凍てつく海のむこうに

制作 : 野沢 佳織 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 49
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001160123

感想・レビュー・書評

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  • 1945年1月ドイツ領下の東プロイセン。医者の助手をしていた21歳のリトアニア人、ヨアーナは、他14人の避難民とともにバルト海経由でドイツを目指していた。東プロイセン人でナチス政権下で絵画の修復をしていた若者フローリアンは、負傷しながらも大事なリュックをもって逃亡中。東プロイセンの農場に疎開していた15歳の少女エミリアは、コートの中に痛みと恥を隠して逃げていた。ヒトラーの熱狂的な信者17歳のアルフレッドは、水兵として避難船ヴィルヘルム・グストロフでの任に就く。

    フローリアンはエミリアがソ連兵に襲われるところを助け、その後ヨアーナたちのグループと会った際に、彼女の外科手術により助けられる。一人で行動したがっていた彼だが、やがて彼女らと行動を共にすることに。ソ連の爆撃に遭いながら、仲間を失いながらも、バルト海を目指し、その向こうにあるドイツを目指して進んでいくが……。

    第2次大戦末期の東プロイセンとバルト海を舞台に、自由を手に入れようともがく4人の若者たちの姿を、それぞれの語りで描くフィクション。

    避難を続ける3人の、あまりに悲惨な状況に胸が痛みます。船に乗れた時、もう歩かなくてもいいし、寒い思いもしなくていいと安心しましたが、タイトルが「凍てつく海の……」ですから、まさかここまでと思うところまで追い詰められていきます。
    でもこれが、現実なんですね。

    救いは、ヨアーナとフローリアンとのロマンス。お互い素性もわからない中に魅かれていく姿は美しい。

    タイタニックやルシタニアほどは知られていないながらも、開運史上最も悲惨な出来事であるヴィルヘルム・グストロフの悲劇は、5千人の子どもたちを含む9千人の人たちが犠牲になったと言われています。

    「失われた物語の探求者」である作者は、「灰色の地平線のかなたに」でデビューしたルータ・セペティス。この主人公リナもリトアニア人でした。
    ヨアーナは、このリナの従妹。「絵の上手なリトアニアの女の子」を描かれたところで、あーなんかこんな話があったなぁと思い出していたら、まさに彼女のことだったんですね。

    児童書として出されていますが、主人公は21歳。大人の読書にも十分耐えます。

  • 1945年ソ連の侵攻から東プロイセンの住民を逃がすハンニバル作戦。実際にあった悲劇を扱った歴史小説。

    バルト3国の下にある飛び地みたいなロシア領が元の東プロイセン。なんで飛び地になっているのか少し解った。
    今まで知らなかったことを知ることができるのも小説の醍醐味。

  • 第二次世界大戦末期、ソ連軍が侵攻する東プロイセンから市民をバルト海に逃す「ハンニバル作戦」を題材にしたヤングアダルト向き小説。立場も状況も違う4人の若者の視点入れ替えながら物語が進行する。史実を基にしたフィクションだけど、取材を基に徹底したリアリティで描かれている。
    自分がこんな状況に陥ったら、すぐ死ぬだろうなー(^_^;)と思いながら、登場人物たちの強さ、たくましさ、儚さに胸を打たれます。人間てどうしようもないくらい愚かで、でも強くて、美しい。
    私は戦争や貧困、差別を題材にした文学が好きで、それってどういうことなんだろう?かわいそうな人たちに比べて自分は恵まれてるって思いたいだけ??と自問してみたけど、結局、人間の愚かさ、弱さ、儚さを愛おしいと思うと同時に、人間は強く、美しいってことを感じたいからなのだと思う。自分も頑張って生きなくては、と思う。

  • 第二次大戦末期、押し寄せるソ連軍から逃れるため、ドイツ領東プロイセンから軍人や一般人を船で連れ出す「ハンニバル作戦」。その中でソ連軍の魚雷によって多数の人を乗せたまま沈没した船があった。その船に乗り合わせた4人の若者が主人公。そのうち3人はそれぞれ戦争によって悲惨な体験をして秘密を抱えてるが、生きる為に必死で港を目指して歩いてくる。過酷な状況でも尊厳を見失わずに互いに助け合う姿に胸を打たれる。そして4人目は船の乗組員であるドイツ水兵。作者が彼を主人公の一人に据えた意図がよくわからない。最後まで良い所が何一つないままの彼が哀れに思えてならない。

  • 2018.01.21 図書館

  • 第二次大戦末期、迫り来るソ連軍の侵攻から逃げる一行。その中の3人の若者はそれぞれ人には言えない秘密を持っている。互いに心を探る様にしながらも一緒にドイツへ向かう船が出る港を目指す。若者4人の視点から描かれる、史実ハンニバル作戦を基にして書かれた物語。

  • ナチスドイツ占領下の悲しくも生きることに精一杯な人々の声。
    戦争で失うものの1つにある理性を考えさせられる作品です。

  • SL 2017.12.16-2017.12.20

  • 読んでいて、つらい、苦しい、寒い。。。

    戦争は、人々の愛する人、愛する物、愛する暮し、全ての愛するものを奪う。庇護されるべき年代をも無惨に傷つける。

    これまでの戦争小説との大きな違いは、あくまで子どもやティーンエイジャーの側に立っている点ではないか。
    つぶさに調べあげる調査力と、それをこのようなフィクションに仕立てる構成力、そして弱者の側に立つ強く柔らかな作者の視点。知られることなく歴史の谷間に埋められたたくさんの大切な命への鎮魂歌のようである。

    今年も終わり近くになって滑り込んできたベスト10当確作品。

  • 1945年ソ連軍が迫る中、東プロイセンから住民を船で避難させようとするナチス・ドイツ軍。そこへ、様々な過去を持つ人々が極寒のなか港へと向かいます。医者の助手をしていたヨアーナ、ナチス政権下で絵画の修復をしていてナチスの会が略奪を知っていたフローリアン、ポーランドから東プロイセンの農場に疎開していた少女エミリア、ヒトラーを信じてやまないドイツ軍の水兵アルフレッド。この4人が交互に語ることで、物語は進む。それぞれに秘密を抱え、ソ連軍から逃れるべく乗船を目指す。
    多くの一般人を含んだ大海難事故、タイタニックよりもはるかに多くの犠牲者を出しているにもかかわらず、歴史の中で忘れ去られている事実。それを基にしたフィクション。若い4人が、歴史の波の中でもがき苦しむ。周囲の人々を含めて、過酷な脱出劇と二十数年後の彼らを描く。

    ほとんど知らない海難事故だった。それは、戦争中の出来事の一つと言えばそうなのだが、フィクションとはいえ心に刺さるストーリーだった。

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