お静かに、父が昼寝しております――ユダヤの民話 (岩波少年文庫)

著者 :
制作 : 母袋 夏生 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 114
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001142297

作品紹介・あらすじ

ユダヤ人は、約二千年ものあいだ、世界各地に散って暮らしてきました。それぞれのユダヤ人社会のなかで語りつがれてきた、とんちやユーモアのきいた民話、ユダヤ教のたとえ話、聖書の「創世記」からの物語など、38編を収めます。小学5・6年以上。

感想・レビュー・書評

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  • 民話の中において狐が
    ずる賢い役回りなのは、
    世界共通なんですね。

    そして『創世記』です。

    アダムをねたんだ蛇に
    そそのかされて、

    イブが知恵の実を手に
    とってしまうくだりや、

    箱舟に乗ること叶わず
    濁流に呑まれる動物達
    をノアが悼むシーン。

    話の運びに無理がなく、
    しっかりと物語として
    楽しめます。

  • 世界各地のユダヤの民話が32編、旧約聖書の創世記から6編が収められた民話集。
    素朴な民話に始まり、ページを繰るごとにユダヤ教の色合いが深まっていきます。

    巻頭の「ふしぎな財布」
    貧しい農夫が神さまから財布を授かった。いつも金貨が一枚入っていて、それを取り出すとまたわいてくる。でも、その金貨を使うためには、まず、その財布を川に捨てなければならない。
    喜んだ農夫は、毎日一日中金貨を取り出し続け、家に食べものがなくなると隣の家から分けてもらったり物乞いをしたりして凌いでいた。
    もう捨てようもう捨てようと思って川岸に立つものの、あともう少し取り出してから、と思い留まるのだった。
    農夫は大金持ちとして亡くなった。家には金貨の袋が所狭しと並んでいたが、パンのかけら一つ見当たらなかった。

  • 世界に散らばる民族のユーモアあふれる物語。

    ユダヤ人という民族は、ある種特別な民族である。彼らの考え方や行動原理を知るのは、他の民族同様に語り継がれてきた民話や例え話を読むといい。

    相手が動物でも死神でも、なぜかよく出てくる裁判所。そういえばシェイクスピアの「ヴェニスの商人」でも裁判していたと思い出す。グリム童話や他の民話に似た話も時々ある。「ベドウィンの羊」は、最初は「北風と太陽」かと思ったが、落語の「死神」のような要素(残りの寿命がツボの中の油の量)があった。

    創世記より、エデンを追放される話が印象的。エデンの園は無垢な者のために。知恵を選び取った人間は、苦労して勤勉に努力して自立を目指す。けれど、そこは創造的で新たな世界。そこで生きるために神が与えた恵みが、苦しさ辛さを流し希望を取り戻すための涙。

    世界中に散らばり、約束の地を目指すユダヤ人に、このような物語が語り継がれていることが印象的。エデンの園という楽園にはもう戻れない。外の世界での苦労や悲しみを、神の愛と共に肯定的に捉えられるような物語。

  • ユダヤの民話と創世記の物語。
    「お静かに父が昼寝しております」
    商人か"宝石を売らないりゆう
    ふしぎな財布/死神の使い/父への愛は塩の味
    機知とユーモアのある話がたくさんあって楽しめる。

  • 【由来】
    ・図書館の岩波アラート

    【期待したもの】
    ・まずタイトルに惹かれた。ユダヤの民話とは興味深い。どんな特性が現れているのだろう。

    【ノート】
    ・まずタイトルに惹かれ、次に「ユダヤの民話」というのに惹かれたのが読もうと思った動機。

    ・「民話」というのは、神話的なグロテスクさを持っていて、不条理だったりするケースが多い。本書に収録された短い民話たちも、そういった要素を色濃く持ちつつも、他の国のものとは違った教訓だったり処世術が入っているのを感じた。大抵は表題作のように、教えを守って真面目にやっていれば報われるというパターンが多いのだが、中にはキツネとオオカミの話のように、狡猾な智恵を使って他者を陥れて自らが利を得ることを是として描いたものもあり、その根底には「騙される愚かさが悪いのだ」とする価値観があるように感じる。果たしてそれが「ユダヤ」民族の特性なのかどうかは分からないけど。

    ・多くの中短編を締めくくる最後のパートは、神による世界創生から楽園追放、アベルとカイン、そしてノアの方舟という、創世記の話。どれも断片的あるいは間接的には聞いたことがあるが、きちんと読んだことはなかったので、本書で読めたのはラッキーだった。ダイジェスト的なまとめ方ではあるが、未読なら、この部分だけでも面白いはず。ちなみに、その壮大なスケール感に、手塚治虫の「火の鳥」を思い出した。

    ・札幌図書館一番ノリ。

  • 創世記のはなしがやはり心ひかれました。何となく聞いたことのある話ばかりでしたが、こんな感じで綴られていたんだ~って思いました。

    各国に残っている話はどれも宗教がベースにある教訓的なはなしかな。

  • どの話も、ユーモアや知恵があり、とても面白かったです。アジアやヨーロッパとは違う味わいがありましたが、同じような内容もあり、昔話の奥深さも感じられました。少し大きな子供達への語りにも使えそうで、楽しい一冊でした。
    小学校高学年くらいから。

  • ユダヤはわりと未知の世界だが、価値観そのものが全然理解出来ないというのはなかった編集は日本人がしているから当たり前か。親孝行は比較的どこの地域でも共通する教えなんだと感じた。
    とんち系多め。ずる賢いキツネの存在感が日本人にとってのイメージとも一致していることや、ミツバチの話で全くの異言語で言葉遊びが成立しているのが不思議。
    いろんな地域の話があることもユダヤならではだと感じた。

  • 食べ物や習慣、暮らしの全てが私が知っている世界とあまりにも違っていて本当に興味深い。
    素朴な民話のあとに読む「創世記」の完成度はさすが。

  • 【表題作】神殿破壊前のパレスチナで、ユダヤ教の儀式に欠かせない宝石を唯一人持っている非ユダヤ人がいた。安息日に間に合うには今すぐ渡される必要で法外な金額を提示したが「金庫の鍵は父の枕の下にあって“昼寝から絶対に起こすな”と言われております」と言うのだった…父を絶対視する息子に敬意を払った…/【ソロモン王の姫君】知恵第一の彼でも娘の縁談(男が女に向かう途)には無理解/【真珠の首飾り】裁判官の機知/【創世記】ノアの方舟からカラスが飛び立ったが屍肉食いで帰るのが遅れた、鳩は飲まず食わずでオリーブの葉を咥え帰った

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著者プロフィール

1943年長野県生まれ。イスラエル文学翻訳の第一人者。訳書に、ケレット『突然ノックの音が』『クネレルのサマーキャンプ』、オルレブ『走れ、走って逃げろ』、『お静かに、父が昼寝しております』など。

「2022年 『首相が撃たれた日に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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