉄道馬車、新聞社にはタイプライター、エーミールの「ほしいもの」としてフットボール(サッカー?)とカメラが出てくるなど、1920年代のドイツの世俗が垣間見られるのは面白い。
読むきっかけは、先日の「グレーテルのかまど」がこの本に出てくるさくらんぼケーキの回だったから。しかし文中には「あわたてクリームのついたサクランボのショートケーキを食べ」とあるだけで、実際一冊を通して読むとエーミールの従姉妹、ポニーが差し入れる「コーヒーとバタパン」の方がずっと美味しそうだった。 -
エーミールが列車の中で見た夢、、、。奇妙だけど、ああいう夢って見ることがある。現実とつながっているようで、おかしなことがいっぱい。その時に持っている不安とはつながっているのは分かるので、何ともいえない混乱が生じる。。。
ストーリーは本の世界ならでは。大人でも楽しい気分に、得した気分に。 -
大人になって出会ったけど、大人でも楽しめた。
探偵団かわいい。
100人は多すぎだけど。 -
祖母を訪ねる列車の中で、大切なお金を盗まれてしまった少年・エーミール。失意の内に辿り着いたベルリンで出会った少年たちとともに、犯人を捕まえる大冒険が始まる!
1928年に書かれた児童文学小説。長く読み継がれてきたのがわかる面白さ!母親をひた向きに思い続けるエーミールの愛情に心を打たれる。お金が盗まれ、孤独に犯人を追いかける中でも、出会う人々に対して誠実であり続ける姿もカッコよかった。そんな彼だからこそ、ベルリンの小さな探偵たちも助けてくれたのだ。グスタフの口癖「てやんでい」は思わず笑ってしまった。訳者にこうやって聞こえてきたならそう訳すしかないね!
盗まれたものでも盗み返さない、という信念もよかった。あくまで勇気と知恵と友情で犯人を追い詰める少年たちにはやられた!鮮やかなコンビネーション!まずは繊細に、仕掛ける時は大胆に!どうやって犯人からお金を取り返すのだろうと思っていたら、もはや痛快の一言だった。エーミールの知恵と愛情をスパイスに、子ども時代の無敵感を思い出させてくれるワクワクな作戦が最高だった。
サッパリと読みやすく、子どもはもちろん大人にもオススメ。表紙やカラーの挿絵は読み終わった後に振り返ると余韻に浸れる。大人になってから読むことでグサッとくる文章もしっかりあるのがさすが。最後にその文章を引用して終わります。
p.63,64
なにかというと、むかしはよかった、と言いたがる人がいる。エーミールも、そういう人をよく知っている。むかしは空気がきれいだったとか、牡牛の頭はもっと大きかったとかいう話に、エーミールは耳をかさなかった。そんなのは、たいてい嘘だからだ。そういうことを言う人は、こんりんざい、満足したくないのだ。そうでも言い暮らしていないと、満足してしまうから、そんなことを言うのだ。
エーリッヒ・ケストナーの作品






深緑野分さんは、今、どうやら絶好調の作家さんですね。どの著作も外国ばかり舞台にしてますが、読んでみたいような見たくな...
深緑野分さんは、今、どうやら絶好調の作家さんですね。どの著作も外国ばかり舞台にしてますが、読んでみたいような見たくないような。テーマが重そうです。
読んでみて下さいよお。
まあ、私もこれしか読んでないですけどね(広く薄く読む派なので)。
若いのに調査力が素晴らしく、だ...
読んでみて下さいよお。
まあ、私もこれしか読んでないですけどね(広く薄く読む派なので)。
若いのに調査力が素晴らしく、だから小説にも現実味と深みがあります。重いっちゃ重いですが、登場人物がジブリのように健気です。
「登場人物がジブリのように健気」ほほう。
「登場人物がジブリのように健気」ほほう。