青矢号―おもちゃの夜行列車 (岩波少年文庫)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001141665

感想・レビュー・書評

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  • イタリアの子供たちが心待ちにしているのは、1月6日の前夜、べファーナのやってくる夜。
    べファーナとは、子供たちにプレゼントを持ってきてくれる魔女のことで、いい子にはおもちゃやお菓子、悪い子には炭を持ってくる…と言われています。
    そんな1月6日のイタリアで起こった、不思議で心躍る物語…。

    貧乏な少年・フランチェスコを喜ばせるため、べファーナの店のショーウィンドウに飾られていたおもちゃたちは、電気機関車の青矢号に乗って、雪の町へくりだします。
    個性豊かなおもちゃたちの会話に楽しい気持ちになり、貧しい人々を笑顔にさせたいと一行を離れるおもちゃのエピソードに優しい気持ちになりました。
    気どりやさんだった桃色人形が、雪の中、門の陰で眠っているおばあさんのもとに残ると決意を固めたこと、そしてその後に起こったことに、思わず涙ぐんでいました。

    雪の中を、おもちゃをたくさん乗せた青い電気機関車やインディアン人形、カウボーイ人形が行進していく様子を想像するとわくわくします。
    おもちゃたちの、子供たちに喜んでもらいたい、という気持ちも読者の心をあったかくしてくれました。
    この物語こそ、ロダーリから子供たちへの最高のプレゼントだと思います。

  • 先輩司書さんおすすめの一冊。

    正直タイトルが地味な気がしてなかなか読もうと思いませんでしたが、読み始めてこんなステキなお話だったのかと驚きました。

    今の子どもたちは、ゲームはもちろん、スマホさえ与えられるなんて、私からすると贅沢すぎる気がしますが、このお話を読めば、高いおもちゃが手に入らなくても、心が温まるのではないでしょうか。

    こういう話をワクワクしながら読める、そんな子どもになるためにも、幼い頃から外国の絵本にも多く触れることが大切かと思います。

    やや難しい言葉も出てくるせいか対象は4、5年生以上となっていますが、3年生ぐらいから勧めたい。
    難しいと思うなら、親が少しずつ読み聞かせるのもおすすめ!

  • ■あらすじ
    イタリアには、サンタクロースではなくベファーナという魔女のおばあさんが、一月六日のエピファニー(公現祭)のお祭りの日の夜に、子どもたちに贈り物をしてくれる伝統があるそうだ。
    この物語では、ベファーナは確かにほうきで空を飛んで贈り物をする魔女のおばあさんではあるけれど、彼女も霞を食べて生きているわけではなく、おもちゃ屋を営んで生計を立てる身の上である。だから、支払いのできない貧しい家の子のところには、ベファーナの贈り物は届かない。親が発注してこないからだ。
    ベファーナの店のショーウィンドウにはたくさんのおもちゃが並んでいる。毎日それを眺めに来ては悲しそうに去っていく、フランチェスコという少年がいた。毎日見つめられるうちにおもちゃたちはフランチェスコを大好きになり、哀れに思い、ついにその年のエピファニーの前日の夜、おもちゃたちはベファーナに逆らってこっそりと店を抜け出すことに決めた。可哀想なフランチェスコの元へ、自分たちの方から出掛けていくためだ。電気機関車「青矢号」に乗り込んだおもちゃたちの、雪夜の冒険が始まる。

    ■感想
    まさに寒く寂しい冬の夜に読みたくなるような、心温まるお話だった。ベファーナ、その召し使いのテレザ、フランチェスコだけでなく、おもちゃたち一人一人にも各々の物語があり、それらが絡まり合って大きなひとつの物語になっていく。大団円のセリフも素晴らしい。
    表紙や挿し絵もすごく可愛い。これ私の好きなタイプよ。平澤朋子さん。覚えておこっと。

    ■(私以外にとってはどうでもいいが)読んだきっかけ
    荒井良二さんの絵が表紙になっている『パパの電話を待ちながら』という児童書を知り、読んでみたくて図書館で蔵書検索をしたが、残念ながら貸出中だった。ただ、検索結果一覧から、『チポリーノの冒険』が同じ作者ジャンニ・ロダーリの作品だったことを知る。『チポリーノの冒険』も読んだことはないのだが、学校の音楽の授業で歌を習った。楽しくて好きな歌だったので、思わぬ再会に感激したがこちらも貸出中。その日借りることができるロダーリの本はこの『青矢号』だけだった。タイトルからはどんな物語なのかさっぱりわからなかったものの、出会いに乾杯ということで読むことにした。

  • ロダーリ作品。
    おもちゃたちがプレゼントのもらえない子どもたちのところへ、自分でプレゼントにいく、とゆー夢の溢れる設定なのに、あまりキラキラ感はない。
    子どもの貧しさは、本物だし、貧しさゆえに、雪の中死んでしまうおばあさんもいる。
    桃色さんのエピソードはしんみりしちゃう。
    雪にうもれちゃう将軍もいるし。
    でも、クレヨンたちのように、厳しい状況の子どもにも
    喜びは訪れるし、
    なんか結構な労働を毎年しているわりに、あまり報われてないようにもみえるべファーナさんが、別にいじわるでプレゼントを配らないわけじゃない、現実的にしょうがないいんだ、とゆーことをお手伝いさんが言うとこが好き。
    ラスト警察署からフランチェスコを連れて帰るとことか大好き。
    現実的だけど、読後感はあったかい。

  • とてもいい話だった。やさしい話だけれども、子どもたちの境遇は悲惨で、映画館で深夜まで働き学校へ通うこどもやご飯がなくて食べるものもない子どもが出て来る。おもちゃの犬はひとりぼっちの寂しさから自殺を図ろうと線路の上に横たわったり馬車の前に身を投げだしたりする。そんな可哀想な人々にも温かい目線でやさしいお話を作ってくれるのがロダーリのとてもいいところである。

  • 現在入手できるのは改訳されて少年文庫に収められた『青矢号 おもちゃの夜行列車』。
    でも、挿絵はリウニティ社版から採ったというM.E.アゴスティネルリのものがいいと思うので、1965年刊行の「岩波ものがたりの本1」として出されたこの旧版が好き。
    チェコのアニメーションによくあるような、おもちゃたちが自らの意思を持って子どもたちにプレゼントされようとするストーリー。
    ロダーリは『チポリーノの冒険』等貧困や不正に対して果敢に闘う冒険ものが得意な児童文学者。本職はイタリア共産党発行の子ども新聞の編集者でした。
    なのでソヴィエトで支持されたのだろうけれど、親が貧しいためにプレゼントを貰えない子どもたちのためになろうという、おもちゃたちの言動が泣かせます。

    なお、この絵本のストーリーが展開するのは、クリスマスから約2週間後のエピファニー(1月6日)です。
    (イタリアではクリスマス・イヴではなく、エピファニーの日にプレゼントを貰うのです。)

  • イタリアでは子どもたちにプレゼントを持ってくるのはサンタクロースではなく、ベファーナというおばあさんの魔女。そんな1月6日のイタリアを舞台にしたこの作品。図書館の冬に読みたい本という特設コーナーで見つけて借りたけど当たり。貧しいひとりの少年におもちゃを届ける為青矢号という電気機関車に乗って店を抜け出したおもちゃたちの冒険譚。ロダーリの本は本当に夢があっていい。コインが最後幸せになれて良かったね!2012/061

  • 貧しいフランチェスコが勇気を振り絞ってベファーナさんのお店に入り「どうして自分はプレゼントをもらえないのか?」と尋ねたり、子供らしい哀願するような眼差しでショーウインドーに張り付きおもちゃたちを眺めたり、現実の厳しさに涙を流すのを見てショーウィンドーに飾られたおもちゃ全部がもらい泣きをしてしまう様子等々は、一気に感情移入させられちゃって、おもちゃたちが申し合わせておもちゃ屋さんを脱走してフランチェスコの家を目指す相談を始めるな~んていうナンセンス極まりないプロットにも目いっぱいの説得力が漂っちゃうように感じられる筆力の素晴らしい事!!

    そしてここで登場するひとつひとつのおもちゃが、いいんですよ~。  イマドキの小学生あたりだったら見向きもしないかもしれないレトロ感いっぱいのおもちゃばかりなんだけど、KiKi の子供時代には王道だったおもちゃの数々。  ぬいぐるみもあれば、模型飛行機もある。  物語のタイトルになっている「青矢号」はいわゆる鉄道模型(しかも駅長さんやら機関士やら車掌付き)だし、彼らがベファーナさんちを脱走する際に土木工事に使われるのはブロック模型。  大砲一門を備えた軍隊(将軍付き)模型もあれば、インディアン一族の模型もありと想像するだけでもワクワクするようなおもちゃばかりなんですよね~。  液晶画面の中でピコピコ動く昨今のおもちゃも決して嫌いじゃないけれど、こういう「ごっこ遊び」ができるおもちゃってやっぱり夢があっていい♪

    (全文はブログにて)

  • 4~5年向けとあり。イタリアのおはなし。クリスマス。
    おもちゃが脱走してフランチェスコのところへ向かうのだけれど、おもちゃがひとつずつ、自分たちにぴったりとあった人々のところへ残っていく。それぞれのおもちゃの個性を活かしたキャラクターになっていて、ユーモラス。季節を選ぶけれど、いつか小学生に紹介したい。

    冬、クリスマス、泥棒、脱走、おもちゃ、突然消える、夜行列車。

  • ロダーリの優しさに溢れた児童文学。
    おもちゃが命を持って、動き出すというワクワクする設定がたまらない。
    「悪い子供なんていない」というロダーリの信念に溢れていて、ハッピーエンドが気持ち良い。

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著者プロフィール

1920年生まれ、1980年没。イタリアの作家、詩人、教育者。1970年、国際アンデルセン賞を受賞。20世紀イタリアで最も重要な児童文学者、国民的作家とされている。『チポリーノの冒険』『青(あお)矢号(やごう) おもちゃの夜行列車』『空にうかんだ大きなケーキ』『羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳』『猫とともに去りぬ』『ランベルト男爵は二度生きる サン・ジュリオ島の奇想天外な物語』『パパの電話を待ちながら』『緑の髪のパオリーノ』『クジオのさかな会計士』などがある。

「2022年 『うそつき王国とジェルソミーノ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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