さいはての島へ: ゲド戦記 3 (岩波少年文庫 590 ゲド戦記 3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145908

作品紹介・あらすじ

ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。魔法の力が衰え、人々は無気力になり、死の訪れを待っているようだという。いったい何者のしわざか。ゲドと王子は敵を求めて旅立つが、その正体はわからない。ゲドは覚悟を決める。中学以上。

感想・レビュー・書評

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  • 68歳の老人が読んだ所感
    冒険活劇としてはおもしろかったが、「生と死」の問題としての深読みはできなかった。
    「日本人が、結局死んでも生きても同じこと、いつ死んでもかまわないとか、金をもうけようが勉強しようが何しようが意味がないから死にたいというような、本当に無におそわれて死にたいと言っているような人間の話は、なかなか西洋人には分かりにくい」と河合隼雄さんが言っていた。
    つまり、死の概念が、キリスト教圏と仏教圏とは違うという話で、わらわれは欧米人より死というものを身近に感じているような気がする。深さが違うのかもしれない。われわれはファンタジーを元来もっている国に生まれたともいえないだろうか。

    アメリカでは、ファンタジー本は現実逃避の手段で堕落していると映ると、そこが問題なんだとル・グインは他の著作で言っている。しかし、ル・グインにはファンタジー作家というバイアスがかかっているとおもう。
    世の中はファンタジーを楽しむ「心に余裕のある層」と「心に余裕の無い層」とが同時にパラレルに同居している思う。それは時間的なズレと空間的ズレで平衡を保たれているのだ。
    なんか私の言い回しが「ゲド戦記」になってきた!

  • ゲド戦記シリーズの中の一つ。
    ドラゴンっていいよね。ファンタジーだね。
    読了。

  • ゲド戦記3巻。

    今作はエンラッドの王子アレンが登場。
    エンラッドでの異変...魔法の力が衰え、人が無気力になる...。
    アレンが大賢人となったゲドの元に訪ねることで物語がはじまり、二人で原因を追及する旅に出ます。

    いままで同様読んでいる間はずっと雲をつかむような感覚でしたが、竜が出てきたあたりからぐぐんと面白くなりました。

    どうやら私はそういうわかりやすい展開がぼんぼこ起こるようなお話じゃないとだめみたい。
    でも、それでも、時間をかけても読む価値がある気がする。不思議な力を持った小説。
    次はどんな物語だろうなあ。楽しみ。

  • 年を重ね大賢人を務めるゲド。彼のもとに、王子アレンが魔法の危機を知らせに訪れ、二人はあの「はてみ丸」で旅立ちます。「指輪物語」のように目的がはっきりしていない不安の中、苦難を重ねながら、成長していくアレン。王に相応しい力を得る旅だったのですね。ゲドも「普通のお年寄り」になって、故郷で静かに余生を送る…で、終わったのかと思っていたら、続編が!

  • スタジオジブリによって映画化された作品。
    とても面白い。 個人的にはゲドが少し老いていて残念だったが、読みやすかった。
    ラストシーンは時間が経つのも忘れて没頭してしまった。
    映画の内容とは異なるシーンも多々あるため既に映画を見たという人も楽しめる。

  • これまでの冒険活劇とはまた打って変わって、2人の途方もない旅のように見せかけて生と死・それに立ち向かう人の内面的なお話。
    一巻では傲慢でどこか勢いのあったゲドが、大賢人となり若い頃自分が疑問に思っていた筈のことを説く立場になっていたのは、歳を取り様々なことを知ることは臆病になる訳ではないんだなと言う説得力が凄くあった。

    アレンの自己との闘い、自分自身の影の部分とのせめぎ合いの描写が本当に良い……。
    この作者は本当に人間の内面を描くのがものすごく丁寧で登場人物の心情が手に取るようにわかる。

    映画は3・4巻を基にしたとどこかで聞いたけど(鑑賞したのがかなり前で記憶が朧げとは言え)なぜこの原作であの映画になったんだ…?本質的な部分が真逆じゃないか…?
    散々映画の批評で言われてたことに納得してしまった。

    ゲド達と自分も共に冒険するような勢いで読めなくなってきた。が、それがいいですね。

  • 再読だが以前読んだ記憶がほとんどない。物語中盤まで変化がないので不安になるが、竜が出てきてからはどんなに騒音の中でものめりこめるぐらいの面白さ。4巻が出るまで長らく全3巻と見なされていたのも納得できる。

  • 成長物語とかそんな単純な言葉で言い表せないほど複雑で、惹かれるファンタジー。

  • ゲド戦記初期3部作の最終章。
     
    アースシーという架空の魔法世界。
    魔法の力が衰え、人々は無気力になり、
    死の訪れを待っている。
     
    何者の仕業なのか?
    ゲドと王子は敵を求めて旅立つ。
     
    3部作の中でも最も重い
    『死』をテーマにした本作。
     
    「死んだ人々はみな生きている。
     死者は朽ちることなくよみがえり、
     永遠に果てることはないだろう。
     ただ、そなたは別だ。
     詩を拒んだからだ。
     そなたは死を失い、
     詩を失うことで、
     同時に生を手放した。
     自分を救おうとして、
     たかが自分ひとりを救おうとしてな。」
     
    過去多くの権力者たちが求めてきた『不老不死』。
     
    『世界3大ファンタジー』の1つである
    『ゲド戦記』。
     
    もっと若いうちから読んどけばよかった、
    と思えるくらいおもしろくて、
    考えさせられる作品です。
     
    新たな旅が始まる第4巻以降も楽しみです。

  • アレンは、かつてゲドが影を呼び出してしまった昔の自分と同じ年頃。旅の途中、魔法も使わず、沈黙しているばかりのゲドに不信感がつのる。でも、このことを乗り越えてアレンが力尽きたゲドを支えて黄泉から生還する。その過程は、ゲドが告げた「アレンの旅」で、王になるために必要な成長を促すものだったと思う。三巻で、ゲドは冒険の主人公ではなく、導き手となった。1~3巻でゲドの人生(人の人生)を見せられた。何度も読み返したい本になった。ゲドが若者に語る人生観がいいなあ。また、これまでいろいろなファンタジィに限らず「物語(小説)」を読んできたけれど、自分がなぜ「物語」を読みたがるのか?と今更ながら知りたくなった本。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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