あのころはフリードリヒがいた (岩波少年文庫 520)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145205

感想・レビュー・書評

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  • ◆ヒットラーユーゲントの熱心な一員だった作者が筆を抑えて記さざるを得なかった文章。その意志の強さに言葉を失う。◆同じアパートで一週違いで生まれた「ぼく」と「フリードリヒ」の17年間(1925〜42)。幼児のころから、一つずつ二人の違い(=ユダヤ人の徴)が記されていく。作者は、出来事のみを感想や判断を挟み込むことなく淡々と記す。従って、それを判断しそれによって巻き起こる感情は、読み手自身の責任で引き受けるしかない。重い重い読書だった。◆フリードリヒを失った「ぼく」のそれからは『ぼくたちもそこにいた』に続く。
    ◆中学校国語教科書掲載「ベンチ」以外は初読。中学生のころは、読んでも(あるまじきこととは思っても)こんなに辛くはなかった。それは、私が幼かったということ。作中の「ぼく」と同じように。
    ◆集団心理が変わっていくのが、そして理性ある人々も生活を守るために行動を変えざるを得ないところが、物凄く怖い。
    ◆ムスコが初めて〈教科書で続きを読まずにいられなくなった〉本。
    私も彼らと同じ年代で読んでおけばよかった。ちゃんと作品がムスコに伝わっているかどうかは不安だけれど、今の彼の心で受け止められるだけ受け止めることが大事なのだとも思う。

  • 読みながら苦しかった。読み進めるうち、徐々に苛烈になっていくユダヤ人迫害。深くなっていくフリードリヒ一家の絶望。シュナイダーさんの、ユダヤ人への迫害が20世紀という理性ある時代にもなって、そこまで酷いものにはならないだろうという期待に、胸が詰まった。どうしてこんな結末にならなければならなかったのだろうと思いながら、これが現実にいくつもあった出来事の一つなのだと思うと、頭が痛かった。アンネの日記とか戦争関係のものはいくつか読んで知ってたのにね。でも読んでよかった。
    著者自らの経験をつづった3部作ということで、他の2作品もゆっくり読もうと思う。
    ユダヤの文化について注付きで細やかに書かれていて面白かった。

  • 小学生の時に読んだが再読。
    フリードリヒを、どこか遠くの昔の誰かとしか捉えられなかった昔とくらべて、今はもっと身近に感じられ、残酷すぎて読むのが辛かった。
    主人公が集団心理に負けてユダヤ人の家を襲うシーンが強烈に怖かった。

  • 私が中学生の頃に読んだ一冊です。誰でも読めますし、オススメです。読み終わった時の喪失感は、言葉で言い表すには難しいものがあります。私が「社会」なる怪物の様なものの存在を意識させられた原点とも言える作品です。
    ドイツ人で、フリードリヒの友人である「ぼく」の視点で描かれるユダヤ人迫害の時代の物語です。ナチス政権下の時代に、ユダヤ人であるフリードリヒとその家族が崩壊してゆく様子が生々しく描き出されています。
    何かがおかしい、どこか歯車が狂っている、そう気づいた頃にはもう遅いのかもしれません。多くの未知なる不幸が訪れる前に、それを防ぐにはどうすれば良いか、本書をきっかけとして考えさせられました。色々な感情がこみあげてくるので読むのは疲れますが、是非人生で一度は触れてほしいと思える、そんな名著です。

  • 子どもの時読んで声を出して泣いた本。
    社会の流れの中で図らずも弱者になっていく人の姿をみて幼心にとても怖かった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「幼心にとても怖かった。 」
      時代に流されないようにするには傍観者であってはならないと思いますが、、、悲しいですが、私にはそれが出来るか判ら...
      「幼心にとても怖かった。 」
      時代に流されないようにするには傍観者であってはならないと思いますが、、、悲しいですが、私にはそれが出来るか判らない。。。
      「フリードリッヒ・・・」に続く2冊も是非お読みください。
      2013/01/24
  • 暗いテーマとわかっていたため、今まで読むのを避けてきた本。「ぼく」が、ユダヤ人の家を破壊する行為に次第に興じていく場面が、当時の世相なのだと思うと、人間の狂気に震える。訳者のあとがきによれば、作者はぼくやフリードリヒと同じ1925年生まれ。
    ヒトラー台頭の直前、彼ら家族が遊園地の木馬上で6人一緒に記念写真を撮った場面の挿絵が尊い。本当に本当に悲しい物語。

  • ナチスによるユダヤ人の迫害。
    市井の人々の目線で描かれるとまた違う迫力がある。
    進んで暴力に加わるもの、躊躇いながらもその力に陶酔してゆく者、抗い信念を貫こうと苦しむ者。
    岩波少年文庫、大人の胸にも強く残る作品だった。

  • 救われないのか。希望はそこにあったはずなのに。
    読んで損はなし。戦争においての一つの視点だろう。

  • ナチスの負の部分、加害者としてのドイツについてじっくり学ぶドイツ。
    映画「シンドラーのリスト」を観たり、この小説を読んだりする。それは悲劇を繰り返さないため。これに尽きる。ドイツ人のコラムニストの記事に触れこの本を再度読んでみた。

    翻って昨今の日本はどうだろうか。
    日本の加害の部分に触れる物語より、被害の部分に触れる物語が増えているような気がする。
    加害の部分に触れすぎて、自国にネガティブな感情を持ちすぎるのも考えものだけど、ドイツのように自国の負の部分を常に振り返る習慣は見習いたい。
    戦後生まれの人が増えている今だからこそ。

  • 寮の破壊に加わるシーンが心に深く刺さっている。

    煽動されてしまう
    引き寄せられてしまう
    同調してしまう

    「人は弱いものだから」
    そんな言い訳で済まされることではないのだけど、
    差別行動に限らず、
    世の中は気付かないうちに引きずられていってしまうのだと考えると
    恐ろしくてたまらなくなった。

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