肥後の石工 (岩波少年文庫)

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  • 岩波書店
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140781

感想・レビュー・書評

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  • 中2の夏休みに読んだはずなのに、読み応えのある本だったなぁという程度の記憶しかない。
    たぶん当時の私は、この本の価値を何一つ分からなかったのだろう。
    今この年齢で再読して、ここまで深く感動できる歴史小説だったことを知り、改めて驚いている。
    1966年第6回日本児童文学者協会賞受賞作品。
    ほかにも第4回NHK児童文学奨励賞、第4回国際アンデルセン賞国内賞を受賞している。
    さもありなん、である。涙なくして、とうてい読み終えることは出来ない名作。

    主人公は江戸時代後期に実在した「肥後の石工」岩永三五郎。
    薩摩藩に招かれ、甲突川五石橋などを築いた史実を基にして著された児童文学。
    築かれた橋には秘密があり、中央の石ひとつをはずすと簡単に取り壊せる仕組みがそれ。
    敵が攻めてきたときに、橋を落として城を守る仕掛けだったと言う。
    この秘密を守るため、工事が終わると肥後の石工たちは全員『永送り』になったらしい。
    『永送り』というのは、ひと目につかないように刺客をつかわして国境で斬り捨てることだ。
    主人公の三五郎は、石工たちの中でただひとり、それを逃れて家路に着いた。
    話はそこからがスタートだ。

    何故、三五郎は『永送り』を逃れられたのか。
    三五郎を斬ることが出来なかった刺客の「仁」は、その後どうなったのか。
    替え玉として斬り捨てられた川原乞食の、ふたりの子どもたちのその後は。
    三五郎は、石工仲間の家族から恨みを買うことになるが、どう対処したか。

    登場人物も多く、複雑な絡みも見せ、でもしっかりと底辺に流れるものは変わらない。
    江戸時代の土木工事の描写も読み応えじゅうぶん。
    死ぬことよりも生きることを選んだ三五郎の、ひたむきな生き方にはただもう賞賛である。
    何が彼を生かし続けたか。
    失う一方の人生で、何故そこまで精一杯生きられたのか。
    ひとの心に橋を架けたかったから。そうに違いない。

    読み終えてから、三五郎の弟子たちが築いたという『二重橋』や『万世橋』『日本橋』などを検索して、しばしその画像に見惚れていた。
    誰もが知る歴史上の偉人などではなく、【民】の真摯な生き方を描いた小説として、まさに白眉。
    すべての方におすすめ。

  • 確かな技術で作られた石のアーチ橋。名こそ刻まぬが心意気はしっかりと刻まれ、そしてそれは受け継がれて行く。そんな肥後の石工三五郎。人間臭さがたまらなく良い。彼の意思やら技術を受け継いだ弟子たち。日本橋、江戸橋、万世橋など、彼らがかけた橋を見ることでその受け継がれた物に触れられる気がする。肥後の石工の息吹を東京で感じられるのかと思うと、何だかわくわくする。

  • 実在の人物に架空の人物を織り交ぜた時代小説。
    江戸時代は、百姓や下々の命を何とも思わない武士に支配されている事がよくえがかれていました。
    それにしても岩永さんが居たから、これだけの橋が伝えられてきたんですよね。
    生きていてくれて良かった。
    作者も書いている通り、ちょっとしたことで運命が変わること、あるんですよね~。
    命は大事にしなくては!

  • 実際にあった出来事を基にした創作。
    理不尽さに腹が立ちつつ、そういった時代が本当にあったのだと思うとやりきれない思いがする。
    三五郎が周囲の目に苦しみながらも自分の技術を伝えなければ‥と思うところが職人の強さだなあと思った。
    最後はきちんと幸せな状態になってよかったが、実際はどうだったのか…。江戸時代は穏やかなイメージがあるがこういう一面があることも知っておかなければならないと思った。

  •  鹿児島の甲突川にかかる石づくりの橋。この橋を作った石工たちは、橋の秘密を守るために「永送り」にされた。石工の親方三五郎をきるように命じられた徳之島の仁は、三五郎と話をし彼を切ることはできないと河原にいたこじきを切りその首を鹿児島に持ち帰る。三五郎は、自分の身代わりに死んだこじきの子、吉と里を連れ、種山の村へ帰りついた。一人生き残った三五郎。石工であった父をなくした宇吉もぴたりと来なくなった。三五郎は、幼い吉に先祖から受け継いだ石工の技術を伝えていこうとする。

  • これは、もっと早くに読みたかった!という作品。(そう感じたのは久々)

  • 光村の教科書で6年生向きに紹介された本。時は江戸。薩摩藩では、橋をかけるために肥後の種山村から優秀な石工たちをよびよせた。だが、完成のあかつきには、その橋の秘密を守るため、職人たちはは密かに殺されていく。一人難を逃れ、里に帰った三五郎の胸中はおだやかであるはずはない。身代わりに殺された乞食のこどもを里へつれかえるが。

  • 現代っこたちに読んできかせるには、注が必要だなぁ……

  • 江戸時代末期、熊本の緑川に美しいアーチ型の霊台橋が築かれた。
    その石橋づくりに,岩永三五郎ら石工たちが力をつくした。しかし、橋を完成させた後、三五郎の他の石工たちは、藩の命令によて殺されたのだ。
    三五郎を殺す命令をうけた侍は、橋をかけただけの石工に罪はなく、殺せないと、三五郎を生かした。変わりに乞食を殺して・・・。
    三五郎は、仲間の石工が亡くなったのに自分だけが生かされたこと、乞食が身代わりになったばかりに、その乞食の子どもたち姉弟がみなしごになってしまったことに心を痛めながら、里に帰る。
    つらい出来事とたたかいながらも、命をかけてその技術を弟子たちに伝えた名職人・岩永三五郎の物語。

    骨太な時代小説。

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著者プロフィール

●児童文学作家。1923年大阪府生まれ。早稲田大学仏文科卒業。在学中から早大童話会に属し、児童文学を志す。主な児童文学に『肥後の石工』『浦上の旅人たち』『光と風と雲と樹と』。そのほか絵本に「源平絵巻物語」シリーズ、『土のふえ』など。日本児童文学者協会賞、野間児童文芸賞、小学館文学賞、芸術選奨文部大臣賞など受賞多数。1992年紫綬褒章を受章。2004年逝去。

「2017年 『ヘレン・ケラー自伝 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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