羅生門・杜子春 (岩波少年文庫 509)

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  • / ISBN・EAN: 9784001145090

感想・レビュー・書評

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  • 教科書に載っていた短編もあるはずなのに、何となくでしか説明できない芥川の作品。
    はるかな昔、確か読んだはず。
    これはもう、受賞作を読む以前の問題だわと、今回読み返してみた。
    決して読みやすくもなく、むしろ扱いにくい作品の数々。
    なじみのない言葉や表現にも臆さず、12の短編を読み終えて思うことは、人間の心理を短い作品の中にギュっと凝縮しているなぁということ。
    誰しもが持つ弱さや卑屈な部分、過ちを犯してしまう瞬間の心の動き、ふとしたきっかけで変化していく心の描き方が、本当に上手い作家さんなのだ。

    あまりに有名な『羅生門』は、大正4年(23歳の時)、「新思潮」に柳川隆之介の名で発表されたという。
    結婚まで考えた女性がいたが、祖父母の反対でそれも叶わず、傷心の中で書かれたものらしい。
    生きる意欲が自身の中に湧き上がるよう、この作品で鼓舞したかったのかと始めは思ったが、読み返すとどうもそれだけではないように思えてくる。
    主人公である「下人」に、世間に逆らう生き方をさせたかったのだろう。
    飢え死にしたとしても盗みはすまいと思っていた男が、手段を選ばず生き延びる行動に走る。
    自分には出来なかった生き方を、この作中で昇華させたのでは。。。
    まぁ、『羅生門』に関しては、黒澤映画の方が数段好きなのだけどね(笑)

    漱石が賞賛したという『鼻』も登場する。
    どんな風に賞賛したかというと、『今昔物語』を元にしたというその博学さと文章の上手さだったらしい。
    話し言葉がそのまま文章になっているかのような饒舌な作品を読んだ後で芥川を読むと、簡潔すぎてあっけないほどに感じてしまうかもしれない。
    しかし、一見短く感じる作品に、なんと豊かな日本語が登場することか。
    芥川が10ページで表現した作品を、今の作家さんだったら何百ページ費やすだろうと、そんなことを考える。

    『トロッコ』の、少年の心の変化。(私も乗ったことがあるけど、あれは怖い、そして楽しい!)
    鮮やかな蜜柑色が眼に浮かぶ、『蜜柑』。それを見ていた主人公の心の動き。
    静かな感動を誘う『杜子春』、こんなに壮大な話だったかと驚いた『芋粥』などなど。
    岩波少年文庫で読んだのだが、子どもだけのものにしておくのはもったいない。

    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      ようこそいらっしゃいました(笑)!!
      わぁお、『杜子春』も読まれたのですか。
      あの話は終盤にむけて...
      vilureefさん、こんにちは♪
      ようこそいらっしゃいました(笑)!!
      わぁお、『杜子春』も読まれたのですか。
      あの話は終盤にむけてどんどん良い話になっていくので、読んでてほっとするところがあります。
      Eテレは子供向けに面白い番組を作りますね。
      特に朝のうちは、気が付くと長時間見ている時がありますよ。

      はい、中江有里さんの本はその意味で危険です(笑)
      私も文字を読むことそのものが好きなので、食品のパッケージとか薬の能書きとか、
      常に何か読んではいるのですが、それとはまるで別のレベルです、300冊は!!
      でも一冊の読み物としてじゅうぶん楽しめますので、どうぞ読んでみてくださいませ!
      2014/08/20
    • だいさん
      今でも、教科書に載っているのでですか?
      今でも、教科書に載っているのでですか?
      2014/08/20
    • nejidonさん
      だいさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!

      はい、今でも載っているらしいですよ。
      高校一年の国語の教科書に、全国一斉に...
      だいさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!

      はい、今でも載っているらしいですよ。
      高校一年の国語の教科書に、全国一斉に『羅生門』が載った年がありました。
      扱いにくい作品なので、教師の狼狽ぶりが見えるようです(笑)
      あとは『鼻』『トロッコ』『杜子春』という定番、『蜜柑』も人気のようです。
      言葉は難しくても主題がはっきりした短編なので、子どもたちは読みやすいかもしれませんね。
      2014/08/21
  •  他に、「蜘蛛の糸」「トロッコ」など、全12編。

  • [日本の古典に題材をとった「鼻」「羅生門」「芋粥」をはじめ,「魔術」「トロッコ」など,さまざまな人の心をするどく描き,独特な世界をくりひろげた芥川の短篇を収める.]

  • 何というか、読後の満足感がすごい。言葉の美しさ、表現の豊かさ。読後感の爽やかなものもあれば、不条理を噛み締めるものもある。一気に読み進めてしまうのが勿体ない。個人的には『魔術』が好き。グローバルに開かれた現代に読むと、甚だ混乱した箇所はあるのだが、それも含めて面白い。

  • 中学生時代夏休みの宿題、読書感想文で読んだ。
    賞をもらった思い出の本

  • 「鼻」をはじめ、「羅生門」「芋粥」など12編を収録。1話1話は長くはないものの、その中で広がる世界は無限大である。

  • 芥川龍之介の複数の作品がまとめられている。教科書で読んだものもあるため読みやすいのではないか思う。

  • 息子が小学生の頃読んだ本を何気に手に取る。
    芥川龍之介、ゴイゴイスーだ。
    特に蜜柑が秀逸。歴史に名を残す小説とはこういう作品集なのだと痛感。

  • 鼻がおもしろかった。
    ゆでて、ふんで、ゆでると鼻がちぢまるなんて考え付いたことがすごい!

  • 羅生門、杜子春をはじめ芥川龍之介の短編名作が集合。芥川というと難しいイメージだがそんなことはなかった。もちろん深読みすればきりがないでしょうが。

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著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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