- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001141979
作品紹介・あらすじ
洋が小学3年生の年、突然おとうちゃんがたおれた。そして、戦争がはじまった。軍国主義の波にもまれながらも、ほのかな恋心にめざめる少年の成長を、元やくざの佐脇さんが見守る。大阪弁にのせて、人間の真実にせまる作者の代表作。小学5・6年以上。
感想・レビュー・書評
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父の死、戦争と激しく揺れ動く兄弟の数年間を書いた作品。
今作の屋台骨である佐脇さんはもちろんなのだけど、生活が生き生きと描かれていて、ほんの少ししか出ないキャラクターでも生きているのが見事。
著者がずっとこだわっていたであろう、芸術家の戦争責任についても時折滲ませてある。
宇野亜喜良さんの表紙・挿絵も良かった。
ただ、解説で山田太一氏が続編の重大なネタバレをしていてかなりショックだったんですが…そういうことなんだろうかと思っても今作でははっきり書かれていなかったから…それは書かないで欲しかったなー…。
でも続編は読みたい。 -
2015年度今週の1冊
今江祥智さんが3月20日に亡くなりました。児童文学の大家が次々と去り、寂しいばかりです。
この本は、イラストを宇野亜喜良氏が飾っています。同じコンビで、戦争を題材にしながら全く世界観の異なる『あのこ』も一読を。(2015/3/28)
【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
大阪の空襲とその前後の戦争を描いたものが東京ではほとんど読まれないので目新しかった。
これがもっと読まれれば大阪の戦争が身近に感じられるであろう。
ぼんぼん、ということで上流階級の子どもからみた戦争ということで描かれているので、ほんのわずかの階層での子どもの話でしかないのだが。 -
戦争時の話。大阪が舞台。戦争の悲惨が描かれるが、それ以上に人間のあらゆる面が描かれている。権威主義、噂、恋愛、友情、兄弟、親子、趣味、食べ物、、、。一面だけ見ていてはダメなのだ。人も社会も多面、尽きぬ多面性を持っていることを忘れまい。ヤクザあがりの人が魅力的だった。
文学者の戦時の発言に裏切られた感があった。 -
物語が昭和16年5月から始まるのに気付いて、あぁ、戦争の話か。この分厚い本、ずっと戦争の話だと読むのが辛いなと思った。予想通り戦争の話なのだけれど、戦争の話だけではない。主人公の少年の目を通してみる戦時中の生活は、不自由な中にも、心の余裕がある。時流に流されず、冷静に世の行末を予想する大人たちがいる。前半では、主人公の祖母、後半では佐脇さんという老人の存在が大きい。彼らに見守られて、ぼんぼんとして生きていくことができたのだと思う。終戦の時に小学校6年生ということは、私の両親と同年代でもある。四部作とのことだが、この後、彼らがどうなっていくのか、知るのが怖い気もするので、続けて読むかどうかわからない。
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中学生の国語の教材に出てきた部分が面白かったので、全文読みたくて購入。教材に出てきたのは主人公の祖母の話だったのだが、読んでみると序盤で一瞬しか出てこなかった。そこはがっかりしたが、埋めあわせるかのように出てきた「佐脇さん」が大変味わい深い人物で、高倉健さんが出てきたのかと思いました。
太平洋戦争前から大阪空襲までの大阪が舞台だが、戦争ものというよりは普遍的な児童文学の印象が強い。非常時に育つ子どもは、本来の平時を知らないので非常時に過順応する傾向があるとあらためて感じた。 -
大人でも夢中になって読める。 と、いうより子供向けの感じがしない。とてもいい本だと思います。
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戦時中にもいいことや嫌なことを伴う普通の暮らしがあることや、戦争に対するそれぞれの反応が異なること(それがその人の人となりを表すこと)、当たり前のごとくに人々の考えがとりしまられる時代であったこと、それらを本で読んでもやはり実際に体験するとは違いすぎること、でもそういう辛さをくぐり抜けた人々がいることに思いをはせることも重要であることなど、言葉にするとあまりにも表面的な感じがしてしまいますが、色々なことを垣間見て、また感じました。
何人が亡くなったという数値とかからははかりしれない、戦争によりう人々がうけた影響について、少しだけ感じることができた気がしました。