こわれた腕環: ゲド戦記 2 (岩波少年文庫 589 ゲド戦記 2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145892

作品紹介・あらすじ

ゲドが"影"と戦ってから数年後、アースシーの世界では、島々の間に争いが絶えない。ゲドは、平和をもたらす力をもつエレス・アクベの腕環を求めて、アチュアンの墓所へおもむき、暗黒の地下迷宮を守る大巫女の少女アルハと出会う。中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • 線を引いて、ランプを灯すように語る 岸田奈美が読む「こわれた腕環」|好書好日
    https://book.asahi.com/article/14863292

    あの人を偲ぶ:不朽のファンタジー小説「ゲド戦記」作家、アーシュラ・K・ル=グウィン | 本が好き!通信(2018/1/24)
    https://info.honzuki.jp/post-11897/

    季刊トライホークスvol.61(2020年11月5日発行)pdf
    https://www.ghibli-museum.jp/docs/TH61_WEB_.pdf

    こわれた腕環 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b269796.html

    ーーーーーーーーーーーーーーーーー
    初期3部作の中で一番好きです、、、

  • ※※※ラストまで完全ネタバレしていますのでご了承ください※※※

    「ゲド戦記」シリーズ2冊目。
    ゲドシリーズとは言っても、ゲドががっつり主人公なのは1冊目だけで、他の本はそれぞれ主人公が別になる。
    こちらの「こわれた腕輪」は、「影との戦い」から30年後くらい。
    舞台も、海に浮かぶ島々と魔法が日常の「影との戦い」とは違い、古代の神「名もなき者」たちを祀る神殿のあるアチュアンの墓所。
    近隣の村から集められた巫女と、国を治める大王の巫女と、そして何千年もの間古い体から新しい体へと魂を移す大巫女とがいる。
    「こわれた腕輪」の主人公は、大巫女に選ばれた少女で、彼女は最初はテナーという名前があったが、大巫女になり「喰らわれし者」という意味のアルハと呼ばれるようになった。

    アルハはまさにその中身を喰われた存在だった。彼女の世界といえば神殿と、墓所と、その墓所の地下に広がる広大な迷宮だけ。近くの村も他の人々の存在も海も山も知らない。
    そしてやることといえば農業や織物といった仕事、宗教儀式、地下迷宮を覚えてそこの宝を守ること、ヤギや大王が送ってくる囚人を生贄として殺して血を備えること。
    神の大巫女であるアルハはその狭い世界、死んだ世界で大切に、そのため傲慢で尊大に暮らしていた。
    だが彼女は喰われて空虚だった。

    そんなアルハはある時地下迷宮に忍び込み、伝説の二つに割れて奪われた「エレス・アクベの腕輪」を取り戻そうとする大魔法使いのゲドの存在を感じる。
    アルハの世界では魔法使いなどただの詐欺師だった。自分たちは魂を持ち生まれ変わるが、魔法使いは魂を持たずに死んだら朽ちるという。偉大な名も無き者の前では小さな存在だ。

    しかし外から来てハイタカの通り名を持つ魔法使いという存在がアルハを揺さぶる。
    アルハは魔法使いハイタカを地下に閉じ込めて、話を聞きに通っていった。
    他の世界がある。自分が全てと思っていた闇と迷宮だけではなく。
    アルハは世界の話を聞くが、自分が動けないことの葛藤、信仰の揺らぎを隠すように魔法使いに言う。「たしかにお前は世界を旅して竜と戦った。ここには闇と迷宮しかない。だが結局人間にあるのは闇と迷宮だけだ」

    そんな彼女に向かって魔法使いは一緒にここを出ようと言う。
    そして彼女の本当の名前を言った。
     「テナー」

    名前を取り戻した。
    彼女に芽生えた自我により、彼女が大巫女アルハとしてアチュアンの墓所にとどまるか、普通の少女テナーとして世界にゆくかの選択を迫られることになる…。


    ===
    海に浮かぶ多くの島々で、竜や魔法使いが存在し、嵐の海を渡った第1巻とは全く違った宗教、人々の暮らし、歴史の国の話で、作者の語るこの世界はいったい幾重になっているのだろうか。
    転生を繰り返す者というのは、チベットで転生ダライ・ラマとかで聞くのだが、そのためか本書全体的に東洋哲学や宗教観を感じる。

    今回の話では空虚なものに君臨する少女が自由に向かって旅立つ姿が書かれるのだが、自由の重みへの葛藤や、今までしてきたことの後悔に苛まえる姿、そして言葉もわからず何も役に立つことを知らない自分が世界へ放り出されることへの不安などが実によく出ている。

    そんなアルハ/テナーに対し、魔法使い/ハイタカ/ゲドはいろいろな方向から話して聞かせる。
     あんたはその器に悪いものを入れられたが、その器を自分で開けたんだ。あんたはけっして邪なものや闇に遣えるために生まれてきたんじゃない。灯りをその身に抱くために生まれてきたんだ。

    ゲド自身も1巻で闇に向き合ったので、闇がなんであり、どのように迫ってきて、そしてどのように戦うのかがわかっているのだ。
    物語はゲドとテナーがハブナーの都に入るところで終わる。ゲドが奪いに来て、アルハ/テナーが持ち出した輪の半分により、国には平穏が戻ると示唆される。そしてテナーは、輪を収めたらゲドの恩師の魔法使いオジオンのところで、この広い世界に出てゆくための力を付けることになる。
    彼女がどのような人生を歩むかは読者の想像次第となっている。しかし最後の眼差しは、彼女が静かにしかし強く歩んでゆく姿を想像できる。

    …↑と思ったら、この先の話で25年後のテナー(40歳!)が書かれているようだ。

  • 68歳の老人が読んだ所感
    昨日の1巻に続けて、この2巻目も1日で読んでしまった!想像して映像化していくのが楽しい。
    地下の迷宮を脱出するシーンはインディージョーンズの最後の聖戦の聖杯のシーン(ペトラ遺跡)がダブってしまったし、エレス・アクべの腕輪の話は天空の城ラピュタのシータのペンダントの話とダブってしまった。テナーがシータに見えてきた。
    ゲドは107ページから登場にびっくり、それもある男とかいってなかなかゲドとはわからない。
    生まれ変わるという表現が数カ所あったが、欧米人は輪廻の思想がなかったはず?再度調査したら、やはり、キリスト教にはないらしいことがわかった。私達は「生まれ変わったらとか」、「前世はウグイスだったかもとか言うけど」、欧米人には野蛮な未開人の会話に聞こえるのかもしれない。

  • 第1作目のゲド戦記は、少年ゲドの成長物語だったが、これは主に少女テナーのが囚われの身から自由になるまでの物語である。
    闇の者、名のなき者たち、つまりは死の世界に属する精霊の世界で大巫女アルハ(「名がない」という意味)は、「選ばれた少女」として特別な位置にいながらも、実際には闇の世界の奴隷として生きている。生まれた時の名前は剥奪され、暖かい愛情も知らずに、大巫女として義務のみを果たす生活。つまり、自分自身がない状態で生きている。そんな生活のなかで、異邦人である南方の魔法使いゲドが、神聖な墓地の地下迷宮に忍び込んで、宝を奪いにくる。中盤まではこんな感じ。
    大巫女としての務めを果たしながらも、決して満たされることがない少女。外の世界に興味を抱きながらも、大巫女としての自尊心と責任感から、必死に自分が仕える闇の世界に忠誠を誓いつづける姿が痛々しい。それが、人生で初めてみる男、またその男の説得により、自由を求めて全てを捨てることになる。その葛藤もまたリアルで胸に迫るものがある。

    読んでいて、これはまるで原理主義宗教やセクトなどに夢中になる人と同じではないのかと思った。自分が空っぽになるということは、自我は抑圧されるか忘れられるかして、考えることがなくなり、義務と規範のみが自分の行動の基準となることだ。
    主人公アルハ(テナー)は、実際、読み書きができない。読んだり書いたりするのは魔法使いのような人間たちがすることで、彼女の世界ではそんなことには価値がない。たとえば、地図を読むことはないので、迷宮の道も口頭での指示か、または暗闇のなかで全て手でさぐって覚える。大巫女の責務を果たすには、読み書きのような「考える」教育は必要なく、代々受け継がれてきた儀式や儀礼を習得するだけでよいのだ。
    が、腕環を奪いにきたゲドは、闇を崇拝するアルハ(テナー)に、闇(名のなきものたち)は人間たちに何ももたらさない、彼らには与えるものなどなにもないのだから、と教え諭す。自らを相対化してみる、最初の試練である。

    彼が来た光の世界とアルハが住む闇の世界の対比、そして、地下の迷宮で出会う女と男という対比が際だち、違う世界に生きる二人が信頼を基盤にして二つに割れていた腕輪を一つにするところはとても象徴的だ。信頼というのは、この本ではでてこない言葉だが、愛のようなものだと思う。それを暗示しながらも、しかし、話はそこでは終わらず、テナーに戻った少女がこれから超えていかなければいかない困難、そして自由への希望を予感させながら物語は終わる。
    とにかく素晴らしい筆運び、スケールも大きく、かつ自分の人生についてもはたと考えてしまうような深さを併せ持つ小説である。

  • 生まれ変わるためには人は死ななければならない…この言葉の本当の意味を知った気がします。
    でも「別の見方をもってすれば、さほどむずかしいことではない」

    テナーが自由になる過程は自分と重ね合わせてつらかった。
    闇の力から完全には自由になれず苦しむ姿。
    「悪の奴隷となっていたずらに費やした歳月を悔やんでは泣き、自由ゆえの苦しみに泣いた」
    「彼女が今知り始めていたのは自由の重さだった」
    自由は苦しくて重い。
    奴隷のままでいる方が楽なこともあるから。
    諦めたり目を背けたりができるから…。

    でも、目をしっかり開けて、見据えなきゃいけない。
    苦しくてもつらくても足を止めちゃいけない。

  • 非常に面白い。
    宗教的指導者は輪廻天昇するというくだりは、ダライ・ラマを想起させるが、他の宗教でも似たようなことがあるのだろうか。

    この物語に出てくる主要な登場人物のアルハと言う少女は、αつまり物事の始まりを意味するんだろう。だから輪廻天昇をしても、常に始まりのままなのだ。

    壊れた腕環では、死の世界をメインに物語が進む。よそ者としてやってきたゲドが、氷の世界を彷徨、やがて世界を変化を与え、旅立っていく。これは千の顔を持つ英雄という本で触れられている通りだ。

    児童文学でありながら様々な示唆を与えてくれる本といえよう。

  • 物語の4分の3は、閉塞感が漂い、暗い。ページをめくる手も重かった。しかし、敷かれたレールは正しいのかと主人公が自らの意志で考え始めた時、重圧の闇の世界に一筋の光が差すようだった。あきらめずに読んで良かった!と思った。

  • こわれた腕環が一番好きかも。
    地下の世界の描写も良し。
    頭の中で想像がふくらむぅぅ!

  • 世界三大ファンタジーの1つ『ゲド戦記』の第2話。
     
    私は個人的に第1話より、この第2話の方が好きです。
     
     
    アチュアンの国の墓所の地下に広がる
    暗く、広大な迷宮。
    そこを守る大巫女の少女アルハ。
     
    そこに隠された宝物とは?
    そしてゲドはどのようにこの物語に関わってくるのか?
     
    大人向けのファンタジーを読みたい、
    という方におすすめです。

  • 今回は前作ゲドが老婆から授かった世の中を平和にする力があるといわれるエレス・アクベの腕環のお話。
    腕環の片割れを持つアチュアン神殿の大巫女アルハ(テナー)は、先代のアルハが死んだ日に生まれたというだけで、家族や故郷、名前までもを捨てさせられてしまった可哀想な女の子。
    アチュアンの地下迷宮を舞台に、呪われた運命を背負うテナーをゲドが救いだし腕環がひとつになります。

    うーん。世界観は抜群にすきなのだけど...。どうも文章に深みがないというか...いまいち乗れないのが残念。
    やっぱり自分の想像力が乏しいことが最大の難点ですね。
    宮崎駿がアニメにしてくれたらすっごい映像になる気がするもんなあ。
    地下迷宮とか宝物庫やら壁画の間なんてもろジブリだもん。

    次はいよいよ本命の3巻。ここがジブリで映画化した部分らしいので楽しみです。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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