ファンタージエン国の危機を救うために冒険する少年アトレーユと幸いの竜フッフール、そしてファンタージエンの危機を救うため人間の子を求める幼ごころの君など、個性豊かなキャラクターがたくさん登場し、ファンタジーな世界の妄想が膨らむお話です。面白いのが主人公の少年バスチアンは現実世界でこの「はてしない物語」の本を通してファンタージエンを観ているということ。物語の途中でバスチアンのいる現実世界と本の中の世界がリンクしているのではないか?という描写がところどころにあります。一番面白かったのは、ファンタージエンになかなか来ないバスチアンにしびれを切らした幼ごころの君が出た行動です。本の中でバスチアンがはてしない物語の本を読み始める文章が始まり、またアトレーユとフッフールの冒険が始まり、そしてまたバスチアンがはてしない物語の本を読み始め…といったループになったのです。これこそはてしない物語。つまり「永遠に続く物語から抜け出したければ、現実世界から本の中の世界に来い!」という幼ごころの君の強硬手段は、なかなか迫力がありました。上巻のお話はここまでで、下巻は本の中に入り込んだバスチアンの冒険の物語です。
正直、上巻を読んだところまでは★5だったのですが、下巻を読み終えて★2になりました…。アウリンという望みが叶うアイテムのせいではあるのですが、バスチアンは自己中で横暴でわがままな支配者に徐々に変化していくのです。冒険中、バスチアンは親友になったアトレーユとフッフールのアドバイスにも腹をたてるばかりで、挙げ句の果てにはアトレーユを追放し、剣で刺してしまいます!のちに自分の過ちに気づいたバスチアンは、アトレーユと再開するのですが(死んでなかった)、「あの時はごめんね」みたいに謝るシーンは一切なし!お互いに多くを語らなくても気持ちは通じ合っている的なやつなのかもしれませんが、せめて一言謝れよと私は思ってしまいました。。。アトレーユは、バスチアンが現実世界に帰る手助けをし、さらにバスチアンがやらかした不手際の後始末までやっておくよとのこと。アトレーユ本当に良い子です。最後はバスチアンは無事に現実世界に帰れてめでたしめでたし、といったお話です。
あとがきを読みますと、はてしない物語には古今東西の文学や思想を踏まえたところが、ところどころに隠されているらしいです。私は世界の文学や思想に詳しくないので単純にストーリーを読んで楽しみましたが、大人だからこそ楽しめるファンタジーなのかなと思いました。また現実世界をファンタジーに例えて表現しているのかな?と感じる描写も多く、考えさせられるシーンもあります。
下巻が鬱展開でバスチアンにイライラしてしまったので★2ではありますが、読んでる最中は続きが気になりすぎて一気に読んでしまいました。