1997年(底本1983年)刊。「平城京と木簡の世紀 (日本の歴史)」を読む前座として読破。少し古いが、飛鳥から奈良時代にかけての、政治史とも民衆史とも一味違う無名の人々の息遣いを感じさせる。一役人の栄枯盛衰(恵美押勝の変に連座して没落した者と貴族の末席に昇進した老人とが余りに対照的)、大宰府役人の読み物、「蘇」の製造法や味、調と贄の異同など、細かいが興味深い生活実態が垣間見れる。なお、底本から「長屋王」の項目を付加したのが本書であるが、木簡から長屋王を天皇に擬する見解はやや軽率、と本書から看取できる。