辺境のオオカミ (岩波少年文庫 586)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145861

作品紹介・あらすじ

北ブリテンの辺境守備隊に左遷されたローマ軍の若き指揮官アレクシオス。衰退の一途をたどる帝国の辺境で、挫折と挑戦、出会いと別れを経て、やがて"辺境のオオカミ"として生きる決意を固める。ローマン・ブリテン四部作の最終編。中学生以上。

感想・レビュー・書評

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  • ローマン・ブリテン四部作の〆。前三作は岩波”児童文庫”から出ている割には、内容が重厚で読み応えがあり「大人でも十分楽しめる」ものでしたが、本作は子どもはあまり楽しんで読めないんじゃないかと…

    ローマ軍に所属する主人公アクイラと、ブリテンの一氏族の長であるクーノリクスは、様々な交流を通して友情を育むのですが、とある事件をきっかけに対立せざるを得なくなってしまいます。

    ここで、例えば少年漫画やアニメであれば、アクイラとクーノリクスの友情を優先し、二人がローマ軍とブリテン氏族たちの衝突を止める為に奔走する、というストーリーになると思います。

    しかし、本作では“大人の事情”によりやむなく(本人の意思に反して)戦わざるを得ない、という流れになっています。

    そんな内容なので、むしろ社会人のほうがアクイラの立場や環境、感情を理解しやすいのではないかと思いますし、実際「分かる、分かるぞ〜、その辛さ」とカナリ共感しながら読んでいました。

    これに関して、あとがきを読んでいて思ったのですが「ともしびをかかげて」が発表されたのは1959年。「辺境のオオカミ」発表は1980年のようで、ここから推察するに、昔ティーンだった頃に前三作を読んだことのある大人たちに向けて、サトクリフは本作を書いたんじゃないかなー、と。前作までにあった挿絵もなくなっていますし、より高い年齢層に向けて書かれたように思われてしかたないです。

    個人的には、ローマン・ブリテン シリーズ“外伝”として、大人向けに出版してくれた方が良かったと思ってます。その方がより多くの人に、このシリーズを手に取ってもらえるチャンスが増えると思うのです。(自分で読む為の本を探しに、児童書コーナーに足を運ぶ人って少ないでしょうから。)

  •  サトクリフ作品集。若き指揮官の挫折と挑戦。

  • ローマン・ブリテン4部作の4作目。
    時代は4世紀半ば。ローマ帝国は衰退の一途をたどり、辺境守備隊は過酷な環境下で多くの仲間を失いながら撤退を続ける。他の3作と比べると、読み進めにくい作品だった。

    生きものの群れを連想した。群れの中で最も強いものがその群れを統率し、他の生きものと闘いながら群れに属するものたちを守っていく。
    登場人物一人ひとりは、魅力的だ。「強くなければ生きていけない、優しくなければ生きていく資格がない」そんなフレーズを思い出した。
    群れとして生きることをやめた現代人は、貨幣経済のもとで、高度に整備された分業体制や、貿易、物流に支えられて生き延びている。でも、群れの中で自然と育まれ、磨かれていく感情や能力は、少しずつ衰退しているのかもしれない。

  • サトクリフ作品なんで期待して読み始めるとちょっと肩すかし。
    もっとぐんぐん話が動くかと思ったのだが、
    三分の二以上あまり動きがない感じで、
    その風景をありありと頭に浮かべられるまでちょっと退屈気味だった。
    けど、最後らへんの退却劇はさすが、
    息もつけぬ緊迫感。

    手痛い失態により、左遷っぽいとこにやられた青年が
    そこで経験する、新たな文化との出会い、人との心のふれあい。
    が、組織の中での悲劇による決定的な友との断絶。
    よく読むと、深い。

    辺境のオオカミ、かっこいい~。

  • 戦いの元での、軍人の在り方とは…

  • 時代に流されながらも真摯に生き抜く

  • サトクリフのローマ・ブリテン シリーズの最後を飾るのがこの本。
    主人公は、アクイラ家の軍人であることは前三部作と変わらないのであるが、物語の雰囲気がだいぶ違って感じられた。
    ブリテンの美しい自然情景の描写と登場人物の心の再生のモチーフ物語は、今回も踏襲されているが、家族とか血縁の人々の関わり合いの部分が今回は無い。
    過去に誤った判断を下しその結果、多数の部下の命を失うこととなった指揮官が、新天地のブリテンで指揮官として人間として成長していく話である。
    なんというか、非常に男くさい話である。

    作者のサトクリフが女性でありながらこの様なストーリーを活写する事ができた事は、それだけ彼女の人物造形の才を物語っているのだろうとも思う。
    しかしながら、前作”ともしびをかかげて”に登場した主人公を取り巻く女性たちの人物的な魅力に好感をっ持っていただけに、女性の登場人物がほとんど存在しないのは、非常にもったいない気がした。
    もっとも、これはそういったお話ではないと言われたらそれまでだが。

  • 挫折した男が,異文化交流しながら自らの居場所を見いだしていく話。騎士とか戦記ものは好きなので楽しめました。男前な生き様に感動。

  • ローマン・ブリテン4部作の最終編・・・・と言いつつも、若干これまでの3部作とは毛色が異なる物語だと思います。  どちらかといえばこれまでの3部作が主人公単独(銀の枝は2人セットだけど)の冒険という描かれ方の物語だったのに対し、この最終作は最後まで「個人」ではなく「組織の隊長」として任務を遂行する男の姿を描いた物語となっています。  他の作品との違いは他にもあって、女性がほとんど出てこないということ。  更には今作では主人公アレクシオスとアクイラ家の親族との関係性も極めて希薄・・・・・(?)で、「イルカの紋章のあるエメラルドの指輪」を受け継いでいるということぐらいしか、「家」との接点がないんですよね~。  ま、もっとも辺境の地へ左遷されちゃった男の物語なので、家だの女だのと甘っちょろいことを言っちゃいられなかったという事情はあるわけなんですけどね・・・・・^^;

    (全文はブログにて)

  • 全3作よりも、戦闘についてだとか、軍人としての苦悩について掘り下げて書かれています。
    自分の立場上生じる使命と、それとは全く真逆の自分の自然な気持ちと、そういう決して沿うことのない相反するものに引き裂かれる主人公が、それでも自分のすべきことを懸命にやり遂げた結果失ったものと得たものと、そういうのがもうー読んでてツラくてたまりませんでしたよ。

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