はてしない物語 下 (岩波少年文庫 502)

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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145021

感想・レビュー・書評

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  • ファンタージエン国を唯一救うことのできる勇士として物語の中へ飛び込んでいったバスチアン。
    彼はすらりとした美少年に生まれ変わり、誇り高く毅然とした強さで、合流したアトレーユとフッフールと仲間になり困難を次々に乗り越えてゆく。
    けれど宝のメダル、光り輝く"アウリン”の魔法の力に頼りすぎる代償に、元の世界の記憶は次第に失われていく。
    強さを手に入れるにつれ横柄で傲慢になっていったバスチアンは、自分は「ファンタージエン国の帝王になるのだ」と宣い、帰れなくなるぞ!と忠告してくれるアトレーユとフッフールをとうとう追放してしまう。

    冴えないいじめられっ子だった少年が、物語の世界で勘違いして暴走していく姿には保護者のような視線で見守ってしまった。ただファンタジーに浸りきることはこの年じゃもう難しいのかなぁ…なんて思いながら読んでたんだけど、終盤の展開では怒涛のように金言の嵐がやってきた。特にアイウォーラおばさまと店主のコレアンダー氏が素晴らしい大人だった。迷い、悩み、間違い、失敗するバスチアンという少年をあたたかく導くことができる大人。愛することができるという悦びを教えてくれる。

    「そこへ通じる道なら、どれも、結局は正しい道だったのよ」
    「何一つ失われはしないのよ。」おばさまはいった。「みんな、変わるの。」

    「ほんとうの物語は、みんなそれぞれはてしない物語なんだ。」
    「ファンタージエンへの入り口はいくらもあるんだよ、きみ。そういう魔法の本は、もっともっとある。それに気がつかない人が多いんだ。つまり、そういう本を手にして読む人しだいなんだ。」
    「新しい名前をさしあげることができれば、君はまた幼ごころの君にお会いすることができる。何度でも。そしてそれは、そのつど、はじめてで、しかも一度きりのことなのだよ。」

  • 「汝の 欲する ことを なせ」
    アウリンという何でも叶う宝のメダル。望みを現実にしてしまう力を手に入れたバスチアン。
    ファンタージエンは、人間の欲望、妄想、希望、絶望、さまざまな感情から作られた世界。
    だが、欲望が満たされると少しづつ大事な過去の何かが消え去ってしまう。
    さらに、いつの間にか身についていた慢心さが、慕ってくれていた仲間までも切り捨ててしまう。
    独りぼっちになって初めて自分が真に欲する大切なことに気づく。
    そして、物語はハッピーエンドで完結した。

    と、思いきや、どういう意味?という謎めいた最後の二行が「はてしない物語」を終わらせないものにしている。

  • アウリンを手に入れてから、だんだんと自分の欲するままに行動してしまう主人公が悲しい。色彩が豊かで、想像力が掻き立てられる風景が美しい。上巻の引きつけ方!
    最後の古本屋店主との会話がいい。本でなくても、魅せられて引きつけられて、ファンタジーの中で自分を体験すること。自分を捉え直すこと。そういった体験を語りあえたりする仲間がいること。

  • 映画『ネバーエンディングストーリー』の原作本後半。
    しかし、映画になったのは前半部分のみで、この後半部分は私にとってまったくの未知の世界でした。
     
    上巻は映画を観たことある人にはおなじみ、アトレイユとフッフール(映画ではファルコン)の冒険譚なのですが、この後半は本を読んでいたバスチアンの冒険譚。
     
    想像もしていなかった展開で、読んでいるこちらとしてはすごくもどかしい。
     
    ミヒャエル・エンデが描きたかったという世界。
    『モモ』もそうですが、我々に訴えかけてくるメッセージがとても強い。
     
    映画『ネバーエンディングストーリー』を観て感動した人にはぜひ読んでほしい1冊です。

  • 小学生の頃、本屋で見た、あかがね色の表紙の分厚い本にあこがれて、何年生の時だったか忘れたがとうとう買ってもらって読んだ。たぶん、生まれて初めて読んだ長編小説だったと思う。こんな分厚い本を読むなんて自分はすごい、と思えた。そういう思い出を『はてしない物語』に持っている人は、少なくないんじゃないだろうか。
    あかがね色の表紙のあの本は、いつのまにか失くしてしまった。大人になってからも久しい今、ふいに、はてしない物語、という言葉を思い出して、けれどストーリーは思い出せず、太ったさえない男の子、学校の屋根裏、白い竜、といったイメージだけが浮かんだ。岩波文庫で出ているのを見つけて買った。あかがね色の布のカバーじゃないけど、仕事に行くまでの電車の中で冒険にでて、仕事に疲れて帰ったあと、布団の中で冒険にでるのは、楽しかった。このところ、現実の生活でしんどいことが続いていたけど、はてしない物語を旅している間は、はらはらしているのに心安らかでいられた。
    持ち歩くなら文庫本、と思って岩波文庫を買ったけど、読んでしまうとやっぱりハードカバーの、あのあかがね色の布の表紙の本がほしくなる。

  • 30年ぶりの再読。30年前に購入した単行本は大きくフォントも読みにくかったため、岩波少年文庫で読了。
    下巻に入り読むスピードがやや失速してしまいました。バスチアン、アトレーユ、フッフールの関係がモヤモヤ。アウリンを授けたまま会えなくなる幼心の君もどうかと思うよ…。元帝王の都とか、ファンタージエンの悪意さえ感じたのは穿ち過ぎかなぁ?
    それでもやはりアトレーユが全てを引き受けた場面は感動したし、現実世界でバスチアンが父親と再会できた時には心底ホッとしました。
    やっと読めたという気持ちと、読み終えちゃったという気持ちが混ざって、なんとも言えない余韻に浸っています。

    • だいさん
      モモは再読しないのですか?

      最近のレビューいくつか読ませていただきました。おもしろかったです。
      モモは再読しないのですか?

      最近のレビューいくつか読ませていただきました。おもしろかったです。
      2015/02/28
    • はこちゃんさん
      お返事が大変遅くなり申し訳ありません。『モモ』再読しています。評価の高い『モモ』ですが、個人的にはちょっと説教くさくて(^^;、私はこちらの...
      お返事が大変遅くなり申し訳ありません。『モモ』再読しています。評価の高い『モモ』ですが、個人的にはちょっと説教くさくて(^^;、私はこちらの方が好みです。エンデ自体が説教臭いと言う人もいますけどね(^_-)-☆
      2017/11/23
  • 子供が読んでも大人が読んでも最高と思う一冊。
    本の中に入り込んだバスチアン少年の冒険と、行きつく先。
    何度読んでも面白い。本の魅力というものを思い知らせてくれる。
    エンデはいいなぁ。
    やっぱり文庫じゃなくて「あかがね色の表紙」のやつを買えば良かった。

  • メタファンタジーの傑作。異世界であるファンタージェンの人々や、現実世界の人間であるバスチアンだけでなく、この本の読者すら巻き込んだメタ構造には驚いた。物語は大きく前半と後半でわかれており、前半はよくある普通のファンタジーであるけど、後半になると話も雰囲気も一転し、先が読めない。また心理描写が巧みで、主人公であるバスチアンの心境の変化が嫌というほど伝わり、ファンタジー小説であるだけでなく、主人公が経験を積んで成長していくジュブナイル小説という側面もある。


    ファンタジーエンの物語は膨大で、「けれどもこれはまた別の物語」とだけ書かれ、最後まで語られなかったショートエピソードも多い。けれどこれらの話に、最後に意味を持たせた展開には、痺れた。

  • 児童文学を読んでいると絶対にこの本の名前を聞きますが、ずっと読まずに10数年。。やっと読んでみました。
    上はファンタジーの冒険譚、下は主人公の成長の話でした。上はファンタジーとしてすごく面白かったのですが、下は愚かな主人公が間違いを犯して更生するストーリー(簡略化しすぎですが)です。この下のパターンがとても私は好みでなかった。。一回間違いを犯さないと学べないのか。。とげんなりしてしまいます。このへんは宗教的なことも含まれているのかな。そのへんの知識のベースがないのでただひたすら主人公の愚行を読むのがしんどかったです。

    ただ、本のタイトルの「物語」の枝の広がりにそうやってそれぞれの物語があるよな、と思わせてくれるような本でした。

  • 過去を忘れたものに未来はない。
    未来がないも者には望みがない。
    望みがないと愛することはできない。
    そこから抜け出すには、勇気や友情、信じる強さが求められる。
    これを読む私達にもそれができるかな?
    と問いかけられているような気がしました。

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