- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001145649
感想・レビュー・書評
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「力量につりあわない人情はだめだと思うね。」
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病気のため寝たきりのまま、女房の台所のおとに耳をすます。その心の中身を見通しているのか?敏感に感情の変化を感じ取る。清々しいおと。しずかなおと。春雨のような揚げ物のおと。おとと愛情が重なって、静かに泣ける。
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このサイズ、この重み。岩波少年文庫にはいつもきゅんとくる。図書館の棚で、プーさんやドリトル先生と同じようにこの本が並んでいるのは、なんだかヘンテコな感じ。
文さんならなんて言うだろう。案外平気でおもしろがって、自分からプーさんと手をつなぐだろうか。 -
随筆→小説→随筆
の順で載っており、
やはり随筆でないほうが
好きだなと読み進めていたが
最後の「終焉」でやられる。
この作家の唯一読んでいた作品が
「流れる」だったので、出てきたのが
女性ばかりだったが、
この作家の書く男性も、
凄く魅力的だ。
「みそっかす」も読み、
この作家も、お父様も、お母様も
素敵な方で胸打たれる。 -
大好きな幸田文さんの本を岩波少年文庫で見つけた。
読んだことのあるものとないものが入り混じっていたが、表題の「台所のおと」
は初めて読んだ。(「みそっかす」は読んだことあり)
著者得意の人情の機微が台所仕事で生まれる「おと」に込められており、心に沁みたり、ホロリとさせたりする。
料理人のとても繊細な感性や心意気が感じられ、またこれまでの人生の悲しみやそれを経て出会った夫婦の愛情がにじみ出て温かく切ない気持ちにさせられる。
いつも、あまり幸せではなかったけれど、凛とした、性根のまっ直ぐな人の気持ちを描くのがうまい。
「都会の静脈」もとにかく観察眼と表現力には圧倒される。
当たり前のように水を使い、水を捨てているがその先にはこんなにいろいろな仕事がなされているのだなぁと改めて思った。 -
中学生以上。台所のおと、祝辞、どれもいい。味わいながらゆっくり読める。
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幸田文さんと言えば、幸田露伴のお嬢さん。 ず~っと昔、幸田露伴の「五重塔」を読んだ直後に、そのお嬢さんである幸田文さんの「父・こんなこと」を読んでみようとしたことがあるのですが、当時の KiKi にはどことなく古臭く感じられる一切合財(特に露伴さんのあれこれ)が何となくうざったくて、なかなか前へと読み進めることができず挫折したというありがたくない思い出があります。 そして当時の KiKi は日本人の女流作家の描く日常的なアレコレを言語化したものに対する興味がすこぶる薄くて、そのことが「読み進められない挫折感」をさらに助長しました。 何て言うか、生活臭が強すぎてつまんない・・・・というような感じでしょうか?
(全文はブログにて) -
作家 幸田文の随筆や小説を孫である青木奈緒が編んだ一冊。岩波少年文庫として編まれたことに、まずは驚きました。中学時代にこの本と出逢っていたら、また別の読書世界に誘われたでしょう。
倒木したえぞ松の上に新たなえぞ松が着床し芽吹き育つ様子や、都会の下水道や救急活動を見学するルポ的文章に死生観を感じます。そして生活の挙手を丁寧に描いた小説には、地に足ついた重みを感じ、父 露伴との思い出を綴った随筆にはユーモアを感じます。幸田文への、そして新たな読書への入口に最適な一冊でしょう。 -
淡々としているのにあまりに美しく力強く迫ってくる文章に心がふるえます
読み始めてからずっと感動しっぱなしでした
これが100年前の人の文章なのか あまりの新鮮さに戸惑います -
エッセイ・随筆を読むと、幸田文サンがとてもキチンとした、丁寧な女性だというのが伝わってきました。そして小説を読むと、幸田文サンをとても好きになりました。小説に出てくる人物の丁寧さ、素直さ、暖かさ、姿勢にはハッとなります。