モンテ・クリスト伯 下 (岩波少年文庫 505)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145052

感想・レビュー・書評

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  • 勧善懲悪の復讐劇。
    冒頭のエドモンが嵌められるところで、もう腸が煮えくり返っていたということで、この作品の読者を引き込む力は相当なものだと思います。きっとエドモンがなんの汚れもない無垢な好青年として完璧に描かれているからでしょう。
    登場人物は多いようだけれど、それぞれ性格がはっきり分けられているのであまり混乱はしません。(とはいっても、私はダングラールとヴィルフォールが中巻まで混ざっていました。まあ名前が似ているからということで)
    読者としてはばっさばっさと悪者を血祭にあげて復讐を完遂させることを期待するのですが、途中でエドモンが迷い始めるところで若干イライラします。でも読み終わる頃には、その迷いも含めてエドモンの人の良さというか、悪人ではないという人物設定に救われるはずです。残酷な復讐だけでは、エドモンの魅力が半減してしまうもの。
    この頃のフランス文学は因果応報が鉄板のテーマだったのでしょうか。「赤と黒」然り、私の性格に合っているので、この時代に焦点を絞って他も探してみたいと思います。

    ということで、非常におもしろい作品でした。不朽の名作、納得。

  • モンテ・クリスト伯は「岩窟王」という書名でもその名を広く知られている。岩波少年文庫で読んだので、本来よりコンパクトにまとまっているが、それでもモンテ・クリスト伯の魅力は十分に把握することができる。今までで一番面白い本に出会ってしまったかもしれない。上・中・下巻とあるが、下巻では泣き通しだった。エドモン・ダンテスは友人らにはめられ、婚約披露宴中に逮捕され、14年間の牢獄生活となる。出獄した彼はモンテ・クリスト伯という名で社交界に進出し、次々と友人らに復讐していく。

    14年間の牢獄生活の間に、婚約者は自分をはめた友人と結婚。父は飢え死に。復讐するには十分な理由があった。そして、牢獄での老神父との出会いが彼の復讐を実行可能なものにした。物理的にも精神的にもである。

    ページをめくる手が止まらない。
    とにかく、面白い!!

  • 「人を欺き、名誉と地位を欲しいままにしてきた男たちが迎える結末とは。「待つこと、そして希望を持つこと」 モンテ・クリスト伯の最後の言葉の意味とは。愛と正義に貫かれた人間ドラマのクライマックス。]

  • " アンドレアはとぶようにして部屋へはいると、カドルスの手紙に火をつけて燃やし、灰のあとまで消してしまった。" P.76

    "「いやだ」とカドルスはいった。「いやだ。神さまなんていやしない、摂理なんてありゃしない、ただ偶然があるだけなんだ」" P.105

    読中、ちょっとぐぐったりすると「モンテ・クリスト伯はラノベ」だとか「モンテ・クリスト伯はなろう」とかヒットしたりする。
    この作品に限らず、他の文学作品にもそう思うことはある。「名作、古典、文学」というラベルは、「ラノベ、なろう」などのラベルと競合しないということに気付かされる。『はつ恋』なんて、タイトルの少女漫画感とは裏腹に、すげえNTRだしな!

    エドモン・ダンテスはダーク・ヒーローであるし、傷のある男でもある。人気が出ないわけがない。「眼光鋭く覆いかぶさるように威圧する影」という描写は多くの漫画作品にもさり気なく登場するが、原点はモンテ・クリスト伯にあったりするのかなと思ったり思わなかったり。
    当時の読者はおそらく、現代において週刊少年誌の連載に熱狂するかのごとくこの作品に熱狂したのだろう。

    そもそもいい年になっていまさら未読の名作作品を読んでみようと思った理由はFGOで、なんでエドモン・ダンテスが主人公たるプレイヤーキャラクターを共犯者あつかいしてんの?という疑問から発した。
    わかるような分からんような。明示的な理由は見いだせなかったし、暗示的なものは一読では抜き出しできない程度におぼろげだ。「待つこと希望を失わないこと」の一言に由来するのかもしれない。
    最新の幕間では主人公のトラウマあるいは罪悪感を、主人公のあずかり知らぬところで忘却させているというというような描写もあった。原典たるモンテ・クリスト伯は暗躍はすれど、そんな働きを見せたことはない。換骨奪胎のたぐいであろうが、さて。

  • 入院中に読破。
    男の復讐の物語。
    福岡さん紹介、既に購入は全7巻でもっと重厚感があったように思う。
    長編は考えさせられる。待つこと希望を失わないこと。

  • 長くもなく、文字も大きいため読みやすい本です。

    デュマの作品は三銃士から入りましたが、この本も同様に貴族の暮らしが垣間見えるようでワクワクして読み進めることが出来ました。
    単に復讐譚で終わらないあたり、大人から小さい子まで、考えを深められそうな一冊でもあります。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/722655

  • オリジナルは1844−46年。新聞連載。

    子供のころ、親世代の本で読んだ「巌窟王」。
    再読しようとまずは岩波少年文庫で手に取った。
    いずれはオリジナルを読みたい。
    (ちなみに、子供のころ、ほぼ同時期に同シリーズで「鉄仮面」を読んだ。こちらはデュマではなく、ボアゴベ→黒岩涙香原案バージョンだったようだが、未来ある青年が全てを奪われて投獄される、青年には婚約者がいた、という点で、巌窟王と鉄仮面は似たイメージがあった。実際は舞台となった時代にけっこう開きがあり、鉄仮面はルイ14世で17世紀、一方のこちらはナポレオン以後で19世紀の物語だった。)

    さて。
    巌窟王の物語は前半のドラマが凄まじくて、私の印象もほぼそれで終わっていた。
    しかも今回これが実話ベースだったことを知り、非常に驚いた。
    モンテクリスト伯が蘇ったとき、どんな復讐をしていくのだろう、とワクワクしながら中巻下巻を読んだ。
    中巻はちょっと中だるみを感じた。
    アンドレア・カヴァルカンチとか、ルイジ・ヴァンパとか、話を伸ばしてるだけじゃない〜?と思ったが、下巻に入り、子供世代の物語が複雑に絡み合うと面白くなってきた。
    アンドレアも非常に得難いキャラで、退場間際の言動が清々しいほどだった。

    モンテクリスト伯の復讐について
    フェルナン→ダンテスへの悪意はそんなに強くない。自身のジャニナ時代の悪事をバラされて名声を失い自殺。
    ヴィルフォール→ダンテスへの悪意はないが、自身の父との政治的立場の違いから保身のためにダンテスを見殺しにした。家族を失い、アンドレア(ベネデット)の存在をバラされて発狂。
    カドルス→アンドレアに刺されたチンケな死に方。
    ダングラール→最もダンテスに悪意をもち、彼をおとしめた人物。にもかかわらず、成敗が最後だったためか、モンテクリスト伯が虚無モードに入ったおかげで、洞窟でボッタクリに遭っただけで助かった奴。本当にそれでいいのか、復讐しまくるべき相手はこいつではないのか??
    というかんじで、ちょっと霧の中。

    東南アジアの物語だったら、きっと親の因果が子に報い的な流れで、子供世代も一緒に片付けてられていると思うが、この作品では子供世代はちゃんとしており、親の悪事の精算を真摯に受け止めて再出発している。
    モンテクリスト伯も、ちゃんとそれを助けている。いい奴。

    最後に個々の人物について
    ・ノワルチエ氏…キャラたちすぎ。きっと生き残ると思ってた。フランツとの婚約破棄シーン、かっこよいではないですか。
    ・ヴァランチーヌ 影薄い。ヒロイン。
    ・ウジェニーとダルミー嬢
    百合の逃避行シーン、良かったと思う。スピンオフとか書いて欲しいよ。彼女らの価値観は新しいもの、ということかな??
    ・子供世代の男キャラが多すぎて何がなんだか、ですが、フランツが一番好きだなあ。

    ・エデ
    いい。養女としてではなく、モンテクリスト伯を愛しているんだなあ。
    物悲しい褐色肌美女(美少女)を連れている、あまり食事をとらない白い肌の金と教養と人脈のある謎の男、って絵になるわ。
    エデと旅立つという終わり方もすごくいいと思う。
    メルセデスは可哀想だけど、これはこれでいいんだよ。

  • 読みやすいと思う
    上→熱い、いい導入
    中→読み手としても若干中弛み、いろいろ工作してた気がするけど印象が薄い
    からの下巻
    ほとんど伏線回収って感じだったけど、いい回収の仕方だったと思う
    それぞれの相手にあった自滅のさせ方だった
    途中良心の呵責、自分の行いに対しての猜疑心が生まれたところはもっと人の心を殺していけよって意味わからん応援の仕方をしてしまった
    最後どんな風に締めくくるのかと思ったけど、生き残った人達はちゃんと自分を確立して生きて欲しいなって思ったいい終わりでした

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著者プロフィール

1802-70。フランスを代表する小説家・劇作家。生涯に長短合わせて250篇あまりの作品を書いたとされる。主な作品に『コルシカの兄弟』『モンテ・クリスト伯(巌窟王)』『三銃士』『ブラジュロンヌ子爵(鉄仮面)』『ダルタニャン物語』『王妃マルゴ』『王妃の首飾り』など。

「2016年 『ボルジア家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アレクサンドル・デュマの作品

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