- 岩波書店 (2018年11月26日発売)
本棚登録 : 90人
感想 : 10件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784001164183
感想・レビュー・書評
-
アルバニアに住む7歳の少年ヴィキは、母と5歳の妹ブルニルダとともに、1年半前にイタリアに出稼ぎに行った父の元へと向かう。長距離バスに乗り、密航業者のゴムボートで命がけで海を渡り、列車に乗って、やっとの思いでミラノの父に会えた。ところが、父に案内された家は沼地に立つバラックで、電気も水道もなく、トイレは下水の流れ込む運河の縁だった。不法滞在者の彼らは、警察に見つけられたら1度目は財産没収、2度めにはそれに加えて強制送還になる。ヴィキたち家族の、逃亡者のような生活が始まった。
実際の体験談をもとに、過酷な環境下にありながらも、学校生活に救いを見出し、家族と力を合わせて困難を乗り越える移民少年の姿を、少年自身の回想で綴った物語。
*******ここからはネタバレ*******
あまりにも過酷な旅と生活に胸が痛む。
(道徳的には)何も悪いことをしていなくても、外国人で、不法滞在者ということで、警察に怯え、犯罪者と誤解され(すれ違うときにハンドバッグを守る仕草をされる)、困ったときにも公的助けを求めることができない。
故国では常に開かれている神の家、教会さえも、ミラノでは、貴重品があるからと閉められてしまう。
唯一の救いは学校で、すべての子どもを受け入れるべきという教育省の通達により、イタリア語をほとんど理解しないヴィキも通うことを許され、そこでは温かく理解ある教師のもと、皆と平等の生活を楽しむことができた。
また、彼らがずぶ濡れで浜にいたときに助けたミケーレとルチア夫妻の優しさと勇気も胸を打つ。いくら女性と小さい子たちだったとはいえ、言葉の通じない、ひどい姿をした人たちを助けることを躊躇しなかった。
身近にアルバニアの不法滞在者がいたから驚かなかったのかも知れないが、簡単にできることではない。
最後の、記者の取材を受けたヴィキの記事が市の有力者の目に留まったおかげで母に仕事と滞在許可証が与えられたところは、突然でうまく行き過ぎ感もあるが、児童書だし、実話が元になっているので、これで良いと思います。
辛い経験は7歳のときのものだが、回想している彼は中学2年生になるところ。厳しい場面も多いので、中学生以上の読書をオススメします。
今回は大ヒットが出ないなと思っていたら、この本と出会いました。やっぱり、事実に裏打ちされた物語は説得力が違います。
岩波書店のSTAMP BOOKSは、骨太な作品が多いですね。
故郷を捨てなくてはならない外国人労働者の気持ちを、普段彼らを見かけるときに慮ることができない自分自身も、見つめながら読みました。
ミケーレとルチア夫妻のようになれたら……。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
母と妹とともにアルバニアからイタリアにゴムボートでやって来た8歳の少年ヴィキ。命懸けで海を渡る描写は壮絶。不法滞在者として劣悪な環境で隠れるように暮らす。学校が彼を暖かく迎えてくれるのに救われるが社会はそうではない。誰もが自国で安心して暮らせるのが一番なのだろうけど今、目の前にいる人に笑顔で暮らしてほしい
-
政情不安なアルバニアからイタリアへ、海を渡って不法移民として暮らす七歳の少年の物語。
不法移民についての知識がほとんどない私でも想像していたような厳しい生活はその通りで、でも学校に関しては驚いた。
滞在許可証を持っていなくても等しく教育を受けられる。差別されない。その部分は読んでいてほっとできた。
それとは対照的に、学校の外では警察を恐れて落ち着かない。見つかってしまうのか、見つからずに済むのか、どきどきした。
この本は十代向けらしく、会話が多くて難しい説明があまりないのですらすら読める。その分移民問題については大まかなところを教えてくれるにとどまっているので、詳しく知りたいと思うきっかけになった。 -
英語がないのがビックリ。児童書にも関わらず難民についてや共産主義について深く書いてあり、しかも子供でも読めるように書いてる。でもやはりヤングアダルトなので、それなりに頭の良い子供でないと読めないかもしれない。難民が不法滞在者になる過程でボートから重量オーバーで目の前で人を海に落とされる。難民にもレベルはあってこの本の中では1番迫害が強かったクルド人が真っ先に海に突き落とされたのは何とも言えない気持ちになった。難民は小さな子供時代からこのような死を目の当たりにしてバラック生活で水道もなく不法滞在だから給料日を狙って滞在許可証の巡回で警察が自分のお金としてお金を没収する。やりたくない仕事を不法滞在者がやるけど、本当にどうしようもなくなると不法滞在者の3Kの仕事さえなくなり犯罪でしか生きる道がない人も沢山いる。大昔の身勝手な人が今世にまで沢山の犠牲を出しているけど、その原因を作った人は故人だし悪循環が繰り返されているけど、この著書や作品に出てくる温かい登場人物に『優しい人もいるから希望をしてないで』って言ってくれるような作品で子供には読んで欲しいし苦しくて辛い子供には特に励まされる作品だと思った。
だけど小学校は良くても保育園は劣悪な待遇受けたように、家庭環境には恵まれているけど学校生活で苦しんでいる子どもの場合には返って学校の登場人物がみんな良すぎたから、いじめ被害に悩まされている子には別の意味で葛藤があるかもしれないと思った。家族に恵まれているけど学校で苦しんでいる子供はバラック生活とかはしている子は殆どいないだろうから返ってそこがキツイかと思う。優しい子供ならばそんな風に思うかもしれないけど、もし子供が読んで胸を痛めたら『あなたは優しい子供ね』と親御さんは子供に伝えて欲しいなと思う作品でした。自慢の子供だと思う(*´꒳`*) -
生まれ育った祖国を離れ、言語も文化も違う国へ命懸けで渡る、、、それがどれだけ辛いことか、、、
よく「難民を乗せた船が転覆」というようなニュースを目にするが、それは氷山の一角で、世の中には私たちの知らないところで命懸けで生きている人が本当に沢山いるんだと思う。 -
アルバニアからイタリアへと命がけで渡ってきたヴィキたち家族。
不法移民の生活を七歳の少年の目で描くため、理由がわからなく突きつけられる不遇さへの恐怖が際立ち、不安や疑問が膨らむ。
つらい境遇の中での家族の温かさに心救われる。 -
実話なのですね。ヨーロッパの移民の話。
