おとぎ草子 (岩波少年文庫 576)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145762

作品紹介・あらすじ

おなじみの「一寸法師」に「浦島太郎」、いじめにたえて幸福を手に入れた「鉢かづき」姫、若い娘たちをさらう恐ろしい大江山の「酒呑童子」…遠い昔に生まれ、人びとに愛されてきたおとぎばなし7編を、いきいきとした日本語で。中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • 降雪のニュースを観ていたら雪を頂いた大江山の姿を思い出し、「そうだ!酒呑童子の話を読み直してみよう」と相なった。
    大岡さんの流麗な文章が好きなので、この文庫に。
    全七編。日頃聞きなれた話とのあまりの違いに驚いたり喜んだりの新鮮な読書体験だった。

    「一寸法師」は、やっと授かった子であるのに、あまりの成長の遅さに親に疎まれたという。
    そして本人は、なかなかの知恵者で確信犯的な生き方の末幸福を手に入れる。
    「浦島太郎」は、たまたま自分で釣り上げた亀を逃がしたというのが始まり。
    乙姫という名はなく、ただ「妻」もしくは「女」と表記されていて、浦島太郎との仲はほとんど純愛と言えるほどロマンチック。
    もっと驚くのは「鉢かづき」で、いじめの描写が想像以上に多い。

    以下、「唐糸そうし」「梵天国」「酒呑童子」「福富長者物語」と続くのだが、どれもよく知られている話より数段生々しく、登場人物たちの気持ちもよく描かれていて面白い。
    一般に流布している昔話は、子供向けにあらすじだけで綺麗にまとめられたのだと分かる。
    あっさりしているのが日本の昔話の特徴とは言え、こちらの元の話を読むと違いが明白。
    たった七編とは言え、収穫は大きい。
    御伽草子の中で、活字になったものと写本で伝わるものを合わせると五百編にもなるらしい。
    いにしえの人々がどんなに夢中になって読みふけったか、想像するとますます楽しくなる。

    興味深いのは、ここぞという場面で登場人物たちが和歌を詠むこと。
    現代語訳では真っ先に省略されそうな部分だが、それである種不思議な情緒が漂っている。
    また、神仏への祈りや誓いがどの話にも出てきて、それだけ現代よりはるかに神様たちが身近だったのだと見直すことにもなった。
    荒唐無稽と笑ったりせずに、そのことの意味を考えると興味が尽きない。

    肝心の「酒呑童子」はと言うと、住吉・八幡・熊野の三社の神の手助け無しではなし得ない武勇伝となっている。
    荒々しくも恐ろしい話で、気の弱い方にはお薦め出来ないほど。
    いやぁ、子供の頃はやはり絵本で良かったのね。
    大人になってこちらを読み、絵本を再読してどこが何故省かれたか想像するという楽しみもある。

  • 御伽草子は、室町時代から江戸時代の初期にかけてつくられた、数々の短い物語をまとめて呼んだもの。これを人々が語り続ける中で、子どもにもわかりやすい『昔話』や、地域や時代によって変化したストーリーとなって今も伝わっている。その多くは、現代の感覚で読めばあまりにも荒唐無稽だが、貴重な古典文学作品の一つとして位置づけられている。

    昔話のオリジナルはなかなか刺激的!単に子ども向けではない昔話を、ぜひじっくりと読み味わってほしい
    (Z会『ほんとうの「国語力」が身につく教科書』より紹介)

    現代語に訳したのは詩人の大岡信さん。

  • 一寸法師に浦島太郎などの日本で長く読み継がれてきたおとぎ話を楽しむことが出来る。

  • 一寸法師や浦島太郎の話は見たことがあるだろうが、書かれた時代の価値観をじゅうぶん反映させている原文を是非よんでほしい。その入門として訳したものをよませたい

  • いろいろな話があっておもしろかった

    「鉢かづき」が特にじーんときて、よかった

  • この中で KiKi にとって人生お初だった物語は「福富長者物語」のみだったのですが、それ以外の物語も少しずつ、KiKi がかつて読んだことがあって「知っていたはずのお話」との違いがありました。  どの物語よりもその差が大きかったのは「一寸法師」でした。  つらつらと思い起こしてみると「一寸法師」というお話は絵本でしか接したことがなかった(同じようなスモールサイズの主人公の活躍譚は数多く読んできているけれど)ような気がしないでもないので、ここに収録されているようなあらすじ(一寸法師の親であるおじいさん & おばあさんがいつまでたっても背が伸びない一寸法師を疎んじる・・・・・とか、家を出てお仕えした宰相殿の姫君に一目ぼれして彼女を手に入れるために策略をめぐらす・・・・とか)ではちょっと「お子ちゃま向け」とは言えないのかもしれませんが・・・・・。

    この本の素敵だったところは、いくつかの物語の中で登場する和歌が省略されることなく掲載され(しかも読みにくそうな漢字にはルビ付き)、さらにはその後にその歌の大意も記載されていたことです。  こういう「子供向け」のお話では往々にしてカットされてしまうこれらの和歌が載っていることにより、「古い時代の日本人の心根」とでも言うべきものが香り高く滲み出ているようで、大人の KiKi には読みごたえがありました。

    (全文はブログにて)

  • 「一寸法師」は姫をやたら汚いやり方でだまくらかしてものにする。
    日本の昔話は草食系男子のルーツばかりかと思っていたが、どうしてどうして…狡猾さと大胆さを兼ね備えていた。この身の上で生き抜くには、汚かろうがなんだろうが、このくらいの策略をめぐらす知恵が必要というわけだ。
    「酒呑童子」の源頼光がむちゃくちゃにかっこいい。神達の支援をうけたとはいえ肝が太い剛の者。こんなに頼れる男性についぞ出くわしたことはないので、やはり、草食系は平成独自なのかもしれない。

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著者プロフィール

昭和6年、静岡県三島市生まれ。詩人。東京芸術大学名誉教授。日本芸術院会員。昭和28年、東京大学国文学科卒業。『読売新聞』外報部記者を経て昭和45年、明治大学教授、63年東京芸大教授。平成2年、芸術選奨文部大臣賞受賞。平成7年恩賜賞・日本芸術院賞、8年、1996年度朝日賞受賞。平成 9年文化功労者。平成15年、文化勲章受章。著書に『大岡信詩集』(平16 岩波書店)、『折々のうた』(昭55〜平4 岩波書店)など多数。

「2012年 『久保田淳座談集 空ゆく雲 王朝から中世へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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