飛ぶ教室 (岩波少年文庫)

制作 : ヴァルター・トリアー  Erich K¨astner  池田 香代子 
  • 岩波書店
4.02
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本棚登録 : 805
レビュー : 101
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141412

感想・レビュー・書評

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  • 何を今更の、児童文学の傑作。
    私が小学生の頃からすでに図書館に何冊も置いてあり、夏休みのたびに、周りの大人たちに何度すすめられたことか。
    それほどまでに名作ならば、いつ読んでも良いのではと思ったのが正しかったのかどうか。
    読みながら何度も考えることになった。
    答えは・・・今読むのが正解だった。でも子供の頃にも読みたかった!
    たぶん本の世界に首っ引きで、読んだ後は周りの何もかもが違って見えるほどだったろう。

    物語は、20世紀初頭のドイツのキルヒベルクあるギムナジウム(全寮制中高等学校)が舞台で、主として5人の少年の学校生活を描いている。そこに、ふたりの大人が加わる。
    ひとりは「正義先生」と呼ばれギムナジウムの教師で、もうひとりはたまたま近所に住んでいた「禁煙先生」と呼ばれるひと。こちらはピアノ弾きを生業としている。

    タイトルの意味するところは、少年たちのひとりである「ヨーニー」が、クリスマスに上演する劇として書いた戯曲のこと。物語の中では、長期休暇前の最後の晩に披露している。

    端的に言えば少年たちの成長物語なのだが、爽やかな事柄ばかりではない。
    暴力まがいの事件もあったり、辛く悲しい現実を見せつけられる場面も多い。
    そういった状況でこそ輝く知恵や友情・勇気の大切さを力強く語っている。
    図書館の本でなかったら、傍線をどれだけ引いたことやら。。

    そしてこのお話の特色のひとつは、作者自身が「ふたつの前書き」と「後書き」とで、物語に参加していること。ナチスの支配下にあった1933年当時、作者がどれほどの願いを込めてこの作品を書いたかが、後書きまで読むとよく分かる。
    お話を読み終えてからもう一度「前書き」と「後書き」とを読んで咀嚼するというお楽しみ付き。

    未読の方には、ぜひともお読みいただきたいのだけれど、後半で泣いてしまうから気を付けてね。
    貧困のためクリスマスに帰宅さえできず、ひとり涙にかきくれるマルチン少年に、正義先生がお金を差し出す場面がある。その前後が、もう涙もので。
    子どもの頃だったら、ひとり寂しく居残りとなったマルチンに心を寄せて泣いたかもしれない。正義先生はなんて親切なんだろうと、その程度だったろう。
    ところが大人になった今は、正義先生の行いの心意気に(特にお金を渡すときのその言葉に)もう涙・涙。
    かつて目指したはずの、博学で機知に富み、寛大で思いやりにあふれた大人の姿がある。
    何よりもこのお話に登場する大人は、子どもの頃を忘れてなどいない。
    何に泣いたか。どんな時に辛かったか。何が嬉しかったか。大人にどうして欲しかったか。
    「子どもの涙はおとなの涙より小さいなんてことはない」という言葉の意味が分かるのは、このような大人だからだ。

    たとえ運が悪くても、元気を出せ。打たれ強くあれ。賢さと勇気とを身につけろ。
    作者のあたたかいメッセージが、クリスマスの鐘のようにいつまでも胸で鳴り響く。
    何度も何度も読み返したい名作。
    ああ、この一冊を読む夏休みがあって、本当に良かった。

  • 昔は岩波の高橋健二訳のしかなかったが、(あれはあれで大好き。「○○してくれたまえ」とか言葉遣いが素敵。)今は様々な出版社からいろんな訳で出ている。名作だから、訳はどれでもいいのかもしれないが、絵はトリアーじゃなきゃ、駄目!絶対!!というわけで、池田香代子の新訳の岩波少年文庫で読みなおす。
    まずヨーニーがジョニーになったことに軽く驚く。いや、アメリカ人とのハーフだもん、ジョニーと呼ぶのが正解よね、と納得。美少年テオドルもかっこつけテーオドールになっている。こっちの方が彼の性格がわかってよい。他もウリーがウーリとか若干違う。正義先生は「正義さん」、禁煙先生も「禁煙さん」になっている。これは、昔の方がよかったな。確かに禁煙先生は学校の先生じゃないから(はじめは)、先生というのは変なんだけど、子どもたちの敬意が感じられるもの。
    でも、名作が今の子どもたちにも読みやすくなったのは喜ばしい。
    マッチョなところは今の眼で読むと気にならなくもないが、戦前だからな。
    子どのもころには正義先生がすごく立派な大人に思えたが、今読むと、先生、30代か、もしかしたら20代でもおかしくないかも。
    昔の大人は、本当に大人だったね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「昔は岩波の高橋健二訳のしかなかったが」
      全集でしたからね、でも少年文庫の「エミールと探偵たち」は小松太郎訳でしたね(えっと「飛ぶ教室」の...
      「昔は岩波の高橋健二訳のしかなかったが」
      全集でしたからね、でも少年文庫の「エミールと探偵たち」は小松太郎訳でしたね(えっと「飛ぶ教室」の話なのに脱線)。
      「季刊 飛ぶ教室」でケストナーの特集が組まれて以来、高橋訳とはキッパリ縁を切りました。。。
      2014/04/03
  • 岩波少年文庫は、本当に素晴らしい作品ばかりだ。
    そして、とても注釈が分かりやすいので大好きだ。

    この作品も、訳者のあとがきを読むのと
    読まないのでは、全然作品の重みが違う。
    訳者のあとがきによるとこの作品は
    ヒトラーが政権を持った1933年に書かれたそうだ。
    そういう背景を知ると、この作品のセリフに
    ケストナーの強い思いを感じ取ることができる。

    • reader93さん
      そうそう、ナチス政権にとってケストナーは目の上のたんこぶ的存在だったらしいですね。そういう状況下でこういった本を書いたと思うとますます感動し...
      そうそう、ナチス政権にとってケストナーは目の上のたんこぶ的存在だったらしいですね。そういう状況下でこういった本を書いたと思うとますます感動してしまいました。
      2011/08/29
    • christyさん
      >reader93さん、とてもいい本でした。紹介してくれてありがとう。
      本当に重みのある言葉がたくさん載っている本でしたね。私も、たくさん...
      >reader93さん、とてもいい本でした。紹介してくれてありがとう。
      本当に重みのある言葉がたくさん載っている本でしたね。私も、たくさん引用したくなりました!
      2011/08/29
  • ドイツの児童文学者、エーリッヒ・ケストナーの代表作。

    寄宿学校の少年たちの友情と成長を描く。

    この本の面白いところは、子どもを決して子ども扱いしない、心ある大人たちが出てくるところ。

    なんといっても素敵なのはこの物語がナチス政権下で書かれたということ。

    人間の想像力って、こういうことに使われてほしいですね。

  • ドイツの本が読みたくなり図書館で手に取った一冊。
    小学5年生から高校3年生までが寄宿舎で一緒に過ごす学校の、中学2年生の5人の友情物語。
    物語の最初の1/3は、第2次世界大戦前のドイツの時代背景や、寄宿舎の様子がよくわからず、時間がかかってしまったが、その後、登場人物がつながり、ある事件が起きてからはあっという間に読み進むことができた。
    子供はこうあるべき、大人はこうあるべき、ということがとてもわかりやすく語られているので、気持ちよく読めた。

  • 『飛ぶ教室』読み比べ、最後は
    岩波少年文庫の池田香代子さんの翻訳。

    その他、各社の『飛ぶ教室』も本屋さんであっちこっち
    パラパラ立ち読みしたけれど、

    まずベク先生が「道理さん」はまぁ、却下。
    (「道理」はまず、決まりを守ること、
    「正義」はそれを超えて、正しいと思う事をすること、じゃなくて?
    でも今までにない翻訳にしたい、その気持ちは買うわよ。
    と上から目線)

    その他大好きな切符云々のシーンで取捨選択。

    こちらが残りました。

    大好きな『ふたりのロッテ』がこの方の新訳で出た時は
    すぐさま本屋さんに確認に行ったけれど、
    「あ、ここが違う、あ、こんな表現は嫌だ!
    これは『ふたりのロッテ』じゃ、無い!!」となって、
    帰ってきてしまった。

    高橋健二先生訳の『ふたりのロッテ』に
    思い入れが強すぎた為の弊害。

    それもあってちょっと距離を置いておりましたが。

    今回この読み比べで色々調べていたら、
    「あ、この方は フランクルの『夜と霧』を
    わかりやすい訳でわたしに読ませたくれた方?」と言うことに気付き、
    読んでみる気になった。

    大好きな野外ボーリング場(この翻訳ではこうなっている)のシーン、
    ここがぴったり、けなげな少年のふるまいが
    心に迫ってくる感じ、これですよ!

    全体的にセリフも優しくてその他の翻訳よりも
    少年が幼く感じられるけれど、
    それも良いんじゃあない?

    もし、「『飛ぶ教室』と言う素敵なお話があるときいたけれど…」
    と言う人があらわれたら、わたしはこの訳をお勧めしますな。

    非常に原作に忠実に、表現に気を使ってくれた翻訳、
    と言う印象!

    ついでに、岩波の偉いところは、
    『飛ぶ教室』も、『ふたりのロッテ』も、文庫は新訳だけれど、
    単行本の方はまだ高橋先生訳を引き続き販売してくれているところ!

    クロイツカム先生は言った、
    「平和を乱すことがなされたら、それをした者だけでなく、
    止めなかった者にも責任はある」

    あ~あ、私も、ゼバスティアーンと同じように
    五十回この言葉を書き取りした方が良いみたい!

  • 「心配するな。ぼくはすごくしあわせってわけじゃない。そんなこと言ったらうそになる。でも、すごくふしあわせってわけでもないんだ」この言葉に何もかもが詰まってる気がする

  • ウーリが好きです。 ベク先生と禁煙さん、本当によかったなあ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「本当によかったなあ。 」
      ケストナーの本の中では「エーミールと探偵たち」と並んで最も好きな一冊。
      世界の縮図が書かれていて、子ども達には是...
      「本当によかったなあ。 」
      ケストナーの本の中では「エーミールと探偵たち」と並んで最も好きな一冊。
      世界の縮図が書かれていて、子ども達には是非読んで貰いたい(池田香代子訳は未読)。。。
      2013/05/29
  • 立派な大人たちの物語。教育だの何だのいう以前に、こんな大人になりたい、と思わせる大人であることが、子供にとってなによりの道しるべなんだと思う。子供が好きだというのなら、まず立派な大人にならなくちゃ。

  • 社会をつくる「物語」の力 で薦められてたから。
    ほんと、出てくる人がみんないい。
    こういう人に私はなりたい。こういう風に社会をつくって。
    訳者あとがきを読むとさらに作品の力が増します。
    新しいのに、ちょっと古い感じがでてて良い訳でした。

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