13歳の沈黙 (カニグズバーグ作品集 9)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001155990

感想・レビュー・書評

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  • 「クローディアの家出」「ぼくとジョージ」に続いてカニグズバーグ再読。13歳という子どもから大人に足を踏み入れる時期の少年の微妙な感性をスリリングに書いていて、やっぱり感動してしまう。
    まだ赤ちゃんの妹の危機に直面しながらも、真実を話せなくなってしまったブランウェル。妹虐待の疑いをかけられたブランウェルは言葉が出ない。親友のコナーは、ブランウェルを信じひたすら真相を探る。
    本当に良くできている。やはり、カニグズバーグは凄い!

  • 出てすぐに原書で読んでから13年、初めて翻訳で読んだ。おもしろかったのはおぼえていたけど、筋も完ぺきに忘れておりました。
    これまでずっと12歳を描きつづけてきた作者が、初めて(たぶん)13歳を描いた作品。このあたりの1年ていうのはとても大きくて、だから初めて思春期らしい異性への恋心などがあつかわれていて興味深い。

    秘密というのは、カニグズバーグ作品のなかでは、「それを持ち、自分のことを理解してくれる少数の人と共有することによって、自分が自分らしくいられる」というポジティブな価値を持ったものとして描かれてきたけれど、ここでは秘密の危険が描かれている。ブラウンウェルを奈落の底につきおとし、言葉さえもうばってしまった秘密。でもコナーは、自分とブランウェルが似たもの同士であることに気づいていて、友人の気持ちがわかるから、粘り強く彼のもとに通い続けて、薄紙をはぐように心のバリアをとりのぞいていく。その過程がみごと。

    ところでコナーがカードの使用を思いつくきっかけとなった本のタイトルが『飛びこむ鈴と蝶々』となっているけれど、これは『潜水服は蝶の夢を見る』http://booklog.jp/item/1/4062088673でありましょう。映画にもなっています。なぜ「飛びこむ鈴」になっちゃったのかというと「diving bell *n. 【海】 潜水鐘((しよう)) 《初期の水中作業具》」のせいだと思われるけど、もし現実にある本の邦題を出さないことにしたのだとしても、せめて「潜水服と蝶」とでも訳さなければ意味の通らないところなので、ちょっと誰か気づいてほしかったなあというのが正直なところです。

  • 佳奈子さんリリース

  • カニグズバーグは、『クローディアの秘密』など現代の子どもたちが直面する問題を取り上げた名作で知られるアメリカの代表的児童文学作家。
     
    「ブランウェルが急に話さなくなったのは,なぜ?
    この小説は緊急通報の録音テープのやりとりから始まっているので,きみは殺人事件の小説なのかと思いながら読みはじめるだろうね。ぼく(コナー・ケイン)の親友ブランウェルは,彼の異母妹で幼いニッキが東部にけがを負った瞬間から,ひと言も言葉を話さなくなってしまった。青少年保護センターに収監されたブランウェルのことも次第にわかっていくんだ。さあ,この事件の真相は?
    単に推理のおもしろさだけでなく,複雑な人間関係の中で生きる少年の心の動きにも目を向けるといいよ。」(浜島書店『中学生のための国語のおすすめ本50冊』の紹介より)

    「原題は Silent to the Bone「骨の髄まで徹底的に黙りこくって」。幾層にも積み重ねられた沈黙の層がはぎとられ、孤独、思春期の恋、罪悪感・・、複雑な家庭環境のなかで少年が感じた心の叫びが明らかにされる。」
    (『子どもの本から世界をみる』かもがわ社 の紹介より)

  • たしかに13歳には、性は過酷だ。沈黙も頷ける。しかし、よくぞ作者はこの世代の男の子のことがここまで分かるのだろう。鳥肌がたった。
    そして、毎度のことになってしまうが、信じられる大人だっていること。そして、大人も完璧じゃないこと。感服。

  • ブックトーク使用図書

  • 13歳のブランウェルは、義母妹のニッキが事故にあったことがきっかけで言葉を発すことが出来なくなってしまう。

    彼の友達コナーはブランウェルの沈黙を破ろうと、「半分の姉」マーガレットと事故の真相を明かすことに奮闘する。コナーは彼を信じているからこそ、「友達として」あらゆる手段を講じて彼の沈黙を少しずつ明かそうとして行く。

    事故の真相を明かすと共に、ブランウェルとコナーのふたつの家族の歴史・ブランウェルの表情・ニッキの病状が変化さらに進行していく。

    その中で思春期、離婚再婚、異母兄弟の誕生、そしてベビーシッターのビビアンに対しての性の目覚めを経験した13歳の感情が描かれている。

    ただ黙るだけではなく、ブランウェルはなぜ沈黙を続けたのか、どんな問題があり、何を感じていたか。

    複雑に感情が入り乱れる時期の13歳だからこそ、大人には気づかれない、深い沈黙がそこにはあったのだと考える。

  • 13歳のブランウェルは、まだ赤ん坊の義妹の事故を機に声を失ってしまう。親友のコニーが義姉のマーガレットと協力して、ブランウェルが声を取り戻すのを手助けし、事件の真相に迫る。私は、13歳のコニーにブランウェルの回復を任せる、周囲の大人たちの信頼に驚いた。でも、コニーでなければ、これだけの成果をあげることができなかったのも確かだ。タイトルの沈黙は、ブランウェルの症状でもあるけれど、主人公のコニーは、沈黙することを学び、沈黙も武器と考えるようになる。もう一つのキーワードは共感だと思う。マーガレットとブランウェル、ブランウェルとコニーの共感が解決への糸口になっていく。学生時代に、カニグズバーグの作品で日本に紹介されているものは全部読んだつもりになっていたが、その後に翻訳されたものが多いことを知ってちょっと嬉しい。

  • ある事件をきっかけに話せなくなってしまった少年ブラン。ブランを救いたいと真相を解明していく親友コナー。それを助けるコナーの義理の姉、マーガレット(『スカイラー通り19番地』で主人公だった女の子。今作では自立した大人の女性になっている)

    自分より大切な誰かの存在に気づき始めるのは、これぐらいの頃だったのかな…

    わたしも13歳になったつもりで読んだよ。まったく、おとなはなんにもわかってないなぁ!

    自粛生活の5月はカニグズバーグと共に過ごした。
    マーガレットとコナーのやりとりとお父さん、コナーとブランの一文要約ごっこを思い返しながら、数週間幸せに暮らせました。

  • 以前にも一回借りだしたことがあったはず(最初の方に覚えがある)のに、読了してなかったらしい。
    生後6ヶ月のハーフ・シスターが突然具合が悪くなり(でも頭蓋骨骨折かなんかしてる)、病院へ。その時家にいたのは13歳の主人公の友人ブランウェルとイギリス人オーペアの女の子だけ。ブランウェルは救急にかけた電話から全く言葉を喋れなくなり、オーペアの女の子は彼が赤ん坊を落とした(もしかしたら故意に)と言ったので、ブランウェルは収監されてしまう……それでも彼は喋らない。喋れない?
    友人で主人公の「僕」は何とかその沈黙を破り、真実を突き止めようと奮闘する――という話。
    なかなか面白かったけど、訳がどうなんだろう、原文のせいなのかな、少し読みにくかった。

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