小さい牛追い (改版) (岩波少年文庫134)

制作 : エルザ・ジェム  石井 桃子 
  • 岩波書店
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141344

感想・レビュー・書評

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  • オーラ10歳、エイナール8歳、インゲリド7歳、マルタ5歳。
    春、山の雪が融けて、夏草が生い茂るようになったら、彼らは両親と一緒に山の上にある牧場に移動します。

    ちょっとやそっとでは行き来できない山の上には、生活必需品を持てる限り持って行かなくてはなりません。
    そして連れて行くのは、村の人たちから預かった牛やヤギ、自分の家の豚や馬など。

    牛やヤギを美味しい草のあるところに毎日連れて行くのが、オーラとエイナールの仕事。
    ふたりは交互に牛を追い、そうでない日は両親の手伝いをします。

    彼らは、出来ることを手伝い、身近にあるもので遊びます。
    毎日が生きる喜びにあふれたような生活ですが、したたかに金儲けも考えています。
    大きな木が川から流れてきたら、大人相手に売買の駆け引きをし、釘や綺麗な石やマッチなどを拾って集めては、売ったり交換したりして自分の財産(宝物)を増やしていきます。

    オーラは本を読むのが好きで、計算も得意。
    そしていつも弟から価値のあるものをだまし取ってやろうと考えるようなところがあります。
    対してエイナールは、頭で考えるよりも体が先に動くタイプで、自分の宝物も気前よく妹たちに上げたりするようなところがあります。

    オーラは、決して悪い子ではないのですが、お母さんもみんなもエイナールの方を可愛く思っているのだろうと思うと悲しくなります。
    お母さんは、けっしてそんなことはないと言うのですが、オーラはそう思うのです。
    一番上の子は、どうしても甘えるのが下手ですし、オーラの気持ちは私にも痛いほどわかります。

    オーラの横暴に対して、下の3人が反撃に出たのですが、それが傑作。
    ちいさい子たちにまんまとしてやられるオーラは、まだたったの10歳ですからね。

    秋になり、山の草も枯れてしまう頃、家族は下の村に戻ってきます。

    解説が「ぐりとぐら」の作者、中川李枝子さんでした。
    彼女がこの本を最初に読んだのは中学生の時。
    中学生が読むには少し内容が幼いでしょう。
    けれど戦争中、子どもの本なんてものはなかったのです。
    戦争が終わり、子ども向けの本を買ってもらった時の喜び!
    中学生の中川さんと、物語の中の4人の兄弟の笑顔が重なるような気がしました。

  • 何度読んでも、しみじみと面白い。これは児童書だけど、私は母業一段落してから出会えた。そのタイミングが良かったなぁ

  • 161028読了。
    中川李枝子さんの『子どもはみんな問題児。』を読んで知った児童書です。
    舞台はノルウェー、男の子2人と女の子2人の4きょうだいと両親の生活が描かれています。
    大草原の小さな家ともトム・ソーヤの冒険とも少し違う、のどかで可愛らしいお話です。
    中でも目を引くのが、男の子のきょうだいオーラとエイナールの冒険、取り引き、心理の描写です。
    それぞれの性格がいきいきと描かれていて、自分がこどもだったらわくわくしたに違いないけれど、今やお母さん目線で見てしまう私はハラハラしてしまいました。
    でも彼らのお母さんは暖かくやさしく、おおむね遠くでだまっています。素敵です。
    日本語訳も、やさしいことばで丁寧に訳されているのが伝わりました。

  • ぐりとぐらの中川りえこさんが、理想の母親が出てくるということで読んでみました。そりゃもう活発な男子2人と女子2人を育てるママなんですが、主役はほぼ子ども。でもそばでハラハラしたり、優しく見守る母がたまに描かれ。そんなもんかーと思ったところの結末の描写にほろりとさせられました。ここか!!子どものやさしさにほろっと涙するお母さんの様子。ここかー!!とちょっと感動。しかしなかなかの肝の座りような母さんで、真似るのはなかなか。でも意識してみます。

  • 「牛追いの冬」と二冊で一つ。

  • 読む度に前よりも面白いような、本!

    ノルウェーの農場を舞台に、
    四人のきょうだいが主人公の物語。

    一番年上のオーラは十歳、
    弟のエイナールは八歳。

    喧嘩ばかりしているようで仲良しのようで…。

    この年齢で、
    兄弟でかわりばんこ、一日置きに
    牛追いの仕事をまかされ、それをこなす。

    となりの農場のアンナとヤコブ、
    白樺の皮の作品作り名人のおじいさんや
    山小屋で出会った女の子、
    コーヒー好きのおばさん、など、
    出てくる人みんな面白い。

    また、お父さん、お母さんが優しくって
    子供の気持ちをよく思いやってくれて嬉しくなってしまう。

    作者が自分が若い母親だったとき、
    自分の子供たちをモデルにこの作品
    (と、もう一つ『牛追いの冬』)を書いた、とのこと。

    つまり、お母さんはすべて、御見通し、ってこと!

    『大草原の小さな家』シリーズや
    ニェムツォヴァーの『おばあさん』が好きな人は、
    是非是非。

  • 恐らくこの本は、イマドキの都会の早熟な子供たちにはつまらない本なんじゃないかと思います。  「ハイジ」に似ているところもあるんだけど、ハイジの場合は「アルプスの山の上」と「フランクフルトという大都会」を経験している分、都会暮らしの自分に引き寄せて読むことができる「とっかかり」みたいなものがあるんだけど、この物語で描かれている子供たちの世界っていうのはイマドキの都会育ちの子供たちには想像するだに難しい「遊びの世界」なんじゃないかと思うんですよね。  牛に振り落とされたり、ボタンのお金で交換したり、沼地で壊れかけた筏に乗って釣りをしていたら漂流しかかったり・・・・・・。  モノで遊んでいなかった時代の子供たちの姿が瑞々しく描かれています。  

    でもね、昨年の夏、Lothlórien_山小舎に親戚が泊りがけで遊びに来たんだけど、その子供たち(小学生と幼稚園児)はこんな山の中だと何をして遊んでいいのかわからないみたいだったんですよね。  で、結局、家の中で KiKi の Nintendo DS でゲーム三昧の時間を過ごしていたわけだけど、KiKi の子供時代であれば山の木が基地に見立てられたり、水の中を泳ぐ小さな虫や蛙が妖精にも悪魔にも化けたりして飽きることがなかったことを思うと、そういう経験をしたことのない子供にはこの物語に出てくる四人きょうだいの他愛もない遊びは全くと言っていいほど理解できないんじゃないかと思うんです。

    で、そういう遊び(と言いつつも、彼らにとってはそれが単なる遊びの範疇を超え、現代的に言うならば夏休みのアルバイトを兼ねていて、そこには労働が伴っている)の中で彼らは彼らなりの大冒険を経験しているんだけど、昨今の物語に多いCG使いまくりのハリウッド映画的な冒険と比較するとどうしても地味な感じは否めません。  その地味さ加減が KiKi なんかの世代には懐かしくもあり羨ましくもあったりするんですけどねぇ・・・・・・・(苦笑)

    この物語の凄い所は、子供が持っている愛らしさと残酷さ、優しさと冷たさが余計な装飾なしに素直に、でもちゃんと両立して描かれているところだと思います。  勉強好きで物静かでどちらかというと思索家タイプのお兄ちゃんが勉強嫌いで人当たりがよくお調子者の弟を疎ましく思う気持ち、逆にそんな弟がどうしても頭の上がらないお兄ちゃんを暴君のように思う気持ち、命を落としかねない肺炎を患い家族中の心配を一身に集め、甘やかされているうちに、それが当然と思うようになってしまった末っ子の気持ち。  そのどれもが KiKi 自身にも身に覚えがないわけじゃない感情で、読んでいてちょっぴり切なくなってみたりもして・・・・・・(笑)

    (全文はブログにて)

  • ノルウェーの農場に両親と住む四人兄妹の春から夏の物語。
    一家は、夏の間、村中の牛をあずかって山の牧場へ行きます。特に、上の二人である男の子たちが、交代で小さな牛追いとして励みながらも、豊かな自然の中で遊ぶようすが、とても生き生きと語られる名作。
    対照的ともいえる兄のオーラと弟のエイマールの個性ゆえにまた面白く、兄妹や動物たち、彼らをめぐる人々とのやりとりなど何とも愉快です。
    時にはらはらさせるような彼らの行動も、あたたかく忍耐強く見守る両親がいてこそと感じられ、なかなか素晴らしいおかあさんの存在は魅力的。あたたかく、楽しい物語です。

    巻末にある、作家の中川李枝子さんの思い出話が、また興味深かった。
    もう一冊、彼らの冬を描いたものもあるんですね。これも面白そう…。

  • 4~5年から。ノルウェイが舞台の、牛追いをしながら山で過ごす子どもたちの話。男の子たちの行動がとても面白い。兄弟げんかもいたずらも容赦ないところが現実味があって引き込まれる。

  • ▼マリー・ハムズン『小さい牛追い』岩波少年文庫

    農場の四人のきょうだい、一番上のオーラは十歳、次のエイナールが八歳、このふたりが男の子。夏のあいだ、両親と妹たちと、村じゅうの牛を預かり、山の牧場ですごす。オーラとエイナールは、降っても照っても、牛をつれて山へ分け入り、牛追いをする。その夏のあいだの、小さい牛追いたちの日々を描いた話。

    これがおもしろかった。途中で、うっふっふと笑ってしまった。話は主に、オーラとエイナールを中心に書かれる。十歳と八歳、人生はなかなかきびしい(笑)

    「男の子」「女の子」がちょっとハッキリしすぎていて、今の目からみたらどうよと思うところも多少はあるが、男の子ふたりが、牛追いとしての役目をはたしつつ遊びにも夢中になる様子が(牛から目をはなしてしまって、青くなったり)、読んでいてしみじみとよかった。

    一番上の兄ちゃん・オーラは本がとてもすきで、おかあさんの料理本から聖書まで読む。本を読むオーラの姿は、むかしの自分にちょっと似てる気がする。きょうだいの、一番上だということも。
    ▼何かあたらしい本が手にはいると、いつもこっそりどこかにかくれて、じぶんが、どこにいるかも忘れて、読みふけります。ほかの子どもたちが、そういう状態にいるオーラを呼ぼうとすれば、それはまるでべつの、遠い世界から、かれをつれもどすようなあんばいでした。不幸なことに、おとなたちもまた、オーラを呼ぶという、ふゆかいなくせをもっていました。オーラ、少し薪をわっておくれ、オーラ、早く、水を一ぱいくんできておくれ、などというのです。オーラ、それ、オーラ、あれ、というぐあいで、一日つづきます。オーラがいちばん年上で、なんにも役にたたない、いくじなしのおとうとやいもうとをもっているばっかりに。(p.34)

    わかるなあ、この感じ。

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