ふたりのロッテ (岩波少年文庫)

制作 : ヴァルター・トリアー  Erich K¨astner  池田 香代子 
  • 岩波書店
3.96
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本棚登録 : 679
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141382

感想・レビュー・書評

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  • ケストナーの2冊目。
    「飛ぶ教室」では登場人物は男子のみという設定だったのが、こちらは双子の女の子が主人公。
    それぞれ名前は「ロッテ」と「ルイーゼ」。
    それが何故「ふたりのロッテ」というタイトルになったか、読みどころはそこ。
    もう、それはそれは健気に奮闘する女の子があまりに可愛くて、思わず応援してしまう。

    林間学校で偶然出会ったふたりの女の子。お互いの顔も姿も瓜ふたつ。
    色々と話してみると、どうやら生き別れた双子の姉妹であることが判明。
    互いの家庭事情を聞くと、ルイーゼには父親だけ、ロッテには母親しかいないことも分かり、更に写真を見て明確になったのは、ふたりの両親が離婚したということ。
    そこで少女たちが考え出した案は・・・

    想定の範囲内のお話なのに、先が気になって仕方がないというお話。
    ベタな展開でも、読まずにいられない。
    たぶんそこには、大人だって子どもだって、嬉しいことも悲しいことも同じで、理解しあうための努力を忘れてはいけないという、底辺に流れるものに共感するからだろう。
    小さなエピソードの積み重ねも、時に可愛らしく、時に微笑ましく、ちょっぴりハラハラさせられたり。ふたりの足取りをそれは丁寧に描いていく展開だ。
    作者が寄せる登場人物たちへの敬意は、大人だけでなく子どもにも等しくそれが表れていて、気持ちが粟立つような表現はどこにもない。
    ふたりの少女は決して両親を責め立てることなく、でもちゃんと考えさせて、共に良策を編み出していく。なんて素直で賢い子たち!これこそ大人の見本だわ・笑
    お約束通りのハッピーエンドが、これほど心地よい作品も珍しい。

    この作品を読んでから、名作と傑作の違いについてしばらく考えさせられた。
    公序良俗に反することなくあくまでも良心的で、心に深く棲みつくもの。
    そして長年読み継がれるものは名作ということかもしれない。
    やや刺激的でもエンタメ性の強い、面白さを優先したものは傑作と言えるかも。
    するとダールの作品は傑作揃いで、こちらケストナーは名作ということになるのだろう。

    アニメにもなり、幾度も映画化もされ、舞台劇としても上演されているこのお話。
    それほど高い人気がありながら、実はこれが第二次世界大戦中に書かれたということを知ると、胸がじんとなる。ケストナーが作品に託した思いは、今も生き続けているのだろうか。

  • 至極の名作。
    引き裂かれた家族がまた一つになる、親子の愛の物語。

    児童向け小説なのだが、大人が読んでも十分に読み応えがある。

    世代や経験によって、同じ本を読んでも面白さが変わるものだが、ケストナーの児童文学は、子供から大人まで、それぞれの目線で面白い。

    それは、物語の核が人間本質的な営みを書いているから。

    物語の構造を、子どものために、優しくわかりやすくしてしまえ、などとはしていない。
    本来難しい話、色々と込み入っているであろう大人の関係も背景にしっかり忍ばせて、立体的な物語に仕上げている。

    ロッテとルイーゼは姿は瓜二つだが、中身はそれぞれの人格を持っている。
    二人が入れ替わることで、自分とは何か、そして周りの人たちとの関係が、改めて考えなおされる。

    少し過剰に表現すると、アイデンティティの問題に踏み込んでいるとも考えられる。
    人から見えるもの(社会的な側面)と、自分の内面(プライベートな人格)との関係。名前をつけること(レッテル貼り)とはどういうことなのかetc

    ふたごの子供たちは、自分の考えを持って、行動する。この描写がいきいきとしていて楽しい。

    登場人物たちは皆キャラがたっている。
    良いところ、悪いところどちらももって、魅力的に書かれている。大人のずるいところ、せこいところもしっかり。

    そして語り口が、優しく、そして時に面白く、冷静で、テンポが良い。

    大人向けの物語だったら、ちょっとベタになってしまいそうな比喩も子供向けだからこそ。大人が読むとそこが新鮮だったりする。

    『ベルが鳴る。幕間がおわる。オペラは進む。人生も進む。』

    働くお母さんとお父さんと子供たち、という設定も現代に通じる。

    親たちの事情により、子供たちが犠牲になること、弱いものにしわ寄せがくることに対する、ケストナーの抗議が見える。

    そして、訳者の池田香代子さんのあとがきのすばらしさ。
    『おとなになってケストナーを読んでわかったことですが、子どものころ、悲しみと向き合わなければならなかったとき、わたしがほしかったのは同情でもはげましでもなく、この尊敬なのでした。(中略)困難な立場を力いっぱいひきうけているひとりの人間として、みとめてほしかったのでした。』

    何度も読み返したい本。

  • 文章がお芝居のト書きのようだと思いながら読んでいくと、そのわけは訳者のあとがきにちゃんと書かれてありました。

    女の子が夏休みを過ごす宿泊施設で、ふたりは出会います。
    まだほんの9歳、だけど女の子は早熟で大人びているから、ふたりの活躍がいきいきと描かれていて、こちらもわくわくと楽しく読めました。
    小さい頃にこの本に出会っていたら、何度も何度も読み返していたかもしれません。
    そして夢のような結末に、心おどるばかりでした。

  • 夏休み、オーストリアの「子どもの家」にたくさんの子ども達が集まる。両親のもとから離れてサマーキャンプ!
    そこで驚くべきことが起こる。ウィーンの「ルイーゼ」と、ミュンヘンから来た「ロッテ」が見紛うばかりのそっくりさんだったのだ!

    両親の離婚で引き離された双子が、偶然の再会をきっかけに「入れ代わり」を画策する『ふたりのロッテ』。
    二人の少女の健気なこと。そのがんばりを、心から応援しちゃいます。

  • 少年少女に向けた、「子どもだまし」でない児童文学。
    家族が大好きな子どもたちにも、家に息苦しさを感じている子どもたちにも、子どもを「子どもに過ぎない」と思い込んでいる世の中の大人たちにも読んでほしい。作中のシャーリー・テンプルのエピソードが非常に象徴的です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「「子どもだまし」でない児童文学」
      でも大人も騙されるくらい素敵な話ですネ。
      ケストナーの小説に登場する子どもって、機転が利き過ぎて、、、
      「「子どもだまし」でない児童文学」
      でも大人も騙されるくらい素敵な話ですネ。
      ケストナーの小説に登場する子どもって、機転が利き過ぎて、、、
      2012/12/25
  • 子どものころからなぜかケストナーを敬遠してきたんだけど、ほんとにざんげしたくなった。ストーリーももちろんいいんだけど、ケストナーの地の文がほんとにいい。子どもに対しても大人に対しても、同じように人生の真実を説教くさくなく、でも甘ったるくもなく、ざっくばらんにユーモアを交えてかたるという。この本が、もう戦後4年の1949年にドイツで(ケストナーはナチスに目をつけられていて、いつひっぱられたり暗殺されたりしてもおかしくなかった)発表され、翌年には岩波少年文庫の第1回配本で邦訳された(当時は高橋健二訳)って考えるとほんとうに胸が熱くなる。
    「この世には、離婚した親がたくさんいる、そういう親のもとでつらい思いをしている子どももたくさんいる、また逆に、親たちが離婚しないためにつらい思いをしている子どももたくさんいる」
    という状況の親子を描いた物語。お父さんと、あの若い女の人の緊張感あふれるやりとりとか、セリフもぜんぜん子どもに対して手加減してなくてすてきだった。

  • 面白かった!
    ロッテってこんな話だったんだ。

    こどもたちの話だけど、きちんと大人たちの話でもある。そしてぜんぜん古くさくない。

    ほんとうの女の人はこわいのだ。

  • 子供時代、愛してやまなかった本の一つ。
    テンポの良い、軽妙な文章が描き出すルイーゼとロッテの心情は、しかし、決して軽いものではない。
    ルイーゼが初めての料理を試みる場面とロッテがゲルラハ嬢の元に一人で戦いを挑みに行く場面は、いつも胸が潰れそうになる。
    大人になり、ルイーゼとロッテだけでなく父と母(ついでにゲルラハ嬢も)の感情も我が身で理解出来るようになると、一層子供達の切実な願いが刺さる。
    母親が美化されているところもあるけれど(これはケストナー作品に共通だが)、とても良い作品。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「いつも胸が潰れそうになる。」
      スリリングで、心温まる素晴らしい話です。
      でも私は「点子ちゃんとアントン」の方が好きだったりして、、、
      「いつも胸が潰れそうになる。」
      スリリングで、心温まる素晴らしい話です。
      でも私は「点子ちゃんとアントン」の方が好きだったりして、、、
      2014/04/17
  • 私が“後書き職人”としても尊敬して止まない、池田香代子さんの訳。今回も偉大な後書きだった。この後書きナシには、ケストナーの作品を読み損なってしまうほどの後書きです。

  • 両親の離婚により、離ればなれに暮らしていた双子のルイーゼとロッテ。

    夏の合宿で偶然出会い、両親のヨリを戻そうと一計を案じます。

    子どもの頃に読んでいたら、大人ってなんて身勝手!!と思っていたのでしょうが、結婚して子どものいる今は、両親の立場に我が身を重ねていました。

    子どもって、正直 厄介だなあと思うことあるのですが、大人の感性を揺さぶってくれる大きな存在。

    ロッテ(ルイーゼ)と旅行に出かけた母親が、こんなちょっとしたことで子どもは笑顔になるんだ、とハッとするシーンや、ルイーゼ(ロッテ)が熱をを出したとき、仕事と愛人第一だった父親が飛んで帰ってくるシーンが印象的でした。

    子どもの教育に関する本やセミナーは数あれど、こういう子どもの気持ちを代弁する児童書を、子どもと一緒に楽しめる親こそ、いい教育ができるのではと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「子どもの気持ちを代弁する」
      ケストナーは、子どもに向けて書いたのでしょうが、大人が読んだ方がインパクトがあるような気がします。
      「子どもの気持ちを代弁する」
      ケストナーは、子どもに向けて書いたのでしょうが、大人が読んだ方がインパクトがあるような気がします。
      2012/12/28
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