- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001141221
感想・レビュー・書評
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名探偵カッレくんの協力により、3人の泥棒が逮捕されたあの夏から1年経った。
カッレくんはいまでも”名探偵”として周囲の観察を怠らない。しかしあんな冒険はこの田舎町ではもう起きないだろう。それならこの夏を満喫しよう。
アンデスを隊長とし、カッレ、エーヴァ・ロッタから成る「白バラ軍」と、シックステンを隊長とし、ユンテ、ベンカで成る「赤バラ軍」の闘い。この神聖な戦いは千年も前から続き、自分たちは名誉ある戦士なのだ!
今両軍が争っているのは赤バラ軍が所有する『聖像』を巡る争いだ。一見ちょっと変わった形のただの石だけど、両軍が命がけの闘うに相応しい物だ。
この『聖像』を巡り両軍は、草地を掘りまくり、誰かの裏庭を駆け抜け、余所んちの屋根によじ登り、どっかの家のベッドルームで一時退避し、危険極まりない敵陣地に忍び込んでの大活劇を繰り広げる。
しかしこの夏は、いつもの冒険とは違った方向に行く。
『聖像』争奪戦の最中に、エーヴァ・ロッタが、高利貸しじいさんの死体を見つけたのだ…。
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1作目は泥棒だったのが、2作目は殺人事件。
さすがに元気なエーヴァ・ロッタがショックを受けたりカッレも探偵こっごの無力さを感じたりするので、
子供のころに読んだときは、もっと深刻な雰囲気の印象を受けていたのですが、
今大人になって読み返したら殺人事件のショックさから立ち直るだけの強さと輝きを感じました。しかし殺された高利貸しの老人のことを忘れるわけではありません。ちゃんと自分には家族や友人や、大切なものが側にいると分かっているのですね。
2巻目になると町の様子や、少年たちの家庭事情も分かってきます。
町には表通りが一つと横道が一つ、祭りを行う大広場、ゴチャゴチャした横道や古い家があり、町外れには貧しい者たちが住む”おんぼろ丘”があり、魅力的な共有地である広い草原があります。
医者の息子ベンカは町では上流の方でしょう。
町中に住むカッレ、エーヴァ・ロッタ、シックステンは中流程度。
町外れに住み暴君の父親の元大勢の兄弟と狭い家に住んでいるアンデスと、おんぼろ丘で狭い家に住むユンテは下流に近そうです。
しかし町の人たちは、上流者だからと言って下流者を馬鹿にはしていません。そんな大人たちをみている子供たちも環境の違いなど気にしません。
リンドグレーンが児童文学者として優れているのは、大人も子供も実に筋が通っていることだと感じました。
子供たちは、子供であることを満喫しています。だからバラ戦争も真剣です。
秘密基地にしている屋根裏部屋に入るには階段を上るなんて卑怯なことはしません。勇敢に縄を登ってこそです。
相手軍から何かを奪ったら、ちゃんとその隠し場所の暗号を教えなければいけません。
しかし自分が家族の一員であることはきっちり守るんです。絶妙に最悪のタイミングで親に手伝いを言いつけられても従い、どんなに遊びが佳境でも家族で囲む夕食には決して遅れません。
そのため相手軍から人質を取ったって夕食時になったら一時解放するのがルールです。しかし人質だってそのままバックれるなんてみっともないことはしません。食事が終わったら家を抜け出してちゃんと監禁部屋に帰ってきます。
正々堂々と戦ってこそ、神聖な戦争の名誉ある戦士です。
そしてそれを見る大人たちもちゃんと大人としての筋が通っています。
親たちは、ご近所さんの屋根に上り裏庭を横切る自分の子供たちに呆れながらも、自分もやってきたことだからと見守っています。
町の大人たちも、悪い子供だね!なんて叱ることもありますが、だいたいはそれも必要だと分かっています。
カッレたちとも仲の良い町のビョルク巡査は、彼ら探偵ごっこで本物の事件に首を突っ込むことは止めます。しかしカッレたちが本当に役に立つ操作をして、役に立つ情報を持っていれば子供の力を認めます。まさに大人でありながら子供時代も理解しています。
それに対して、1巻「名探偵カッレくん」に出てきたエイナルおじさんをみんなが「胡散臭い」と思ったのは、おじさんが子供に擦り寄るためのおべっかや嘘臭さを感じ取ったからです。子供同士の真剣勝負に「大人を連れて行けば勝てるからついて行ってやろうか?君たちも賢くなった方がいいよ」などとダサい提案をする、そんな大人は信用できません。
さて、結局今回もカッレたちの活躍で犯人は捕まります。
本物の殺人事件に遭遇し、それを実際に捕まえる警察の姿を見たカッレくんは「もう探偵ごっこは終わりだ」と言ってこの2巻は終わりますが…でもそれは間違いだよ、名探偵くん!次の(3巻の)事件はきみを逃がさないよ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カッレくんの2冊目の本
もう探偵ごっこは終わりだカッレは思った。
しかしある事件が起きたせいでそれは取りやめになった。
カッレはこの事件を解決できるのか?
探偵をやめてしまうのか?
それとも犯人に捕まってしまうのか?
面白かったです。
カッレくんはやっぱ長いね。 -
三人の何とも言えない友情がいいわ!
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ふつう続編はパワーが落ちるのにカッレくんシリーズに限っては全然違いました。
白バラ軍と赤バラ軍の戦争がますます面白くなってきてますし、何よりも白バラ軍の暗号が群を抜いて面白いです。
日本語に訳すのは大変だったでしょうねえ。
文句なく5つです。-
はじめまして。
かつて読んだリンドグレーンの本に共感できる人に出会えて嬉しいです。
是非3作目の「名探偵カッレとスパイ団」もお読みになっ...はじめまして。
かつて読んだリンドグレーンの本に共感できる人に出会えて嬉しいです。
是非3作目の「名探偵カッレとスパイ団」もお読みになってください。2012/08/14
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カッレくんの2巻目です。図書館で借りました。
薔薇戦争が文句なく楽しそうです。3対3できちんとルールに基づき争い合っているのが素敵ですね。これをいじめにしない辺りが素晴らしい。
大勢で多数をいじめるのは卑怯ですが卑怯と思わない子供たちだと
こういうゲーム感覚の続きで行ってしまうのかな、と。そう考えるとその気持ちもわかるような気がして怖いなと思いました。
それにしてもこの世の中に悪意を持った人間が存在すると言うことに気づくのは年を一気に2~3歳取ったような気になると言うのはわかる気がします。自分の良く知る町や人がいきなり知らない土地の全然知らない人に思えたり。悲しいことですが悪意と言うものに出会った時にそれを解決するのは時間でしかないのでしょうか。
恐怖を感じている人は恐ろしいことをする。と言うのも真実だなあと思います。この巻は何となく暗いお話に感じました。まあ現実に悪意を持った人がこれより凄惨な犯罪を犯すことを知っているからなのかな。 -
カッレくんがエーヴァ・ロッタの危険の合図に気づいて、それを赤バラ軍と協力して犯人を捕まえたのがすごかった。
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読んでいて、こ・こわい…と思った。平和な村に人殺しが現れて、人殺しとエーヴァ・ロッタは少しだけ接触した、というなら普通のお話。しかし、人殺しが砒素入りチョコレートをエーヴァ・ロッタに送りつけるところなど、ぞっとする部分もあった。エーヴァ・ロッタが落ち込んでいるところなど、少年小説にはない痛々しさがあった。
カッレ君の科学的知識にびっくり。最後の、クラーク兄さんと白バラ軍が出会うところは、はらはらした。子供たちの何にも負けない元気さが楽しかった。 -
カッレくんシリーズが、もっとたくさんあったらなあ。大好きです。
著者プロフィール
アストリッド・リンドグレーンの作品






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