あしながおじさん (岩波少年文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140972

感想・レビュー・書評

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  • 数十年ぶりの再読。おもしろいーーー!

    17歳のジェルーシャ・アボットは、生まれてから孤児院暮らしで他の生活を知りません。引き取り手も現れなかったので孤児院の手伝いをしています。
    第一水曜日は憂鬱。だって評議委員のお偉い方々が個人を視察に来るんです。一番年上のジェルーシャは、何もかもを整えなければいけません。
    でもその第一水曜日は違いました。ジェルーシャのユーモアたっぷりの作文を読んだ匿名の評議委員が彼女を気に入り、大学で学ぶ資金を全部出し、将来は作家になる手助けをしたい、と申し出たというのです。
      突然降って湧いた将来への扉!
    この評議員の条件は「手紙で近況を知らせること」。そこでジェルーシャ(ジョディ)は匿名の恩人を「あしながおじさん」と呼びかけて手紙を書きます。

    ===

    これは大人が読んで非常に面白い。
    まずはジョディの前向きさ。生まれてはじめて孤児院から出たジョディには新鮮かつ見慣れないことばっかり。同級生たちが当然知っている常識も全く知らない。周りから驚かれたり、最初は自分でも距離を感じるが、それはこれから学ぶことが多いことだということ。勉強も楽しい、親しくなった友達との交流も嬉しい、そしてなにより本に出会った!ジョディは毎晩染み込ませるように本を読む。
    このお話は大学の4年間だが、その間にジョディの考え方の成長ぶりや自立心が伺える。孤児院にいたときは、自分の周辺のことが全世界で、世界の広さを考えることはなかった。でも人と会話をして考えが深まることに喜びを覚えていく。
    気の合う友達のサリー・マクブライトとその家族は、ジョディにとってごく普通のだからこそ素敵な家族だった。サリーの兄のジミーやその学友とは、大学生グループ男女として楽しく過ごす。
    お嬢様育ちのジュリア・ラトリッジ・ペンドルトンとその親族は…あまり好きになれない。自分が恵まれているのが当たり前で何かを深く考えようとはしないから。でもその一族のジャーヴィーおじさま(ジャーヴィーぼっちゃま)だけは素敵な男性で、話も合う。ジョディはジャーヴィーとの話で社会への考えが広がっていく。

    ときには嫌なこともあり、こっそりと嫌いな人を嫌いと言っているところもある。はっきり書かれないけれども孤児院時代の酷い扱いや、またこの時代の男尊女卑社会が垣間見えることもある。そして明るいジョディだが捨て子で孤児院育ちという自分の生まれ育ちを人に知られたくないという気持ちの強さも感じられる。
    ジャーヴィーぼっちゃまと気が合ったのも、男性主権で貧富や階級の差のあることに疑問を持ち、女性だって公民であり、仕事と家庭を両立したっていいじゃないか、という考えに同調し、自分たちで社会を変えよう、改革者になろうという同じ方向を向き合うことができるからだ。

    しかしそんな嫌なことや不合理なことがあるにしても、ジョディにとって毎日はキラッキラで、真っ直ぐ。自分が援助した少女からこんな手紙をもらったらそりゃー嬉しいよなあという、自分が「あしながおじさん」の気分。
    手紙には挿絵も描かれているのだが(著者のウェブスター直筆)これがまた味があっていい!
    <人の人格が求められるのは、人生で大きな問題が起こったときなんかじゃありません、誰だって、危機に直面したら、ぱっと立ち上がり、勇気を持って、悲劇に押しつぶされそうになっても乗り越えようとします。でも、日々のくだらない、つまらない出来事に、笑いを持って当たることーそれにこそ、精神力が必要だと思うんです。P77>
    <人生で最も大切なものは、はなばなしい大きな喜びなんかじゃありません。ささやかな喜びの中に、多くの楽しみを見つけるkと尾がとても大事なんです。ーあたし幸せになるほんとうの秘訣を見つけました。おじさん、それはね、今を生きる、ということです。P206>

    そして「あしながおじさん」。
    ※※※以下、「あしながおじさん」の正体がわかるような記載をしていますので、読んでいない方はお気をつけください。※※※



    最初は反骨精神のある「あしながおじさん」が、孤児院に世話になっているのにユーモラスたっぷりにしかし辛辣に孤児院生活の内情を書いた作文に「おもしれー女」として興味を示しただけで会うつもりはなかったのかもしれない。それが手紙のやり取り、たまたま実際に会ってみたらどんどんと…ということなんだろうなあ。
    私は彼が何者か知っていて読んでいるので、ジョディの手紙を読みながらも、彼がどんな気持ちで手紙を読んでいるのか、実際に何をしたのかが分かってまたまた面白い。さらになかなかのプレゼント攻撃仕掛けているし(笑)。
    たまに「あしながおじさん」はジョディに行動を規制するかのような態度に出る。ジョディは楽しみを奪われた気持ちから、または自立しなければいけないという気持ちから、「あしながおじさん」に反発を見せる。
    …でも読者は知っている。それは一心に勉学に励めというのではない、ただただヤキモチを焼いているんだよ(笑・笑・笑)


    しかし明るいジョディは、けっしていつまでもくよくよしたり恨み言を言ったりはしない。
    知り合った人たちの影響もあり徐々に社会での自分のあり方、考え方、将来のことを決めてゆく。

    そして最後は素敵な出会いとなるわけで。
    物語の最初は「憂鬱な水曜日」で、最後は「幸せな木曜日」になる。
    水曜日は終わった、これからは自分たちで作る新しい日々。

  • あまりにも有名な少女小説の古典。
    でも子供の頃は退屈で読み切れず、最初の数ページで挫折。
    成長の段階にふさわしくない選書だったと思いこんでいたが、
    今回それさえも間違いだったと気づかされた。
    これは、大人の読み物なのだ。

    全286ページ中、始めの20ページだけ孤児院が舞台で、
    残りはすべて主人公・ジュディからの一方通行の手紙。
    その手紙の奥に見える繊細な心の動きは、大人でなければ
    想像もできないだろう。
    つい微笑んでしまうほど高揚していたり、怒りにまかせて書いていたり、
    感謝感激雨霰(昭和な表現です・笑)だったり、取り付く島もないほど
    事務的だったり、とりとめもないお喋りだったり、更にはラブレターだったり。
    ありとあらゆるタイプの手紙が登場して、そのどれもがジュディの心模様を
    あらわしている。
    この作品の魅力は、とにかくそれに尽きると言っても良いほど。

    シンデレラストーリーと取ることも出来るし、恋愛小説ととることも出来るが、
    見えない相手であるにも関わらず誠実さを貫き通し、自己憐憫などという
    甘い感情に溺れることもない凛としたジュディは、やはり玉の輿に乗るだけの
    素晴らしい資質を備えていたのだろう。
    そんなわけで、読後はとにかく爽やかで清々しい。
    こうありたいものだなぁと思う、そんな主人公の姿なのだ。
    このあたりが、100年以上前の作品でも支持される理由かもしれない。

    時代がかった表現がところどころ登場して、そこも楽しい。
    『私は社会主義者になります』とか『女性は公民ですか?』とかね。

    そして、作者自身の手によるという挿絵は、驚くほど下手くそで笑える。
    アニメやゲームで育った子どもとは違うのだもの、まして100年も前だし。
    そう思っても、これは笑うしかない。
    香り高い古典の、ひとつのご愛嬌ってことで。

    • mkt99さん
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      たびたび失礼いたします。

      本の内容に関係ない話で『あしながおじさん』にもたびたび失礼い...
      nejidonさん、こんにちわ。(^o^)/
      たびたび失礼いたします。

      本の内容に関係ない話で『あしながおじさん』にもたびたび失礼いたします。(笑)

      いつも映画のご紹介をいただき誠にありがとうございます!m(_ _)m
      『虹をつかむ男』は第一作を観た記憶があります。
      確か、VHS発売当初にレンタルビデオで観ました。
      そう西田敏行さんが主演なんですよね。そして、諏訪家の面々が同じような役回りで出演していたのをはじめとして、『男はつらいよ』の続編のような登場人物とストーリーで嬉しかったような気がします。(笑)映画への想いが詰まった作品でもありましたね。確か、西田敏行さんはカウボーイ・ハットのような帽子をかぶっているんですよね。(^o^)
      このまま、ずっと続編が作られるのかなと思っていたら、西田敏行さんは『釣りバカ日誌』の方に移ってしまって、これで本当に山田洋次の「寅さん」的な世界の映画が無くなってしまったんですよね。やっぱり二番煎じ感が強かったのですかね・・・。まさに言われるように「寅さん」へのオマージュのようなしみじみとした良い映画でした!(^o^)

      これからもいろいろと面白い映画を教えてください。ありがとうございました。
      そして、『あしながおじさん』、すみませんでした。(笑)
      2015/07/10
    • アセロラさん
      ご無沙汰しております。
      nejidonさん、そんな大変な事になってたんですね…。どうぞ、ご自愛くださいませ。
      最近はメインが読書メーター...
      ご無沙汰しております。
      nejidonさん、そんな大変な事になってたんですね…。どうぞ、ご自愛くださいませ。
      最近はメインが読書メーターになってしまっていますが、
      ブクログも大切な場所なので続けていきたいですし、
      nejidonさんの素晴らしいレビューが拝見できるのは嬉しいです。

      さて、『あしながおじさん』なんですが、もう大好きです(笑)
      確かに、大人になってから読んだ方が、より面白いかも。
      孤児院から大学という広い世界に飛び出していき、いろんな出来事、いろんな人間、いろんな感情を知っていくジュディが良いですよね。
      彼女が読書もするようになり、既存のタイトルが次々と出てくるのも楽しいです。
      『嵐が丘』は、ジュディのおかげで知りました。

      大人になってから読んだら面白いのは、
      続編にあたる『続あしながおじさん』もそうで、こちらの方がもっと好きです(笑)
      ジュディの親友のサリーが主人公で、ジュディの育った孤児院を改革していくのが爽快ですよ♪
      2015/07/27
    • nejidonさん
      アセロラさん、こんにちは♪
      お気に入りとコメント、ありがとうございます!
      またこちらでお話できて嬉しいです。
      私の方は、まだまだ治るま...
      アセロラさん、こんにちは♪
      お気に入りとコメント、ありがとうございます!
      またこちらでお話できて嬉しいです。
      私の方は、まだまだ治るまで時間がかかりそうです。
      とりあえず病院をさぼってはいませんのでご安心くださいね(笑)

      おお、この作品をお好きでいらしたのですね!
      私も、読んでみて良かったと思う本です。
      アセロラさんのコメントで、再読したいと
      思いましたよ(笑)
      本当に、このジュディという少女が生き生きとして魅力的で、
      「おじさん」でなくてもいつの間にか好きになってしまいますよね。
      皆の知ってることを知らなくても、皆の出来ることが出来なくても、
      僻んだり妬んだりする必要など何もないんだ、これから覚えれば
      いいんだものという、爽快な心掛けが大好きです。
      大人になった今読んでも、学ぶ部分が多かったですよ。
      そうそう、続編もあるんですよね。
      未読ですが、アセロラさんのおすすめなら、ぜひ読んでみたいです。
      「嵐が丘」もいいですよね。ああ、そちらもまた読みたくなりました!
      2015/07/27
  • 有名な有名なあしながおじさん。
    昔、世界名作劇場で姉が気に入って見ていた記憶があるけど、当時の私にはあまり刺さらなくて。多分主人公のジュディが、当時の私から見て「大人」だったからだろうな。
    読むこともないままアラフォーになった私ですが、はじめて手に取ってみました。
    なぜか?上白石萌音さんのダディ・ロング・レッグズ(ミュージカル)を見たかったからです。チケットが取れませんでしたけど。

    前置きが長くなったけど、これはほぼ全編がジュディの「あしながおじさん」への手紙で構成されています。
    孤児院で育ったジュディは、あしながおじさんこと「スミス氏」の厚意により大学に通えることになる。
    ジュディは前向きで明るく、何事にも積極的な子。大学でもたくさんのことを学び、経験して成長していく。
    でも、友達にも自分が孤児院育ちであることを隠していたりして、彼女なりに心に影があるんだろうな。
    ジュディが、勉強の楽しさに目覚めていくところは、私も読んでて嬉しくなった。
    勉強って本来楽しいものなんだよね。私は学生時代は楽しくなかったけど、今になってみて、自分が知らないことを知ることの楽しさを痛感してる。ジュディにとても共感した。
    ジュディは、様々な本を引用しながら、たくさん良いことを私に教えてくれた。
    「この世には実にたくさんのものがある。だからわれわれは、王様のように幸せなはずなのだ。」その通りだ。世の中には幸せがたくさんある。それを素直に受け取ることが、幸せになる秘訣だ。でも、普段の生活では意識してないとそんな前向きな気持ちになれないんだ。
    ジュディの言葉ならすぅっと受け入れられたのに、自分で自分に言い聞かせようとしても、うまく受け入れられないんだ。
    だから、この本は世界中多くの人達の「心の友」であり、バイブルなんだろうな。
    私も、今後気持ちが落ち込んだ時、心の中でジュディに会いたくなるだろうな。ジュディに会ったら元気もらえるから。

    著者のジーンさんは、出産後すぐ亡くなられたらしい。
    こんな楽しい物語を書ける人、子どもが生まれた後の楽しい人生も色々想像していたに違いない。
    人生って何があるか分からないな、と思った。
    だからこそ、この世の幸せを日々受け止めて、楽しく生きていきたいものだ。

  • 子ども向けに簡略化された児童書ってまだあるのかな?あれ本当になくしてほしい。この作品はそれのせいで概要だけ知って、知った気になってた。全然わかってなかった、この作品の肝は、ジュディの書いた手紙なのに!10代で出会いたかったーでも10代じゃまだ理解できなかったかな?今読むからこの心の機微がわかるのかな、10代の私に読めー!と叫びたいセリフの数々。
    あり得ない出来事として作中で挙げられたのは、日米開戦と米大統領暗殺。その2つが歴史の1ページにきざまれてしまった今読んでも、こんなに色褪せないジュディの魅力。女の子の自立について、最近とくに考えるようになっていたので、ちょうど良い時期に読めました。

  • 再読、懐かしかった。
    孤児院から大学へ行けることになって、周りにどんな人がいようと自分らしく過ごして自立していく姿が眩しかった。ワクワク感が強い。
    選挙権の話など、お堅い言葉じゃない形で風刺がきいていて、今この歳で再読してまた別の印象を持った。

  • あらすじは知っていたはずなのに、いつの間にか引き込まれてなかなか読み進めなくてじっくりと読んでしまいました。
    ラブレターは特によかった。
    小学生だと、なかなか進まない話にイライラするかもしれない。

  • 「あしながおじさん」が、純愛物語だったとは!ユーモアがあって飽きないし、主人公の気持ちになって、一喜一憂しながら読み進めることができた。時代背景から、女性に選挙権をなどなど、作者の願いも込められている。
    韓流ドラマやガラスの仮面(漫画)が好きな大人にぜひお薦めしたい。

  • ごちそうさまでした!!
    これだよな、これだよな、ほんを読む楽しみってこれだよねえ。
    こんなの児童書じゃない。エブバデセー、スミスシツルハゲ。
    女子の夢が全部つまっている。アメリカ/かなり年上/金持ち/ばらのつぼみの花束/寮/カレッジ/プレゼント/牧場/ワッフル/ニューヨーク/小説家





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    c8397¥720E.


    あしながおじさん
    岩波少年文庫 097.

    訳者:谷口由美子(たにぐち ゆみこ)
    発行所:株式会社 岩波書店

    NDC:933.

    裏表紙より
    孤児のdジュディは、名前を名のらない人物の援助で大学に入ります。そのひとを「あしながおじさん」と名づけたジュディは、楽しい生活ぶりをせっせと手紙に書いて報告します。ユーモアとあたたかい愛が全般にあふれる永遠の名作。
    -----------
    作者さんについて メモへ

    もくじ
    「ゆううつな水曜日」
    ジェルーシャ・アボット嬢から、あしながおじさんスミス氏への手紙
    訳者あとがき
    さし絵:ジーン・ウェブスター
    ---------------
    手にした理由
    子どもの頃、挫折した本。岩波少年文庫、立ち上げの5冊のうちの1冊で、宝島が読めたので(そこそこ楽しめたので)こちらにも手を出してみた。今度は、読めるかしら・・?
    ---------------

  • あしながおじさんの正体がまさかだった
    ぼんやりとも覚えていなかったからきちんと読み終えることが出来て良かった
    楽しい一冊

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著者プロフィール

ジーン・ウェブスター

「2004年 『あしながおじさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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