冒険者たち ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫044)

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  • / ISBN・EAN: 9784001140446

感想・レビュー・書評

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  • 町ネズミのガンバは、友達のマンプクに誘われ港で行われるネズミのパーティにー行く。
    船乗りネズミ、港ネズミたちとの盛り上がったパーティーの終わりの頃、瀕死のネズミ、忠太が助けを求めに来る。
    忠太は夢見が島のネズミ。数年前まで平和だった島にイタチたちが住みつき、仲間のネズミたちは次々狩られ、残ったネズミたちは隠れ暮らしを余儀なくされているという。
    忠太が口にしたイタチのリーダーの名前を聞いたネズミたちは色めきたつ。

     「白イタチのノロイ」

    それはふだんは個別に暮らすイタチをまとめる統率力と、魔術のような技と話術で小動物たちをを骨抜きにして次々に狩っては食い殺す恐ろしい相手だった。
    ノロイとは闘いたくないとその場を去るネズミたち。
    だがガンバは忠太と共に船に乗る。
    そして数匹のネズミたちも密航していた。
    こうしてリーダーに選ばれたガンバは15匹の仲間たち、マンプク、ヨイショ、ガクシャ、イカサマ、シジン、イダテン、アナホリ、カリック、バス、テノール、ジャンプ、バレット、ボーボ、オイボレ、そして忠太と共に島へ向かう。
    それはノロイと闘うというよりも、島ネズミたちと運命を共にするための旅だった。

    島に着き、隠れ住むネズミたちと合流したガンバたちは、島に残っている唯一のネズミの隠れ場所、海辺の崖の洞穴に籠る。
    環境の違う島ネズミたちとの交流や確執を経て、ガンバたちは島ネズミが無事に暮らせる方法を考えてゆく。

    ある晩ノロイに引き連れられたイタチたちがネズミの洞穴に向かい並び立つ。
    腹を空かせ閉じ込められているネズミたちの耳に、魔の誘惑のように奏でられるノロイの声。
    それはネズミたちとイタチたちとの四夜に渡る闘いの始まりだった。

    ===

    昔アニメ番組をやっていたときは見ていなかったのですが、話もキャラクターも面白く、今からでも見るべき作品ではないかと思った。
    アニメでは「ガンバと7匹の仲間たち」でしたね。さすがに15匹は多かったか。
    最近3Dアニメ映画化されたようで、6歳の次男が予告で「みたい」と興味を持ったので、「それより読もう!」と本を借りてきた…んだが、結構長くて私が音読してったので、かなり時間がかかってしまいました。
    しかし文章はかなり読みやすく、描写も素晴らしく、展開もドキドキわくわくと、大人が読んでも完成度の高い児童文学です。
    名前だけで特技が分かるようなネズミたちの個性と作戦、町ネズミのガンバが初めて海を見たときの感動、島に着いた時ののどかな風景から島ネズミを探すための過酷な旅、ノロイの怖ろしくも妖しい存在、そしてネズミたちとイタチたちの最後の死闘。
    挿絵が動物絵でおなじみの藪内正幸なので、登場人物(動物)たちの特徴をよく捉えています。

    シリーズで前後の話もあるようで、読んでみたいと思いつつ、もっと長い文章を私が音読するのはちょっと大変だな~~と考え中。


    P85~
    ヨイショの声にガンバはそろそろ目を開けてみました。ペンキを塗ったばかりの甲板が、太陽の光を浴びて真っ白に光り、まだ雨がすっかり乾ききっていない部分はキラキラ光を反射していました。 (…中略…) その向こうに鉄の手すりが船を取り囲んでおり、さらにその向こうに…、ガンバは手すりの向こうにあるものを見たとき、突然バネ仕掛けの人形のようにぴょんと飛び上がると、今度は酔っ払いみたいにふらふらしながら舷側に近づいていきました。そしてベンチの下に入ると、右手を軽く上げ、遠くを指すような格好をしながら、
     「海だ!」
    と、ため息交じりにつぶやきました。
    (…中略…) ヨイショがまた言いましたが、ガンバはやはり口を半分明けたまま海を見つめています。やがて、心地よい潮風が潮の香りを運んでガンバをやさしく包むと、ガンバはまたしてもぴょんと飛び上がり、ヨイショの止めるのも聞かず、人間の足の間を走り抜け揚錨機の近くまで走って行きました。そして追いついてきたヨイショを見ると、目の前に広がっている海を見て
     「これも海か!」
    と怒ったような震え声で言いました。
     「ああ、これも海だ。」
    ヨイショが答えました。ガンバはまた走りだし、舳までいくとまたまた目の前に広がっている海をじっと見つめ
     「これも海か!」
    と、泣き叫ぶようにいいました。
     「ああ、これも海だ。」
    するとまたガンバは走りだし、今度は舷側に沿って横目で海をにらむようにしながら、一気に艫まで走って行くと、ハアハア息を切らしながら
     「これも全部海か!」
    と言いました。
     「ああ、これも海だ!」
    ヨイショもできる限りでかい声を出して応えました。ガンバは肩を震わせながら座り込んでしまいました。船の通った跡が一筋の黒い青色になり、その上をカモメが数十羽すいすい飛び回り、時々さあーっと海に飛び込んでは魚をくわえ、また飛び上がっていました。あとはどこもかしこも海と空だけでした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      淳水堂さん
      制覇されたんだ素晴らしい、、、TVマンガ版しか知りませんが、色彩感覚と構図が凄く素敵でした。

      原作を読むと、マージェリー・シャ...
      淳水堂さん
      制覇されたんだ素晴らしい、、、TVマンガ版しか知りませんが、色彩感覚と構図が凄く素敵でした。

      原作を読むと、マージェリー・シャープの「ミス・ビアンカシリーズ」が読みたくなり、、、

      ヒグマと対峙する設定には、残念ながら必然性が見つかりませんしね。
      2021/05/29
    • 淳水堂さん
      猫丸さん
      ノロイはTVアニメは一番怖いかもですね。
      もちろん原作もコワイけど、TVのはまさに絶望感。
      話でも、リスがキツネに狩られると...
      猫丸さん
      ノロイはTVアニメは一番怖いかもですね。
      もちろん原作もコワイけど、TVのはまさに絶望感。
      話でも、リスがキツネに狩られるとか、結構シビアな話もありましたね。
      そして歌も良かったですね。リズム感の良いオープニング、絶望感漂うエンディング。
      キャラクターも、原作のネズミたちをうまくアレンジしていたし。
      ミスビアンカは読んでませんが、
      ネズミって絵本や児童書の主人公になることが多いって思いました。

      2021/05/29
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      淳水堂さん
      確かにデフォルメされたイタチは恐ろしさが際立っていました。原作の挿絵は薮内正幸の素晴らしいものですが、ちょっと負けてたかも、、、...
      淳水堂さん
      確かにデフォルメされたイタチは恐ろしさが際立っていました。原作の挿絵は薮内正幸の素晴らしいものですが、ちょっと負けてたかも、、、比べるのは間違いだと思いますが。。。
      再読したいネズミの話は「川の光」と「トンデモネズミ大活躍」かな、、、
      あっ猫は「ガンバとカワウソの冒険」が此のシリーズでは一番好きです!
      2021/05/30
  • ドブネズミのガンバはマンプクに誘われて
    町を出ていく
    港にたどり着いた2匹
    港の小屋でたくさんのネズミ達に出会い
    帰ろうとした時に
    傷ついたネズミ忠太が出てきて
    家族や仲間を助けて欲しいと言われる
    ガンバと仲間達は忠太の家族を助けに
    夢見が島へ渡る
    ドブネズミ対白イタチの戦い

    対象は小学校4、5年生以上

    アラフォーおばさんも
    ハラハラドキドキ夢中になって読み
    ラストの方ではじーんとした
    世界観が凄かった

  • 図書館がしばらく閉館だったため、大好きな本書を再読。
    鬱々とした自粛モードの中で、気持ちが前向きになれる。
    ガンバ、最高!

  • すごく丁寧な描写が続き、好感がもてます。ハラハラしながら一気に読了しました。

  • 古臭い言葉で表現するなら、「義を見てせざるは勇無きなり」の一言になるのでしょうか?
    天敵に立ち向かう無謀さは頂けませんが、それでも立ち向かわざるを得ない時もあると心の隅で思っています。

  • 母がガンバのアニメが好きだったので、小さい頃はガンバを見せられていました。
    ストーリーはほとんど覚えていないのですが、テーマ曲とオープニングのノロイがすごい怖かったことは鮮明に覚えています。

    原作を読むのは初めてです。
    夢中になって読みました。
    仲間たちとの絆に、生きるための闘いの最中に芽生えた恋に、涙が出ました。

    イタチとの闘いの中で、15匹の仲間たちが特技を活かしてピンチを切り抜けていく姿から目が離せなくなっていました。
    特に、シジンがかすれる声を振り絞って仲間を呼び戻すシーンが印象的でした。

    関連する『グリックの冒険』と『ガンバとカワウソの冒険』も読もうと決意しました。

  • ガンバ!ガンバです~^^
    アニメのガンバは、再放送してるのをほんのちょびっと見たことはあるんですが、全然見たことないに等しく、
    本も初めて読みました。

    なにこの感動・・!
    すごいスペクタクルでした。泣ける・・!

    序盤はガンバの消極的というか家から離れたがらない慎重な性格に「へーーー原作のガンバはこんなんなのかあ」と思ってたんですが
    一貫してガンバは意外とリーダーっぽくなく、
    特に何かに秀でているでもなく、
    「ガンバ」という名前にもちょっと疑問が・・
    いや、別にガンバきらいじゃないけど!
    ガンバがんばってたけども!

    次々と出てくるネズミたちに、「ああこんなキャラいたなあ」とか「こんなのいたっけ・・?」みたいな感じで
    16ひきも出てくるから覚えられない!と心配したけど
    みんなの特技とか特徴がそのまま名前になってるから覚えやすくてよかった^^

    覚えてないけどアニメでは16ひきもいなかったような気がする
    ので調べたらやっぱり7ひきらしい!
    そうかそうかー

    イタチと闘う演説をしたけどみんな出てっちゃって、
    ガンバと忠太だけで船に乗り込んだけど、
    次から次へと仲間が出てくるところはガチで泣きました・・
    こういうの弱い^^

    島に入ってからのあれこれは、ドキドキしたし普通に面白かった

    ノロイとのたたかいは、ちょっと「ん・・?^^」って思ったけど
    シジンとか、バス・テノールとか、バレットとか
    出番あるのかな~と思ってた(笑)ネズミたちにもちゃんと活躍があってよかった。
    ボーボが泣けた・・そんな予感したけど、その予感気にしないで読んでたから、まさか!って感じで・・
    イカサマいいやつだなあ・・

    アナホリがとんだところで出番があってちょっと・・><

    こんな感動したり、わくわくするとは思わなかった。
    ぜひアニメも見たい!と思ったけど昔の作品だし見れなそうなので
    動画サイトでちょびっとだけのを見たら

    ノロイ様(様つけたくなる)が怖すぎてびびりました・・!
    何このモンスター!!笑
    ちょーーこわいよ
    これじゃネズミじゃなくたって闘いたくないよ・・

  •  本書を読んでからイタチ=悪の図式が刷り込まれた。アニメは観たことがないが、ノロイの挿絵に恐怖を覚えた小学生時代。仲間たちが海で一列になってイタチを迎え撃つシーンが胸熱。歌やダンスで戦うシーンもすっかり忘れていたが、それぞれの仲間にスポットライトが当たってワクワクしたなぁ。得意なことを活かして戦いが苦手なものも精一杯仲間のために頑張るネズミ達に勇気づけられるし、大事なことを教えてくれる。また児童文学の魅力に惹かれ、児童文学熱が再燃してきた。

  • 子どもたちの読み聞かせで初めて読んだ作品。
    個性あふれるネズミたちが主人公のお話は、
    小学生の頃にハマった「ミス・ビアンカシリーズ」以来かな。

    ネズミのガンバが主人公で、次々に出会う周りの仲間たちとともに冒険に巻き込きこまれていく。
    ガンバは最初からやる気のある主人公キャラではないのも面白いところ。
    ほんのちょっと責任感が強くムキになりやすい性格なだけで、彼を取り巻く周りの環境が、ガンバをみんなのリーダーに成長させていくのも見事。

    途中からどんどん緊張感が出てきて、
    えっ?えっ?
    っていう予想外の展開が続いて、
    中盤以降は、伏線の回収も見事で、
    最終章は完全にネズミたちと一緒に大冒険してる気持ちになってしまい、
    私の声が震える瞬間もあり(笑)、
    とても充実感のある冒険物語だった!

    小6と年長の子どもたち二人が、
    どんどん物語の世界に入り込んでいくのも伝わったし、
    私も未読の本だったこともあり、
    新鮮に純粋に楽しむことが出来た。
    言い回しや熟語が難しい言葉も少しだけあったけど、ついてこれた様子。
    挿絵もとにかく素晴らしい❣️❣️

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著者プロフィール

斎藤惇夫 1940年新潟市生まれ。小学校一年から高校卒業まで長岡市ですごす。長年子どもの本の編集に携わり、現在は、著作と、子どもの本の普及活動を続ける。著書に『グリックの冒険』『冒険者たち』『ガンバとカワウソの冒険』『哲夫の春休み』(以上、岩波書店)、『おいで子どもたち』(日本聖公会)、『現在、子どもたちが求めているもの』『子どもと子どもの本に捧げた生涯』(以上、キッズメイト)、講演録に『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』(教文館)などがある。

「2017年 『河童のユウタの冒険(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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