800番への旅 (岩波少年文庫 061)

  • 岩波書店 (2000年9月18日発売)
3.45
  • (10)
  • (9)
  • (23)
  • (7)
  • (0)
本棚登録 : 149
感想 : 24
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (214ページ) / ISBN・EAN: 9784001140613

作品紹介・あらすじ

再婚する母親が新婚旅行にでかける夏の1ヶ月間。マクシミリアンは離婚した父親と商売道具のラクダのアーメッドとともにすごすことになった。デンバー、ダラス、タルサ、ラスベガス…トレーラーハウスでの移動生活には、会うたびに名前のちがうリリーとサブリナ母娘のような、「規格はずれ」の人びとの出会いがまっていた。

みんなの感想まとめ

主人公の12歳の少年・マックスが、父親と共にラクダを連れてアメリカを旅する物語は、自己発見と成長の過程を描いています。母の再婚に伴い、父との生活に不満を抱えるマックスは、旅を通じて父の人柄や愛情に触れ...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 主人公は12歳の少年・マックスです。
    母が再婚相手と旅行に出ているあいだ、夏休みを父の元で過ごすことになったマックス。
    彼の父は、ラクダを連れてアメリカ中を興行して生計を立てています。
    父と2人、トレイラーで旅をしながら各地でさまざまな人と出会う、マックスには馴染みのないひと夏の生活がはじまります。

    はじめは生意気な態度のマックス少年に、もやもやした気持ちを抱きながら読んでいました。
    12歳という年齢のせいもあると思いますが、母親が「あのラクダ引き」と父のことを馬鹿にしたように呼んでいたことも影響しているのでしょう。
    しかし、行く先々で慕われる父の姿を見たり、自分自身も苦い思いを経験する中で、マックスの父に対する気持ちがゆるやかに変化していって少し安心しました。

    また、サブリナという少女に出会ったことも、大きな影響があったと思います。
    フリークの新聞記事を集めていて、年齢よりも大人びた口調で話す彼女。
    なぜか旅先で何度も遭遇する彼女は、一体何を隠しているのでしょうか。

    小島希里さんの訳者あとがきが、物語の余韻を優しく深めてくれます。
    仮面とは、自分を隠して他の人にならせてくれるものであり、仮面に隠して本当の自分自身にならせてくれるものでもある。
    もし12歳の私が本書に出会っていたら、どんな感想を抱いていたのか、無性に知りたいと思いました。
    このあとがきで引用されている、カニグズバーグの講演集『トーク・トーク』も読んでみたくなりました。

  • ウッディ父さん。なんて大きな愛なんだろう。主人公は父さんと行動をともにすることで、自ら様々な発見をし、反省をし、そして、自分の本当の出自を知る。

    しかし、よくぞラクダで商売をしている人のさまをここまで見事に描けるものだ。舌を巻く。

    タイトルの「800番」がそういう意味だったとは!

  • 随分前に、とある本で「司書のおすすめ本」として出て来て、タイトルが面白かったので借りてみたのだが、全然面白くなくて途中で挫折して返したのだった。
    今回、カニグズバーグ再挑戦!と気合を入れて借り直して読んでみたのだが、最後まで読み切れたし、以前読んだ時とは違う印象を受けた。

    物語は、12歳の少年マックスが、母親が再婚して新婚旅行に行く間に、「ラクダ使い」である実父の元で暮らす、一夏の経験を描く。
    けれどマックスはラクダは嫌いだし、父親と過ごすトレーラーの生活も何もかも気に入らなくて…。


    私が思うに、マックスの実父であるウッディはとてもいい人だ。ラクダ使いという仕事も、とても魅力的だと思う。
    けれど、マックスは、ラクダは汚らしくて嫌いだし、なんなら父親のことも、義父になるお金持ちのF・ヒューゴ・マラテスタ一世とは違い、うだつの上がらない小汚い冴えない男だと思っている。初めに読んだ時は、そんなマックスの父親に対する目線や、何にしても否定的で差別的な態度に辟易してしまったのだ。全然楽しくない気持ちでページを読み進めることができなくて、割と早い段階でリタイヤしてしまった。
    サブリナが出てくるところまではかろうじて読んだが、そのサブリナ親子に対しても、不審ないけ好かない人たちだと思えたので、どうにも読み進めることができなかった。

    今回の読書とは何が違っていただろう?
    もしかしたら、もう少し読み進めることができていたら、何かが劇的に変わっていたのかもしれない。
    初読の時に比べると、俯瞰して見るという立場で居られたのかもしれない。
    トレーラーに乗って、ラクダのアーメッドとともに国内の色々な場所をめぐるウッディの生活は、日本で生きている限りにおいてはなかなか想像しにくい。
    一時期Netflixで海外ドラマを見まくっていたので、少しだけ以前より想像力が上がっていたかもしれない。

    マックスの立場で読み進めていくと、結構楽しくない気持ちになる。途中でウッディの人柄に気づくと、その暖かさに居心地のよさを感じる。

    オクラホマ州のタルサでの経験が、一番印象に残る。
    タルサには、ウッディのことが大好きな家族がいて、マックスにもよくしてくれる。
    タルサでウッディはマックスのインフルエンザをもらい、高熱を出して寝込んでしまうが、ウッディを慕う家族のうち長男で14歳のマヌエーロがウッディの仕事を代わりに引き受けてくれ、マックスは父親の看病をすることになる。
    マックスはそこで、たくさんのことを学ぶ。

    マヌエーロが売上金を持ってきてくれた時、マックスはラクダに乗せる代金に対して、売上金に端数があることを指摘する。端数は、客とのトラブルを回避するために生じたものだったが、その指摘によって、マックスはマヌエーロを怒らせてしまう。

    正直、マヌエーロを疑うつもりはなくとも、自分だったら端数が出るのは疑問だから聞いてしまうかなと思う。
    けれど、ここでマヌエーロが怒ったのは、それまでのマックスの態度とかもあるんだろうなぁ。
    マヌエーロのお母さんの言葉が胸に痛い。
    「ボー(マックスのこと)は年のわりにこどもぽいところがあるのさ」「こうやって手助けしてるのは、ウッディのことが大好きだからなんで、それを忘れちゃだめだよ」
    マヌエーロを怒らせてしまったことに対して、ウッディに相談するマックスに対しての、ウッディの返しも痛い。
    「どうもできない。今後の教訓だと思うしかない。」

    本当に、人生はこういうことが往々にしてあるのだ。

    ラスベガスでの、歌手のトリーナ・ローズとの出会いも素敵だ。トリーナという人の魅力と、ラスベガスでのショーの雰囲気を想像すると楽しい。
    そして何より、有名な歌手のトリーナ・ローズが、ウッディの古くからの友人という設定がとても魅力的。
    トリーナと出会うことで、物語は終幕に向けて進んでいく。

    小さな価値観の中で四角四面に育ってきたマックスが、そうでない世界を知って、それらに触れていくこと。
    そして彼自身の出生の秘密。
    成長譚というには少しわかりにくいが、あんなにウッディを毛嫌いしていたボーが、最後に迎えた結末はじんわりと温かい。
    結びの、『ぼくはおしりをすべらせて、ウッディに近寄った。ウッディはハンドルから片手を離すと、その手でぼくをひきよせた。空港に着くまで、ぼくはずっとウッディに寄りかかっていた。』たったこれだけの描写に、図らずも泣いてしまった。この涙は、よい作品でなかれば出ないものだと思う。
    この物語中ではそこまでわからないけれど、マックスの、いやボーの世界はこの後、劇的に変化を遂げるのだろう。
    そうであってほしいと思う。
    小さな価値観から脱却する一夏の物語であると思う。

    そして余談だが、マックスをそうした存在にしたのはマックスの母親の価値観で、マックスの母親の価値観がそうなったのは、マックスを妊娠した時に、両親から祝福されなかったせいではないかと思った。子どもは親の価値観にかなり影響を受ける。そういう意味では、マックスの母親も、自分の親から、その後の人生に大きな影響を与える仕打ちを受けたのではないかと想像した。

    サブリナについての記述が少ないが、実は彼女のことについては、あまりよくわからなかったのだ。彼女が集めているものが一体何を意味するのか。彼女の言っていることは何なのか。
    解説に、仮面についての記述があるが、ここにおいてもまた然りである。
    しかしこの作品のタイトルは『800番への旅』なので、物語の本質は実はそこにあるのだろう。
    というわけで、次回は仮面について考えながら読むことにしよう。

    余談:『800番への旅』というタイトルはとても格好いいと思うのだが、『0120番への旅』だと途端にダサくなるのはなぜなのか。

  •  まるで自分の一部みたいに感じられる物語を見つけて、接続を試すことがあるのです。特にカニグズバーグ、という児童文学作家による何作かに、うまくつながった気がします☆

    『800番への旅』(1982)は、母親が大金持ちと再婚して新婚旅行に出てる間に、父親に預けられる男の子のストーリー。で、父親というのは、ラクダを操って生計をたてる人物なのです★
     少年は不機嫌でラクダに興味ないし、それより義父と一緒にクルージングがいいみたい(正直ですね)。それでも、ラクダとともに興行へ。
     あまりにも特殊な事情と突発的な旅。道中、さまざまな種類の人に出会い、お坊ちゃんが多様性を実感せざるを得なくなる、風変わりなお話です。

     しかし、どんな境遇の人物より謎なのが、「普通」になりすます母親たちの生態だと思ったな~★ 子どもができたからこそ、自分をまともな社会人に見せかける必要を痛感しちゃったのでしょうね。普通って何、というのも謎ですが……。

     本書は誰のことも責めません。大人も子供も、その時その場でキャラを演じるのさ✧ と認めてます。
     人が「そうあるのが良い」と判断してふるまう分には、そこに悪は存在しないのかもしれません。世界は嘘だらけ。もしかしたら優しい嘘だらけ。
     とはいえ、大人の事情で毎回仮面をつけかえ、さもしくなりがちな親の態度に、子供は混乱する。だから、著者は常に<12歳の味方>に立ちます☆

     サリンジャーの『ライ麦畑』は価値ある名著ですが、大人の建前を厭うばかり。嘆いてるうち破滅しちゃいます★ 比較はできないけど、本書は「周り中がうわべを取り繕う世界なら、じゃあ自分はどうありたい?」と考える強靭さを含んでるのが、心強いです☆

     案外、私も800番への旅に立つ女かもしれません。
     嘘が嫌いで楽しめるかわからないけど、行かなければならない旅なら、本を鞄にしのばせてパッと身軽に、サブリナのように勇敢に生きたい♪


    ▼サブリナ・カーペンター『Manchild』
    https://www.youtube.com/watch?v=aSugSGCC12I

    ▼サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
    https://booklog.jp/users/kotanirico/archives/1/4560070512

  • 自分として生きていく。

    マックスは母親が富豪と結婚して新婚旅行に行くので、離婚した父親と夏休みを過ごすことになった。父親はラクダを連れてトレーラーで興行をしながら暮らしている。これからの生活への想いと父親との生活への不満を抱えたマックスが道中で出会ったのは——。

    周りから浮きたくない。見下されたくない。そのために進学先のブレザーを着て、母親の再婚相手に連れて行かれた豪華なレストランの話をする。しかし父親には不発で、知り合ったサブリナはどうやら行く先々でまったく架空の人物になりすましている様子。大物歌手のトリーナは、実は名付け親でどうやら昔の父母を知っているらしい。

    自分が誰なのか、わかっているだろうか。自分のふりをしているのかもしれない。誰かのふりをすることは決して間違いではない。何かを演じることで自由になれることもある。ウッディが演じていたもの。それを受け入れてマックスは残りの夏休みを過ごす。

    外国からの旅人のように、違う習慣を見守れる人になりたい。

  • 再婚する母親が新婚旅行に行っている間、12才の少年マックスは「ラクダ使い」の父親のところで過ごすことになった。
    マックスは、もうすぐ始まるはずの、社会的にも経済的にも恵まれている母親の再婚相手に合わせた生活…名門私立校の生徒となって…に慣れておかなくちゃ!と思って過ごしている。「ぼくが慣れておくはずだったのはファーストクラスの暮らしだっていうこと。」
    ラクダ使いの父親ウッディーは「のびのびできると思うのか?」
    旅回りのあいだにマックスは個性的な人々と出会う。ウッディーはみんなに好かれていて、ウッディーもみんなが好き。それは、お互いに助け合い信頼しあっているから。
    そんな中に身を置いているうちに、マックスの価値観もじわじわと変わっていく、、
    「仮面」というのも、この本のテーマのひとつですが、ウッディーにも仮面があったということを知って、マックスは大きな愛情を感じることになる!

  • チョーやさしいけど金がなく、かっこわるくて、ラクダを飼って芸能の仕事をしているダサくて恥ずかしい父さんと、ラクダは嫌だと別れた母さんが歳のいった富豪と再婚し、急にエリートになったような気分に酔ってるこまっしゃくれた少年の旅物語。義理の父の金でボンボン校に入学できたことを鼻にかけて、ラクダ父さんと田舎を旅してる最中もそのブランド校のブレザーをこれみよがしに着続けたりしてた子が、旅しながら出会った人と触れ合い、ラクダ父さんとの時間を通して、少しずつ、その凝り固まったスカした心が素直になっていく。

    アメリカの文化や空気感が感じられて、映画を観たような気分になった。自分いまや中年やけど、この少年の同年代、10代の初めころに読んでたら、どう感じたんやろう。いいとは思えなかったかもしれないかなあ。

  • いろんな人達がいて
    鎧や仮面で自分を守って生きている
    自分も何か理想を持っていると前を向いて歩ける気がする

    見つけられないと表に出られない事もある
    家にいても何か見つけて外に出て
    そこからまた探してみてほしいと思う

  • タイトルの800番の意味は最後にわかる。そういうことか、という気づき。

  • 山陰中央新報の水曜日『週刊さんいん学聞』で紹介されてた本

  • みんな人は色々な仮面をつけている。
    本当の自分って。。。

  • 母が再婚し、新婚旅行に行っている間、父の元に預けられた少年ボー。父はラクダを連れて、キャンピングカーであちこち旅をする生活をしている。そんな父に反発するボー。しかし旅先での人々との出会いを通して成長していく。非常にアメリカらしい小説。タイトルの意味が最後の方にやっと分かった。

  • 主人公マクシミリアン、12歳。
    シングルマザーの母が結婚する。あこがれていたハイクラスな生活が手に入るって。でもって、ハネムーンの間は別れた父さんのとこへ行って来いって。(なんかもう、この時点で文化が違うぞ^^;))))))

    父さんの生活なんて。
    トレーラーハウスで、巡業しながらの生活なんて。
    ラクダと一緒の生活って、ぼくの辞書にはないんだけど。

    「800番」の謎がとけるのはラストの方。
    「800番」の意味を考えると、こんがらがっちゃいそうなので、ここはマックスの「出会い」と「気づき」を一緒に体験しよう。アメリカンミュージックでも聞きながら。思春期入った人向け。

  • 日本ふうにいえば、0120への旅、というタイトル。
    母の再婚新婚旅行中に、ラクダの興行をして、旅暮らしをしている実父のもとにあずけられた少年のはなし。
    自分の学校にこだわり、高級な生活にあこがれ、数学の力や知識をひとに言いたい少年は、父やその周囲の風変わりな人たちを通じて成長していく。
    そして、旅のあいだに知り合った不思議な親子の秘密に気がつく。
    最後には自分自身の秘密にも気付いてしまうが、成長した少年はそれを乗り越える強さがあった。

    カニグスバーグらしい、自然な少年の心境が綴られている。
    そして父の素晴らしさ。トリーナの優しさ。
    最後まで、少年とアーメッドというラクダはちっとも和解しないのね。笑

  • カニグズバーグの作品。出てくるものも、展開も、いかにもアメリカ的な。中学生くらいで面白いと思う子もいるかもしれない。おとうさんが時々とてもいいことをいうなと思った。ラクダ、父親、仮面、旅。

  • だれだって、何かのふりをして生きている。

    たんたんと進んでいくような印象をもつけど、少しずつマックスの心を変えていくような出会いや出来事が待ってる。

    読んだあとに、なんかガツンと衝撃がきた。これは、久々の感触だ。

  • カニグズバーグ!おもしろいかな~
    と思ったけどこれはそうでもなかったような

    文化のちがいが、ちょっとついてけなかったわたし

    トレーラーハウスとか、ラクダを乗せる仕事とか
    いろんな集まりに入り込んでごはん食べちゃったりとか
    いろんなひとがいるんだなー

    子ども目線ではあるんだけど、適当に読むと理解できないカニグズバーグ^^;

    800番はフリーダイヤルみたいな番号で、
    ボーはいろんな生き方やいろんな生活にふれて
    成長していくんだなあ

  • 主人公のいけてなさにぐっ。

    「仮面」は真実を伝えるうそ(解説より)

  • 再婚する母親が旅行にでかけるあいだ、離婚した父親と商売道具のラクダのアーメッドとともに旅にでたマクシミリアン。行く先には、会うたびに名前のちがうリリーとサブリナ母娘など、「規格はずれ」の人びととの出会いがまっていた

  • 普通に読めたけど、誤訳が多いんだって。原本読んでみようかな?
    14 Sept 2006

全20件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1959年東京生まれ。翻訳家。訳書として『きれいな絵なんかなかった——こどもの日々、戦争の日々』(ポプラ社)、『ねこのジンジャー』(偕成社)、『ひみつの川』(BL出版)などがある。

「2013年 『新版 自分をまもる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小島希里の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×