ソロ沼のものがたり

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  • 岩波書店 (2022年5月30日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (180ページ) / ISBN・EAN: 9784001160376

作品紹介・あらすじ

昔、たくさんのかえるでにぎわった水辺。生き残りの孤独なかえるは、食べることをやめ、ソロ沼の守り神となっていた......。野生生物の生き様を目を凝らし続ける鬼才画家・舘野鴻が満を持して放つ、初の連作短編集。ばった、おさむし、やんま、あげは……生きものたちの濃厚なドラマを、美しい挿絵とともに丹念に描く。

みんなの感想まとめ

小さな虫や生き物たちの視点から描かれる物語が、読者に深い思索を促します。生き残りの孤独なかえるが守り神となるソロ沼を舞台に、さまざまな生き物のドラマが美しい挿絵と共に展開され、彼らの生き様や食べること...

感想・レビュー・書評

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  • 〇童話かと読み始めたら、小さな生きものたちの奇譚でした。
    とくに「かえるのヨズ」は舘野さんだなと。お話のなかで虫や動物たちにとって死はそばにあるもの、死は生ということも受け入れている
    はじめ悲嘆にくれていたヨズが次第に求道者のように平に静かに歩いていく。
    〇ソロ沼御前以外は、主人公たちが見た風景がページページに描かれている。小さな生きものたちの目線で



    「ソロ沼御前」
    森の奥の赤黒い沼、かつてカエルたちの天国だったそこは、カエルたちがあたりを食べ尽くし自分たちでもお互いを食い、とうとう最後の1匹になりました
    …子を食い、絶望して佇むカエルはやがて

    「みずすまし」
    源流から水と一緒にプクップツッと数を増やして、やがて緑色の中にとけていくみずすまし
    …みずすましのはじける音に耳をすまして

    「おけら先生」
    バッタ小僧はおけら先生の噂の夜間学校に入学しました。頭がでかい、鈍いと言われていて、高く飛びたく勉強がしたいのです

    「じゃこうあげは」
    “おかしなもの”から出てきたのは縮れ羽のじゃこうあげはでした。羽が広がらないので空をとぶことができません。足がおれ、地に倒れたとき…

    「ぎんいろてんとう」
    山火事の後のススキ野原の黒い地面を這い回るものがありました。毒を持ったいもむしです。
    この野原が一面の銀色にのみ込まれるときがあります

    「やんまレース」
    沼の夏が終わり、やんまレースの季節がやって来ました。ヨタカの鳴き声で始まり、夕陽がかくれたら終わり。勝者は何でも願いを叶えてもらえます。

    「おさむし戦争」
    おさむしはミミズを狩る部族だ。西部族と東部族は、昔、ひどい戦争でおびただしい命を無くし、一枚岩を境に立ち入らないことを取り決めていました。
    西部族の娘は祖母に聞いた一枚岩のうす緑色のランの花を見たくてこっそりと出かけました。一枚岩で出会ったのは…。

    「かすみあまつばめ」
    空を飛んでいないと死んでしまうツバメ、それはかすみあまつばめです。タマゴから孵るときも、寝るときも、タマゴを産むときも飛び続けます。
    6月の空はなぜけぶっているのか

    「かえるのヨズ」
    片目の潰れたヨズはすばしこい虫を捕まえられず体も一回り小さいカエルでした
    いつも腹を空かし、のろのろと歩く痩せガエルです
    ある日、罪を犯したヨズは生きることに絶望したべることに忌避感をもつようになります。死にたいのにいつの間にか食べてしまう。
    ヨズは「ソロ沼御前」の噂を聞き、ヨタヨタと歩き出します
    その旅路でのいくつもの出会いと会話

  • 『しでむし』『ぎふちょう』『つちはんみょう』などの絵本で知られる、舘野鴻による初の童話集。
    これまでの絵本での抑えに抑えた筆致と比べると、はるかに饒舌ながら、それでも硬質さを失わない文体が心地良い。

    生き物であることをやめようとした蛙の伝説から始まり、無常の中で皆が滅んでいく蜻蛉たちのレース、戦争から逃れられない筬虫の部族の話など、穏やかな語り口の中に苦みを感じる話が多い。しかし、本書の最後に収録された『かえるのヨズ』で、今際の際の山椒魚が言ったように「こうやって這って歩いてると、ほら、おまえみたいなやつに会うだろ? それでいいってわかったのさ。何かに、だれかに出会う。それだけでもう十分。」ということになるのかもしれない。たとえそれが相手を食う、相手に食われるという出会いであっても、(または本書で一番甘くロマンチックなジャコウアゲハ同士の出逢いであっても、)生命が繋がり続けることの鮮やかさを、ひたすらに本書は描いているのだと思う。
    ファンタジーとして書かれた本書でも、作者がこれまでは絵本で、昆虫たちのリアルな生態を通して描いてきた思想が一貫して表現されていて、その力強さを感じさせられる。

  • 小さな虫や生き物の話。
    この生き物はこんな風に生きているのか、と想像しながら読む。
    挿絵の美しさが、生き物たち暮らす世界の厳しさを際立たせる。
    食べることの意味、なぜ生きるのか、を生き物の視点から考えさせられる。最後の「かえるのヨズ」の話は特に印象に残る。

    読み方、読む年齢によって、受ける印象は大きく変わるだろう。

    時間のあるとき、心が落ち着いているときに、ゆっくりと読むといいだろう。朗読にも向いているかもしれない。舘野さんの絵に囲まれて、誰かに読んでもらえたら、世界が一気に広がるだろう。

    ソロ沼御前(ぬまごぜん)

    みずすまし

    おけら先生

    じゃこうあげは

    ぎんいろてんとう

    やんまレース
     
    おさむし戦争(せんそう)

    かすみあまつばめ

    かえるのヨズ

  • ドキュメンタリー映画『うんこと死体の復権』を観て以来、舘野さんの著書に触れる機会が増えました。

    昆虫は得意とは言えないので、映像で迫られると直視できない場面が多々ありそうですが、こんな本なら没入できます。

    虫の話なのに、そこに描かれているのはまるで人間にまつわるお伽話のよう。特に「おさむし戦争」はその情景が頭の中に浮かび、しかも切ない結末にただならぬ余韻を感じます。また、片目のつぶれたカエルが主役の最終話は、彼と共によれよれと旅している気分になりました。

    ソロ沼は差し詰め桃源郷か。まさに小さき者たちの生き様を見せてもらえます。

    映画『うんこと死体の復権』の感想はこちら→https://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/984e00f354bfb0bd1117d2e63af7edb5

  • 物語を読んで、美しさの波長が合う気がした。
    フォントも良い。

  • 様々な小さな生命の営みがみずみずしく描かれています。傷ついても生える、天敵に食べられるその時まで力強く生き抜く、残ったものは次の世代へ継ぐために精一杯生きる。美しいページから生きものの世界へ引き込まれます。
    (カウンター担当/のらぱんだ)令和5年6月の特集「うるうるブックス」

  • なんて美しい作品なんだろう。
    内容ももちろんだが、紙のあたたかさ、植物が丁寧に描かれた優しい色合いの挿絵と、文字の配置。すべてが考えられている。
    何百年と続く自然の営み。生きて子孫を残し、いずれ死ぬ一連の流れ。虫や鳥などの思いで、伝えられる言葉が深い。

    何度も読み返したくなる文章。
    2回目は自然と、生き物の配置図を描きながら味わった。

    人間も古来からの生き方として、自然の中にいるのが、一番落ち着く。

    だから、この作品は良い。

  • ふむ

  • 昆虫などの細密な挿絵が得意な絵本作家、福音館書店でまったく作風の違う月刊絵本を二種類同時刊行して印象に残っていたところにファンタジー小説まで…。

  • 図書館児童書の新刊コーナーから。
    全く前情報なしで読んでみた。
    装丁はきれいだな、と思った。

    読みながら、「虫の生態を生かした短編集だな」と気づいたけれど、それだけの話じゃなかった。
    最後の『かえるのヨズ』を読み進めると、一気に変わっていった。
    社会的弱者の話だ。と思った。

    ヨズは、身体がうまく動かないうえ、ひどい罪を犯したカエル。
    ヨズがソロ沼に向かう道中、瀕死の生き物たちと出合う。
    出会った生き物は、身の上話をして死んでいく。死んだ生きものは、他の生き物に食われる。他の命の糧になる。
    人間は、きちんと糧になるのだろうか?ならない可能性があることが、悲しいと思う。

    ヨズは、ソロ沼で、助かりたいのか。それともおわりにしたいのか。
    「何かに身を任せたいのかな」と少し思った。

  • おさむし戦争のロミオとジュリエット、ヨズの旅、オケラ先生の卒業式。絵がきれい。ひょいと梨木香歩を思い出したのはなんでだろう。

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著者プロフィール

舘野 鴻(タテノ ヒロシ):1968年、神奈川県生まれ。札幌学院大学中退。幼少より熊田千佳慕に師事。学生時代は北海道で、昆虫を中心に生物の観察を続ける。1996年、神奈川県にて生物調査とともに生物画の仕事を本格的に始める。絵本など著書多数。

「2023年 『世界の美しき鳥の羽根 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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