肥後の石工 (岩波少年文庫 078)

  • 岩波書店 (2001年2月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784001140781

みんなの感想まとめ

歴史と人間ドラマが交錯する作品で、主人公の三五郎は、江戸時代に実在した石工として、命を懸けて橋を築く姿が描かれています。彼は、薩摩藩の命令で築いた橋に隠された秘密を守るため、仲間たちが「永送り」と呼ば...

感想・レビュー・書評

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  • 中2の夏休みに読んだはずなのに、読み応えのある本だったなぁという程度の記憶しかない。
    たぶん当時の私は、この本の価値を何一つ分からなかったのだろう。
    今この年齢で再読して、ここまで深く感動できる歴史小説だったことを知り、改めて驚いている。
    1966年第6回日本児童文学者協会賞受賞作品。
    ほかにも第4回NHK児童文学奨励賞、第4回国際アンデルセン賞国内賞を受賞している。
    さもありなん、である。涙なくして、とうてい読み終えることは出来ない名作。

    主人公は江戸時代後期に実在した「肥後の石工」岩永三五郎。
    薩摩藩に招かれ、甲突川五石橋などを築いた史実を基にして著された児童文学。
    築かれた橋には秘密があり、中央の石ひとつをはずすと簡単に取り壊せる仕組みがそれ。
    敵が攻めてきたときに、橋を落として城を守る仕掛けだったと言う。
    この秘密を守るため、工事が終わると肥後の石工たちは全員『永送り』になったらしい。
    『永送り』というのは、ひと目につかないように刺客をつかわして国境で斬り捨てることだ。
    主人公の三五郎は、石工たちの中でただひとり、それを逃れて家路に着いた。
    話はそこからがスタートだ。

    何故、三五郎は『永送り』を逃れられたのか。
    三五郎を斬ることが出来なかった刺客の「仁」は、その後どうなったのか。
    替え玉として斬り捨てられた川原乞食の、ふたりの子どもたちのその後は。
    三五郎は、石工仲間の家族から恨みを買うことになるが、どう対処したか。

    登場人物も多く、複雑な絡みも見せ、でもしっかりと底辺に流れるものは変わらない。
    江戸時代の土木工事の描写も読み応えじゅうぶん。
    死ぬことよりも生きることを選んだ三五郎の、ひたむきな生き方にはただもう賞賛である。
    何が彼を生かし続けたか。
    失う一方の人生で、何故そこまで精一杯生きられたのか。
    ひとの心に橋を架けたかったから。そうに違いない。

    読み終えてから、三五郎の弟子たちが築いたという『二重橋』や『万世橋』『日本橋』などを検索して、しばしその画像に見惚れていた。
    誰もが知る歴史上の偉人などではなく、【民】の真摯な生き方を描いた小説として、まさに白眉。
    すべての方におすすめ。

  • 1965年に刊行された本なので60年近く経っている。
    日本の児童書の中ではこれほど長く売られ続けている本はそうそうないので、名作なのだろうと思うが、実際にこの本を読んでいる小中学生を見たことがないのもまた事実である。
    私の子どもの頃にも学校図書館にあったことを記憶しているが、タイトルといい表紙の絵といい、あまりに子どもの好みから外れていて、読みたい気持ちにならず、読まず。(結構読書好きな子どもだったにもかかわらず。)幾星霜。
    数十年前の子どもですら読みたいと思わなかったのに現代の子どもが読むのかとは思うが、同じく敬遠していた『TN君の伝記』も良かったし、これもやはり良いのではないかと読んでみた。

    いや、立派な作品でした。

    時代小説だが、ちゃんと児童文学であるし、だからといって子どもを「未熟な読み手」とバカにしているようなところは一切ない。本当に高い志を持って書かれた児童文学である。

    現代的な目で見れば徳之島の仁の生い立ちや宇助の複雑な思いをもっと詳しく書いた方が物語が盛り上がったのではないかなとも思うが、そうなると長くなるし、やはりこれくらいまとまっていた方が児童文学として読みやすいだろう。
    宇助と里の恋愛なんかも現代なら書いたかもしれないが、そこも昭和の児童文学、さっぱりしている。

    人物と物語が上手く絡み合い、飽きさせない。
    歴史に名を残すことはなかったが、私利私欲ではなく人のために、また贖罪のために立派な仕事をのちの世に残した三五郎、父を殺され流浪して奴隷労働に身をやつす里と吉(「山椒大夫」のイメージ)、貧しさと両親を殺された恨みから刺客となった徳之島の仁という主要人物がとても鮮やかに描かれている。

    巻末の「あとがき」の、作者自身の戦争中の経験と「三五郎を書くことによって私は、自分の意志とは関わりなく何ものかによって生かされている命というものを、もう一度生き直してみたいと思いました。」(p239)という言葉も心に響く。実際に戦争を経験した作家の作品を読むという経験も今はめったにないので、本当に貴重だと思う。

    まあなかなか子どもにすすめるのは難しいかもしれないが、読めそうな子どもにピンポイントで紹介するのもいいかもしれない。
    絵も、もうこれはこれしかない、という気がする。イマドキのイラストだったら興醒め。

  • 自分の意思と関係なく命を救われた三五郎、
    救われず死んでいった弟子たち、
    生きるために人斬りをしてきた徳之島の仁、
    理不尽に父親を殺されたこじきの子どもたち、吉とお里。
    
    あまりに悲惨な運命が重なり合いながら、肥後国での橋造りが始まります。
    希望なのか罪滅ぼしなのか分からない。故郷で白い目で見られながらも、自分の技術を受け継ごうとする三五郎の職人魂が美しい。
    果たして三五郎の命をかけた橋は完成するのか…。 時代小説とはいえ、歴史あるものすべてが、いかに多くの人々の涙や魂で造られているのか思い知らされました。
    児童書侮ることなかれでした。

  • 素晴らしい本だった。子どもにも読めるように書かれた歴史小説である。こういう本を遺していかなければならないと思う。
    肥後といえば九州だが、そこで江戸時代に石橋を作る石工たちの話である。ここに出てくる橋は今も使われているので、ある程度事実に基づいた小説だと思われる。
    城へアクセスするための橋を建築するために動員されて、軍事上の秘密の口封じのために殺された石工たち。そのうちのリーダー三五郎だけが身代わりになった乞食のおかげで生き延びた。地元に帰ってまた石工として働きながらも、乞食の子どもたちの世話もする。肥後の川に橋を架けることになり、岩が崩れないような組み方をする眼鏡橋を設計する。殺されたほかの石工の息子や、殺し屋までも一緒に作業に没頭するが、スパイ容疑で逮捕されてしまう。
    登場人物が皆いい人ばかりで、苦しく切なくやりきれない状況にも希望が残る。三五郎はも腕のいい技術者でありながら謙虚で、応援したくなる。
    児童書ジャンルの本は普段あまり読まないのだが、子ども向けということもありストーリーに無駄が無く、とても分かりやすい。周りの人に薦めたい一冊である。

  • 何年か前に友人から薦められていた本。
    やっと読めた。

    お城に架けられた橋の秘密。
    その秘密が外に漏れないよう関わった
    石工たちは、、

    石で橋を架ける技術。
    めがね橋は色んなところで見ることが
    できるけれど、いつか熊本のめがね橋
    もこの目で見てみたい。

  • 教科書「一つの花」でおなじみの今西さんの作品。
    江戸時代後期に石造りのめがね橋を架けるために尽力した人々のドラマ。
    主人公、岩永三五郎の職人としての気持ち、薩摩に呼ばれた後に❮永送り❯されてしまった同僚たちの家族への贖罪の気持ちへの、揺れる感情が苦しい。
    人斬りの徳之島の仁(なんという名前、なんという人生、しかも子供時代の作者に身近な大人がモデルになったという)、宇吉、里と吉、みんなの思うままにならぬ、それでも生き抜く強さに感心させられた。

    橋をつくるために奔走する、庄屋や、総庄屋、その上の役人たち、それぞれの胸のうち。

    九州の山のなかで、こっそり京の大商人に通じながら、ロウやハゼの密造、密売で儲ける豪商がなんだか怖い。

    作者のあとがきにも、心が揺さぶられた。
    たまたま、生き残ったという戦中の体験が、三五郎のなかに生きているのだろう。
    現在では、三五郎の手による、これらの素晴らしい橋は、人の手によって失くなってしまった、とサラリと締められる一文。
    悲しい、寂しいことです。

  • 有名すぎて今まで読まなかった児童文学である。薩摩に橋を架けに行った石工がその秘密を守るために殺される。その頭のみが殺し役の武士から逃がされて、熊本に戻って石橋を架ける話である。そこには自分の身代わりとなった乞食の娘と息子、殺し役の武士のその後、自分の弟子など様々な人々が描かれている。ほるぷこども図書館選定委員推薦図書に選ばれている。朝日新聞の文学紀行の熊本県で紹介された本である。たまにはこうした児童書も選んでいる。

  • #肥後の石工
    #今西祐行
    #岩波少年文庫
    #児童書
    #読了
    「一つの花」で有名な今西祐行さんの作品。時代小説。難しかったが、ふしぎな魅力で読破。実在する人物と架空の人物が混じる。 なぜ自分は殺されなかったのか、殺された人の家族に恨まれているのでないかと悩みながら生き、橋をかけ続けた三五郎。

  • 司書に課された必読書の中でなかなか手が出せないでいましたが、外出先での待ち時間に読むために文庫本を、と持って出かけたのがよかった。

    長崎の眼鏡橋、皇居の二重橋を見たとき、架けた人たちのことまで考えが及ぶことはありませんでしたが、また見る機会があれば、また見る目が変わりそうです。

    高学年からおすすめ。

  • 努力がわかります。

  • 実際にあった出来事を基にした創作。
    理不尽さに腹が立ちつつ、そういった時代が本当にあったのだと思うとやりきれない思いがする。
    三五郎が周囲の目に苦しみながらも自分の技術を伝えなければ‥と思うところが職人の強さだなあと思った。
    最後はきちんと幸せな状態になってよかったが、実際はどうだったのか…。江戸時代は穏やかなイメージがあるがこういう一面があることも知っておかなければならないと思った。

  • 初めて読んだ岩波少年文庫。

    肥後から薩摩に送られた岩永三五郎と石工たち。ほとんどが戻ることなく、皆、永送りにされた。
    真実を隠しつづけながらも、数多くの職人を育て上げ、石型のアーチ橋をつくり続けた三五郎の生き様に涙した。

    誰かの死によって生かされ続けるのは、幸運かもしれないが、辛くもある。

  • 2001 岩波少年文庫 078

  • 実際にいた石工のエピソードを題材に、永送り(軍事上の秘密のために密かに殺されること)された石工と生き残った三五郎の苦悩、代わりに殺されてしまった男の娘と息子が織りなす物語です。前回読んだ「浦上の旅人たち」もそうでしたが、引き込まれるように読んでしまいました。美しい文章が、不条理の中で一生懸命生きる登場人物を光らせているように感じました。

  • 小4の子供が学校の図書館で借りてきて、面白いよ!と勧めてくれた。
    実在の人物を元にした物語。当時の生活や橋を掛ける苦労が伝わってきて最後まで一気に読むことができた。
    敵が攻めてきた時に壊すための橋、暴れ川に掛ける、生活に必要な橋。石工達は黙々と山から石を切り出し、重力とのバランスを計算して石を積む。人力で橋を作るのにどれだけの労力と犠牲があったことだろう。
    橋の秘密を守るために完成後侍に殺された石工もいたという。親を殺され辛い思いをした兄弟も、最後は救いがあって本当に良かった。

  • 確かな技術で作られた石のアーチ橋。名こそ刻まぬが心意気はしっかりと刻まれ、そしてそれは受け継がれて行く。そんな肥後の石工三五郎。人間臭さがたまらなく良い。彼の意思やら技術を受け継いだ弟子たち。日本橋、江戸橋、万世橋など、彼らがかけた橋を見ることでその受け継がれた物に触れられる気がする。肥後の石工の息吹を東京で感じられるのかと思うと、何だかわくわくする。

  • 実在の人物に架空の人物を織り交ぜた時代小説。
    江戸時代は、百姓や下々の命を何とも思わない武士に支配されている事がよくえがかれていました。
    それにしても岩永さんが居たから、これだけの橋が伝えられてきたんですよね。
    生きていてくれて良かった。
    作者も書いている通り、ちょっとしたことで運命が変わること、あるんですよね~。
    命は大事にしなくては!

  •  鹿児島の甲突川にかかる石づくりの橋。この橋を作った石工たちは、橋の秘密を守るために「永送り」にされた。石工の親方三五郎をきるように命じられた徳之島の仁は、三五郎と話をし彼を切ることはできないと河原にいたこじきを切りその首を鹿児島に持ち帰る。三五郎は、自分の身代わりに死んだこじきの子、吉と里を連れ、種山の村へ帰りついた。一人生き残った三五郎。石工であった父をなくした宇吉もぴたりと来なくなった。三五郎は、幼い吉に先祖から受け継いだ石工の技術を伝えていこうとする。

  • これは、もっと早くに読みたかった!という作品。(そう感じたのは久々)

  • 江戸時代末期、熊本の緑川に美しいアーチ型の霊台橋が築かれた。
    その石橋づくりに,岩永三五郎ら石工たちが力をつくした。しかし、橋を完成させた後、三五郎の他の石工たちは、藩の命令によて殺されたのだ。
    三五郎を殺す命令をうけた侍は、橋をかけただけの石工に罪はなく、殺せないと、三五郎を生かした。変わりに乞食を殺して・・・。
    三五郎は、仲間の石工が亡くなったのに自分だけが生かされたこと、乞食が身代わりになったばかりに、その乞食の子どもたち姉弟がみなしごになってしまったことに心を痛めながら、里に帰る。
    つらい出来事とたたかいながらも、命をかけてその技術を弟子たちに伝えた名職人・岩永三五郎の物語。

    骨太な時代小説。

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著者プロフィール

●児童文学作家。1923年大阪府生まれ。早稲田大学仏文科卒業。在学中から早大童話会に属し、児童文学を志す。主な児童文学に『肥後の石工』『浦上の旅人たち』『光と風と雲と樹と』。そのほか絵本に「源平絵巻物語」シリーズ、『土のふえ』など。日本児童文学者協会賞、野間児童文芸賞、小学館文学賞、芸術選奨文部大臣賞など受賞多数。1992年紫綬褒章を受章。2004年逝去。

「2017年 『ヘレン・ケラー自伝 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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