百まいのドレス

  • 岩波書店
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本棚登録 : 327
レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001155792

感想・レビュー・書評

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  • 何を今更の児童書の名作。
    1954年「百まいのきもの」というタイトルで石井桃子さんの訳で出されたものを、再訳して2006年に世に出したのがこちら。
    石井桃子さんはその年100歳。どのような思いを込められたか後書きで語られている。
    私と同じく、子ども時代に旧訳の方を読んだという方が多いかもしれない。
    時の流れで「きもの」は「ドレス」になったが、言葉の優しさと話の切実さは変わらない。

    学校内で起こる虐めを、つい加担してしまった少女の目線で語っている。
    虐めのターゲットは、ポーランド移民のワンダという女の子。
    みすぼらしく目立たないワンダが「家に百枚のドレスがある」と発言したことで、女の子たちの執拗な虐めが始まる。
    過激な表現こそないが、どんな動機で虐めが始まったか、その歪んだ理屈や心理と結末まで、丁寧に描かれている。
    マデラインという主人公の女の子は、傍で見ていて何も言えず何も出来なかった自分を、ワンダが去った後で強く反省してこう決心する。
    「黙って見てなんかいないこと」
    一筋の希望を感じるラストだが、ことはそう簡単ではない。
    虐めの張本人だったペギーという少女はあっけらかんとしているからだ。

    人の心の中には、誰かを虐げて喜ぶ部分があるのだろうか。
    デフォルトとしてあるのならば、ユーザーは変更して防がなければならない。
    ではどうすれば?私は考えずにいられない。
    教育にそれがあると信じるひとは、このような本を読んで話し合ったりするのだろう。
    だが現実には、罪悪感のかけらもない人というのは存在する。
    その見分け方と対処の仕方を説いた本も数多い。
    「相手の身になって考えろ」と言われても、未経験のことは想像さえ出来ないものだ。
    教育の最大の課題はそこかもしれない。
    人を傷つける大人になってほしいなどとは、誰しも思わないだろうから。

    戦後9年という頃に、このような作品が出ていたということに、あらためて驚いてしまう。
    もしかしたら自分も知らずにやっていたかもしれないと、ふと自らを振り返ってしまう。
    胸がざわつく話のようだが、虐められた側が手を差し伸べるラストは涙が滲むほど爽やかだ。
    ちなみに、ワンダの「百枚のドレス」は本当の話で、後半綺麗な挿絵であらわれる。
    児童書のカテゴリーに入るが大人にもおすすめ。
    子どもたちには、マデラインのメッセージがしっかり伝わることを願う。

  • 以前研修で図書館司書(本職の!)方が、「手紙」というテーマでブックトークをして下さった時、リストに入っていた一冊。
    小学2年あたりでガマくんとカエルくんの「お手数」を国語でやるのだったか…その絡みでこのテーマを選ばれたように記憶している。
    切ないながらも思春期の入り口の女子社会の現実を、ある子どもの目を通して書かれている。子どもの揺れ動く心、逞しさ、優しさを感じ、大人にありがちな固定的な見方を改めさせられるそんなお話だと思う。

  • 小学4年生の時に初めて読みましたが、その何とも言えない切なさ、さみしさ、そして最後の場面のほんのりと立ち上る暖かさ、みたいなものがとても印象に残り、大人になって購入しました。
    「百まいのきもの」と「百まいのドレス」両方持っていますが、挿絵が左右対称なのが面白いですね。

  • 終わり方がしみじみ。追いやられた側が思いやりを差し出す。いじめられている子どもの挙動、いじめている側の子どもの心理を丁寧に描いている。好悪、善悪の感情を交えていないかのように。あと、ルイス・スロボドキンの挿絵が素晴らしい。提示のタイミングも。下手な感動作ではないが、考えさせられる良作。

  • 「だまって見てなんかいないこと」という決意。

    自分が何をしたのか、
    あるいは何をしなかったのかを考えること。

    できてるつもりの大人は多いだろうけど、
    すごく大切な事。
    とくに今はそれをしっかり意識する必要がある時だと思う。

  • ★★★★☆
    いじめてしまった側からの視点で物語が描かれています。ある日、ふっつりと学校に来なくなった女の子。そのことに気付いたのは、彼女をからかおうと、通学路で待ち受けていた二人の女の子だけでした。
    自分たちの行動を振り返り、いじめられていた子の心情を思いやり、はっきりとは書かれていませんが、赦しがあることで、読者もほっと本を閉じることができる。
    人種的な差別問題を扱っています。
    ルイス スロボドキンの挿絵もやさしくて、よいですね
    (マッキー)

  • 凡そ子供だったことのある人なら、彼女らのどの小さな心の動きにも共感できるのではないだろうか。どの子も私、あなた。

  • 翻訳者の石井桃子さんが90歳を過ぎてから再訳に挑戦されたということで話題になったと思います。お話自体は何十年も前に書かれた本ですが、今読んでも古びた感じは全くなく(訳が素晴らしいということもあるかもしれませんが)、感動が心に広がります。大人が読んでもよいですが、繊細な時代を生きる小学生にもぜひ読んでもらいたいものです。

  • 同級生の好奇の目にさらされ、日々からかいを受ける移民の子ワンダ。心ならずもからかう側にまわってしまい、落ち着かない日々を過ごすマデレイン。「無意識の差別」がこの本のテーマだ(と思う)。マデレインの心情を丁寧に描いたことと、たいへん印象的な百枚のドレスのエピソードの効果で、通りいっぺんの教訓話とは違う仕上がりになっている。が、この本を教訓的にならずに子どもに手渡すのは至難の業だ。いっさい口出しをせず、感想も求めないくらいの配慮が必要だと思う。小学校中学年になれば自分で読めるだろう。が、楽しみの要素がまったくないこの本を、その年頃の子に薦めていいものかどうか、ちょっと難しいところである。中学生とか高校生のほうが読者として適切な感じがする。ラストは顔を合わせない和解。物語に一定の結末をつけながら、完全な和解でないぶん心を残し、かえって印象的だ。たいへんうまいと思ったが、そこも小さい子向けでないと思う理由のひとつであったりする。ホントは、こういう話、ちょっと苦手…。

  • 淡々と語る、ただそれだけのお話なのに、とても大事なことに気付かせてくれる。
    少女が大人になる前にはかなり残酷なことを平気ですることを私も覚えている。
    それは外国も日本も変わりないのかもしれない。

    自分の心ときちんと向き合えたマデライン。
    それができれば、もう大丈夫だね。

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