アースシーの風 ― ゲド戦記V

制作 : ディビット・ワイヤット  Ursula K. Le Guin  清水 真砂子 
  • 岩波書店
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レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001155709

作品紹介・あらすじ

故郷の島で、妻テナー、幼い時から育てた養女テハヌーと共に静かに余生を楽しむゲド。ふたたび竜が暴れ出し、緊張が高まるアースシー世界を救うのは誰か?待望の最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 帰還同様の感想を持ちました。
    時間が立ち過ぎていて、戻っては来ないなと。
    確かにゲドにもう魔法は戻ってこなくて、それで良いのかもしれない。
    それが正しいのかもしれない。
    大賢人が今は見る影もなくて、しかも既に主役でもない。
    それがあるがままの事実かもしれない。
    ただそれはちょっと、残念なのだ。

    ここまで来ると、宗教的だったり、社会の風刺だったり
    いろんなものが秘められているようで、児童文学とは言えない気がしました。

    レバンネンは好きだけれど、それだけに、なのか
    テナーに対してちょっと苛々した部分も。
    レバンネンの見方は、けして若者の対抗心ではなくて
    一国の王としては正しいのではないかなと思うのですが…。
    はいそうですかと政略結婚して腕輪を渡せるものではないでしよう。
                          
    竜と動物と人との違いっていうのは、興味を惹かれましたが。
    動物は言葉を話せない。人は話せる。だから嘘もつける。
    竜は言葉を話せる動物だが、嘘は吐かない。
    そして動物は、純粋な気持ちで傍にいてくれる。
    その温かさに守られる。
    これはとてもよく分かる。
    傍でほっこりと丸く温かく、柔らかく座ってくれているだけで、
    どれだけ心が癒されるか。それは魔法使いでなくても、よく知っている。
    それでもこの世の中に、それを知らない人のなんと多いことか。

  • 【配置場所】特集コーナー【請求記号】933||G||5
    【資料ID】10403448

  • 造ることとこわすこと
    始まるものと終わるものと
    誰に見分けのつくものぞ
    われらが知るは戸口のみ
    入りて発つべき戸口のみ

    この世の言葉や文字は事実に基づくこと無く
    自らの価値観に溺れ全体を見失い部分に執着して
    過去や未来について嘘をついたり間違えたり騙したり
    思い込んだり言い逃れしたりホノメカシたり脅したり
    約束したり保証したり噂したり予想したり
    在らぬことを有るがごとくに伝えて
    自分の思いを遂げるための手段でありその道具となる

    何とこの五冊を描き上げるのに30年におよび
    四巻から見ても11年の歳月を要したという
    しかしこの11年の間に「ゲド戦記外伝」があり
    そこに五巻への道筋が在るのだけれども
    日本版での出版は5巻が先となり
    外伝が最後に翻訳された

    龍は自らに問う
    その昔人と龍は同じ真理の言葉を使う同じ種族だった
    そんな中で分裂が起こり人間は
    部分観に特化した言葉を使いだした
    龍は自由自在を選び
    人間は価値観を生み出す善悪というくびきを選んだ
    龍は火と風を選び人間は水と天地を選んだ
    龍は西を選び人間は東を選んだ

    だが龍の中には常に人間たちの選んだ富への羨望があり
    人間の中には龍が持つ自由自在への羨望があった
    そこに奪って所有するという邪な心が入り込んだ
    ここで永遠の自由を選び直さなければ
    自分という存在を失うことになるだろう

    男社会の人間は龍の自由自在をうらやみ
    永遠の世界を半分奪い
    永遠なる魂のためと言いつつ秩序建てた死の世界を作り
    何も実感のない乾いた闇の世界に死んだ魂を閉じ込めた
    この暴力的な矛盾に死んだ魂が
    自由なる生まれ変わりを求めて苦しみ解放を求める
    それに刺激された龍も自由を抵当に
    権利という所有を求めだす

    そして双方の体験と学びによって合議を生み出し
    意識と物質を調和させることで流れを取り戻す

    さて現実の人間社会はこの先大自然の流れと共に
    未来を描き出せるようになれるのだろうか

  •  アーシュラ・K・ル・グィンの『ゲド戦記』の第1巻『影との戦い』は宮崎駿の息子さんによってアニメ化されて有名になりました。この物語は「行きて還りし物語」の構造を持っていることでも知られています。また「成長小説」としての側面を併せ持っていると言われます。学生諸君が夏休みに時間を掛けて読むのに持って来いの物語だと思います。ぜひ実際に手に取って一読してみてください。
    1.影との戦い:4001106841、2.こわれた腕環:400110685X、3.さいはての島へ:4001106868、4.帰還:400115529X、5.アースシーの風:4001155702、6.ゲド戦記外伝:4001155729
    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000451969

    文学部 T.Y

    越谷OPAC : http://kopac.lib.bunkyo.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1000371966

  • ゲド戦記は「剣と魔法」の物語である。とはいっても、巷に氾濫するファンタジー作品とは、多少毛色が異なっている。魔法使いが中心の物語では、華々しい戦闘が行われたり、ロマンスが語られることもない。冒険の舞台も海の果ての砂州だとか、地下の墓所といった、暗く彩りの乏しい世界が選ばれている。竜は登場するが、敵対者というよりはむしろ協力者として描かれ、使われる魔法も、帆に風をはらませたり、杖を光らせたりという実用的な物ばかりであまりぱっとしない。

    それでは面白くないかというと、これが実に面白い。プロップの「民話の形態学」にある機能を忠実になぞるかのように物語は安定した構造を持つ。しかも、人物造形が的確で、主人公のゲドはいうに及ばず、Ⅱで登場する巫女テナー、Ⅲの王子レバンネン、Ⅳの竜の子テハヌーと、ややもすると類型的になりそうな役柄を担わされていながら、実に強い個性を持たせることに成功している。

    さらに、著名な文化人類学者を両親に持ち、自身もユング心理学の研究者である作者の文化に関する造詣の深さが物語の細部を支え、小さな挿話一つに至るまでゆるがせにできない重みを持つ。実際、登場人物の語る言葉の一言一言が重いのだ。既刊の五巻をあらためて通して読んでみて、二十数年に及ぶシリーズであるのに、それぞれの巻で触れられるちょっとした挿話が、後の或いは前のできごとにいかに深く関わっているかには驚きを禁じ得ない。

    それでも、さすがに歳月の重みは無視できない。一貫した思想に貫かれているように見える『ゲド戦記』にも、作者の思想的な変化は透けて見える。フェミニズム批評を受けて、作家は初期三部作と後記の二作品におけるジェンダーの扱いを変化させた。Ⅳ『帰還』には特にその傾向が強く、ともすれば物語世界を圧し勝ちであったが、十年の歳月は思想の成熟を促し、より魅力的な世界観を携えて多島海世界は読者の前に姿を現した。

    男性中心、観念的、禁欲的であった三部作に比べ、『アースシーの風』は生きることの祝祭的な明るさに溢れている。テナー、テハヌー母娘はもちろん、第五部で新しく登場した、多感で自由奔放な竜の娘アイリアンや新しい世界に勇敢に踏み出してゆくカルガド帝国の王女セセラクという魅力的な女性が物語を動かしていると言っても過言ではない。それは充分に魅力的に思えた三部作の世界が沈鬱なものに見えるほどである。

    物語の狂言回しを務めるのは、亡き妻を愛するあまり、夢で黄泉の国を訪れ、死者に取り憑かれてしまうハンノキである。彼はゲドやその他の魔法使いのように物の真の名に精通しているわけではない。壊れた物を修繕するまじない師であるというのがこの物語の主題を暗示している。魔法は人間に富や権力をもたらすが、それはどこかで世界の均衡を破ってしまう。また「自己」や「所有」への執着は死を恐れさせ「不死」への欲望を募らせる。

    黄泉の国に引きずり込まれそうになるハンノキを守るのが「ヒッパリ」という名の灰色の子猫。体と体が触れ合う温かさこそが大事で「動物たちには命こそ見えていても死は見えていないんだから。犬だって猫だって、ロークの長に劣らぬ力を持ってるんじゃないか」とまで、ゲドは言う。個人的には共感するところだが、魔法が「人工」の極致であるなら、ゲドはなんと遠いところに来てしまったことか。魔法を忘れたゲドはまるで「老荘」的な無為自然に生きる東洋の隠者である。

    あまりに寓意的な解釈はこの優れて豊穣な物語世界を貧しいものにする虞れがあるので慎みたいが、近代社会を支配してきた西洋中心の科学的進歩主義、言語中心主義、キリスト教的二元論等々を相対化し、言葉や宗教、文化的価値観のちがいを認めあうことこそが均衡を保持するという思想がここにはある。「死生観」という、根元的な問いを物語の中心に据え、ある面では非常に今日的なテーマを描きながら、『アースシーの風』は、多様な登場人物が力を合わせて障害を乗り越えるという、希望に満ちた結末を提示して終わる。現実の世界もこうありたいものだ。

  • ちょっと難しかったです。読むのに時間が沢山かかりました。だけど、大事な所の本筋は掴めたように思います。ゲドがあまり動かないのは、物足りないけど楽しかったです。

  • 翻訳版ではこの3作も児童書として扱われているが、メリケンでは子供図書館では借りられない。Ⅲまでは少年少女が外の世界に足を踏み出し成長していくという内容だが、Ⅳからはフェミニズムを主要テーマにし内容も大人向けである。みんなの憧れで正しいものの象徴のように扱われていたローク島もフェミニズムの刃でざくざく斬られている。成長した主人公たち個人個人は男女が比べあい、貶めあって暮らすことが(作者は男性の非を多く書いてはいるが)どれだけ人生を貧しくむなしいものにしているかに気づいてお互いを認め合うようなエンディングを迎えているけれど、社会全体は本を閉じた後の現実社会と一緒で、この問題は個々では解決しても社会システムとしては永遠に変わらないのだと思わさせる。とても児童書ではないなぁ。シェリ・S・テッパーの「女の国の門」を髣髴とさせる話であった。

  • 1番ページ数が多いのに1番簡単に読めました。
    これは5巻まで来てアースシーの世界に私が慣れたのと
    5巻自体、もうその世界観を書かなくていいから少なかったからかな。。
    (翻訳も少し読みやすくなった。)

    そして沢山の魅力的な登場人物が出てくるのでページをめくるスピードも進むというものです。
    ゲドは1人か2人で旅するのが常だし、4巻は別ものだから5巻も特別になる。

  • ゲドは西の空から目を移して、背後の森を、山を降りあおいだ。山はいつかすっかり暗くなっていた。
    「ねぇ、わたしが留守の間、何してた?」テナーはきいた。
    「家のことさ。」
    「森は歩いた?」
    「いや、まだ。」ゲドは答えた

    (ゲド戦記第五巻「アースシーの風」より)



    一巻では自らの若さゆえのおごりによって生じた出来事を乗り越えたゲド、
    二巻では自らの決められた役割と狭められた視野を見事に打ち壊したテナー
    三巻では大賢人と呼ばれるようになったゲドはレバンネンと共に死者の国に赴いた。
    四巻ではテナーは不具の娘に愛情を注ぎ、かつ全てを出し尽くしてしまったゲドをやさしく包んだ。
    そして五巻において、テナーは世界を新しい形に安定にすることを成し遂げる。
    しかしながらそれは結果的に娘と別離という悲しみをもたらした。

    世界の均衡を再び取り戻すという偉業を成し遂げた二人が、家族が一人遠くへ行ってしまった小さな家で静かにワインを飲み、いつものことをいつものように話す。

    物語の最後のその静かなやりとりが僕に大きな感動をもたらしました。
    ゲドが降りあおいだその森はどんなに美しいことだろう。

  • とうとう読み終わってしまいました。
    いよいよアースシーとお別れだよーさみしいよー。

    結論から言うと,「トンボ」を読んでから読むのが正しい・・・。

    ゲド戦記のすごいところは,この世界観のひろがりというか,
    こういう言い方でいいのかな。
    原題は"The Other Wind",本文中で「もうひとつの風」と
    何度も出てくる。それは,竜と人が別れて暮らし,それぞれの
    領分で生きる,その「約束」を守るための遠い場所を指している。
    遠い昔の約束,「竜と人は別に生きる」という約束を果たすことで,
    世界の秩序が回復される・・・というようなストーリー。
    ちょっと難しかったけど,やっぱり世界はすっかり変わって,
    いつでも,元のままではいられないのだろうと思います。
    良くも悪くもね。
    最終巻では今までになくいろんな人々が登場して,そのすべてが
    世界の変革にかかわっている。そんな感じ。

    セセクラが好きです。レバンネンと共に新しい世界を
    作ってくれるのかなー。
    テハヌーは竜の世界へ。なんか,ゲドとテナーはまさに,子どもが
    巣立った後の老夫婦の気配だ。全然違うけど。笑
    アズバーとトンボもとても好きです。
    「竜と恋に落ちるのは,勇士だけだから」
    魔法使いも変わっていくのでしょう。

    ・・・今,色々書きながら最後のところを読み返して
    また感動してしまいました・・・。
    泣けて,感動して,心に残るファンタジーです。

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