- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001146059
感想・レビュー・書評
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ホラー短編集第二弾。フォークナー、ブラッドベリなど既読が多かったが、金原訳で生々しさを感じた。『ナンタケット島〜』ポー原作・金原翻案が一番怖かった。『南から来た男』と『隣の男の子』は現実的という意味でゾワゾワ。
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フォークナーの「エミリーにバラを一輪」を読んでみたくて借りて来た。ホラー短編集という名にたがわず収録の11編、どれもドンと胸にくる最後が待ち受けていた。
「エミリーにバラを一輪」1931 ウィリアム・フォークナー 1897-1962
アメリカ南部、1870年代の高級住宅地に建つお屋敷でエミリーはひとり死んだ。74歳。もはや古き南部ではなく、自動車修理工場や綿花の加工場が増え、あまたあった高級住宅群で1軒だけ残った屋敷でだ。過去には愛する男も現れたらしいが、その男は・・ エミリーの住むお屋敷ととりまく街の移り変わりを想像できる文。その中でひとり生きたメアリーのある意味たくましさ、孤独がずしりと迫ってくる。
「南から来た男」1953 ロアルド・ダール1916-1990
ホテルのプールサイドで、行われた、かけ。老人は若者に、そのライターを10回続けて火をつけることができたら、わしのキャデラックをやろう。もしできなかったら君の小指の先をくれ、というのだ。厨房から包丁を調達して、火付け開始・・ 7回、8回、緊張が高まってくる。が、女が現れ、その女の姿がもう脱力だ。
「家具つきの部屋」1906 オー・ヘンリー1862-1910
部屋をさがしていた若者は、家具付きの部屋を契約した。実は去っていった恋人を探していたのだ。部屋にその恋人の匂いを感じ取る。残酷ではあるのだが、何か柔らかさを感じる。この柔らかさがオー・ヘンリーか。
「マジック・ショップ」1904 H・G・ウェルズ1866-1946
父と息子で訪れたマジック・ショップ。主人は次々にマジックの品を出してくれるが、それはマジックを通り越し魔法とでもいうような。ウェルズとあって、読んでると、このまま異次元の世界に飛んだり、タイムトラベルしてしまうのでは? なんて雰囲気になった。
「不思議な話」1923 ウォルター・デ・ラ・メア1873-1956
7人兄弟妹はおばあさんの家にひきとられた。屋根裏にはチェストがあってそれにはさわるな、と言われた。ある日ヘンリーはこっそりいってチェストを開けてみた。するするとひきこまれ・・ 次の日からは6人の子供に・・ またある日今度はマティルダが・・ 今度は・・
「まぼろしの少年」1924 アルジャーノン・ブラックウッド1869-1951
男が気づくと前を大きなバッグを持った少年が歩いていた。なぜか気になりバッグを持ってあげるとそれは驚くほど軽かった。何が入っているの?と聞くと、「僕の未来」と言い、ママが待ってると言って言ってしまった・・ それは私の未来でもあったのか? 私の12年前のある出来事。ちょっと悲しい余韻が残る作品・
「悪魔の恋人」1945 エリザベス・ボウエン 1899-1973
2度の大戦を生きる、キャサリンの秘めた約束・・
出征した婚約者との、約束の時間にまた会おう、という約束。そして今は第二次世界大戦、疎開先からロンドンに一時戻り自宅をあけると手紙が・・ 年齢によっては、2度、大戦で人生が変わった、そんな思いがする作品。
「湖」1947 レイ・ブラッドベリ 1920-2012
12歳の夏、幼馴染のタリーは湖に消えた。幼いながらも僕はタリーを愛していた。22歳の今、僕は結婚し新婚旅行で再びこの湖に来た・・ 僕がみる幻想?
「小瓶の悪魔」1893 ロバート・ルイス・スティーブンソン 1850-1894
「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」を書いた、あのスティーブンソンの作品。小瓶の悪魔は何でも願いを聞いてくれる。だが、その小瓶を手放す時は、買値より安く売らないといけない。・・ところが、願いは確かにかなうのだが、そのために誰かが死んだり不幸になってゆくようなのだ。なので買った人は次々に瓶を手放してゆく。ハワイ島に住むケアヴェという男がその瓶を買ったが・・
「隣の男の子」1991 エレン・エマーソン・ホワイト 1983-
こちらは現代の作品。けっこうブラックですねえ。アイスクリームストアで深夜バイトをしている高校生の私。そこにクラスメイトのマットが、一回強盗をしてみたかった、といって押し入ってくる。なんとか窮地を脱出しなくちゃ。それで言ってやった、私の秘密を教えるから、あんたの強盗も秘密にしてあげる。・・私の秘密は・・ え、本当なの?
「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」1838 エドガー・アラン・ポー1809-1849 金原瑞人翻案
幽霊船の話。
2012.7.18第1刷 図書館 -
「八月の暑さのなかで」(あれ?これってもう2年前なんだ?)がよかったので、ホラー短編集2であるこちらも、迷うことなく、買い。
11本収録。
怖さもいろいろである。
ポー原作、金原瑞人本案の1本めは、少々ノリ過ぎの感もあるけれど、まあご愛嬌かな、と。
ロアルド・ダール、オー・ヘンリーはさすがの仕上がり。
ブラッドベリ「湖」は、そうそう、私にとってのブラッドベリってこの感じだったのだ、と思い出す。
夏の終わりの、まだもう少しその中にいたい、さびしい感じ。
フォークナーの「エミリーにバラを一輪」は、初読ではないはずだけれど、やっぱり怖い。この怖さは身につまされる怖さだ。こんな話、現実にも稀になくもないではないか。そして、恋を知る女性には、誰しもあり得るではないか?
スティーヴンソン「小瓶の悪魔」は、ストーリー展開がよく出来ている。よく出来た口伝えのお話のようだ。
最後をしめる「隣の男の子」は、巨匠たちの中にあって1つだけ現代ものであるが、若々しくリズミカルで、オチが冴えている。
ああ、楽しかった。 -
児童書(中学生向け?)シリーズ第二弾。怖いと言うより味わい深い作品が多かった。
【収録作品】
「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」エドガー・アラン・ポー
「南から来た男」ロアルド・ダール
「家具つきの部屋」オー・ヘンリー
「マジックショップ」H・G・ウェルズ
「不思議な話」ウォルター・デ・ラ・メア
「まぼろしの少年」アルジャーノン・ブラックウッド
「エミリーにバラを一輪」ウィリアム・フォークナー
「悪魔の恋人」エリザベス・ボウエン
「湖」レイ・ブラッドベリ
「小瓶の悪魔」ロバート・ルイス・スティーヴンソン
「隣の男の子」エレン・エマーソン・ホワイト
すでに既読のものも何作かあった(タイトルは違うけど)。やはり不気味さで一番怖いのは「不思議な話」(「なぞ」というタイトルが多いと思う。原題もTHE RIDLLEだし)。チェスト(長櫃)の曰くや子供たちが消えてしまう理由もいっさい描かれない。美しい童話。
最後にドンとオチがくるタイプとして「悪魔の恋人」、「隣の男の子」は衝撃的ではあった。「南から来た男」も衝撃のラストではあるんだけど、なるほどって感心の方が大きくて。奥さんが捨て身で救済したのに治らない病気の恐ろしさよね。 -
「眠気も吹き飛ぶ こわい話
思わず「ぎゃあああ」と叫びたくなるようなお話、ぞっと背筋の凍るようなお話。朝に読むには不向きでしょうか・・。英米の転変の名手たちによる、怖くてクールな名作13篇です。」
(岩波少年文庫創刊70周年特設サイト テーマ「朝読におすすめセレクション」より)
収録作品
ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 エドガー・アラン・ポー 原作
南から来た男 ロアルド・ダール 著
家具つきの部屋 オー・ヘンリー 著
マジックショップ H.G.ウェルズ 著
不思議な話 ウォルター・デ・ラ・メア 著
まぼろしの少年 アルジャーノン・ブラックウッド 著
エミリーにバラを一輪 ウィリアム・フォークナー 著
悪魔の恋人 エリザベス・ボウエン 著
湖 レイ・ブラッドベリ 著
小瓶の悪魔 ロバート・ルイス・スティーヴンソン 著
隣の男の子 エレン・エマーソン・ホワイト 著 -
児童向けホラーアンソロジー。有名作も多いけれど、訳し方で印象が変わったりして面白いです。
「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」が収録されているのですが。もちろんこれは長大な長編なので、ほんの一部、ハイライトの部分を抜粋した程度なのですが。それをアレンジしてこんな物語にしてしまうだなんて! これを読めば、未読の人は気になって読みたくなっちゃうかなあ。
レイ・ブラッドベリ「湖」は怖いというよりも、やはり切なさが印象的な物語です。だけど主人公が「変容させられてしまった」ととれば、これは恐怖の物語となるでしょうかね。
本邦初訳のエレン・エマーソン・ホワイト「隣の男の子」、これはいったいどうなってしまうのかとどきどきさせられながら読みましたが。このオチにはぞくりとさせられますね。現実的に怖い物語かも。 -
ホラー短編集
1.八月の暑さのなかで
2.南から来た男
3.最初の舞踏会 -
「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」
エドガー・アラン・ポー原作、金原瑞人さん翻案のオリジナルホラー!オープニングを飾るのにふさわしいドキドキハラハラ感が味わえます。グロテスクな描写もたまらない?よね?
「南から来た男」
書名ともなっているロアルド・ダールのホラー。まさにこれこれ!やっぱりこのストーリー展開を待っていました!意味がわかると背筋が凍る怖さ。最高。
「家具つきの部屋」
オー・ヘンリー作。怖さより切なさを感じてしまう。
「マジックショップ」
H・G・ウェルズ作。題名通り、不思議な味わい。私はこのショップに訪れ…たい……かも。
「不思議な話」
ウォルター・デ・ラ・メア作。本当に不思議な話。一体みんなどうなったの?どこへ行ったの?
「まぼろしの少年」
アルジャーノン・ブラックウッド作。前述の「家具つきの部屋」以上の切なさ。これは泣ける話です…。
「エミリーにバラを一輪」
ウィリアム・フォークナー作。私はこの本の中で、この話に一番心動かされました。エミリーの気持ちが分かるから。そしてこのタイトルがつけられた理由にも共感できた。…でもやっぱり怖い。
「悪魔の恋人」
エリザベス・ボウエン作。これは映像化したい話。最後、とても不気味な余韻を残しそう…。
「湖」
レイ・ブラッドベリ作。この話も怖さより切なさの方が勝る。
「小瓶の悪魔」
ロバート・ルイス・スティーヴンソン作。一番読み応えのあった話。この話もドキドキしながら読み進められた。最後はハッピーエンド…なのかな?ラブストーリーと言えなくもないかも。
「隣の男の子」
エレン・エマーソン・ホワイト作。現代のアメリカのティーンエイジャーを想像しながら読みましたが、これも面白い。
どの話も面白い短編集なんて最高!
一口にホラーものと言っても、切ない話やドキドキする話もあって、とても読み応えのある一冊でした。そして怖いけれど楽しい一冊でした。
一巻、三巻も読むぞー!!
ホラー短編集、進んでますね。金原節、堪能されてますか?(第三巻だけはフランスもので、金原さんではなくなります...
ホラー短編集、進んでますね。金原節、堪能されてますか?(第三巻だけはフランスもので、金原さんではなくなります。)南から来た男と、隣の男の子の「ゾワゾワ」わかります。想像力などと言うまでもなくありありと自分の身に起こっているようき感じられて、なんというか手っ取り早く?ドキドキできますよね。
金原さん訳は距離感が近くなるように感じられて新鮮です。フォークナー『エミリーに薔薇〜』...
金原さん訳は距離感が近くなるように感じられて新鮮です。フォークナー『エミリーに薔薇〜』は3回目位なんですけど、今まで読んだ訳はクラシカルな重厚感ある怖さでしたが、金原訳は職場での噂話みたいに、身近だけどよくわからない人の怖さを体感したような気持ちに。『南から〜』『隣の〜』も含めて、akikobbさんの「手っ取り早くドキドキ」笑!まさにそんな感じです♪
3巻目がまさかの金原さん訳でないとは‥でも読みます。