- Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001141344
感想・レビュー・書評
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1950年、岩波少年文庫創刊時に刊行されたのは、『宝島』、『あしながおじさん』、『クリスマス・キャロル』、『ふたりのロッテ』、そして『小さい牛追い』の5冊。ほかの4冊にくらべると、知名度が低いのですが、それでも創刊時のラインナップに選ばれたなりの魅力があるのだろうと気になってました。
原書は1933年刊行の『ノルウェーの農場』。長さの関係で『小さい牛追い』の『牛追いの冬』の2冊に分けられています。
オーラとエイナール、インゲリドとマルタ、4人の兄妹たちが、6月から9月の終わりまで、山の牧場に牛とヤギを連れて夏を過ごす話が前半の『小さい牛追い』。
「小さい」牛追いは本当に小さく、オーラは10歳、エイナールは8歳。男の子たちはひとりで牧場に牛を連れて行き、ひとりで連れ帰ってきます。
オーラはお兄さんだけど、年の近いエイナールにライバル心というか、こいつがいなかったらもっと楽なのにという気持ちを持っていて、そこがむしろ共感できます。
インゲリドとマルタの姉妹はただもうかわいい。イノシシと名付けたブタをかわいがったかと思えば、お気に入りの人形を食べられそうになって「もう友だちじゃない」とブタに向かって言ってみたり。
エルザ・ジェムによる挿し絵も、乳しぼりをするお母さんの横で牛のシッポを持っている様子など、女の子たちがほんとにかわいい。
地味な物語ではありますが、四季の移り変わりと、牧場での暮らし、子どもたちのキャラクターがすばらしく、後半も楽しみです。
以下、引用。
オーラはたいてい、そういう小さいカエルを、もとの堀へつれてかえってやります。動物をいじめるのは、罪だから、と、オーラはいいます。
「それで、おとうとをいじめるのは、罪だと思わないのね?」と、おかあさんがききました。
「イラクサ。」と、アンナは、小さい声でいいました。
「イラクサーでも、なぜさ?」
アンナは、また足をもじもじさせて、
「とてもみっともないから。」
これをきいて、みんなが反対しました。オーラがやさしく、白ユリというのが、アンナにうってつけの名まえだろうといいました。
「イエス。」と、エイナールは、英語でこたえました。
エイナールは、すこし英語を知っていて、重大、厳粛な場合にだけ使いました。
もちろん、インゲリドやマルタは、まい年、一つずつ大きくなりました。けれども、子ヤギや子牛たちは、いつもまえの年とおんなじでした。
たぶん、このシラカバの木は、ラグンヒルド女王の時代にも生きていて、しかもこれからさき、オーラや、いま生きている人たちが、みんないなくなっても、その高いこずえを林の上にゆすっているかもしれません。そう考えると、とてもふしぎな気がしました。
三キロほどさきにある材木小屋を、みんなは「メキシコ」とよんでいるのです。
もちろん、ふたりは、そんなことでぐちはこぼしませんーじょうぶで勇気のある少年なら、どんなわるいお天気だって、がんばれないということはないのです。
オーラは、友だちのことを考えました。その子たちは、だれも牛追いをしたことがありません。だから、こういう火が、どんなに美しく、すばらしいものか、ほんとにわかりはしないのです。かわいそうなものです。
マルタは、六つというのは、たいした年だと考え、そのうち、インゲリドにおいつけるのだと思っていました。
「どうか、あしたお天気にしてください。できたら、どうぞ。」
ところが、神さまには、できました。
ほんとの詩人というものは、きっとほかの人が、ふつう、まい日のことばで話すとおなじように、詩で話せるにちがいありません。
そして、ある朝、子どもたちがおきてみると、草原は霜でまっ白になっていました。なるほど、その霜は、日があたると、すぐとけました。けれども、子どもたちは、夏がおわったのだな、と気づいたのです。
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ノルウェーの農場に住む4人兄弟のうち、特に上の二人の男の子、オーラとエイナールの話が中心。いかにも長男と次男という感じで末っ子で甘やかされた私でも、オーラに同情する場面がたびたび。
気になったのは訳語。
ノールウェイ
胸算用
農場差配人
役僧…
そして、牛追いをがんばったおだちんが180円とか5千円札と書かれていますが、ノルウェーの通貨でよかった気がします。
石井桃子さんは好きですが、これは新訳出してもらいたいです。 -
4~5年から。ノルウェイが舞台の、牛追いをしながら山で過ごす子どもたちの話。男の子たちの行動がとても面白い。兄弟げんかもいたずらも容赦ないところが現実味があって引き込まれる。