第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)

  • 岩波書店
4.17
  • (65)
  • (62)
  • (33)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 641
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145793

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ローマ帝国を背景とした小説を探していて、偶然この本を見つけました。
    最初は、児童文学という事で軽い気持ちで読んでいましたが、魅力的な登場人物と良く練られたプロットそして、ブリテン島の美しい情景の描写に引き込まれてしまいました。
    物語の中で、主人公であるローマ人のマーカスに彼の友人であるブリトン人のエスカが、ローマの文化とブリトンの文化が相容れないことを
    マーカスの身に着けている短剣の鞘の規則正しい模様と彼の持っている楯に彫られた流動的で生命のある曲線を比較して説明するシーンがありましたが、この部分が非常に印象的でした。

  • BSフジ「原宿ブックカフェ」のコーナー「ブックサロン」で登場。
    http://harajukubookcafe.com/archives/598

    ゲスト上橋菜穂子さんの人生を変えた一冊。

    「高校生の時に初めてこれを読んで、『わぁ、すごいなあ』と思いました。高校生の頃私は人類学を知らなかったんです。歴史学をやろうと思ってたんですけどね、でも大学に行って出会ってしまって。多用な民族と暮らす経験は、日本だとあまりないんですよね。でも、征服したり征服されたりということが生々しい現実としてある世界に生きてる人は、こういう実感をもって書くのかとか、この作品を書いたローズマリ・サトクリフだって現代の人なのに、煙の匂いさえ感じたんですね。この描写の凄さに圧倒されて、物語ってこうも書けるのかと思いましたね。こんなものを書いてみたいと思いました。憧れになりましたね。」(上橋菜穂子さん)


    原宿ブックカフェ公式サイト
    http://www.bsfuji.tv/hjbookcafe/index.html
    http://nestle.jp/entertain/bookcafe/

  • 百人隊長であるマーカスは、はじめての戦いで負傷し、軍人生命を断たれる。叔父のアクイラのところに身を寄せていたが、父が隊長をつとめており、象徴であるワシと共に消えた第九軍団の謎を解くため、エスカとともに北へ旅立つ。骨太の歴史ロマン。

  • 情景描写が素晴らしく、歴史小説の魅力満載。こういうのを読みたかったんだよ、と嬉しくなり、急ぎすぎないよう自制したほど。ローマ帝国の歴史やローマ軍の制度などに明るければ、より楽しめたのかも。シリーズ読破したいわ〜。

  • 紀元2世紀のブリタニアを舞台にした歴史冒険小説。60年前に出版されてるけど全く古さを感じさせない。児童文学に分類されているけど大人のほうが楽しめると思う。
    上質なファンタジーは、読んでいる間は周りの音が聞こえなくなるほど没頭出来て、読み終わって現実に戻ってくると世界が少し良くなって見える。これもそういう一冊でした。

  • ローマンブリテンの物語。ローマ軍の若き百人隊長マーカスは、赴任したブリテンでの初めての氏族との戦いで足を負傷し、将来の夢を断たれる。そして、マーカスが子どもの頃北辺の地に消えた父の第九軍団の謎と失われたワシの行方を求め、軍団の名誉の回復、再興を夢見て、ブリテン人の友エスカとともに未開の氏族たちの地への冒険の旅を始める。

    ローマ時代の生活を丁寧に描写し、読む人をローマブリテンの世界に誘う。

    冒険を始めるまでの生活のゆったりとしたときの流れと冒険を始めてからの手に汗握る展開の対比も面白く、とても楽しめた。

    中学生以上となっていますが、何のために生きるのか、何のために命をかけるのか、大人向けのテーマかな。

  • すこしずつ読んでいます。
    すごくすごくおもしろくて、やっぱり岩波少年文庫はすげーってしみじみおもいつつ噛み締めている。
    なんでこどものころ敬遠して読まなかったかなー、残念だなー、とおもいつつ、でも、やっぱりこの作品はいま、はたちもなかばを過ぎて読んだほうが染みるものがあるのではないかとも、おもう。
    それはすごく個人的な理由ですが。
    わたしは、足がよくないので、それは先天的なものだけれども、その事実があきらかになったのは中学にはいってからだったので、そうしてこのお話の作者サトクリフは、作者紹介によると車椅子生活をされていたかたで、このお話の主人公のマーカスは戦闘によって足の自由をなかばうしなったひとで、という前置きのもとに、このお話のなかに出てくるせりふを。

    「もし任務を果たすために駆けなくてはならないとなったら、わたしの足はたしかに重荷になるでしょう。それは認めます。だが、いずれにせよ、馴れない国では、あくせくしたってはじまらないではありませんか。」

    この言葉がどう聞こえるか、それはたぶんひとによってことなるけれど、わたしは、いまのわたしでこの言葉にふれられたことがうれしい。
    足のことでひねこびていたこどものこれならまた違ってとらえていたろうし。


    あと、マーカスが、足がわるいせいで自分がしなければならないことができないってぷんすかするときに、続ける、エスカの332ページ一連の台詞がほんとうにやさしい。



    かかえこんで枠を築いて自分だけべつの場所にいるようなもの云いは基本すきじゃない、けど、よのなかどこを向いてもそれしかない「健常」の物語たちに、ほんとうはずっと疲れていたんだなと、サトクリフの作品を読むと気づかされる。
    細部のリアリティというか、そういうのが。
    身の障りが皮相のできごとではなくして語られる、そんな作品。
    が、すき。
    けどそういう点から読んだ解説や論にはまだあたってません。
    でもね、あるよ。
    ていう。
    サトクリフ作品を読んだときの安堵感を、だれかと、語れる日がきたらいいなとはなんとなくぼんやり、おもっています。

  • イギリス児童文学の代表的な作品として、読んでおくべきと別の司書より推薦されて読みました。

    職業軍人として出世を夢見ていたローマ軍団の百人隊長マーカスは、戦闘で負傷し、武功を得るも軍人生命を絶たれることになります。伯父の元に身を寄せたマーカスが、自身の「使命」として打ち込んだのは、亡き父が率いた軍団の象徴であった、「ワシ」の像を辺境の蛮族が戦利品として、また”神”として祀っているという噂の真偽を確かめることでした。剣闘士であったエスカとともに、ローマと敵対する氏族の支配地域へと旅経つ二人の冒険物語です。

    主人公マーカスの、伯父やエスカ、また冒険を通して出会った様々な人物との触れ合いを通して揺れ動く心情の機微が細やかに描かれています。
    また、マーカスとエスカの旅する地域の情景描写も精密で、臨場感があり、スリリングでもあります。

    一方で、当時のローマン・ブリテン時代の習俗がしっかりと描かれている(らしい)のですが、その前提となる知識がないので、世界観に完全に没入することができなかった、という印象でもあります(もちろん、作品としては楽しむことができましたが、よくわからない時代劇を見ているような感覚もすこしばかりありました)。

    冒険小説や歴史小説が好きな人、特に指輪物語のような世界観が好きな人であればより楽しむことができるかもしれません。
    岩波少年文庫というレーベルではありますが、大人でも十分に楽しむことができる作品だと思います。

  • 圧巻。1900年ほど前に、あったかもしれない命がけのドラマ。エトルリアで生まれた男がブリテン島に渡り、北壁の向こうケルト人の国(現スコットランド)へローマ軍のシンボルを求めにいく道筋を、タイムスクープハンター要潤のように横で見ることができます。『ともしびをかかげて』のファミリーのルーツがここにあります。
    4部作と言われる『辺境のオオカミ』『銀の枝』もよまなきゃ。

  • ローマ時代のブリテンが舞台の物語。ローマ軍団百人隊長のマーカスは足を負傷し退役する。マーカスは行方不明となった父の軍団の象徴である「ワシ」を求めて、元奴隷のエスカと共に北の地に旅立つ。
    何とも骨太の物語でした。まず、この時代の風物がしっかりと描写され世界に引き込まれます。そしてローマ人であるマーカスが他の民族と出逢い、自分たちとは違う民族のこと(それは征服者と被征服者であったり、侵略者であったりするのですが)を知っていくにつれ、世界が広がります。
    そして終盤ワシを奪取して逃走する際の緊迫感。またマーカスとエスカの主人と奴隷という立場から解放され、友情を深めて親友となる様子も素敵です。
    実に濃密な読書体験でした。

全66件中 1 - 10件を表示

ローズマリ・サトクリフの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×