まぼろしの小さい犬 (岩波少年文庫)

  • 岩波書店 (2020年1月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (278ページ) / ISBN・EAN: 9784001142501

作品紹介・あらすじ

ロンドンに暮らすベンの夢は犬を飼うこと.誕生日に,約束していた犬のかわりに刺繍の犬の絵をもらって失望したベンは,想像の犬を飼いはじめる.やがて引っ越しを機に念願の犬を手に入れるが,それは想像の犬とあまりにも違っていた…….少年の心の渇望と,葛藤を乗りこえる姿をくっきりと写した傑作.[解説・小川洋子]

感想・レビュー・書評

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  • 犬を飼うことを切望している少年ベン。ロンドンを舞台に彼の心の変化、成長が丁寧な筆致でじんわりと伝わってくる作品です。訳者のあとがきに、「リアリズムの傑作と呼ぶにふさわしい」とありました。

    家族の人間関係も丁寧に描かれており、特にベンの祖父が孫を思う気持ち、心に響きました。亡き祖父のことを思い出してしまいました。

    ベンが想像の世界をさまよっている場面では、自分の子どもの頃のことが思い出され、ベンの気持ちに寄り添って読むことができました。ラストの場面が映像として焼きつき、ベンのこれからの人生を応援したい気持ちになりました。想像の世界を経て、現実認識に至る心の成長を描いた本作は、本当に素晴らしい!

    訳者あとがきで、作者ピアスの創作過程を知ることができ良かったです。解説は小川洋子さんでした。この物語の感動が倍増しました。

    海外文学を読んだ後にいつも思うことは、訳者の日本語力の素晴らしさです。美しい日本語で、少年の心の中までいざなってもらえました。

  • 約30年ぶりの再読。ピアスの代表作「トムは真夜中の庭で」に負けず劣らず好きな作品で、最近岩波少年文庫から発売されたことを知り、早速手に取ってみた。
    犬を飼うことに憧れ続けている、ロンドンに住む少年ベン。誕生日に祖父が犬をプレゼントしてくれるという約束はかなえられなかったが、代わりにもらったチワワの犬の絵がきっかけで、想像の犬を頭の中で飼い始める。徐々に想像と現実の境目が曖昧になっていくベン。目を閉じると現れる彼の犬はそりゃあ可愛らしく、初めて読んだときも今回も、ベンと同様に私自身も夢中になった。
    空想に溺れるという経験を、誰もが多少は経験済みなのではないか。五人姉弟の真ん中で孤立しがちな彼は、心優しいが本音をなかなか露わにしない。だからこそ自らが生み出した理想の犬に固執していく過程に危うさを感じ、共感できる反面ザワザワした不安が読むほどに強くなっていく。
    再読してみると、年齢のせいか親サイドの視点で読んでいることに気付く。今回改めて、母親・母方の祖父母など、大人の人物造形がしっかり作り込まれているなぁと思った。ベンの本心が読めず、不安がる母(娘達が家を離れ、寂しがるところがリアルに母親あるある)。ベンを優しく見守る(ちょっと詰めが甘いがそこが憎めない)祖父。気難しく、祖父を尻に敷いているように見えて実は物事を冷静にに見ている祖母。十代の頃に読んだときはベンの心情を追うのに終始したということもあり、再読することで物語のディテールを楽しむこともできた。
    反面、ベンの心情に100%寄り添うことはできなかったかな。理想を追うあまり、現実を受け入れられない頑なな彼にちょっとイラッとしたところも。でも、物語としては敢えてベタな流れにならないところがリアル。クライマックスからラストへの話の展開は神がかっている。胸がギュッと締め付けられること間違いなし。
    教えられることがたくさんある、とても大切な作品だ。
    30年前には、既に絶版になっていた学習研究社版を幸運にも図書館で見つけて読んだ。今回少年文庫で発売されたことで、もっとたくさんの読者に出会って読み継がれて欲しいなと思う。
    また再読する機会があるときは…ベンの祖父母目線で読むことになるのかな?また違った捉え方ができそうだ。

    • nejidonさん
      メイプルマフィンさん、こんにちは(^^♪
      このタイトルを見つけた時、すごく嬉しかったです!
      私も同じく「トム・・」と同じくらい好きな、ピ...
      メイプルマフィンさん、こんにちは(^^♪
      このタイトルを見つけた時、すごく嬉しかったです!
      私も同じく「トム・・」と同じくらい好きな、ピアスの作品です。
      望むものが手に入らなかった時どうするかで、その人が分かりますよね。
      ラストの場面では、涙があふれてしまいます。
      かなり古かったですが、こちらでは図書館で借りられました。
      こういった良書が、あまり知られることもなく絶版になるのはもったいないですよね。
      この本についてコメント出来て、手放しで喜んでおります・笑
      レビュー、ありがとうございました。
      2020/02/26
    • メイプルマフィンさん
      nejidon様:コメントありがとうございます!ハードカバー版が随分前に絶版になってたとは知りませんでした。私はこの作品と「トム…」を河合隼...
      nejidon様:コメントありがとうございます!ハードカバー版が随分前に絶版になってたとは知りませんでした。私はこの作品と「トム…」を河合隼雄氏の「子供の宇宙」という新書で知り、紹介時の版元は既に絶版の学研だったので、そりゃもう~読みたくてたまらなかったのです、犬が欲しいベン並みに(笑)
      そのうち「トム…」も再読してみたいと思ってます。
      2020/02/26
  • ベン・ブリューイット少年は犬が欲しくてほしくて仕方がない。
    ブリューイット一家は子供5人いてロンドンの狭いアパート暮らし。だから犬なんて飼えない。
    兄弟の中で孤立しがちなベンは、汽車に乗っておじいちゃん、おばあちゃんの家に遊びに行く。ここには厳しく一族の規律であるおばあちゃんと、それよりは甘いおじいちゃん、そしてなんと行っても雌犬のティリーがいる。
    ある時おじいちゃんが、ベンの誕生日に犬を贈ってくれると言ってくれた。ぼくの犬!
    ベンは誕生日まで犬を想像する。大きなアイリッシュ・ハウンド、狼にも負けないボルゾイ、勇ましいマスチフ…。
    だが街に待った誕生日の日に届いたのは、犬の刺繍だった。女の子の手と小さな犬。「チキチト・チワワ」と刺繍されている。

    ベンは失望した。ぼくのボルゾイ、ハウンド、グレートピレニーズは去ってしまったのだ…。

    だがベンは失望を抑えて祖父母の家に遊びに行く。手紙の「犬のことごめよ(※ごめん、の誤字)」というおじいちゃんの気持ちは本当だと知っていたのだ。
    しかしロンドンでは犬は飼えない。飼えるのは目を閉じないと見えないくらいの小さな犬だ。
    そのうえ帰り道でベンは、誕生日プレゼントの「チキチト・チワワ」の刺繍をなくしてしまったのだ。

    その後ベンは目を閉じるたびにチキチトの姿をはっきりと思い描くようになった。
    息遣いを感じる、散歩している、一緒にオオカミとだって闘う。
    ベンは現実の世界より、目を閉じたチキチトとの想像の世界に夢中になっていった。
    それは家族を不安がらせ、成績も落ち、とうとう事故にまであってしまう。
    病院のベッドで、ベンは幻のチキチトが去ってゆくのを感じる。ぼくの犬!

    退院したベンは祖父母の家で、ティリーが産んだ9匹の子犬と対面する。
    おじいちゃんはこの中の一匹はお前のものだよ、と言ってくれた。ベンは一番小さな茶色い犬を抱き上げる。この子はブラウン、でも本当の名前はチキチト、ぼくの犬!
    でも分かっていた。ロンドンでは犬は飼えない。チキチト・ブラウンはぼくの犬だ。でもきっと誰かにもらわれてしまう。

    その頃ブリューイット家は、長女の結婚に伴う引っ越しの話が出ていた。
    新しいに行ったベンは近くに大きな公園を、犬を好きに走らせることができる公園を見つける。

    1匹1匹ともらわれてゆく子犬たち。ぼくのチキチトブラウンはまだ残っている?
    希望に胸を膨らませて祖父母の家に行ったベンだが、久しぶりにあったブラウンに戸惑う。
    こんなに大きかったっけ?ぼくの想像の犬とは全然違うじゃないか!
    口輪を嫌がる、電車では注目される、本当の名前はチキチトなのにブラウンという名前にしか反応しない!

    念願の公園で子犬を走らせるベンは、目を閉じるがもう自分の想像の犬、理想のチキチトがいなくなったことに失望する。
    目を開けた視界の隅に映る現実のブラウン。
    その時ベンは気がついた。手に入れられないものはどんなに欲しがったって無理なんだ。手に届くものがあるのにそれを手にしないなら、なおさらなんにも手に入れることなんてできないんだ。チキチトはいなくなった。でもブラウンがいる。ブラウンを飼わせてくれたおじいちゃんやおばあちゃんやお父さんお母さんがいる。
    はっきりと目を開けて、ベンはブラウンを呼ぶ。二人はこれからの日々を過ごすのだ。

    ===

    こちらもブクログみなさまの高評価で手に取った本です。
    みなさまありがとうございます。

    前作「トムは真夜中の庭で」がファンタジーだったことと、この話の「目を閉じたら幻の犬が浮かぶ」という粗筋を読んで、てっきりこちらもファンタジーかと思っていたら、少年の羨望と現実を受け入れる力を記したとても現実的な物語でした。
    途中でベンが無気力になり想像の世界に逃げ込むようになって行くあたりは、ベンの母と一緒になって本気で心配しましたよ…。

    物語のテーマは、よくある「望んだものを手に入れた」というものではありますが、その望んだものが理想と違った戸惑い、でも最後に空想だけの理想に別れを告げて現実と向き合うまでを書き、そして周りの大人の優しさもよく現れていて、とても良い話でした。

    現実じゃ無理だから想像の動物を飼う人は多いということで、この物語に同調する読者も多いでしょう。
    犬!私も犬が飼いたい!頑張る気力体力はないから想像を膨らませる、だったらフクロウを飼いたい!無理だって分かってるから想像なら良いだろう、それなら庭にヤギとアヒルを放したい!
    それなら一層のこと庭にキリンを!!
    …そんな私は、想像の動物と、会社の机のフクロウと鹿の置物を並べて満足し、ギャップのある現実の動物飼いはしないことにした(笑)。

    • nejidonさん
      淳水堂さん。こんばんは(^^♪
      もう読まれたのですね!
      「トム・・」とは違う世界観ですが、こちらも素晴らしい名作だと思います。
      ブック...
      淳水堂さん。こんばんは(^^♪
      もう読まれたのですね!
      「トム・・」とは違う世界観ですが、こちらも素晴らしい名作だと思います。
      ブックトークで何度子供たちに勧めてきたことか。
      レビューでも言われる通り、望みとはまるで違う結果になったときどうするか、ですよね。
      非常に奥が深いお話だと思います。素敵なレビューでした!
      2020/03/17
    • 淳水堂さん
      nejidonさん
      いつもコメントいただき嬉しいです!また、いつも素敵な本をありがとうございます。

      読み終わっていたのですが、レビュ...
      nejidonさん
      いつもコメントいただき嬉しいです!また、いつも素敵な本をありがとうございます。

      読み終わっていたのですが、レビューに時間がかかるんです^^;

      私のブクログ登録は「ほとんどの本は一度しか読まなほいから、自分のレビューでその本の゛雰囲気゛を味わえるように」で残しているので、
      長いし粗筋も細かいし、印象に残った文章は書き写すし、ネタバレいれます。(意外な犯人!とかだって数年後には忘れることもあるし…)

      それを素敵なレビューと言っていただき悶えそうです(*´ω`*)

      さて、若いトムは理想を手放し現実の犬と暮らすことを覚えましたが、
      私自身は現実のギャップを乗り越える気力体力も無いから想像のままでいいやと思っていることは色々ありますけどね^^;
      2020/03/17
  • 祝少年文庫化!

    フィリパ・ピアスの作品について聴く | 家庭文庫どんぐり小屋
    https://ameblo.jp/kateibunko-dongurigoya/entry-12611039395.html

    まぼろしの小さい犬 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b492571.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      『まぼろしの小さい犬』 フィリパ・ピアス - ぱせりの本の森 2025-04-15
      https://kohitujipatapon.hate...
      『まぼろしの小さい犬』 フィリパ・ピアス - ぱせりの本の森 2025-04-15
      https://kohitujipatapon.hatenadiary.com/entry/2025/04/15/090334
      2025/04/17
  • 最初に「あっ!表紙絵が変わった!」と思った。
    前はぼんやりした目つきの少年の顔(この本のP32の絵だったような)のアップの周りに犬が数匹いるというもので、なんとなく、その目つきが怖い(心理が読み取れない顔)という理由で読まなかった子どももいたんじゃないかと思う。
    岩波は滅多に絵を変えないが、この頃は少しずつ変えているのが嬉しい。中の挿絵は変わってないが、これで随分とっつきやすくなったと思う。

    随分前に読んで、今回読み直したのだが、ピアスという作家の上手さがよくわかる作品だと思う。
    犬が欲しくて仕方ない少年が犬を飼うまでの話は、絵本くらいの長さになら誰でもできる気がするが、これだけの長さで、しかもそれが必要かつ十分だと思えるのは、ディテールがちゃんと書き込まれているから。貧乏というわけではないが、決して豊かではない家庭で暮らす家族の様子。上の2人の姉たちとも、下の2人の弟たちとも、組になれない真ん中の子ベンの孤独。田舎に住む祖父母の姿。子どもや孫を心から愛する善人ではあるが、苦労人なだけに、特に祖母は愛玩するための動物なんて認めない。徹底的なリアリストである。そうでなければ貧しい中掃除婦をしながら八人もの子どもを育て上げることは出来なかっただろう。しかし祖父は祖母より甘く、茶目っ気もあり、そこが物語の救いともなっている。
    大人になって読むと、娘が家を出てしまった後の母親の寂しさ、弟たちのやんちゃな可愛さなどもきちんと描かれていて、足りないところがない。

    そしてやっぱり、この物語の凄いところは、ラストシーン。ずっと欲しかった犬をやっと手に入れたにもかかわらず、実際の犬は想像していた犬とは違っていて(あまりに想像しすぎたのだ)賢くもなければ、勇敢でもなく、臆病な子犬に過ぎないことにガッカリするベンの心の変化を描いた部分。
    「ぼやけた風景のなかで、そのときとつぜん、ベンは、はっきりとあることをさとった。それは、手にいれることのできないものは、どんなにほしがっでむりなのだ、ということだった。ましてや、手のとどくものを手にしないなら、それこそ、なにも手にいれることはできないということを。同時にベンは、チキチトとは大きさも色も、似てもにつかないこのおくびょうな犬にだって、ほかの一面があるのだということを思いだした。だいてはこんでやっていたとき、自分のからだにあずけられたあの犬の温かさ、呼吸するときのからだの動き、くすぐったい巻き毛。ベンの思いやりをもとめてすりよってきたときのかっこうや、つれない仕打ちをされても、なお、あとをついてきたあのときのようす。」(P265-264)
    本当に大切なものが何なのかに気づくために、彼のこれまでの苦しみ、悲しみがあったのだ、と読者も気づく。
    犬が欲しい、ただそれだけを思っていた少年が、本当に犬を手に入れるまでに遂げた成長というものを、ここに感動とともに見る思いがする。

    それにしても、自分で買って手に入れながら、思っていたのと違うという理由で動物を捨てる、殺そうとする(飼い主本人が保健所に連れてくることも稀ではない)人間というのは、このベン少年ほどの精神的成長もしないまま体だけ大人になっちゃったんだろうと思うと情けない。

  • この本大好きです。家族の中で疎外感を感じている、犬(自分だけの相棒)が欲しい、現実世界にうまく馴染めず想像の世界に心が寄りがち(笑)、そんな主人公の少年が自分の幼少期と重なって読む手が止まりませんでした。
    また、文章も大変読みやすいです。イギリスの都市部と田舎の景観がまるで目の前にあるかのように頭に浮かんできて、良い文章だとこんなにも本の世界に入り込むことができるのかと感動しました。猪熊葉子さん訳ということで間違いないとはわかっていましたが、本当に素晴らしかったです。
    自身の現状に不満を抱きながら過ごしている方は、ぜひこの本をお手に取ってみて下さい。

  • 中盤までベンのいい子すぎるところが気がかりだったが、終盤の展開にどきりとさせられ、やがてこちらも満たされた気持ちになった。
    何度も現実に突き当たり、やがて目の前にあるものを受け入れる力を手にするベン。痛みや苦い思いを経験しながら、最後にそのことに思い至った彼の成長ぶりがとても眩しい。おじいさんとおばあさんがそれぞれに孫を思う気持ちが伝わってくるところも、とても素敵だった。

  • ベンは5人兄弟の真ん中。姉たちや弟たちのグループからはみ出して疎外されていると感じている。
    郊外の祖父と祖母は何かと特別に気にかけてくれるが、なにしろ老齢で彼らも貧乏なのだ。
    犬を飼うのが夢。ゴミゴミしたロンドンではそれも不可能。祖父は誕生日に犬をくれると約束したけれど、もらったのは刺繍画のチワワだった。
    失望のあまりに怒りさえ覚えたベンだったが諦めて創造の中でチワワを飼う。とてもちいさくて、とても勇敢なぼくの犬チキチト。
    まぼろしの犬に夢中になるあまり交通事故にあったベンは、そのチキチトさえ失ってしまう。
    祖父の家で静養するベンの慰めは、祖父の犬が産んだ子犬たちだった。
    やがてロンドン郊外に引っ越しが決まり、犬を飼うことが出来るようになったので祖父の家の子犬を迎えに行くベン。しかし、時間がたちすぎていて子犬は大きくなり、ベンのチキチトではなくなっていた。
    永遠に帰ってこない、自分のものにならなかったチキチト。再びベンは激しい怒りを感じる。
    けれど終幕ベンは、新しい犬は自分の思うような理想の犬ではないけれど、それでもその犬なりの良いところをたくさん持っていることに気づく。
    やー、深い。深いわー。
    畏るべし児童文学。

  • 行ったことはないロンドン、そしてイギリスの田舎の風景や習慣(アフタヌーンティー)を想像しながら読みました。
    適度な注釈で、子どもにとって読みやすいとはいえないまでも、読めない本ではないと思うので、いつまでも読み継がれてほしいと思います。

  • 最高のラスト!
    ピアスっていう作家の、子どもの細やかな心の動きの描き方、なんてすごいんだろう。

    本当に欲しかったものを手に入れた時、それが思った通りの最高のものとは限らない。夢に描いたものとはずいぶんかけ離れているかもしれない。少年の想像力と少ない経験ではとくに…

    ベンは、誕生日におじいさんから犬をプレゼントされるのを心待ちにしていた。でもその朝、郊外に住むおじいさんとおばあさんから贈られてきた小包の中は、小さな犬が刺繍された額入りの絵だった。

    失望したベンは、理想の犬(チキトト チワワ)を頭の中で作り上げてしまう。狼とも戦う、世界一小さいのに勇敢な、自分だけの。まぼろしの犬との世界に逃避して行くベン。家族ともまともに話さず、いつも目を閉じてまぼろしの犬と過ごす。。
    そしてある日…


    ところで、トムは真夜中の庭での時もブリタニカ百科事典のシーンに心踊りましたが、こちらでもベンが図書館行くシーンかあるんですよ、犬のことを調べに。でも、児童閲覧室の資料に飽き足らず、専門書の方に入る許可証をもらい、司書に嫌がられてるシーン、面白いんです。胸きゅんです←

  • 内向的な少年ベンは、5人兄弟の真ん中で一人あぶれているような気がしていて、田舎の祖父母の家に泊まりがけで行くのを楽しみにしていた。そこには、飼い犬ティリーがいてベンに懐いていたので楽しく過ごすことができたのだ。それで、自宅でも犬を飼いたいのだが、自宅は大都会ロンドンにあるので飼うことができないということをベンはよくわかっている。
    ある時、おじいさんか誕生日に犬をあげると言ってくれたので期待が膨らんでいたが実際には毛糸刺繍の犬の絵だったので失望が大きく、心の中で想像の犬を飼い始めた。
    その犬に夢中になりすぎて交通事故に遭ってしまう。

    ベンが回復し、ティリーに子犬が生まれ、自宅も引っ越しし、ついにティリーの子犬を一匹もらって飼えることになる。しかし、子犬を引き取りに行ってみると、想像していた犬とはあまりにも違っていて(生まれたての頃から比べるとすごく大きくなって成犬と同じくらいになっていた)ベンは再び失望する。

    この物語、いったいどうなってしまうんだろう…いいかげんにしろよベン…と思っていたら…ついにベンはこの壁を自分で乗り越えた!ひとつ大人になったね!

  • この本は本当に子ども向けなのかと思うほどに深みがある。子どもゆえに自分の力では変えようがない環境や立場。行き場のない熱烈な想い。楽しく読める本ではなく、全編通して一人の少年の生きづらさが漂っている。自分がこの本の対象年齢(小学校高学年以上)の頃に読んだら、読破出来なかったかも…と思っていたけど、この本には7歳くらいの熱心な読者がいるのだとか。なんかたまげた。それくらい大人が読んでもじゅうぶん読み応えのある本でした。

  • 少年の犬への愛情がよくわかります。おばあさんの粋なはからいがかっこいい。

  • ふむ

  • 生き物はいつか死ぬ。モノはいつか壊れてなくなる。
    何ものもいつかは形を失う。それでも、その影響は形を変え、時代を超えて、次の世代へ受け継がれていく。

  • 犬を飼いたい少年ベンが、まぼろしの犬を見るようになる話。ロンドンに住む少年ベンの夢は、犬を飼うこと。誕生日に約束していた犬を貰えず、代わりに刺繍の犬の絵を貰ったベンは失望する。ベンの犬への渇望は消えず、目を閉じると、刺繍に描かれた犬「チキチト」の姿が見えるようになる。

    100ページあたりの、ベンに幻の小さい犬が見えるようになる場面からものすごく面白くなった。それまではちょっと退屈したが、ベンの犬への渇望を理解するうえでは重要。ここを理解しないと、結末で「チキチト」を「諦める」ベンの成長に深い感動は覚えられないだろう。

    図書館で犬についての本を読み漁り、チワワへの知識を蓄えていくことで、幻の犬の性格や動きがより鮮やかになっていくところがすごく面白かった。

    引越し先候補の家のそばに自然公園があることを発見したベンの喜びや期待も、それを素直に親に言えない気持ちにも、共感できた。

    ティリーが生んだ子犬をついに貰えることになり、ハッピーエンドかと思いきや、チキチトとの違いに再度失望するという展開に少し驚いたけど、チキチトを渇望していたベンの身になればとても自然な描写だと思った。

    そこから、「手にいれることのできないものは、どんなにほしがってもむりなのだ」「ましてや、手のとどくものを手にしないなら、それこそ、なにも手にいれることはできない」という悟りに至り、犬を「チキチト」ではなく「ブラウン」と呼び、一段と深い喜びの結末を迎えた。

    読み応えのある物語だった。

  • 犬が飼いたい主人公。誕生日にもらったのは刺繍の犬。主人公は頭のなかで想像の理想の犬を飼い始める。結末に行き着くまでのカタルシスが見事。

  • 家族のなかで孤立していると感じているベン。
    誕生日に自分だけの犬を貰う約束をしていましたが、ロンドンの街中では犬を飼うことができず、代わりに刺繍の犬をもらいました。
    犬を渇望するあまり、刺繍の犬が本当の犬となって走り回る幻覚を見るようになるベン。次第に幻覚にはまっていきます。
    ベンの様子がおかしいことに気づいた家族は、ロンドン郊外に引っ越してベンに本当の子犬を与えます。
    ここで大団円に終わらないのが、フィリパ・ピアスの真骨頂。まぼろしの小さい犬と現実の子犬の違いを認められないベン。ベンが心のトラウマを自ら乗り越え、現実の子犬を受け入れるシーンは感動的です。

  • ベンは誕生日に犬がもらえると思っていたが、もらえたのは小さな犬の絵。ロンドンでは犬は飼えないという理由で。がっかりしたベンは、目をつぶると現れる空想の小さな犬にのめりこむ。
    少年の成長をみずみずしく描く傑作児童文学。岩波少年文庫版。

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著者プロフィール

1920-2006。イギリスの児童文学作家。『トムは真夜中の庭で』(岩波書店)でカーネギー賞を受賞。短編の名手としても知られ、「二十世紀の児童文学作家の中でもっとも優れ、もっとも愛された一人」と賞賛された。

「2018年 『コクルおばあさんとねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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