帰還: ゲド戦記 4 (岩波少年文庫 591 ゲド戦記 4)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145915

作品紹介・あらすじ

ゴント島で一人暮らすテナーは、魔法の力を使い果たしたゲドと再会する。大やけどを負った少女も加わった共同生活がはじまり、それぞれの過去がこだましあう。やがて三人は、領主の館をめぐる陰謀に巻き込まれるが…。

感想・レビュー・書評

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  • ゲドの帰還だと思っていたら
    ほかにもたくさんの帰還があって、とてもよかった。

    歴史の影になっていたテナーの物語。
    ゲドとテナーはきっと恋人になるだろうな、と思っていたので、長い時間がかかったけど本当に嬉しい。

    この巻はまさにテナーと女性の物語で、
    魔法を失ったゲドはふつうのおじさんになっていて寂しいけど、テナーがふつうのおばさんとして生きていた期間が知れてよかった。
    世界を救っているかもしれないけど自分に逢いに来てくれない、ゲドのことなんか、待っていられなかったよね。わかるよ。なぜか待っててもらえると思っているんだ、男って。

    女性では大賢人になれないということに憤り、
    皿を洗えない息子に「育てかたを間違えた!」と絶望するテナーに、ここにきて親近感を感じてしまった。
    これは私が大人になってから読んでよかったなと思えるところ。

    最後にテルーが目覚めるところでおわる。
    続きも楽しみ。

  • 「さいはての島へ」から18年を経て発表された続編です。舞台はゲドが竜に乗って飛び去った直後の、故郷ゴント島。
    「こわれた腕環」の後、農夫と結婚して「普通のおばさん」になったテナーと、魔法を使い果たして「普通のおじさん」になったゲドが再会します。そして、男たちから理不尽な暴力を受け、その後も付け狙われる少女テルー。ストーリーにも増して心に刺さってくるのは、現代私たちの社会にもある人権の問題です。
    ラストでテルー(真の名はテハヌー)の秘密が明かされますが、物語はまだこれからだ、と暗示する終わり方ですよね。

  • やっとここまできた~!という達成感。まだあと2冊残ってるけど。

    今作はテナーが語り手となったテルーのお話。
    未亡人となったテナーと、親に焼き殺されかけた少女テルーの元に
    魔法の力を失ったゲドが竜に乗り現れ、共に生活をはじめます。
    オジオンが亡くなり、ゲドが力を失ったことにより引き起こる禍がテナーとテルーにのしかかります。

    これまでゲド戦記を読んできてずっと感じていたのが、物語の世界観は壮大だけど、暗くて抑揚がないということ。
    ここはそんなに細かくなくていいなと思う部分で淡々と語り続けたり
    逆に、ここはもっと書いてほしい!って部分が妙にあっさりしていたりして...。
    日本語に訳してあるのに言葉の壁があるような感じがありました。

    で、実は3巻を読み終わったあとジブリのゲド戦記を観たんです。
    そうしたらまるで霧が晴れたように、モヤモヤ解消。笑
    私の中でゲドもレバンネンもテナーもテルーもようやく動き出したみたいな感覚がありました。
    とはいえやっぱり原作ありきですから、原作を読まなければここにはたどり着けなかったと思います。読んでよかった。

    そして改めて児童書ってなんだろう?とも思いましたね。深い。
    もし中学生くらいの時に読んでいたらどうなっていたんだろうな~。

  • 魔法使い諸君へ
    あんたらは誰から見ても偉大だと思うなよ

  • 「こわれた腕輪」のテナーとゲドが再会する話。
    あの話で二人は確かに惹かれあっていたんだな、とわかる。
    テナーが結婚したと知った時にどう思ったか?という話題で、ゲドは「がっかりした。」と答えている。テナーは魔法使いになるのをやめたことだと思ったみたいだけど、私は恋愛としてでは?と思った。
    それから、テナーが使った食器を下げない問題で息子にがっかりしたり、ロークの魔法使いが女を大賢人にすることを考えもしない辺りにイラついたり、女性から見える世界に共感してしまった。
    ゲドは魔法と冒険に夢中になれたのと対照的。

  • 前作の3巻『さいはての島へ』から
    16年の時を経て刊行された第4巻『帰還』。
     
    大賢人ゲドは力を使い果たし
    魔法を使うことができなくなっていた。
     
     
    主人公の魔法使いが魔法を失っているという
    まさかの展開。
     
    この物語のテーマは『世代交代』。
     
    偉大な力で世界を守ってきたゲドも
    年齢には抗えないのか?
     
    しかし、衰えるものあれば
    突き出てくるものあり。
     
    残り2巻、今後の展開が楽しみです。

  • なぜここまで、アニメと違うのか…(>_<)3-4巻をガチャガチャポンしたのがアニメな感じ。
    魔力を失ったゲドが、情けなく…
    色々と全力で駆け抜けたゲド。
    こういう人生もこれはこれでありなのかと思ったりした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「情けなく…」
      読んでいる時は、ゲドの復活?を期待していましたが、読み終わった時はスッキリ。
      「これでありなのかと思ったりした」
      そうですよ...
      「情けなく…」
      読んでいる時は、ゲドの復活?を期待していましたが、読み終わった時はスッキリ。
      「これでありなのかと思ったりした」
      そうですよね、だから次の話「アースシーの風」が生まれる訳です。
      2012/08/28
  • ゲド戦記の第四作。

    回を重ねるごとに、どんどん暗くなっていくゲド戦記だが、この作品はマジに暗い。
    親から虐待により、身も心もボロボロになった少女テルー(顔や身体の半分は醜い火傷)。虐待のおぞましい体験で心を閉ざしてしまった彼女を引き取る、魔法使いであった過去を持つテナー。
    物語は、ふたりの女性を軸に、邪悪が支配しつつあるゴント島の人々を描く。
    ゲドはどうしたか?
    もはや力をなくし、世捨て人のような存在で登場する。

    暗い。。。暗すぎる。。。

    この物語、宮崎二世監督が映画化したらしいが、エンターテイメント要素は0なのに、子供達を喜ばせる事ができたのか不思議。
    観てないのでなんとも言えないが、アニメになるような題材ではないと思う。

    ファンタジーの姿はとっているものの、この作品は人間と世界の関係を哲学的な示唆をあたえつつ、寓話的にまとめた傑作だと思う。

    怪物や魔法はほとんど出てこないが、大人のためのファンタジーといった印象です。
    ちなみに本屋に行くと、「子供の読み物」ってところにあったりするのだが、小学生だと読み手をかなり選ぶと思います。

    大人のためのファンタジーではないでしょうか?

  • 一巻を若かりし頃に読んで、これもしばらくしてから読んで、今、人生を一周した初老の女性のものがたりを同世代の視点で読む。読書はいつ読むかも大事で、面白いなあと思う。
    大賢人だった過去をもつおじさんのゲドも愛おしい。
    テルーの傷も、己と重なる。
    続きも楽しみ。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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