影との戦い: ゲド戦記 1 (岩波少年文庫 588 ゲド戦記 1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145885

感想・レビュー・書評

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  •  「ゲド戦記」という邦題が少々よろしくない。
    初めてこの本と出会ったのは小学校の図書室であったが、その題名と表紙絵から東南アジア方面でゲリラと戦う米兵の物語かと思ってしまった。
    英語を直訳した「多島海の伝説」でいいんじゃないだろうか。(インパクトは薄れるが)

     実際に読んだのはそれからずっと後。
    ジブリでアニメ化されると聞いたので図書館で借りて読んだ。
    「少年ゲド、魔法を学ぶ」といったキャッチコピーがあった気がするが、ある出来事で魔法の才を見出された少年が魔法学院に入学し…と聞けば皆さん「ハリーポッター」を連想するのではないだろうか。
    「素質の有無は問うものの、後天的に魔法を習得していく」というスタンスは従来の「選ばれた血族だけが伝統芸能のように魔法を継承する」イメージからすれば画期的だったと思う。(実際ハリーポッターもその点がヒットの要因の一つにあるだろうし。)

     しかし本作の魅力は舞台となる「多島海(アースシー)」にもある。
    大小様々な島を擁する「海」であり、魔法の箒ではなく「船」が主な移動手段となる。
    そのため優れた魔法使いは優れた船乗りでもあるという独特の世界観を持っているのだ。

     その点がジブリ映画ではばっさり削られていたのが残念である。
    一応アレは第3巻「さいはての島へ」を下敷きにしているとの事だが、それにしてもなあ…。

  • 魔法使いゲドは、まじない師の祖母から魔法を習い、九人の長たちから魔法を学び多くの知識を得る。己の力を見せつけるために甦らせた死者が影となり、彼はそれに追われるようになる。彼が影をどのように退治するのかが見どころ。ファンタジー。

  • 役者の清水真砂子と共に深い意識と
    視野の広さからなる読み手によって
    どこまでも奥行きのある物語となりそうだ


    人工物という魔法の力 141005

    全体からはみ出してしまった
    自立・独立・依存・支配という傲慢な
    自らの人工物によって占拠された心が
    生み出す魔法の力

    それは良しにつけ悪しきにつけ相手をたぶらかそうと
    あるいは自分にも見せ掛けるためにそそいだ力の分だけ
    スカスカとなった綿飴のような底なしの踏ん張りの効かない沼

    たぶらかされた者だけが魔法に掛かって
    一人芝居に取り憑かれて宙に浮いた世界の住人となる

  • やや冗長か。

  • 大人も楽しめる、というか大人が読むべきファンタジー。あまりに大きな魔法の力を持つがゆえに、自分の虚栄心、心の弱さから創り出してしまった影と対峙することとなったゲド。印象深いのが、影につきまとわれ、散々に打ちひしがれてかっての師匠オジオンの元に逃げ延びたゲド。「オジオン様…。」「やあ、来たか」「はい、出ていったときと同じ、愚か者のままで。」こんな何ともない会話に、ゲドの背負った重荷を減らす親しい人との再会の場面として泣いてしまった。そして影と向き合うことを諭すオジオンがまたいい。

  • 児童文学回帰キャンペーン。引き込まれて、一気に読み切った。現状自分の欲する要素があった。代償とか均衡とか克己とか色々。

  • 哲学的すぎ。
    人の生きる意味とか、ありかたとか。
    自分の闇と向き合うとか。

    魔法には代償がともなう。
    世界の均衡。調和。
    光には影がつきまとう。

  • この物語の主人公はタイトルにもなっているゲド。
    優れた魔法使いの資質をもつ黒い肌の少年です。
    彼はゴント島に生まれ育ち、ろくに魔法の教えも学ばないのに、霧をあやつりカルガドの戦士を追い払います。
    やがてゲドは偉大な魔法使いオジオンの弟子となり、その後オジオンの紹介で魔法学校で魔法を学びます。
    その間も、その後もずっとゲドには影がつきまとう。
    その影はゲド自身が呼び出したものであり、やがて彼はその影から逃げ、反対に追いかける事となる。

    描写が素晴らしい。
    ちょっとした魔法のシーンなど、これを映像で見たら「ほぉ~」と感嘆の声が出るだろうと思います。
    大体、こういう壮大なストーリー、世界観を頭の中で考え、イメージし、緻密に書き綴るというのが信じられない能力だと思います。
    ただ、文章は読みにくい。
    児童書だというのに・・・頭に入ってこない箇所が何度もありました。

    私がこの本を読もうと思った動機は「自己発見の旅のツール」としてだったので、読んでいる間、ずっとこれは何を言いたいのだろう?心理学的にはどういう意味なんだろう?と考えながら読み進めました。

    すぐに分かるのはこの本のタイトルになっている「影」
    影=シャドウはもう一人の自分。
    ゲドは最初、虚栄心と未熟さ(と私は読んだ)からその影を呼び出してしまう。
    そしてその後もプライドだとか、怒りだとか、対抗心だとか、そういったものから影につきまとわれるようになる。
    そのせいで、周りの人間も犠牲になってしまう。
    影がもう一人の自分ならば、自分を徹底的に追い込み滅ぼすのも、そしてそれを受け入れて味方にしてしまうのも全ては自分、自分自身なのだと思う。
    自分の最大の敵は自分であり、味方も自分なのではないか?
    これを見るとそう思いました。

  • 魔法使いなのに、簡単に魔法を使わないところがおもしろい

  • ジブリのゲド戦記とは別物だった。原作は面白く、難しかった。心理学の要素が組み込まれているようだ。自身の恐れることに逃げずに立ち向かわないと、いちまでもその恐怖から逃れることは出来ない。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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