ぼくだけのぶちまけ日記 (STAMP BOOKS)

  • 岩波書店
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本棚登録 : 92
感想 : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001164220

作品紹介・あらすじ

兄のジェシーがいじめられていることは知っていた。でも、まさか父親の銃を持ち出して事件を起こすなんて……。13歳のヘンリーは心の傷を抱え、引っ越した町でひっそりと暮らしはじめた。なのに、プロレス好きの友だちや、世話好きな隣人が放っておいてくれない! 残された家族の叫びと希望を描く、カナダ総督文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • これ程重いテーマを、ユーモアを交えながら読ませてしまう描き方に感心した。
    事件の加害者や自殺で残された家族の想いはどれ程のものか、至らない想像でさえ胸が張り裂けそうになる。
    いじめから始まった出来事が、たくさんの人に傷を与え、人生を変えてしまう。
    事件が起きた時、世論は被害者の家族の悲しみに寄り添うのと同じように、加害者の家族の悲しみに寄り添っているだろうか。たとえ子どもでも加害者の家族であれば、誹謗中傷の矢面に立たされてしまうのだ。

    兄の起こした事件の後、13才のヘンリーと父親は、誰も知らない場所でひっそり暮らしている。
    ヘンリーが綴る日記を通して、事件の真相が徐々に明らかになり、ヘンリーの心の傷が痛いほど伝わってくる。
    悲しみだけでなく、兄に対する憎しみ、それを感じてしまう自分への憎しみも。「あなたのせいじゃない」と周りが言っても、自分で納得するまでには時間がかかるのだろう。
    「抱えて生きていく方法を学ぶことはできる」そうアドバイスをしてくれた隣人。寄りによってくれた友だち。
    人を傷つけるのも人だが、救うのも癒すのも人なのだと、ラストはしみじみ嬉しかった。

  • 表紙の絵の少年から受ける印象とは裏腹に、かなり重いテーマを扱った物語だ。

    実際にアメリカの高校であった銃の乱射事件をきっかけに、作者が書かなければと思い至って執筆したという。

    舞台はカナダ。
    父親の猟銃を持ち出した主人公の兄ジェシーは、同級生を撃った後、自分自身も引き金を引いて自殺した。
    加害者のジェシーは学校で、悲惨としか言いようのない過酷ないじめにあっていた。被害者はそのいじめの首謀者。
    そして被害者の妹と加害者の弟は親友同士。

    事件の後、加害者の家族は住む町を追われ、父と母は別居。主人公の少年・弟のヘンリーは父と共に都会の町へ移り住む。

    新しい学校に通いながら、カウンセリングを受けるヘンリー。こんなことやってても意味がないよ…と思いながらもカウンセラーに勧めらて日記をつけ始める。
    苦しいことがいっぱいで、キャパオーバーになってしまうとロボットボイスになってしまうヘンリー。
    お父さんもお母さんも元のようには戻れない。

    それでも、新しい学校の仲間、同じアパートに住む人々に少しずつ心を開いて歩みだすヘンリー。

    若い読者は、おそらく前半のストーリーがつらくて読むのをやめたくなってしまうと思うが、後半に明かりが見えてくるので、最後まで読んでほしい。

    2021.4.5

  • ベスト『ぼくだけのぶちまけ日記』 | 教文館ナルニア国
    https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/9a400127

    ぼくだけのぶちまけ日記 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b515748.html

  • Reluctant = しぶしぶの、いやいやながらの


    カナダはバンクーバー島の田舎町にくらしていたヘンリーの家族。
    まだ、彼は12歳のちっぽけな弟だった。

    兄さんが、自殺した。
    ある事件と共に。

    田舎町では噂がすぐに広まり、一家は嫌がらせにあい、都会へと越していく。
    その上、母さんも、父さんも、ヘンリー自身も、みな追い詰められ、精神を病んでしまう。

    母さんは実家の近くの精神病棟に入院。家族みんなが、兄さんの死を、誰かのせいだと理由を付けながら、それぞれに自分を責め続けている。。

    ヘンリーは家族とも他人ともうまく言葉をかわすことができずに、ロボットボイスで話すようになり、セシル先生のカウンセリングを受けることになった。そしてこの奇妙なポニーテールの医師セシルから、日記を書いてみないかとノートを渡される。
    それがこの、しぶしぶ日記だ。自分だけの思いをぶちまけている。

    今日あったこと、過去に起きたことが、少しずつ記され、読者は事件のことを知る。

    また、安アパートの風変わりな住人たちと、新しい学校のクイズオタクの友人たちと、少しずつ心を交わしてゆく事で、ヘンリーは思い出したくなかった兄さんとのことを日記に書けるようになり、少しづつ誰かに打ち明けはじめるのだ。

    どんな事件を起こした加害者にも、家族があり、幼い兄弟がいる。また被害者でもあるのだ。
    そんな重いテーマを、ヘンリーの好きなプロレスやクイズ、おかしな仲間たちとの生活と共に描かれている。

    子どもたちの文学には、どんな辛いことがあっても、ユーモアと救い、両親以外の素敵な大人の存在があると、とてもいい。

    素敵な日記だった。


  • ヘンリーの兄ジェシーは、父親の猟銃で自分を執拗にいじめていたスコットを撃ち殺し、自分も同じ銃で自殺した。残された家族は、地域の人たちから嫌がらせを受け、母親は精神科に入院、ヘンリーと父親は事件が知られていない町へ引っ越した。
    ヘンリーはカウンセラーのセシルから、見せなくてもいいから日記を書くように勧められ、日記帳をもらう。新しい学校でヘンリーは友達を作らないと決めた。が、ちょっとオタクっぽいファーリーにクイズ研究会に連れていかれる。兄の事件を隠しながら、新しい学校での生活が始まる。

    舞台はカナダだが、米国の高校の銃乱射事件を思い起こさせる。撃たれた方でなく、撃った方と残された家族。そして、その原因となるいじめ。思春期の男子の壮絶ないじめ。兄のジェシーもヘンリーも、最後に仕返しをすることになってしまうのだが、その状況は大きく違っていた。
    衝撃的な事件の残された家族に目を向けた重たい話になりそうなところを、個性的な登場人物とユーモアで最後まで引っ張っていく。それでも、読み終わったときは涙と希望でいっぱいだった。

  • コピー、ペーパーシリーズで名前をきく、スタンプブックスをはじめて手に取る。
    欧米のYA小説が今でも好物なので、またスタンプブックスを読んでいきたいと思う。

    読んですぐに、うわーやばいものを読み始めてしまった、と思った。
    自分の長男次男とほぼ雰囲気が同じだったから。
    長男はasdやADHDのわかりやすい子で、次男もグレー。私も夫もオタク気質でコミュ障家族だ。
    次男(主人公)が、過去を回想して、このときはじめて僕は兄を恥ずかしいと思った。兄はみんなと違うと気づいた。というところで涙が止まらない。数年後、うちもこうなる可能性は大きい。
    いじめの悲惨さは、日本もカナダも変わるところがない。
    (スポーツ系の生徒がオタク隠キャを虐待してもよい風土があるのは同じだ。嫌すぎる。)
    これを主人公が何度も何度も中断を重ねながら、やっと日記に記すところでまた涙。辛かったし、辛い記憶を書くことで呼び覚まされる苦しみと、少しの心の整理があったはず。よく頑張ったね。
    カレンのところで泣くところで、もうこっちはティッシュ箱を抱えて読んだ。
    苦しい。大人を頼ってくれたら、もっと早く助けてあげられたかもしれない。大人を頼っていいよ、ともっとメッセージを送っていないといけない。

    過去を受け止め、自分と周囲を理解しながら、前を向くことのなんと難しいことだろう。
    父も母も、新しい友達も、祖父母も、セラピストも、近所の人も、そして親しかったいじめ加害者の妹も。
    いじめ加害者が妹には優しかった、という事実も。
    誰もが苦しい中をなんとか生きている。
    救いのあるラストが嬉しい。
    元どおりにはならない。取り返しはつかない。
    それでもみんなが主人公を助けてくれた。

    残念ながら、日本ではこうはいかないだろう、とラストまで読んで、暗い気持ちにもなった。
    加害者家族へのバッシングはこの比じゃないだろうし、日本の学校ではいじめの加害者を転校させる措置ではなく、いじめの被害者や家族が「くうきをよんで」転校していくのが実情じゃないだろうか。
    いじめ、即、警察&弁護士!というアドバイスも聞くし、大人が大人として、悪いことはやめろ、と言える社会になりたい。

    モデルとなったコロンバイン高校の銃乱射事件で加害者の母が本を書き、その本が広く受け入れられているアメリカは凄い。日本ならやはりバッシングの嵐で、そもそも出版できないだろう。伝統的な家族観にとらわれ、子供のことを監督できない親のくせに被害者ぶるな、と言われてしまうのを想像して私はまたお腹が痛くなりそう。あとさ、やっぱり、銃は良いことないね。こんな悲惨な事件が、しかもちょくちょく起きているというアメリカで早く銃を規制してほしいし、学校以外の選択肢も増えてほしい。いじめ野郎には大人から制裁や適切な教育が施されるのを祈る。

  • 13歳のヘンリーがカウンセラーにすすめられて
    「しぶしぶ」書き始めた日記。

    こんな日記に意味はない…。
    ヘンリーはそう思いながらも、
    嫌な日常を「ぶちまけ」ていく。

    そうして物語は
    ヘンリーの身の回りに何が「起こっているのか」
    何が「起こった」のか、ヘンリーの心の変化を通して明かされていく。

    ヘンリーには仲の良い兄、ジェシーがいた。
    でもある時ジェシーが起こしが事件がきっかけで
    家族はバラバラ。
    ヘンリーは心の傷と過去に蓋をして
    周囲をシャットダウンして生きていた。

    ところが
    新しい学校では無理やりサークルに誘われたり、
    家ではご近所さんがおすそ分けや世話焼きをしてくれて、ヘンリーを一人にさせてはくれない。

    カウンセラーは最悪だし
    ご近所さんは鬱陶しいし
    友達とも面倒なことで関わりたくない
    嫌なことばかり
    だけど
    本当はクイズとプロレスが好き
    友たちをちょっと可愛いと思ってる
    自分のカウンセラーは他よりましかも
    ご近所さんとの夕食は最高だった

    一つ一つの人とのかかわりの中で
    ヘンリーの心が少しずつ癒されていく。

    日記で進んでいく物語は
    まるで自分のことのように感じられ、
    最後までヘンリーと共に
    細やかに心を動かして読んでいった。

    お母さんとの再会して最悪だった時の日記が
    「一つ」「一つ」…と何とか書き記していたところ。

    ファーリーとの関係性が変化いくところ。

    ファーリーの家へ遊びに行ったあとやカレンの身の上話を聞いた後、ヘンリーの世界観がガラリと変わるところ。

    とても細かいところだけれど、心の描かれ方が好きだった。

    「今日はとてもいい一日だった。でも、明日はそれほどいい一日じゃないかもしれない。…でも、人生がこのまま続くってことも、ぼくはわかっている。…セシルから新しい日記帳をもらおう。」

    胸が熱くなり、生きる力をもらった一冊。

  • 日記形式の物語です。主人公ヘンリーの悲しみ・怒り・不安が伝わってくる日記から、徐々に彼の抱える心の傷が見えてきます。どうしたら良いのだろう? 物語にどんどん引き込まれていきます。
    (カウンター担当/bee)令和3年2月の特集「外国文学のススメ」

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