点子ちゃんとアントン (岩波少年文庫)

制作 : Erich K¨astner  池田 香代子 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 567
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140606

感想・レビュー・書評

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  • 「飛ぶ教室」「ふたりのロッテ」と読んできて、これでケストナーは三作目。
    読むたびにこれこそ名作!と称えてきたが、今回もまた同じ気持ちだ。

    場面ごとに16章に分かれ、各章の終わりに小文字で著者からのメッセージがある。
    考察すべき点が示唆に富む文章で語られ、でも決して説教くさくない。
    子ども相手でも、ひたすら誠実であろうとする著者の姿勢が見えてとにかく気持ちが良い。
    もし読者が子どもだったらこの部分は蛇足に感じたかもしれない。
    しかし大人の読者なら深く頷いてしまうところだろう。
    ところが本編はいたって明るくユーモラス。
    クスクス笑いながら読み進むうちに、こうあるべき、という着地点にたどり着く。
    それだけでなく、胸がふるえるほど美しい風景描写もある。
    まさに、さすがのケストナーだ。

    表紙絵の女の子が点子ちゃん。
    大変なお金持ちのお嬢さんで、陽気で機転が利いて個性的な女の子だ。
    手を繋いで歩くのは、点子ちゃんの友だちのアントン。
    母子家庭で、料理から生活費を担うことまで一手に引き受けている。
    このふたりの共通点は、共に悲しみを抱えていること。
    裕福でも両親の愛に恵まれない点子ちゃん。
    かたや、愛はあっても経済的に貧窮してるアントン。
    このふたりのみでなく、点子ちゃんの両親と養育係のアンダハト、そしてアントンの母親など、登場するすべての大人が、それぞれ固有の問題や悩みを抱えている。

    子どもには正しいことを教えてあげるのが大人で、大人側の事情や問題は子どもには理解できないものと思いがちだが、ケストナーにはそんな一般論は登場しない。
    大人の言うことを鵜呑みにしてはいけない。大人だって間違っていることがある。
    良い子でいるよりも、子どもが精一杯大人と渡り合うのは意味があることだ。
    点子ちゃんやアントンのように生きていいんだよ・・そんな熱いエールが、お話のあちこちに散りばめられている。
    とりわけ胸がすく思いになるのは、点子ちゃんがアントンの教師に職員室でかけあう場面。
    かげながら友情を尽くす点子ちゃんの行動には、驚きと言うより尊敬の念さえ抱いてしまう。

    点子ちゃんの活躍ですべての物事があるべき方向へ向かうのだが、それがまた何とも胸を打つ結果。「あとがき」まで含めて、ナチス政権下で繰り出されたこの作品に込めたケストナーの意思を、読み返してはしっかり受け止めたい。
    得たものはまだ語りつくせないほどあるが、父親にこってり絞られた後の点子ちゃんの言葉をひとつ載せておく。 「社長さん、今夜はとてもおもしろかったわね」
    ・・・このタフさとユーモアセンス。見習いたい。
    いいなぁ、児童書って。

    • nejidonさん
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます!とても嬉しいです。
      このお話を「忘れていた宝物を取り戻しにきたような」と...
      地球っこさん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます!とても嬉しいです。
      このお話を「忘れていた宝物を取り戻しにきたような」と表現される地球っこさん。
      まさにその通りのワクワク感で読み通しました。
      最初に読んだものは高橋健二さんの訳で、日本語の表現にやや古さを感じました。
      でも確かに古典なのですから、それで構わないのですよね。
      ただ、他の訳者さんはどう表現しているか気になって読み比べてみました。
      最後の「社長さん・・」のくだりは、高橋さんの訳では「支配人さん、今夜はおもしろうござんしたね」
      となっています。 時代を感じますよね。

      ところでワタクシ、本はほとんど図書館なのです。
      児童書のコーナーではずらりと岩波少年文庫が並んでまして、その中から選びます。
      当然古さもあり、あちこち補修のあとが目立ちます。
      でもそれがまた味を出しておりまして・笑
      色々な子たちが読んだのだろうな。今度は私に読ませてね、と声かけをして開きます。
      地球っこさんもぜひ機会をとらえてお読みくださいませ。
      そしてお気に入りの一冊に出会いましたら、私にも教えてくださいね!
      2018/10/16
    • 地球っこさん
      nejidonさん、こんばんは♪
      お返事ありがとうございます(*^^*)
      nejidonさんの本に対する愛がとっても
      伝わってきて感動...
      nejidonさん、こんばんは♪
      お返事ありがとうございます(*^^*)
      nejidonさんの本に対する愛がとっても
      伝わってきて感動しました♪
      図書館の本って、たくさんの子どもたち
      が繋ぐリレーのバトンみたいですね。
      今度はわたしもそのリレーに参加させて
      もらっちゃおう 笑
      わたしは長い間、児童書からご無沙汰
      してましたが、この間ブク友さんの本棚
      に高楼方子さんのお名前をみつけて、昔
      とても大好きだった『11月の扉』という
      物語を思い出しました。
      nejidonさんは、もう知っておられるかも
      しれませんが、これからの季節にぴったり
      なお話です。
      また高楼さんやそして富安陽子さんの本
      も読んでみたいと思ってます。
      2018/10/16
    • nejidonさん
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      再訪してくださり、ありがとうございます!
      はい、ぜひともリレーのお仲間にお入りくださいませ・笑
      児...
      地球っこさん、こんにちは(^^♪
      再訪してくださり、ありがとうございます!
      はい、ぜひともリレーのお仲間にお入りくださいませ・笑
      児童書のコーナーには、先人たちが子どもたちに届けようとした思いがあふれています。
      眺めているだけで、慎ましい気持ちになります。
      読むことしか出来ない私ですが、どこまでその思いを受け取れているかは自信がありません。。

      はい、高楼方子さんは大好きな作家さんです!
      函館を舞台にした「時計坂の家」が特に好きで、この本棚にも入っているはずです。
      あとは「ねこが見た話」かな。「11月の扉」は惜しいかな入っていません。
      再読してから登録しますね。
      秋になると、読みたくなるお話ですよね。
      あと、女の子の多いお話会ではよく「まあちゃんのながいかみ」を読んでいます。
      富安陽子さんも好きな作家さんですとも!
      本棚には「盆まねき」が入っています。
      「まゆとおに」「まゆとりゅう」などを、よく子どもたちに読みます。
      富安さんの本にも読みたいものがたくさんあります。
      外国の骨太な作品と比べて日本のものは繊細さと優しさがあり、そこが魅力ですよね。
      こちらで児童書のお話を地球っこさんとできるなんて、とても嬉しいです(^^♪
      2018/10/17
  • 私がケストナーを知ったのは、大学生になってからのことであった。読んで猛烈に後悔した。なんで、なんでもっと早く私はケストナーに出会わなかったんだろう! と(ちなみに、後藤竜二さんも似たようなことを思った作家だった)。

    ケストナーは、決して、絶対に、子供をなめない。見くびらない。そして、甘やかさない。
    一人の思考する人間として、子供に対等に接する。真摯である。それでいて、愛情に溢れている。
    彼は彼の持てる全てのモラルと、誠実さと、愛情を持って、子供たちに語りかけてくれる。
    しかしそれは、子供にとって、自分の話を聞いてくれることに等しいのだと思う。ケストナーは語りかける、けれどそれと同じくらい、真剣に私たちの話を聞いてくれるのだ。

    何が正しいのか、ということの難しさと、何を大切にするのか、ということのありがたさ。
    それはいつでも、私達の胸の中にある。けれど、それをきちんと教えてくれる人は、少ない。

    自分が一人ぼっちだと感じたら。何かおかしいと思うことをあったら。
    いつでも、ケストナーに相談してごらん。
    きっと彼は、あなたの話に、真剣に耳を傾けてくれるよ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「きっと彼は、あなたの話に、真剣に耳を傾けてくれるよ。 」
      そう言う大人になりたい。。。
      「きっと彼は、あなたの話に、真剣に耳を傾けてくれるよ。 」
      そう言う大人になりたい。。。
      2014/06/20
    • 抽斗さん
      >猫丸さん
      ケストナーの本を読むと、私も「こんな大人になりたいなぁ」とよく思います。
      >猫丸さん
      ケストナーの本を読むと、私も「こんな大人になりたいなぁ」とよく思います。
      2014/06/22
  • 児童向けだけれど、大人が読んでも十分楽しめる。
    童心に戻れるって、なんて幸せなんだろう。
    おちゃめな点子ちゃんと、心優しいアントンの友情物語。
    点子ちゃんのお家にいるお手伝いさんたちが、とてもいい味出してます。
    各章の終りに小さな字で書いてある「立ち止まって考えたこと」は、読んでみて身につまされる思いがします。
    粋で機知に富んだケストナーの発想は素晴らしいです。
    物語に登場する主役の男の子は、ケストナーの分身なのかもしれませんね。

  • 娘の本棚から借りて読んだ。

    点子ちゃんが友人のアントンを助ける場面がある。アントンが生活に困っていることを、アントンの学校の先生に教えに行くのだ。アントンは、「自分でそんなことを言うくらいなら、舌を噛み切って死んだ方がまし」というから、アントンには内緒で、こっそりと。

    アントンは、点子ちゃんのおかげとは知らず、ピンチを免れることになる。

    その場面についての、作者ケストナー先生の一言が素晴らしい。

    “点子ちゃんのように、友人の役に立つ機会がある、というのは、とても幸せで素晴らしいことだ。でも、アントンはそれが点子ちゃんのおかげだとは知らないし、点子ちゃんはお礼を言ってほしいとは思っていない。

    自分が役に立てたことが、そのまま自分へのご褒美だ。そのほかのことは、喜びを大きくするよりも、むしろ小さくしてしまうだろう。”

    そして、“みんなも、人を幸せにすることがどんなに幸せかを、知る人になってほしい”と結ぶ。

    自らを省みて、「はい、ケストナー先生!」と背筋を伸ばさずにはいられない。

    私の子どもたちには多くを望まないようにしてきた。「こうあってほしい」という願いが強くなり、子どもたちの本来の素質を損なうのを恐れていたからだ。だけど、このことは、子どもに伝えていきたい。

    人を幸せにすることが、あなたの幸せ。そうする機会に恵まれたなら、そうすることがご褒美だってこと。

    何回も読み返したい本だ。

  • ドイツ児童文学作家・コルドン氏や、脇明子さんがお好きなケストナー。小学校図書館にあった、1979 小川超訳『てん子ちゃんとアントン』(集英社/子どものための世界名作文学 24)を読了。
    時代的にかなり古い表現は多々ありましたが、なるほどケストナーはこういう作風なのだなと納得できました。『飛ぶ教室』あたためているので読まねば。『動物会議』もきちんと再読したい。

  • 子ども図書館で借りてきたので、読んだのは1962年岩波版です。
    ブルジョワの両親の下で、のびのびと、やや放任気味に育てられている「点子ちゃん」ことルイーゼと、貧しい母子家庭ながら母親に一心に愛情を向けているアントン。異なる階級に属しながら固い友情でむすばれた2人が、点子ちゃんの家庭教師アンダハト嬢とその「おむこさん」による悪だくらみをあばき、ついでにアントン少年の家庭の事情も解決されるという、冒険とハッピーエンンドの物語です。
    とはいっても、けっして甘いだけの本ではなく、ケストナーはこの作品で階級社会への批判そのものを焦点に据えているわけですが、正義感あふれると同時に子どもらしくのびのびした点子ちゃんを主人公にすえることで、説教くさくならず、ユーモアにあふれ、子どもたち自身の力に希望をたくす、生き生きした本になっています。ケストナーの本のなかでも、とりわけ魅力ある一冊だと思います。

  • お母さん思いのアントンに胸を打たれたり、点子ちゃんの天真爛漫さに微笑んだり。こんなに素敵な二人はいないと思う。

  • 子供をほったらかしにする親。
    子供の友達づきあいの中で、家族からは得られない情報と経験を積み重ねていく。
    それでも、家族の絆の大切さもにじませている。

    最初は、あまりよくわかりませんでしたが、
    映画(DVD)を見て、筋が分かってから、文庫を読んだら、よく分かりました。

    人によって、文庫が先の方がいい人と、
    映画が先の方が良い人がいるかもしれません。

    文庫をよんでピンと来ない人は、ぜひ、映画(DVD)をごらんください。

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    『点子ちゃんとアントン』エーリヒ・ケストナー
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    初めてのケストナー。
    子どもは日々を楽しむ天才だ。子どもの自由なこと。それに引き換え大人の不自由なこと。長い時間かけてカチコチになっちゃってるんだなあ。いつだって子どものような自由な大らかな部分をもった人でいた方が絶対いい。そうしよう。
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    物語にも、あわせて書かれているケストナーの解説にも、たくさん考えさせられる。
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    児童文学は子どもの頃に出会っているのが理想だけど、大人になって読んでもそれはそれですごくいいのだ。
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    #点子ちゃんとアントン
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  • ケストナー独特のいいまわしがしんどいような、おもしろいような。
    広すぎる心のこととか、尊敬についてとか、反省することしきり。

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