名探偵カッレとスパイ団 (岩波少年文庫 123)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141238

感想・レビュー・書評

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  • カッレくん第三弾

    カッレくんたちはバラ戦争のために夜中にこっそり家を抜け出した。
    しかし誘拐の現場を見てしまう⁉︎
    エーバァ・ロッタは隙を見て助けようとして一緒に誘拐されてしまう⁉︎
    果たしてカッレくんは誘拐犯を捕まえることができるのか?それともできないのか?

    面白かったです。
    カッレくんって続きあるのかな?
    読みたいなー(笑)
    ドキドキしたりワクワクしたりで感情が大変だった(笑)
    リンドグレーンさんは良い本いっぱい書いてるよね。ぼくはそう思う。

  • カッレくんシリーズ3冊目にして最終巻。

    宝石強盗、高利貸し殺人の解決に協力した少年名探偵カッレくんだが、今は平穏な夏休みを満喫していた。
    アンデスを隊長として、カッレ、エーヴァ・ロッタから成る白バラ軍と、シックステンを隊長として、ユンテ、ベンカから成る赤バラ軍のバラ戦争は、夏になると再開された。その最中に白バラ軍3人は夏の間だけ町に来ていた工学博士のラスムソン教授と、5歳の息子ラスムスと知り合う。
    両バラ軍たちは、夜の城跡で決闘から墜落未遂事故…などの相変わらずの子供時代のスリルを楽しんでいた。
    しかし白バラ3人は、夜の城跡からの帰り道で、ラスムソン親子が妖しい男たちに誘拐される場面を目撃する。「坊やを不安がらせたくない」と咄嗟に誘拐犯の車に乗り込むエーヴァ・ロッタと、その車を必死で追跡するカッレとアンデス。
    そして誘拐犯のアジトの小島に辿り着く。
    カッレたちは犯人に見つからずに教授とラスムスを助けられるのか?!

    ***

    誘拐事件ではありますが、目的が教授の発明した軍需工業研究であったり、
    カッレ達がいなければ教授親子は外国に連れ去られ軍事研究をやらされたり殺されたであろうという背景を考えるとかなり深刻な事件です。
    そんななかでも、カッレとアンデスが島の中に犯人たちに見つからない隠れ場所を作ったり、
    無邪気な少年ラスムスに愛情を覚える誘拐犯グループの一人のニッケがいたり、
    そのニッケを困らせるエーヴァ・ロッタや少年ラスムスの姿は少年冒険譚として楽しい場面となっています。
    白バラ軍3人や教授、ニッケは皆で少年ラスムスに「これはゲームだ」と思わせようとしていますが、映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を思い出して何とも切ない気分になりました。「カッレくん」は児童文学だから最後は助かるのは分かっているけれど、映画の展開を思い、大人や白バラ軍たちの少年への愛情や、助けようと必死で動く姿が感じられます。

    バラ戦争も絶好調、夜の城跡での決闘など、あと数センチ、数秒ずれたら死んでいたんですけど、そんな危険も解決したからくよくよして閉じこもるなんてばからしい!と怯むこともありありません。

    また、少年ラスムスが白バラ軍に憧れ、最後は白バラ軍入隊となった、ということは、たとえカッレくんたちが大人になってもまた新たな少年少女たちが安心できる家族や友達のもと、街中を走り回ったり、危険を恐れない輝きが続いていくんだろうと思います。

    カッレくんはシリーズのたびに「探偵こっごと本当の事件は違うんだ」と自覚するのですが…でもやっぱり大人になってもこのままのカッレくんたちでいて欲しいなあ。

  • このシリーズ、カッレ君が活躍する事件の方はどんどんエスカレートしていくんですよね~。  もちろん犯罪は犯罪であって、青島刑事(← かなり古い?)じゃないけれど、「事件に大きい小さいはない!」んだけど最初の「名探偵カッレくん」の事件はせいぜいがコソ泥だったのが、第2作「カッレくんの冒険」では殺人事件だし、第3作「名探偵カッレとスパイ団」では産業スパイときています。

    そしてつくづく感じるのは、カッレ君の名探偵ぶりもさることながら、エーヴァ・ロッダの「事件まきこまれ体質」とでも呼びたいような事件を引き寄せるパワーみたいなもの。  もちろん彼女の責任ではないんだけど常にトラブルの中心にはエーヴァ・ロッダがいます。  第1作では犯人がエーヴァ・ロッダのおじさんだったし、第2作では殺人事件直後の犯人の唯一の目撃者が彼女でした。  そして第3作では彼女がたまたま母性本能をくすぐられちゃった相手が産業スパイ一味の人質になる・・・・と。  

    しかもその拉致現場をたまたま見たのみならず、一緒にさらわれる道をエーヴァ・ロッダが自ら選ぶわけで、まさに「事件を呼び込む女」そのものです(苦笑)  でも、そうやって考えてみるとこの一連の物語、実は時代を変えた「騎士道物語」と呼んでもいいのかもしれません。



    この2作品に共通している点に、「殺人事件」とか「産業スパイ事件」という社会的にも大きな事件とカッレくんたち仲良しグループが夏休みの遊びとして興じている「バラ戦争」がほぼ同じ比率で物語に出てくるところが挙げられると思います。  そして、その「バラ戦争」で培われた機転の利かせ方、通信手段、身の処し方等々が「殺人犯」や「スパイたち」との追いつ追われつの中でしっかり生かされ、彼らが何とかサバイブできる素養となっているところが素晴らしい!!

    「バラ戦争」の中で万が一白バラ軍の誰かが赤バラ軍の捕虜になってしまった際に発する緊急信号、それを味方がキャッチしたことを伝える応答信号、敵が目の前にいる時であっても秘密のメッセージを敵にわからないように味方同士で伝え合う山賊言葉・・・・・。  挙げればキリがないけれど、それらが見事に役立っています。  

    まあ、そこがホッとするところでもあり、嘘っぽいところでもあるわけですが・・・・・(苦笑)。  でも、彼らが大事件に巻き込まれハラハラさせられつつも読者にどこか安心感を与える要素にもなっているわけで、ドギツサやショッキングさで人を釘付けにする昨今の表現手法よりは品格のようなものを感じるのは KiKi 1人ではないのではないかしら。

    と同時に、やっぱり子供たちの遊びというのは彼らのように何もないところで自分たちの創意工夫だけが全て・・・みたいな面もかなり必要だよなぁと思わずにはいられません。  KiKi 自身もゲーム大好き人間だし、どちらかと言えば「やりこみ派」なのであんまり偉そうなことは言えないけれど、ゲームに興じている際にふと思うことがあるんですよね。

    「あ、これ、遊ばさせられてるな」

    ってね。  もちろんゲームの中であれこれ冒険して、迷子にもなって、戦い方も相手によってあれこれ試して・・・・というのはあるけれど、大筋は他人が創造した世界の中で、他人が考えたストーリーに沿って、他人が考えたボス敵攻略法を探しているだけ・・・・・みたいなところもあるわけですよ。  そういう遊びの中からは仲間内だけの暗号だとか、本当の意味で自分の身に何らかの危機(もちろんそれはカッレくんたちが遭遇するような大事件ではなく)が迫った際に、何ら応用が効きません。

    遊びの中で身についたものほど、自分の実になる物はない。  

    そんな想いを深くさせてくれる作品だったと思います。

  • 今回の事件は誘拐、舞台は孤島。今まで以上のスリルと楽しさ。大人でもこんなにハラハラさせられるのだから、子どもの頃読んでいたらどれ程身に迫る危機を体験しただろうと思います。エーヴァ・ロッタの勇気とユーモア(と母性)に尊敬と拍手!両親への書き置きはお見事。そして、今回もう一人の主人公5歳のラスムス。挿絵は決して可愛くはないのに、仕草や会話、丁寧な描写が愛おしくならずにはいられない「坊や」を描いています。だからこそ、最後のニッケとのシーンはじーんときます。白バラ騎士団隊長アンデスの勇姿、カッレの機転、どのシーンも忘れ難くて、これでシリーズが終わってしまうのが残念です。テンポのいい文体と巧みなストーリー。改めてリンドグレーンの魅力を知ったシリーズでした。

  • スパイ団というよりは博士とその子どもラスムスを誘拐して軍事機密をききだそうとする誘拐団にカッレたちが立ちむかうお話。前の2作に比べるとかなり大風呂敷を広げている。

    でもって、作中でカッレがこんなメタフィクション的な発言を。
    =====
    「じつに妙じゃないか。いつもいつも、事件にぶつかるなんて」
    「ぼくたちのまわりに起こる事件なんか、本にでてくる話にだけしかないことなんだ」
    「これも、ことによると本の話かな」
    ======
    子どものときは気づかなかったけど、今読んでびっくりした(笑)。

    シリーズ化してどんどん面白くしようとしたとき、陥りがちなことにリンドグレーンも気づいていて、すぱっと3作で終わらせたのかな。でも今読むとやっぱり「もっと読みたい」と思いますねえ。あーおもしろかった。

  • 最高だよ。児童書と思わず、おとなも読んでください。

  • 名探偵カッレ君シリーズの中で、一番面白いと思います。小さいラスムスが可愛い!何回読み直しても面白いです。

  • 今回の犯罪はより大がかりとなり、かなりはらはらしました。
    犯人グループとの追いつ追われつの展開は、手に汗握るドキドキもので先が気になりページをめくりました。
    5歳のラスムス君がいい味だしてましたね。
    ピッピもよかったけど、カッレくんも大好きな本になりました。
    リンドグレーンって最高!

  • カッレ君最終巻。図書館で借りました。
    この巻は挿絵が違うんですね。こちらも素敵です。

    それにしてもカッレ君たちは見事に子供時代をエンジョイしておりますなあ。羨ましくなります。自分の子供時代ってあんなに楽しそうだったかしら?まあ楽しかったんでしょうけれども。それにしても子供たちの自立心が強くて素晴らしいです。
    私だったら多分あの時点で警察に泣きつくなあと割と初期の段階に思いました。

  • 『山賊ことば』がフル活用されてるところがいいと思います。

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著者プロフィール

1907年‐2002年。スウェーデンに生まれる。1944年『ブリット‐マリはただいま幸せ』(徳間書店)で、出版社主催の少女小説コンテストの二等賞を得て、デビュー。以後、児童書の編集者として働きながら数多くの作品を発表しつづけた。1958年には国際アンデルセン賞を受賞。「長くつ下のピッピ」「やかまし村の子どもたち」「名探偵カッレくん」のシリーズや、『ミオよ わたしのミオ』(岩波書店)など、世界中で今も愛されている数々の物語を生み出し、「子どもの本の女王」と呼ばれた。

「2018年 『長くつ下のピッピの本 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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