- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001146134
作品紹介・あらすじ
好評クラシックホラー傑作選、フランス編。残酷な童話のような味わいのカリントンの表題作をはじめ、ペロー、ルブラン、メリメ、モーパッサン、シュペルヴィエルらによる、不気味で美しい短編15編。本邦初訳2編をふくむ、全編新訳。中学以上。
感想・レビュー・書評
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フランスだから恋愛度高め?教訓話で恐怖薄めの『青ひげ』ひたすら純愛『コーヒー沸かし』淡々とした狂気が怖い『心優しい恋人』謎解きしたい『怪事件』。『最初の舞踏会』『壁抜け男』はもはや笑い話。『イールの女神像』一番怖い。
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岩波少年文庫のホラー短編集第三巻。一、二、四は英米文学だが、三はフランス。だからどう違うかについてはなんとも言えないけど、名前は知っていて今回初めて読めた作者や作品もあって、簡潔な解説もついていて、満足満足。
以下、ネタバレはしてないはず、ネタバレするくらいなら紹介を諦めて感想だけ書くことにした、備忘メモ。
■シャルル・ペロー『青ひげ』(一六九七)
大金持ちだがいかにも恐ろしげな青ひげの顔を持つ男と、そこに嫁いだ妻(たち)の物語。情報が少ないから、何通りもの読み方ができそう。
■テオフィル・ゴーティエ『コーヒー沸かし』(一八三一)
このお話に出てくるコーヒー沸かしという道具は、どんなものなんだろう。陶器製らしいけど、姿形を見てみたいな。
■ギ・ド・モーパッサン『幽霊』(一八八三)
友人にある頼まれごとをされたらまさかの恐怖体験。八十歳を越えてやっと人に話せる、というところに怖さが滲む。でも謎は謎のまま。
■ジュール・シュペルヴィエル『沖の少女』(一九三一)
強い思いの吹き溜まりみたいな場所があるんだろうか。「思うのは勝手」でもない。どうしようもないんだけど。
■レオノラ・カリントン『最初の舞踏会』(一九三九)
表題作、こわっ!さらっとグロい。
■ギヨーム・アポリネール『消えたオノレ・シュブラック』(一九一〇)
周りのものに擬態して姿を消すことができるという友人オノレ・シュブラック。本筋とは関係ないが、その秘密を聞いて自分もやってみようとする主人公がちょっとかわいい。
■マルセル・エーメ『壁抜け男』(一九四三)
これがミュージカルになっているなんて、どういうこと。機会があったらぜひ見よう。
■モーリス・ルヴェル『空き家』(一九一〇)
殺しも辞さないコソ泥、という程度の悪党のお話。いつもの慣れた手口で空き家に盗みに入ったはずの彼が、妙に恐ろしさを感じた理由は…?
■アルフォンス・アレー『心優しい恋人』(一九二一)
訳者による著者紹介文にこうある。「“シュールレアリスム宣言”で有名な作家、アンドレ・ブルトンに“エスプリへのテロリズム”と作風を評された」。これを読んで高まる期待を裏切らない内容だった。
■エミール・ゾラ『恋愛結婚』(一八六六)
人は、悲しみは忘れることができても、自分の犯した罪は忘れられないのかもしれない。やっぱり、まくとぅそーけーあってのなんくるないさーなのだなあとしみじみ思う。それとはまた違う位相での感想だが、タイトルもうまい。
■モーリス・ルブラン『怪事件』(一八九三)
解決編なき推理小説…!エラリー、来て〜!
■アンドレ・ド・ロルド『大いなる謎』(一九二五)
おっとこっちは解決しちゃダメだったやつ…!それはそれで、エラリーなら弁えてたはず〜!
■ボワロー=ナルスジャック『トト』(一九七一)
これはあまりうまくない怖さ。
■ジャン・レイ『復讐』(一九二五)
後味悪しだけど、「死者の恨みで腹を満たした」とかぞぞっとする表現には恐れ入る。
■プロスペル・メリメ『イールの女神像』(一八三七)
フランスの田舎町で掘り出された女神像をめぐる物語。パリから訪れた考古学者の「私」が主人公で、田舎の習慣にうんざりしつつもそつなく話を合わせる様子が目に浮かぶよう。女神像のいわれについては理解しきれなかったが、「尊大、皮肉、残酷性を浮かべた顔は、それでも信じがたいほど美しかった」とはいったいどんな顔だろう。 -
ホラー短編集の3作目はフランス編。1、2は金原瑞人氏の編集だから手に取ったということもあったので、今回はフランスのみか…何となくこってりとしたホラーという印象があり、表紙がまた不気味さを醸し出してるし…と、今回は尻込みしてました。それでも手を出してしまったのは、やはり怖いもの見たさというか。何だかんだ、この岩波少年文庫のホラーシリーズに魅せられちゃってるようです。怖いのが苦手なくせに!
一作目はペローの「青ひげ」。いいチョイスです、幼い頃にかなりビビった思い出が鮮明に蘇る。以下、いかにもフランスらしい、ぞわぞわさせられながらも幻想的な作品が続く(時々、滑稽でシュールな味わいの作品を挟みつつ)。モーパッサンが、アポリネールが、ゾラが、こんなホラー短編を描いてたの!という驚きもあり。あまり後味のよくない、若干グロい描写があったりもするが、3冊目ともなればあまり気にならなくなってきました。今回も佐竹美保さんの挿画がクラシックで上品で、作品世界を奥深いものにさせている。
個人的なお気に入りは、シュペルヴィエル「沖の少女」。ファンタジーっぽい雰囲気だけど、地味に怖い。そして、一番長い最終話、メリメ「イールの女神像」。締めくくりにふさわしい、ミステリーホラーだ。
作品のセレクトのうまさは勿論のこと、収録順もよく考えられているなと納得。英米、フランスときたので、他の国のホラーアンソロジーもお待ちしています。 -
「青ひげ」というお話がよかった。「壁抜け男」はやっぱり名作
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2023/02/06
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2023/02/07
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読み終わったのにレビューを書くのを忘れていた。
そのあいだにかなり内容を忘れてしまった。
前作二冊とちがい、フランス系のホラーは味がちがう。どちらかというと、フランス系のほうが私には好み。
ゾラとセザンヌが中学時代の同級生だったことは解説で初めて知った。
佐竹さんの扉絵のセンスに感嘆。初読ではもちろん絵の意味はわからないが、読後にみると、何気ないイラストにゾーっとさせられる。
このシーンを切り取るとは!と。
扉絵で気に入ったのは、幽霊、沖の少女、壁抜け男、トト。
物語としては、ラストの中篇、メリメのイールの女神像が面白かった。 -
有名なペローの「青ひげ」を始めとした、フランス文学のクラシックホラーを集めたアンソロジー。陰惨だったり、切なかったり、ちょっとコミカルだったり、不思議な後味のいろんなホラーが楽しめました。おもしろかった。特に「心優しい恋人」「トト」に衝撃を受けました。
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ホラー短編集フランス編
最初の舞踏会:初読。舞踏会へ行きたくない少女が、ハイエナに身代わりをさせる
沖の少女:海に住む少女(古典新訳)と同じ
壁抜け男:特殊能力で犯罪を繰り返す -
佐竹美保女史の描く表紙の獣頭人身の肖像画のあまりの禍々しさに手に取りましたが、この絵のドレスを着たハイエナの血みどろの表題作が、レオノラ・カリントンの小説だったのか…。めちゃめちゃグロ怖くて、絶対に舞踏会で出会いたくない…。
アルフォンス・アレーの「心優しい恋人」も、どうしてそうなった…!!?という純愛グロヤバベッドサイドストーリー…。や、ヤバい…。 -
ジュニア向けホラー短編集の三作目は、訳者が変わってフランス篇です。
『青ひげ(シャルル・ペロー)』童話から。青ひげってこういう話だったか。懐かしい。
『沖の少女(ジュール・シュペルヴィエル)』どういう話なんだろうと読んでいくうちに少女の境遇がわかってきて、何とも不思議な怖さの作品です。
『最初の舞踏会(レオノラ・カリントン)』舞踏会に出たくなくて、身代わりに立てたのはハイエナだって。なんだか不穏な感じですが、やっぱりそうなっちゃいますよね。
『壁抜け男(マルセル・エーメ)』超能力ものと言ってもよいか。なかなかユーモラス。それが伏線だったのか
『恋愛結婚(エミール・ゾラ)』こわいこわい。不倫の末に夫を殺すことにした妻と恋人。うまくいったようにみえたのだが、犯罪の記憶は二人を追い詰めやがては。 -
岩波少年文庫の中学生以上向けホラー短編集フランス文学編。お国柄なのか編者の違いか、英米編『八月の暑さのなかで』とはひと味違った、ざわざわした気持ちになる作品たち。怪異や出来事よりも、生きた人間の心象描写が際立って感じられた。「怖さ」というより、「不気味さ」を味わえるかもしれない。個人的には、『オノレ・シュブラック』が少年向けに新訳されていたことと、『壁抜け男』との読み比べができたのが嬉しかった。そして、編者が「とりあげようかどうか迷っていた」(解説)という『沖の少女』が1番怖かった…。
だいぶ忘れてしまいましたが、フランス編、グロ怖というかシュールな話が多かったような印象です。『怪事件』解決し...
だいぶ忘れてしまいましたが、フランス編、グロ怖というかシュールな話が多かったような印象です。『怪事件』解決してくれないんですよね笑。
そうそうグロ多めシュールでした。恋愛と絡みあったりして独特の雰囲気、私には怖さ薄めで読み...
そうそうグロ多めシュールでした。恋愛と絡みあったりして独特の雰囲気、私には怖さ薄めで読みやすかったです。
『怪事件』akikobbさんはエラリー召喚してましたね笑!ルパンの作者が書いたのならちゃんとオチがあるかと私も期待したのでちょっと残念。