二つ、三ついいわすれたこと (STAMP BOOKS)

  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001164084

作品紹介・あらすじ

元子役という華やかなキャリアをもち、小生意気で目を離せない魅力のあった友人ティンクが、謎の死をとげた。仲良くしていたメリッサやナディアはなかなか立ち直れず、それぞれが学校や家庭で抱える生きづらさにも向き合っていくことになる…。静かな希望と余韻の残る物語。

感想・レビュー・書評

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  • メリッサパートは良かったが、ナディアパートが個人的にはイマイチ。ティンクの死は自殺なのか病死なのか最後まではっきりとはわからない。

  • まるで棘のある花にそっと触れるように読んだ。
    謎めいていて浮遊感のある美しい物語だった。

    "だってナディアが鏡を覗きこんでいるとき、ナディアの眼に映るものを、あたしは見ていないもん。あたしは、自分の友だちの、だれか別のナディアを見ているんだよ。わかった?"

    "ティンクがもっと自分のことを好きになれるように、なにかわたしたちにできればいいのにね。"

    大好きな台詞。
    10代の頃にこんな言葉を友だちにかけてもらえたならほんの少し自分のことを認めてあげることができたかもしれない。

  • 後書きからしてティーンエイジャー向けの小説なんだろうか。日本の女子高生が読むと、「アメリカの女子高生は違うな」と思うんじゃないだろうか。ちょっと浮世離れしている。富裕層向けの私立高校で、美人でスリムでミスパーフェクトたるメリッサと、自宅にカンディンスキーの本物があるお金持ちの家のナディアを主役に、メリッサは名門ブラウン大学に進学が決まり、皆で「高慢と偏見」の演劇の上演をしようという。パーティのメニューは「野菜ラザニア、にんじんのしょうが炒めとほうれんそうのナツメグあえ、イタリアン・ドレッシングをかけてレーズンとひまわりの種をのせたルッコラのサラダ」←おいしそう。
    それはさておき、そんなメリッサが自傷し、ナディアが教師に自滅的な恋心を抱く、その「辛さ」は共感を得るかもしれない。得るだろうか?ミスパーフェクトであっても辛いと、今なら分かるけれど、私がコンプレックスの塊だった時高校生の時にそう思えたかは別の問題だ。

  • あなたに伝えたかったことばがあった。

    難しい。話を把握するのも時間がかかったし、飲み込むのにも時間がかかった。元子役の少女が亡くなった後、その少女の友人グループの2人に起こった物語。あらすじはそれだけで語れるけれど、少女の内面の葛藤や現実ではない亡くなった少女の声、過去の回想などもあり、物語を読みなれていないと難しいかもしれない。でも、認められたいというプレッシャー、理想の姿になれない自分、自傷、異性への憧れなど、描かれているのは身近に感じられる話題なので、ぜひティーンズには挑戦してもらいたい。後味は一応悪くない。

    メタな感想をいえば、これが岩波書店から海外のYAとして出されたのは当然、という感じの骨太さを感じる物語だった。

  • 岩波書店の「STAMP BOOKS」というシリーズは、“ティーンの喜びや悩みをつづった作品のシリーズ”なのだそうですが、さすがここに入っているだけあって、この作品にはティーンの苦しみががっつり書き出されています。

    私立の進学校を舞台とするこの作品は、三部に分かれていますが、一人の少女の死が物語全体を貫いています。
    一流とはいえないものの女優の母を持ち、もとは才能ある子役だった少女、ティンク。本名はカトリーナなのですが、ティンクでとおしています。大人に対しても、同級生に対しても顔色をうかがうことなく、自分の思うままに行動する、個性的でかっこいい女の子。焦げたような赤毛で小柄、地味な顔立ちですが、みんなから一目置かれている存在です。
    このティンクが友人たちに何も告げることなく、最終学年への進級を前にして突然亡くなってしまったのです。
    1部と3部は、ティンクの死後、最終学年となったその友人を主人公とした話であり、2部は匿名の友人視点でのティンクについてのエピソードになっています。

    最初の話は、ティンクの友人の一人、メリッサについて。金髪美人ですらりとした肢体、学業でもスポーツでも優秀で、委員会活動も活発に行っている“ミス・パーフェクト”と渾名されるのも当然な少女です。ブラウン大学への早期合格も決まり、順風満帆であるはずなのですが、彼女の内面は非常に危ういものです。というのも、彼女が優等生として頑張っているのは、ただただ父親に愛されたいためであり、そこが満たされないために、彼女自身の自己評価が非常に低くなってしまっているのです。自分で自分を罰することなしにはいられないほどに。

    最後の話は、かわいらしい顔つきの肉付きのよい体型の少女、ナディアについて。メリッサとは対照的に、勉強も運動も苦手なタイプであり、コンプレックスをかかえ、自信が持てずにいます。しかも、たちの悪い男子とパーティに行き、酔っ払ってしまったことから起こった出来事のせいで、ネット上で酷いことを書かれたり、実際にからかわれたりしています。
    彼女を馬鹿にすることなくやさしく接してくれる若い男性教師に恋心を抱いているのですが、ある行動のせいで、大きな騒動になってしまいます。

    メリッサもナディアも心的に家族に支配されていて、ともに自己評価が低く、それぞれに大きな危機にみまわれます。彼女たちが何とか立ち直り、少し自由になれたのは、死んだナディアの存在があったからでした。ナディア自身も問題を抱え、早急な死を迎えてしまいましたが、友人たちを助けることはできたのです。

    “どこにも行かないよ。絶対に。
    だって、あたしがいなくなったら、あんたたち、てんでダメだもんね。”

    少女たちの傷だけでなく、同級生への容赦ない評価だとか探りあいだとか、しんどい十代の日々を生々しく味わわされるため、大変辛い作品ですが、そんな中だからこそ、ティンクの存在は非常に魅力的であり、彼女に背中を押されるように前に踏み出した友人たちの姿もすがすがしいです。
    まぁでも、そういう心地よい結末はYA作品の型どおりの枠組を使っただけで、そこにぶちこまれている暗く病んだ部分のほうが、この作者の本領であろうという印象ではありますが。

  • 不思議なカリスマ的な魅力の転校生ティンク。ミス・パーフェクトの正統派美少女のメリッサ。お金持ちの父親を持つけどおっとりしたナディア。3人の女子高生の話。ティンクやメリッサは目立つ少女で、かなり切羽詰まったオーツらしい緊迫した雰囲気の描写がつづく。やがてナディアの章になりティンクが現れ、ナディアは成長しメリッサも彼女を助ける事で安定していくようにも感じた。爽やかな読後であった。思春期の少女の頃、死の境界をひょいと越える感覚を思い出した。

  • 注目を集めた元子役のティンクは、友人たちに何も言わずに亡くなる。自殺なのか?
    中野良かったメリッサとナディアは、なかなか受け入れられないでいる。成績優秀でスタイルも良いメリッサは、自身の不安を自傷というかたちで回避している。ぽっちゃりとした体形にコンプレックスをもつナディアは、たちの悪い男子たちにからかわれ、大好きな先生に一方的に思い入れてしまい、かえって先生を窮地に追い込んでしまう。
    思春期の危うい少女たちが、親友のティンクの存在を支えに、再生へと踏み出していく。

    最後までティンクの死の謎は解かされていない。今生きている二人の少女の解決も、明るい未来に強く向かっていくというには、ちょっと弱弱しく、若干の不安も残る。しかし、思春期の成長を正反対の二人を共通の友人の存在をとおして、描き分けているところが良いのでは。

  • オーツの子ども向けって読んだコトないなぁ~

    岩波書店のPR
    「カリスマ的魅力をもった友人ティンクが、とつぜん謎の死をとげる。残された少女たちが、それぞれに抱える問題とは……。」
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/116401+/top.html

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著者プロフィール

1938年ニューヨーク州生まれ。68年『かれら』で全米図書賞受賞。著書に『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』『邪眼』『ブラックウォーター』など。近年ノーベル文学賞候補として名前が挙がっている。

「2018年 『ジャック・オブ・スペード』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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