トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

  • 岩波書店
3.98
  • (195)
  • (134)
  • (183)
  • (8)
  • (3)
本棚登録 : 1573
レビュー : 184
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140415

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • フィリパ・ピアスの作品というと、だいぶ前に読んだ「「まぼろしの小さい犬」を先ず思い出す。
    満足度の非常に高い一冊で、まさかこちらの代表作が未読だったとは、気づきもしなかった。これではとてもひとにピアスの作品を紹介などできない。
    夏休みでもあるので、さっそく読んでみることに。そして心の底から満足した。
    まるで深く心地よい眠りから覚めた気分で、本の持つ力に久々に陶酔した。

    お話のテーマは「時間」。
    ある老女の失われた幼年時代に、主人公のトム少年が入り込むという幻想小説。
    緻密な構成と高い描写力で、ファンタジーとひと口で呼ぶにはもったいないほど。
    タイトルにある「真夜中の庭」の表現が実に詩情豊かで美しく、著者の自然に対する感受性の高さがよくあらわれている。
    真夏の太陽、稲妻や雷鳴、冬のキーンと引き締まった空気、冴え冴えとした月の光、特に真夜中の庭で真っ先に目に入るイチイの木やクラシカルな衣装を着た少女との出会いなど、まるで目の前に存在するかのような臨場感でストーリーが進んでいく。
    トムの心理描写も細かに描かれ、しかも語りすぎることがない。

    過去、そして現在とはなんなのだろう?
    夜の庭で知り合った少女・ハティとの時間のズレはあまりに切ない。
    トムはどうやって「時」を自由に出来るのか。
    ハティの生きる時間との差を、縮めて永遠にすることは可能なのか。
    そんなことを願いながら読んでいくと、終盤で小さな事柄のすべてが回収されていく。
    年をとるということは物語を育てることで、幼年時代もすべてひとりの人間の中に生きているということ。ハティの成長後の老女が、それを教えてくれる。

    ふたりの奇跡のような出会いもまた、幻想小説ならではのこと。
    トムとハティがしっかりと抱き合うラストは、しみじみと素敵だ。
    もうトムは「時」を手に入れようと泣かないだろう。成長を恐れないだろう。
    老女は、年老いてもなお夢見ることを楽しむだろう。

    時の旅人となり、私も真夜中の庭で会いたいひとがいる。
    イエス・キリストとブッダそのひとだ。
    でもまるで違う話になりそうなのでここでおしまい。
    夏休みが舞台の話を、この夏に読めて大満足だった。

    • 淳水堂さん
      nejidonさん

      読みました〜!
      評判通り良いお話でした!
      nejidonさんの書かれているように庭の描写が情感豊かですよね。

      しかし...
      nejidonさん

      読みました〜!
      評判通り良いお話でした!
      nejidonさんの書かれているように庭の描写が情感豊かですよね。

      しかしnejidonさんが会いたい人がキリストとブッダ!すごい!!
      2020/03/15
  • ブクログでも他のみなさまが高評価でいつか読もうと思っていたものです。
    ただいまコロナ休校のため、10歳次男に色々借りてきて私も読んでいます。
    実に素敵な作品でした。
    皆様ありがとうございました。

    ===
    弟の麻疹から隔離するために、トムはおじさん夫婦の家に預けられることになった。
    夏休みに弟のピーターとは小さな庭で木登りをしたり木の間に家を建てることを楽しみにしていたのに。
    おじさん夫婦のアパートは昔広い邸宅だったが、それを区切ってアパートにしたのだった。小さな庭すらない。
    オーナーは三階に住むバーソロミュー老夫人だ。老夫人は一階の大時計を大事にしている。だがその大時計は時間通りに鳴ったことがない。
    つまらない気分のままおじさん夫婦のアパートに滞在したトムは、真夜中に時計が13回鳴るのと聞く。…13回?時間は12時までなのに?
    トムは一階に降りてアパート裏の扉を開ける。
    そこには広い庭園があった。

    トムは毎晩真夜中に鳴ると庭園に出ることに夢中になった。庭園にいる人たちにはトムが見えていないようだ。彼らはどうやらヴィクトリア時代の人たちらしい。
    しかしその中の一人、トムと同じくらいの年齢である少女ハティ(ハリエットの愛称)にはトムが見えるようだ。
    毎晩毎晩トムとハティは庭園で会い、木に登ったり木の上に家を作ったりする。これこそトムのやりたいことだった!トムは日中は弟のピーターに手紙を書き詳細に知らせる。彼がいればいいのに、彼と一緒に庭園で遊べればいいのに。

    どうやら庭園の時間は行ったり来たりしているようだ。トムは大人にハティ、とても小さなハティに会う。
    しかしおじさんの家から帰る日が近づく。トムは時間について、過去について考える。トム庭園のハティと現代の自分とを結びつける方法を考える。そしてそしてこのまま庭園にいるためにトムは庭園の「時」を「永遠」に変えようとする。
    そうのうちハティはどんどんレディになってゆく。
    家に残っていた弟のピーターは、トムからの手紙で庭園に夢中だった。そして彼らはある晩夢で一緒になるのだった。

    そんなときに庭園が消えてしまう。

    泣きじゃくるトムだったが、物語は最後に素敵な再会を読者に示すのだった…。

    ===

    トムが夢中になる庭園の描写はじつに生き生きと読者の目の前に現れます。
    そして過去と現代を結ぶ時間の移り変わりのルールとそれを踏まえた上で飛び越えようとする構成もしっかりしています。
    そして最後の素敵な終わり方。ある意味時を超えました。そして彼らは、友達がほしい、居場所がほしいという望みを叶えて自分で強く生きる道を見つけたのですね。

    次男の反応。「ハティは幽霊じゃなくて、きっとトムがタイムスリップしたんだよ!」→「大変だ!ハティにトムが見えなくなっちゃった!」→「まさか夢(に入った)だったとは!」「なんとなくおばあちゃんがハティかなという気もしたけど、女王様の時代と違うから〜」などなど。

    • nejidonさん
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      私のレビューにコメントをいただいてありがとうございます。
      こちらにお返事させてくださいね。
      この名作を...
      淳水堂さん、こんにちは(^^♪
      私のレビューにコメントをいただいてありがとうございます。
      こちらにお返事させてくださいね。
      この名作をお子たちも読まれたのですね。
      最初から最後まで読み手を惹きつける、本当に素敵な作品だと思います。
      ピアスは「まぼろしの小さい犬」という名作もあります。
      ぜひトライしてみてくださいませ。

      ええ?キリストとブッダにくいつかれるとは・笑
      あのふたりには、訊いてみたいことが山ほどあるんですよね。
      皆さんそうだと思っていたのですが、違ったかな?
      2020/03/15
    • 淳水堂さん
      nejidonさん
      いつもありがとうございます!

      「小さい犬」は今私が読んでいて、息子はまだ未着手なので、まずは私の感想を数日後に載...
      nejidonさん
      いつもありがとうございます!

      「小さい犬」は今私が読んでいて、息子はまだ未着手なので、まずは私の感想を数日後に載せる予定です。

      キリストとブッダだなんて出会ってしまったら隠れ見るのが精一杯で、話すなんて無理だなあって^^;;
      聖書ではキリストと市井の人の会話もあるので、ご本人たちは「隠れてないでおいでおいで〜」って言ってくれるんでしょうけれどね。。
      2020/03/15
  • ファンタジーの世界では、現実の世界から異界へ通じる秘密の抜け道と仕掛けが必要です。ナルニア国に通じる不思議なクローゼット、千と千尋の湯屋に通じる不思議なトンネル、ファンタージェンに導くあかがね色の古本。

    本書の登場人物トムもまた、古いお屋敷の裏庭に通じる扉と13時?を告げる古時計に導かれ、不思議な世界に入りこんでいきます。

    楽しみにしていた夏休み、弟ピーターの病気で家族と離れ、親戚の古いアパートで過ごすことになったトム。トムの迷い込んだ裏庭は夢か現か、世界が静かに眠っているいるはずの時間に広がる世界は、春の柔らかな陽射しに、木々が緑に芽吹き花咲く季節でもあり、真綿のようなまっしろな雪で覆われた冬の冷たい世界でもありました。

    あるはずのない不思議な裏庭で出会った少女ハティ。この世界でトムに気づくのは動物たちとハティだけ。小さな冒険を繰り広げながら、夢の世界を旅するトムですが会うたびごとに大人になっていくハティと、いつまでも子供のままの自分に、やがて夢の世界と自分の世界をつなぐ秘密に気づいていきます。

    夢は自在に時と空間、自分と他人を飛び越えていく。夢の世界を通じて自分の心の奥底を覗き込んでいるのなら、トムが真夜中に旅する世界はトムの夢なのか、だれかの夢なのか。

    河合隼雄、小川洋子の著作の中でも取り上げられた本書、こどもの頃に出会えたらよかったなあ、残念。

  • ラストの展開が読めていたのに、実際そのページに来ると号泣でした。
    その通りの結末になって安堵し、心が酷く満たされました。
    そして、とても温かい気持ちのままページを終えることが出来、充足感に満たされた読書に感謝をしました。読んでよかった。

    ただ、小学生に薦めるとなると躊躇してしまう。
    小学5・6年から、と書いてあるけれど、読めるだろうか?
    大人の自分が読んでいても、度々読みにくいと思う記述があった。
    言葉のチョイスが古いというか、書いてある単語が何を指示しているのかわからない、またはわかりにくい、という箇所がしばしばあった。大人でこうなのだから、子どもはさらに読みにくいのではないか。
    特に、アパートの様子や庭園の様子を想像することが深い意味を持つこの本の読書にあたって、思い描くことが出来るかどうかというのは、物語を楽しむことが出来るかどうかということに直結してくる。そのための記述に、意味の分からない単語がしばしば紛れ込んでいたら、想像することを諦めてしまうのではないか?という懸念がある。私も、実際このホールの様子や庭の様子を、思うように空想できたかと言えばなかなか難しいものがあった。自分の理解力や想像力の欠如ということもあろうが、それが出来なければこの物語の魅力は半減する。美しい庭を思い描くことは、必須だ。だが、難しい。それでも、数々の挿絵を頼りに、私はそれを思い浮かべながら、物語の先を急いだ。本当に物語が魅力的であれば、それらの問題は解決してしまうだろうか?

    本当に面白い物語は、読み終えた後にずっしりと重い充足感に満たされ、幸せな気持ちになるのだ、ということが分かった。そんな物語だった。
    ただ、一つの思い付きから、私の頭の中には今、BGMとして「前前前世」が流れてしまっている。「やっと目を~♪覚ましたかい~♪」ということである。「君の、名前は?」である。その思い付きは私にとっては変に合致していて楽しい思い付きではあった。トムがもし小学生ではなく、中学生以上の年齢だったとしたら、ラブロマンスになることもありえただろうか?などと思いついては、いやいや…とかぶりを振ったりしている。まぁ、年齢差が…と思わなくはないが、ラブロマンスでなくたって、物語の最後のくだりは、ロマンスにあふれていると思う。
    また、トムが小学生であるからこそ、そして現代のようにスマホで何でも調べられる時代ではないからこそ、この物語の謎は最後まで引き延ばされることになったのだろう。
    「君の名は」でなければ、「思い出のマーニー」を連想した。あれも、寂しい魂が結びついた話ではなかったか。

    幼いハティの境遇が不憫で、とても切ない気持ちになった。
    ただ、彼女ののちの人生が幸せだったということがわかり、本当に良かったと心から思った。また、園丁のアベルのその後にも言及され、物語は美しいエンドラインを描いていった。欲を言えば、邂逅のその後ももっと見たいだとか、弟のピーターとの邂逅だって見たいとかいろいろあるが、それはエンドライン後に、読者が好き勝手に思い描いてよいことなのだろう。
    時代というのは移り変わっていく。美しい庭も、いつかはなくなってしまうのかもしれない。今あるものも、いずれかは過去になる。もしかしたら、今すら、誰かにとっては過去なのかもしれない。過ぎ行くものの切なさだとか、思い出の美しさだとか、そういったものが際立った作品だった。
    不思議な魅力にあふれている。

  • カテゴリは、間違いなくロマンスです。
    始まりから、ラストまでは、
    ファンタジーに続いていくのだけど、
    ラストには 時空も年齢も立場もリアルも超えた
    これまで見たこともない素敵なロマンスが あった。

  • 読むべき名作選にリストアップされており、自宅にあったので読破しました。
    まず、ピーターとトムのほのぼのとした兄弟愛がいいですね。トムとの約束ごとを忠実性に守る弟が可愛い。
    最後に再会するハティとトムの様子に涙してしまいました。良かったね、ハティ。
    子どものころに読みたかったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「最後に再会するハティとトムの様子に」
      素晴しいですよね!
      「最後に再会するハティとトムの様子に」
      素晴しいですよね!
      2013/07/05
  • これは大人になってから読んだ。
    時間や空間を超えて過去と現在が繋がっていく不思議な展開がすごく面白い。
    夜中の13時にだけ、入る事のできる美しい庭園という設定はものすごく魅力的!
    そこでハティと出会い、一緒に過ごして行くうちに段々謎が解き明かされて行くのがドキドキ。
    大人になったハティと凍りついた河をスケートで滑って行くエピソードは印象的!実際に体験したみたいな空気感が大好き。
    全ての謎が解き明かされて、ハティと再会するラストには本当に感激でした!

    ハッティとしてみても、自分の人生の中に現れる不思議な幽霊の少年とこんな風に繋がっていた事は素敵な宝物だよね。羨ましい!

  • 『時の旅人』、『トムは真夜中の庭で』、『黒ねこの王子カーボネル』。

    これは、先日、ネット上の本読み友達に、
    岩波少年文庫の中から選ぶのなら個人的にオススメだと言われた3冊。

    その人の好みだとしたら好みが似ている、
    私が好きそうだと薦められたのだとしたら、コワイと思った。

    結果としては両方で、どうやら好みが似ていて、
    しかも、コワイ友達を持ってしまったようである。

    その人には、この3冊から連想された本を紹介し、好評だったので、
    当てられてばかりの悔しさは少し薄れた感じではあるのだが。

    薦められたとき、黒ねこは未読で、あとの2冊は既読だった。

    『時の旅人』は、小学校高学年か中学生の頃に読んでおり、
    本書は大学院生時代に読んでいる。

    私が所属していた大学は、かつてその地域に
    公共図書館がなかった頃に公開図書室の役割を担っており、
    公共図書館ができて公開されなくなってからも、
    当時の蔵書とスペースが大学図書館の中に残っていていたのである。

    そのため、趣味と専門を兼ねて
    大学3年生以降に出会った児童書や絵本も多く、
    本書もそのひとつなのである。

    この3冊を含め、自分が好んで読んだ児童書は、
    時空間を旅するものが多いようだ。

    そして、時空間を旅する主人公、あるいは、
    主人公が出会う存在に共感したり憧れたりすることが多かったように思う。

    同じテーマの本を私はなぜ必要としたのか、今ならわかる気がしている。

    時空間を旅する主人公は、本書のトムもそうだが、
    物語の最初では、現状に大きな不満を抱いている。

    弟のピーターがはしかになったため、夏休みの間、
    おじさんとおばさんのところに預けられることになったトムも不平タラタラである。

      こんなにつまらないところにほうりこまれたのは、これがはじめてだ。

      ピーター、ぼくはここから出ていくためだったら
      ―どこでもいい、ここよりほかのどこかへいくためだったら、
      どんなことでもするよ。

    トムは弟のピーターにこんな手紙を書いている。

    これはただの不満といえば不満だが、
    この強力なまでのここにいたくないという思いは、
    本人が意識しようがしまいが、
    ここではないどこかへ主人公を連れて行く原動力となる。

    退屈で眠れなかった夜、トムは、大時計が13回時を刻む音を聞く。

    トムにはこんな音に聞こえた。

      おいでよ、トム。

      大時計が13時をうったよ。

      きみは、いったいどうするつもりなんだ?

    しばらくこの「邸宅との心の対話」を続け、
    結局は、大時計の様子を階下のホールに見に行くことにしたのだ。

    だが、暗くて大時計はよく見えない。

    この邸宅の裏側で照らしている月明かりを入れよう、
    そうすれば文字盤が見えるかもしれない。

    ここで裏口を開けたことから世界は変わる。

    おじさんたちには、
    「裏口からそとに出てみたところでしょうがないよ」と言われていたのに、
    開けたところには庭園があったのだ。

    おじさんたちにうそをつかれたと憤慨するトムだったが、
    昼間にその場所に出て行ってみると庭園は存在しなかった。

    時計がひとつのむすびめと考えたトムは、時計を調べるが、
    描かれている絵に意味がありそうだというところまでしか
    そのときはたどり着かなかった。

    大時計が13時を打つのを聞いてから外に出ると
    庭園に行かれることがわかったトムは、
    毎晩のように庭に出て、探検していく。

      トムの目のまえにあらわれる庭園は、一日のうちの
      いろいろな時間、ちがった季節をあらわしていた。

    そして、どうやら時間は、行きつ戻りつしていることもわかってきた。

    トムは、それらを味わった。

    そのうち、庭にいる人たちがどんな人たちかもわかってくる。

    3人の少年、女の子、庭の手入れをする人、女中。

    動物達は、トムの姿を見ているが、人間たちは気づかない。

    ところが、実は、トムのことを見えている存在が何人かいることがわかった。

    そのひとりがハティだった。

    時を旅する者、そして、その存在が見える者。

    彼らは一緒に庭で遊ぶのだが、
    どちらも自分が自分の時間を生きていると思っているので、
    どっちが幽霊かなどと話すとけんかになったりする。

    トムは大時計が13時を鳴らすのを聞くと毎晩のように庭に出かけるが、
    ハティにとってはそれは毎晩ではなく、
    前に会ってからずっと経ってトムが現れるように見えている。

    トムは、時間について考えながら、その謎を自分なりに解き明かして行く。

      トムは「過去」のことを考えていた。

      「時間」がそんなにも遠くへおしやってしまった
      「過去」のことを考えていた。

      「時間」はハティのこの「現在」をとらえて、
      それを「過去」にかえてしまった。

      しかしそれは、いまここで、
      ほんのつかのまのあいだではあるが、
      トムの「現在」に―トムとハティの「現在」になっている。

    ただ頭の中で考えた理屈ではなく、実際に体感したもの、
    読者も一緒に体感したものだからこその説得力がある。

      こういえるんじゃないかな。

      人間は、それぞれべつべつな時間を持っているって。

      ほんとうは、だれの時間もみんな
      おなじ大きな時間のなかの小さな部分だけど。

    そして、こんな答えにたどり着くのだ。

      どっちからいったにしても、
      女の子は過去からきた幽霊じゃないし、
      ぼくも未来からあともどりした幽霊じゃないんだ。

      ぼくたちはどっちも幽霊じゃない。

      庭園だって幽霊じゃないんだ。

    そうやって自分なりの答えを掴んだトムにとっては、自分の時間よりも、
    ハティとの永遠の方が価値のあるもののように思えてきて、
    ある賭けに出るのだが・・・。

    一方、トムにはたったひと夏のことだが、庭の中の時間はどんどん進んでいて、
    ハティはいつしかどんどん大人になっていて・・・。

    さて、本書を再読した結果、
    私は本書の登場人物たちに大いに励まされることとなった。

    ある時期現実の生活が楽しかったり大変だったりして、
    「庭」のことを忘れてしまうことがあっても、
    一度、「庭」に来たことががある者は、「庭」の美しさを知っている者は、
    時を経ても「庭」に帰ってくることができるのだと教えてくれたのだ。

    私の庭は、本の中にある。

    そして、それは、やってきたときがいつでも今なのだ。

    私も本の中の人物も庭園もみんな幽霊なんかじゃないから。

  • 児童書だけど、大人が読んでも十分読み応えがあって、最後まで楽しめた。風景描写と主人公トムの心の動きの書き方がとても繊細で、美しい庭園でトムとハティが遊ぶ姿がありありと頭の中に浮かんだ。特に、季節によって変貌する庭園の空気感や太陽の光の明るさなど、まるで本当に伝わってくるかのような文章がよかった。お話は途中で結末が想像できるかもしれないけど、そんな心配は忘れるくらいに面白い。結末は、陳腐な言い方かもしれないけどなんだか心が温まるような感じがした。「時」の概念についての話は少し難しいかもしれないけれど、これを子供の頃に読めたらよかったなと思った。

  • トムは弟の病気のために、親戚の古いアパートで過ごすことに。そのアパートには真夜中に現れる不思議な庭がありました。そこで出会った女の子ハティとの楽しい時間。彼女は何者なのか?庭は本当にあるのか?なぜ現れるのか?謎を解こうとするトムと、少しずつ時が流れる庭で大人になっていくハティ。
    とうとうトムが家に戻ることになった時、謎が明らかになります。トムとハティの友情はいつまでも大切に育まれると思え、心温まる満足いく結末でした。

全184件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1920-2006。イギリスの児童文学作家。『トムは真夜中の庭で』(岩波書店)でカーネギー賞を受賞。短編の名手としても知られ、「二十世紀の児童文学作家の中でもっとも優れ、もっとも愛された一人」と賞賛された。

「2018年 『コクルおばあさんとねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

フィリパ・ピアスの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
東野 圭吾
宮部 みゆき
宮部 みゆき
ZOO
乙一
荻原 規子
有効な右矢印 無効な右矢印

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))を本棚に登録しているひと

ツイートする
×