真夜中のパーティー (岩波少年文庫 42)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140422

感想・レビュー・書評

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  • フィリッパ・ピアスの8話短編集。
    どれも子どもの何気ない日常を切り取り、見落としてしまいそうな出来事に光を当てている。
    子どもの感情の機微を丁寧に拾い集めている。
    子どもの世界は決して広くはない。その分、近くで起きていることにじっと目を凝らし考えていることに気づかされる。そんな事々を心に焼き付けながら、子どもは大人になっていくのだろう。
    日常をもっと丁寧に生きたい、と大人になった私だがそう思った。

  • 『トムは真夜中の庭で』のフィリパ・ピアスの短編集。
    
    小学生たちがニレの木を倒そうとする『牧場のニレの木』、川でみつけたイシガイをめぐる少年たちの『川のおくりもの』、いずれもトムと同じくらいの少年少女の視点から語られていて、どの子供たちも無邪気でも無垢でもなく、それでいて子供独自の視点なのがよい。
    
    大人には見えないものが見えているわけじゃなくて、大人にはできない見方をしている。
    
    子供が主人公でも優しくてかわいい話ではなくて、どこかシビアでほろ苦い後味が残る。
    

  • 子供の日常で起きるささやかだけど、大きな出来事の短編。

    近所から嫌われていても気にせず、動物を飼っている謎めいたお隣さん。

    川で見つけた貝を、いとこにあげる前に逃がしてしまおうとしたこと。

    古い木の解体途中でとんだいたずらをしてしまい、それでもそれがきっかけで、男子グループに入れたこと。

    祖父と孫の互いを思いやる気持ちと真夏の早朝の車いす遠足。

    木の実を取りに行った先で、お父さんを怒らせてしまい、慌てて逃げた結果迷子になり、助けてくれた若夫婦のこと。

    全部じゃないけど覚えてる範囲。
    ひとつひとつはどうってことない些細なことだけど、
    子供にとっては大切で心に残る記憶たち。

    短編だったから読みやすい。

  • この方の作品の雰囲気が好き。
    子どもの描き方がリアルで、変な創作感がない。
    緊張感の高め方がうまい。特に最後の作品の一連の描写。

  • 子どもの頃に感じた小さな冒険心や、心細さや苦い気持ちが思い起こされる短編集。「真夜中のパーティー」と「ふたりのジム」が好き。

  • 「ふたりのジム」が良かった。

  • 何気ない子どもの日常の短編集
    今の子どもたちがわくわくして読む感じじゃないかも?
    大人のノスタルジー的な印象も感じます
    「牧場のニレの木」が好き!

  • 「抑制のきいたピアスさんの筆は、大人の郷愁で子どもを美化することなく、彼らの心理感情、行動などをまことに正確に捉えて描き出していきます。」
    (訳者あとがきより)

    大人の郷愁で子どもを美化することなく…
    うん。本当に。そしていつも思うけど、木や川や風などの自然事象を、子どもの内面と合わせた描写が素晴らしいな…。

    8つのお話が入った短編集です。
    どれも面白かった。
    <カッコウ鳥が鳴いた>
    <木イチゴつみ>
    <川のおくりもの>
    が特にあと引いてる。

    ピアスさんの作品は、読み終えて時間が経っても、いつのまにか思い出して映像が浮かんでくる。
    美しい音楽付きで。
    こんな物語を読ませてもらえて今日も幸せ。

  • 余分なものがなく、淡々としているけど、いつの間にか自分もその空間に滑り込んでいるような感覚。こんなに素晴らしい本だとは思っていなかった…。

  • 70周年記念の特別カバー(W仕様)に魅せられて。

  • 1つ1つが完全に子どもの視点から書かれている作品ばかり。
    大人からみれば、何気ない日常の一コマで
    記憶にすら残らないことばかりだろうけど
    子供とってはそれが忘れられない記憶になることが
    たくさんあるなっていうことを思い出させてくれる本。

    • christyさん
      >reader93さん、この作品はショート・ショートなのですが、本当に何気ない日常の一コマが書いてある作品です。大人だったら記憶にも残らない...
      >reader93さん、この作品はショート・ショートなのですが、本当に何気ない日常の一コマが書いてある作品です。大人だったら記憶にも残らないことばかりだけど、子供とってはショッキングだったり、大冒険だったりする物語ばかりです。ピアスは、本当に子どもの視点に立って、物語を書くのに長けています。今度の一時帰国のときに、ぜひ。
      でも、ピアスの作品だったらぜひ「トムは真夜中の庭で」を読んでもらいたい!!児童文学の中でもとても有名な作品で、私は、子供のころ読んだこの作品が忘れられず、結局、この作品で卒論を書いたんですよ(笑)。とてもいいお話です。reader93さん、好みの作品だと思います!!
      2012/04/24
    • reader93さん
      図書館で借りて読みました!
      この本、すごく私の好みです。行ったことが無いイギリスの風景を想像しながら読みました。「トムは真夜中の庭で」も絶対...
      図書館で借りて読みました!
      この本、すごく私の好みです。行ったことが無いイギリスの風景を想像しながら読みました。「トムは真夜中の庭で」も絶対読んでみます♩良い本の紹介をありがとう!
      2012/06/28
    • christyさん
      >reader93さん、この作品お好みでしたか~。よかった♪ピアスは、本当に子どもの視点に立って作品を書くのに長けてますよね。大人になると、...
      >reader93さん、この作品お好みでしたか~。よかった♪ピアスは、本当に子どもの視点に立って作品を書くのに長けてますよね。大人になると、子供の頃自分がどう思ったか、考えたかなんて忘れてしまうのに、そこがすごいなと思います。「トムは真夜中の庭で」も最高におすすめです。イギリス児童文学の中でもトップランクの評価をされている作品なので、ぜひ。私も最近、また読み直して、感動しました(笑)。
      2012/06/29
  • 魔法も妖精もでない、普通の子供の日常を描いた物語。
    それなのに、とんでもなくわくわくする。
    なんて、子供の日常は素敵なんだろう!と思わせてくれる。
    隙間から流れ出る、切なさも見過ごしてはならない。

  • ピアスの名作『トムは真夜中の庭で』を読んだのは20代だったと思う。その頃、他の作品も読んだかはっきりしなかったのだが、この短編集のタイトルになっている『真夜中のパーティ』の途中、(子どもたちが夜中に台所に集まって、年長のアリソンが、マッシュポテトを全部使ってポテトケーキを焼き始め、寝ている末っ子まで起こすよう言うくだり)で、思い出した。そのなかなか大胆な発想が効を奏して、しかも面白かったことを…。

    それは、ともかく、今、読んでもいい。まあ(これは持論だが)優れた子どもの本は、大人のへたな読み物よりよほど味わい深い。
    岩波少年文庫についての本にも、どなたか書かれていたが、字も大きいし、年配になってからも尚、お薦めシリーズ(作品群)であるのは、もっともなことだと思うなぁ。

  • おとな目線だと、「やっちゃだめ!」っていうこと、こどもはやりたがる。描かれているのは、ごく日常の生活風景なのに、すごく胸に突き刺さる。

  • 表題作を含む短編集。
    実際に起こった出来事をモチーフに
    書かれているから、自分が昔に体験
    したような気持ちになる。

    子供の話の中に出てくる大人が悪かったり、
    子供のように純粋だったり、
    その為に他の大人から馬鹿にされていたり、
    多くの大人は子供の感情を忘れているけれど、
    本当は繋がっていたはずなのに、
    子供の世界と大人の世界は
    随分隔たっているような感じがする。
    挿し絵の世界観も素晴らしくて、
    良い作品群だと思います。

  • だいぶ時間がかかってしまった...
    子どもにとっては、大人にはどうってことないことだって魅力的に見える。
    誰が何を魅力的に思ったっていいよね。

  • 子ども時代のある出来事を切り取って、そのスリルをよみがえらせてくれたお話し。自分も一瞬で子どもに戻ってしまい、ドキドキしっぱなしだった。まるで映画のような小話集。

  • 「ふたりのジム」に登場するおじいちゃんがとてもチャーミング。

  • 大好きなピアスの短編集。
    8編が収録されています。
    よごれディック、真夜中のパーティ、アヒルもぐりが気に入りました。
    幼い頃、なんでもない日常のちょっとしたことにワクワクした、あの感情を思い出させてくれる。やはりピアスは名作家なのでした。

  • 英語で読むイギリス児童文学「フィリパ・ピアス」 | 総合生涯学習センター
    開催日時 2014年6月21日〜7月26日 毎週土曜日 全6回 10:00〜12:00
    開催場所 大阪市立総合生涯学習センター
    参加費 10,500円(資料代込)
    講師名 島玲子(大学講師・トランスレーター)
    http://osakademanabu.com/umeda/?p=7242

    岩波書店のPR
    http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/11/X/1140420.html

  • 「性格描写が少ないと主人公に共感や自己投影できない」って思っていたけど、そうじゃないんだ。ピアスが描く無口な、どちらかというと目立たないごく普通の子供が、読み進めると、自分そっくりなのに気付いて驚く。この本には魔法は一切出てこないけど、やっぱり魔法がかかっていると思うよ。分類としては児童書だけど、子供が読むより大人が読んだ方がいい本かもしれない。

  • フィリパ・ピアスという作家の名前は「トムは真夜中の庭で」と「まぼろしの小さい犬」という2つの作品と密接に結びついている KiKi にとってこの本は今回が初読でした。  で、この本を今回手に取ってみたきっかけはこのブログの柱企画「岩波少年文庫全冊読破計画」の一環であるのと同時に「宮崎さんの推薦文」にもあったわけですけど、初めて宮崎さんの推薦文の中にこの本が入っているのを見た時には、逆に思ったものでした。  「あれ??  どうして、『トム~』の方じゃないんだろう??」と。

    そうであるだけにこの物語への期待値は否応なく高かったことをまずは白状しておきたいと思います。  そしてその期待はまったく裏切られなかったということも・・・・・・。

    まずは、この表紙の絵がいいですねぇ~。  そしてこの短編集1編1編の表紙頁にある挿絵が何とも言えない雰囲気を醸し出しています。  これらの挿絵はフェイス・ジェイクスという方が描かれたものです。  因みにこの方、同じ岩波少年文庫の中ではアトリーの「時の旅人」とか「グレイ・ラビットのおはなし」の挿絵も手掛けていらっしゃいます。  どの作品での挿絵もムード満点でこれらの作品が持つ空気感を見事に視覚化した挿絵ばかり・・・・・だと思います。      

    さて、肝心の物語の方です。  これは短編集で以下の8作品が収録されています。

    よごれディック
    真夜中のパーティー
    牧場(まきば)のニレの木
    川のおくりもの
    ふたりのジム
    キイチゴつみ
    アヒルもぐり
    カッコウが鳴いた

    どの作品も主人公は現代の小学校くらいの子供たちで、その子供たちのある意味ではありきたりの日常の一コマを描いたものです。  でね、これらの作品群が読者に伝えようとしているのは、ありきたりな教訓話でも懐古趣味でもなくて、子供時代特有のモヤ~っとした感情・・・・のようなもの。  まだまだ幼いゆえにそれを理路整然と説明できないし、子供特有の気まぐれも手伝ってコロコロ変わったりもするんだけど、当の子供にとってはとっても大切な一時一時の気分・・・・・とでも呼ぶべきものなんですよね~。

    そしてこの短編集のすごいところは、誰もがかつては抱いていた似たような漠然とした不安、自分で自分の気持ちがわからないような曖昧さ、親に叱られることがわかっていても(又は兄弟姉妹に泣かれることがわかっていても)やらずにはいられなかったある一時点での気持ちといったようなことを、情景描写の中で描ききっているうえに、ピアスさんがこういう形で描いてくれなかったら、失われたまんまになってしまったかもしれない・・・・・と思わせるところだと思うんですよね。

    子供は子供なりに日々の生活を送る中で「ヒトという生き物が本来的に抱え持っている矛盾」に直面し、それを未消化のまま時を重ね成長していきます。  この短編集の主人公の子供たちも「ヒトの感情と行動の間に存在する、ほんのちょっとした二律背反性」を自分の中に、そして時に自分をとりまく大人の中に感じ取ります。  

    どの物語の子供たちも皆、それぞれの体験の中から「コレ」と明言できるほど明確なものではないまでも、その子供の「核」となりえそうな「何か」を得ていることがしみじみと感じられる素敵な短編集だと思います。

    最後に・・・・・  恒例の宮崎さんの推薦文を転載しておきます。

    あるアニメーション映画を作っていて、くたくたになって帰った夜、ふとんの中でこの本を読みました。  短い作品の中に世界が描かれていました。  文学ってすごいなぁ、こういうのが文学なんだという思いがわいて来て、自分たちがおおぜいで毎日毎日夜おそくまで机にかじりついて、絵を描いても描いても、いっこうにできない映画より、この本の方がすてきだなあって、ちょっと悲しくなりました。

    ここで仰るアニメーション映画が何だったのかとっても気になります。  でも少なくとも KiKi にとっては最近のジブリ・アニメだったらこれは間違いなく「仰る通り!」と思わないじゃありません。  宮崎さんには悪いけれど・・・・・(苦笑)  いえ、これは「まだまだ宮崎さんには期待しているんだから!」というエールも含めてなんですけどね。

  • 短編集だったので読みやすかったです。

    物語が子供目線で書かれてて、ワクワクしながら読みました。
    特に
    ・ふたりのジム
    ・カッコウ鳥が鳴いた
    が好きです。

    子供の発想や心ってキラキラ~☆

  • 読みながら何となくピーターラビットの世界を思い浮かべた。主人公達はウサギじゃなくて人間の子供達だけど、舞台が同じ、イギリスだからかな?

    子供達の心を動かす、日常生活の一コマが各短編に描かれている。子供の心って単純であり複雑でもある。自分もかつてはこんな心を持っていたのだろうなと懐かしい気持ちになった。

    この本めちゃ好みだわー。

  • 繰り返し出てくる、ガラスの壁の向こうにいるみたいな大人たちがちょっと気味悪い。子供の目にはぼくもそう見えるのかな。
    ほの暗い、座りの悪い話が多い。子供向けでこういう本があるのかとちょっと意外だった。こういう話を書く動機というのがどうも見えない。読む動機も見えない。面白いかというと面白くない。むしろこれを読んだ子供の話を聞きたい。

  • 表題作と2人のジムの話がすき。

    きいちごの話はいまいちかなあ。
    父が嫌い。


    車椅子でドライブはよかったなあ。
    気持ちよさそう。
    きっと大声で歌ってたんだろうな。

  • 読了

  • これも小学生の頃、父から譲り受けて。同著『トムは~』より更に好きな短編集。表題作では幼いながらにずっと感じていた不安(耳に虫が~という切迫した、しかし大人は聞き入れてくれない事件)が書いてあり、当時非常に安心した記憶がある。自分だけじゃない!という。

  • フィリパ・ピアスといえば、「トムは真夜中の庭で」かな
    トムは~は読んだことあるはずなんだけど覚えてないなー
    そのうちまた読もう!

    覚えてないけど、面白かったような気がしたのと
    宮崎さんおすすめだったので、ちょっと楽しみにしてたんですが
    あんまり面白くなかったかなー

    面白くなかったというより、「え?こんな終わり方?」みたいな話が多かったような。

    「真夜中のパーティー」
    真夜中にハエのせいで目がさめちゃったチャーリー
    台所に降りてったらおねえちゃん?のマーガレットが起きてて
    ふたりでごそごそしてたらいちばん上のお姉ちゃんアリソンが起きてきて
    やるなら徹底的に、と末っ子ウィルソンをつれてきて
    余興を見せてパラダイスケーキという名前でポテトケーキをふるまう
    次の朝ウィルソンはお父さんお母さんに報告するけど夢だと思われて本気にされず、消えたマッシュポテトもお母さんの勘違いで落ちつく

    最後事の真相に気づいたっぽいお父さんが、特に何も言わなかったのが気になるなー
    ただウィルソンに静かにしいぇほしかったのかな??

    「川のおくりもの」
    夏休み仲良く兄弟のように遊んでた従弟同士のふたり
    生きてる貝をみつけて、川に箱を置いて帰る日まで確保してたんだけど
    明日ローリーが帰るっていう夜中にダンは箱をひっくりかえしたい衝動とたたかう
    というか、なんとなく?ひっくりかえそうとするんだよなー
    結局しないけど・・
    なんでかな?
    うーん

    「キイチゴつみ」
    ものを無駄にするのがきらいなお父さんと
    こどもたちがキイチゴつみに行く話
    なんかこのお父さんかんじわるーい!

    「カッコウ鳥が鳴いた」
    近所の妹みたいな女の子をしぶしぶつれて
    庭の向こうに探検にいく男の子の話
    最後、妹じゃないってわかるのがオチなのかなー
    迷子になっちゃって心配したよって話なのかな
    わからんわからん!


    あーーなんか、なんだろう
    わたし、子どもの気持ちとかわかるかなーと思ってたけど
    けっこうしっかり大人になっちゃってるのかも・・
    子どもの頃の表現できないような鬱憤とか
    形容できないようなキラキラしたものとか
    そういうの忘れちゃってるのかもなー

    なんか、ピアス読んでおもしろくない、と思った自分に
    ちょっとがっかり・・笑
    面白くないというより、解説してほしい、みたいな
    だめだなー説明を求めてるなんて・・

  • 「トムは真夜中の庭で」がよくてピアス好きかも!と思って読んでみたら、
    トムは~よりももっと好きな感じだった。
    全体に漂う仄寂しい空気とか、
    子供のころからずっと感じてる矛盾とか。

    そして相変わらずお庭の描写は素敵。

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著者プロフィール

1920-2006。イギリスの児童文学作家。『トムは真夜中の庭で』(岩波書店)でカーネギー賞を受賞。短編の名手としても知られ、「二十世紀の児童文学作家の中でもっとも優れ、もっとも愛された一人」と賞賛された。

「2018年 『コクルおばあさんとねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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