銀の枝 (岩波少年文庫 580)

  • 岩波書店 (2007年10月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784001145809

みんなの感想まとめ

歴史の連続性と象徴の意義を深く探求する物語が描かれています。舞台は古代ローマ帝国のブリテンで、主人公たちは帝位簒奪の陰謀に巻き込まれ、逃避行の中で失われた軍旗「ワシ」を再び手に入れようと奮闘します。ロ...

感想・レビュー・書評

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  • 歴史の連続性と「象徴」の意義に想いを馳せさせた、古代ローマ帝国時代の辺境の地・ブリテンが舞台のローマン・ブリテン四部作の二作目。
    今回の時代は、ローマがディオクレティアヌス帝の発案によって広大な領土を四人の皇帝が効率的に分割統治する「テトラルキア」を導入してもなお、国力の低迷と混迷から抜けられずにいた紀元後3世紀末。コンスタンティヌス帝によるキリスト教公認直前の時代でもある。

    ブリテンにある帝国軍団基地の一つに所属していたフラビウスといとこのジャスティンは、帝位簒奪の陰謀に巻き込まれ、逃亡の身となる。ゴール地方に渡ろうとした二人を助けた商人の導きによって秘密結社的な活動に身を投じた彼らは、彼らの先祖の土地で見つけた、かつて失われたはずの第九軍団の軍旗「ワシ」を自分たちの象徴として、簒奪者と一戦を交えることになり…。

    一作目の主人公だったマーカスとエスカが決死の覚悟で現地の氏族から取り戻しながら、マーカスの宿願を叶えることはなく秘匿されたローマ軍の象徴「ワシ」。
    それが二作目では、百年後の子孫達によって、巡り合わせのようにある種ローマの象徴として扱われる展開は、ものすごく巧みで、感嘆せずにはいられない。

    けれど、ローマ帝国とイギリスの歴史を考えると、ローマに侵略されたサクソン人の子孫であるイギリス人のサトクリフが、あまりにも征服者たるローマ側に立った記述をするのは、なんだか解せないなあ、と思いながら読み終えた。
    でも、本書に掲載された歴史学者の南川高志氏の解説にその疑問に答える見解欄があって、こちらもなかなか面白かった。

    第三・四部が、滅びに向かうローマ帝国のどの時代になるのか、ローマ軍の象徴たる「ワシ」は果たして今度はどのような役目を負うのか、諸々が俄然楽しみになる二作目でした。

  • ローマン・ブリテン4部作(あるローマの軍人一族の物語)の2作目。
    『第九軍団のワシ』のマーカスとエスカのコンビのほうが、『銀の枝』のフラビウスとジャスティンのコンビよりも印象的だった。
    でも、1作目とも3作目とも異なる話の展開なので、十分楽しめた。
    共通して描かれているのは、ローマ人でありながら、属州ブリテンに生まれ育った人達、ルーツを持った人達が、複雑な立場のなかで抱く葛藤や揺れ動くアイデンティティだ。

    本作で第九軍団のワシが再び地上に現れ、戦場で高々と掲げられた。数百年の時を経て、一族で大切なものを受け継ぐということに尊さを感じた。

    戦いの前夜、「ジャスティン自身は明日はほとんど確実に死ぬのだろう、とわかっていた。」(320頁)
    死を覚悟しながら、その運命を静かに受け止めている人々。仁義や忠誠、友を大切にし、そのために命をかけることも厭わない。
    サトクリフが描くと、こうしたテーマもわざとらしくならずに、自然で味わい深いものになる。読み終わったときに、尊いものの存在を感じさせてくれる。
    ところどころに描かれる情景描写も清々しい。

    4作目も読みたい。

  • イギリス人の作者がローマ人の視点で綴るブリテン物語。帝国拡大と共に侵略してきてやがて帝国の崩壊と共に去っていったローマ人よりも、イギリス人の祖先にあたるサクソン人を野蛮人として描いていることがとても不思議だった。日本とイギリス、同じ島国でも単一民族が多い日本は人種や血の繋がりで「日本人」と認識する傾向が強いのに対して、様々な人種と混じり合ってきた歴史を持つイギリスにとっては国の基盤となる思想で「イギリス人」と捉えるんだろうか…文学研究科南川氏によるあとがきはとても興味深い。

  • ローマン・ブリテン四部作の二作目。読めば読むほど、小学生の頃に読んでいた上橋菜穂子の守り人シリーズを想起させる。あとゲド戦記かなあ。異国の景色が思い浮かぶというのと、そこで生きている人に焦点が当たっている感じが。
    (一作目を読んだ時に、槍の感じが私の大好きな闇の守り人~となりました笑)
    もっと多感な子供の時期に読んでいたらと思いつつ、懐かしく読み進める。

    二作目は一作目から時代が下り、ローマが揺らぎだした時代。その綻びが見えだしている、その描写が上手い。それからキリスト教がこっそりと忍んでいたり、そういった変化が何気なく描かれていることがぐっとくる。
    一作目で登場した「ワシ」が再登場して、そうして消えていくのが切なくも胸熱だった。今作ではエニシダが彼らを繋ぐモチーフになる。

    人が出会い、別れ、時には死に別れ、歴史は紡がれていく。そこにあった物語は忘れ去られていく。今私が紡いでいる物語もそうして砂のなかに埋もれていくのだろう。その一方で、何気ない一人の人間の行動が糸を繋いで、歴史を大きく動かす力になるというのもまた同時に起こることで、人間の営みというものの不思議さを感じずにはいられない。

    主人公格のフラビウスとジャスティンもですが、カロウシウスみたいな鉄板のリーダーには惹かれてしまうし、道化のクーレンも可愛くて好きでした。そして死んでいった者たち。。

    ともしびをかかげて、に移ります。

  • 情景が思い浮かぶ表現が多かった

  • サトクリフのブリテン4部作の2作目。ローマ帝国の支配が揺らぐ時代のブリテン島。古代の生活を目に見えるように描写するサトクリフの筆力には読む毎に驚かされる。
    ただ、前作とともに主人公たちがローマの側にたっているのが、わずかに違和感がある。今は自分の民族、国土の側にたつ歴史物語が主流で、支配者側からのものは少ないように思われる。
    もっともサトクリフはほかの作品では先住民族を主人公にしたものもあるので、あくまでもこの作品ではこういうシチュエーションがよいと考えての設定なのだろう。
    それにしても、前の作品もそうだが、これを「児童書」扱いしてもいいものだろうか? それほどよく描き込まれた物語だ。

  • 例えば
    こういう内容で所謂ラノベだったら、陳腐に感じるだろう

    登場人物の声や風の音が聞こえてくる筆力はさすが

  • 我々の皇帝に忠誠を誓う。

    軍医のジャスティンといとこの百人隊長のフラビウスは、カロウシウス皇帝の側近アレクトスの裏切りを知ってしまう。2人はアレクトスの手からブリテンを取り戻すためにコンスタンティヌスの助けを求めようと南へ向かう。

    ローマの手から離れたブリテンの皇帝だったカロウシウスを、偉大な人だと忠誠を誓う2人だが、裏切り者のアレクトスを排するために選んだのはローマの助力だった。ここら辺がなかなか複雑だが、どうやら次の話ではローマの力もかなり落ちているらしい。ローマ帝国においては辺境のブリテンにおいて、その土地の者は粗野だったり素朴な生活をしていたりして、外から来た者との描かれ方の違いが興味深い。

    前作『第九軍団のワシ』からのつながりもあるし、同様に強い絆で結ばれた2人の物語でもあるので、前作が好きな人はこちらもぜひ読んでほしい。また、周りのキャラクターも魅力的。アニメ化しても面白いと思う。

  • ローマン・ブリテン四部作の2冊目です。1冊めの「第9軍団のワシ」である程度世界観を掴んでいたので、こちらはすっと入っていけました。時代が下っていて、当時の史実を少しアレンジしているらしいです。そのため歴史をある程度知っていれば、より入り込めたかもしれません(残念ながら私は知りませんでした)。この作品も成長の物語です。

  • ローマン・ブリテン四部作の二作目の物語。

    前作『第九軍団のワシ』の主人公アクイラの子孫であるフラビウスといとこジャスティンが主人公。前作に出てきた場所や旗印のワシによって物語が繋がっており、ある日2人がとある人物と海のオオカミが密会するシーンを目撃してしまうところから物語が動き出す。

    なかなかおもしろかった。

  • 文庫版、挿絵の1つがネタバレになる位置に掲載されている。

  • 支配地下に於いても、権力の取り合いはあるのね…

  • ローマン・ブリテン四部作の2作目。


    今度の主人公は、若い百人隊長「フラビウス」と、下級軍医の「ジャスティン」。
    2人は遠い親戚で、1作目のマーカスの子孫です。

    軍隊で出会い、親戚だと分かって親友に。
    ある日、彼らが仕えるブリテン皇帝カロウシウスに対する、皇帝の右腕「アレクトス」の計画する陰謀を知り、告発しようとするのですが左遷されてしまいます。
    そして陰謀が現実のものとなり、アレクトスに抵抗する勢力が生まれて行きます。
    フラビウスとジャスティンの友情、周囲には魅力的な人物も登場し、楽しく読めました。

  • 不屈の精神、信奉する価値観。

  • ローマ時代のブリテンって、今のイギリスと違うものなのか…な…? 私はこの話を、書かれていること以上のものを受け取れていない気がする。 けど、簒奪者に対抗する人々の話はやはりおもしろいなー

  • サトクリフのローマン・ブリテン四部作の二作目。時代はややくだって紀元3世紀。物語としては面白いんだけど、前作ほどのワクワク感はなくコンパクトにまとまった感じ。それにしても、空気のにおいが感じられてそこにいるような情景描写が素晴らしい。イギリスに行きたくなってくる。

  • 古代イギリスはローマ帝国の植民地だった。イギリス人はローマ文化の後継者と言う意識と、サクソン人と言う意識とのはざまにいる。

  • 潜伏任務だった『第九軍団のワシ』。今回は地下活動。
    最後のレジスタンスの闘いなど、一番ビジュアル化に向いていると思う。
    バラを胸に死んでいく剣闘士とか、忠義の道化とか。
    サブキャラもたってます

  • 前作「第九軍団のワシ」に比べ、スリリングな展開や複雑な登場人物たちの関係などが減退してしまった印象があります。主人公2人がピンチに陥る場面でも、誰かしら第三者が手助けしてくれることが多く、そこに少々都合良さを感じてしまったこと。人間関係の面では、基本的にローマ正規軍vs裏切り者、という単純な構図になっているのがその要因なのかと。

    それらの点から、個人的には前作の方が読んでいて楽しかったのですが、物語途中、前作終盤で隠されたあのワシが発見される場面は胸がアツくなりました。また、最期の戦いでの皆の奮闘は圧巻。終盤になってようやくストーリーが盛り上がり、一気に弾けたような気がします。

    ただ、そこまでの流れがかなり緩やかで長く感じられたのが残念。もう少しコンパクトにするか、主人公2人以外の登場人物をより深く描写してくれた方が、ラスト(特にブリテン人と剣闘士の最期)はもっと感情を揺さぶられたと思います。

  • 「第九軍団のワシ」から何代か後の子孫の話。イルカの指輪も出てくる。ただしブリテン皇帝の暗殺という、日本人には馴染みのない歴史を主題にしているためちょっと分かりにくいところがある。

    この話は何度目かの再読だけど、今回はブリテンからガリアへ政治的亡命する人々を助けて働く「暗殺された皇帝の秘書」ポウリヌスが特に心に残った。決して勇敢ではない、むしろ臆病だと自称しながら誰かがやらなくてはいけないことを坦々とこなす姿は、時代を越えた共感を呼ぶ。

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