ペーパーボーイ (STAMP BOOKS)

制作 : 原田 勝 
  • 岩波書店
4.12
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本棚登録 : 65
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001164114

感想・レビュー・書評

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  • アメリカのヤングアダルト小説

    まだ人種差別政策の残っていたミシシッピ州メンフィスが舞台。
    主人公は中学生になる手前の少年。仲の良い友人が夏の1ヶ月間、おじいちゃんの農場に行って不在になるので、その間だけ彼の代わりに新聞配達をすることになった。
    毎日新聞を配り、週に1回、集金もして回る。
    しかし、一つとても心配な事が。それは自分がちゃんと彼の代わりができるかどうか。なぜなら自分は吃音で、他人と会話するのが苦手だからだ。
    でも、勇気を出して新聞を配り始めると、そこで思いもかけない出会いと、事件が起き始める。

    既にジャーナリストを引退した作者自身も吃音で、自分の少年時代の経験を元にしてこの小説を書いたらしい。
    なによりも少年の一人称で語られる文体が繊細。
    いつも吃音の事を気にしながら、言いたい事を言うのをやめたり、言いにくい言葉を避けて、別の言葉を選ぶが故に結局言いたい事を伝えられなかったりという葛藤や、
    新聞配達をしながら、いつも喧嘩をして悲しそうな女性や、子どもがテレビばかり見ている家、近所を徘徊する怪しい浮浪者など、子どもの世界から一歩踏み出して大人の世界を覗き込もうとしている不安と期待、
    そして、少年が少しずつ成長していく姿が描かれる。
    ありきたりだが、一度しか訪れない、少年が大人への一歩を踏み出す「夏」の物語。

  • 1959年のテネシー州メンフィス。
    まだまだ黒人差別が普通の社会。
    11歳の吃音の少年。
    スピロさん「大切なのはなにを言うかで、どう言うかじゃない」

  • 1959年、メンフィス。両親と住み込みの黒人家政婦マームと共に暮らす11歳の「ぼく」は、吃音に悩みながらも、夏休みの間友人の代わりに新聞配達をすることになった。配達はまだしも集金には苦労したが、ワージントンさんの奥さんの美しさやスピロさんの聡明さや気遣いに励まされる。そんな中、研ぐために廃品回収業者のR・Tに預けたナイフが、研ぎ賃とともに横領されてしまった。マームに打ち明けると、しばらく彼女は仕事を休み、傷だらけになって帰ってきた。

    大人へと成長する過程の少年の悩みと成長を、周囲の人々との関わりの中で描く回想録風フィクション。

    吃音に悩み、年上の女性に憧れ、自らの出生に疑問を抱く少年の葛藤を鋭く表現する作品。
    スピロさんとの交流により、彼がより物事を深く考え、理解していく様子がとても心強い。

    半面、R・Tとの暴力的なやりとりは、この静かな物語の中では異質で、必要だったのか疑問が残るが、マームをはじめとする差別されたものたち独自の世界を描くためだったのでしょうか。
    米文学にはこういう描写が多いように思えるのは、それが日常だからなのか、これぐらいの刺激が求められているからなのか……?

    それほど難解な作品ではないが、内容から中学生以上が妥当でしょう。

  • 吃音の少年がひと夏の間、新聞配達をする物語。よいという人が多いみたいだけど、私にははまらず。この少し前に日本の吃音の本を読んだからかなー。『僕は上手にしゃべれない』

  • 読後感のいい小説だった。
    作者が吃音だったから、吃音症のことももちろんメインに書かれているけれども、登場して来るマームやスピロさんのように魅力的な大人が登場してきて嬉しかった。
    子どもの成長って素敵な大人が欠かせないよね。

  • 吃音症の作者の自伝的小説。時代背景が古いので今の子たちに共感できるかどうかはわからないが、読み応えはある。/辻塚

  • 吃音障害の少年の成長。黒人人種差別や、両親以外の素敵なと大人との出会いなど。

  • 主人公の少年、頭がいい。吃音があるから、思ったことをそのまま言えないけど。夏に数週間新聞配達をした少年の成長物語。翻訳大賞候補なだけあって、訳か読みやすかった。

  • 良い小説だった。11歳の吃音の少年の成長を、1959年のテネシー州メンフィスを舞台に描く。
     主人公の少年は、友達にけがをさせたので、かわりに1か月新聞配達をすることになる。運動神経はいいから、配達(新聞を投げ入れる)は苦にならないが、問題は週に一度の集金。知らない大人と口を利くのが怖いのだ。吃音に苦しむ思春期にさしかかった少年の内面が丁寧に描かれる。まだ人種差別の激しいアメリカ南部で、黒人のメイド(ほとんどナニー)との絆や、様々な人たちとの出会い、さらには事件まで起こるが、全体に温かく、優しく、ぎすぎすしたとところがないのは、著者の人柄のように感じられる。
     登場人物一人一人が味わい深く、マームと呼ばれる黒人メイドとスピロさんという経験と教養豊かな老人が特に印象深い。この二人は主人公の少年を子どもではなく対等な人間として扱っている大人だ。
     嘘やごまかしがなく、厳しい社会状況をもきちんと描き、物語は面白く、文章は読みやすい。しかも読後感はとても良い。大人にも子供(よく読める小学校高学年以上)にも自信をもって薦められる。
     映画化してもいい作品になると思う。

  • 吃音の少年の心情や苦闘が、手に取るように具体的に描かれている。発音しやすい語、しにくい語。発音しにくい語を口に出すとき、あらかじめ「sss(スー)」と「やさしい息」を出してから発語すると言いやすいこと。吃音がテーマというかモチーフになっている児童書ってけっこうあるような気がするのだけど、ここまでくわしいものは初めてで、言いたいことの半分も言えないもどかしさや、まわりの人の反応につい傷ついてしまう心情などがすごくよくわかった。

    著者の半自伝的な作品なんですね。なるほど。

    でも、いいのは、吃音のことがメインでとてもくわしく書かれているけど、それだけではなく、11歳(まだ子どもだ)の夏のひと月間、友だちのかわりに新聞配達をして、町のいろいろな人たちにめぐりあい、大人の弱さや社会の影や、逆に人間の強さ、尊さ、賢さなんかに触れていく過程がとても自然に、そして丹念に描かれていくこと。けっこういろんな要素が投げ込まれているんだけど、それらが少年の目を通じてしっかりひとつに束ねられている。

    オーソドックスだけど、とてもいい物語。吃音、というキーワードでは、絵本の『ジャガーとのやくそく』(アラン・ラビノヴィッツ あかね書房)を、配達員の少年が言った先々でさまざまな世界を垣間見るという話では『煉瓦を運ぶ』(アレクサンダー・マクラウド)の「ループ」を思い出した。

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