日本軍「慰安婦」制度とは何か (岩波ブックレット 784) (岩波ブックレット NO. 784)

著者 :
  • 岩波書店
4.23
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002707846

作品紹介・あらすじ

元日本軍「慰安婦」だった金学順さんが日本政府に謝罪と賠償を求めて名乗り出てから20年-「強制」ではなく「自由意志」だったとする声がいまだに多く聞かれるのはなぜだろうか。「慰安婦」制度が軍によってつくられたことを、様々な史料を用いながら説明するとともに、被害者の名誉と尊厳の回復の必要性を訴える。

感想・レビュー・書評

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  • こういう本を読めばいいと思います。

  • 慰安婦問題に関する歴史的流れや議論点がまとまっており、歴史事実委員会の声明に対するカウンター言説になっている。

    女性の人権や尊厳に対してあたりまえにすべき配慮や賠償に加え、男性である兵士の尊厳に対しても問題があるのではないか?というところまで考察がなされていて勉強になった。

    戦地での性欲解消やストレス発散のためとを軍部に女性をあてがわれることに対して、男性として抵抗はなかったんだろうか。実際に慰安所を利用していた兵士達の回顧録がいくつか引用されており、鶴見俊輔さんの対談『戦争が遺したもの』で触れられていた慰安所の女性と兵士の間にあった愛情のようなもの、と合わせて、この問題を被害者=女性、加害者=軍(日本)、という枠組み(それはもちろん前提だと思うけれど)以外の側面からも見なければいけないと思った。

  • 日本軍「慰安婦」問題に関する第一人者「吉見義明」の著書。
    かいつまんで、慰安婦問題とはどのような問題であったのかをまとめてある。慰安婦問題とは?を知るのにまずは読んでみたらいい一冊。

  • 「慰安婦」制度の問題性を否定する人たちが主張している「The Fact(事実)」。それがいかに事実に反しているかを検証していきます。薄いブックレットなので簡単に読み切れます。

  • 慰安婦というと、まあ無条件にひどい話だ、気の毒に、日本はかつて何ということをしたんだ、などと思う。とはいえ、なかなか慰安婦に関して自分の考えはまとまらないな。なぜかというと、なかなかニュートラルな論に触れることができないからだと思う。悪いけど、この本もその類。つくる会のような見解には触れたいとも思わないけれど、かといって、いまそれとは反対側の極にあるような本に触れるのも何だかな。どうも、重箱の隅をつつくような話になっているような気がする。そんなに細かいところを突かなくても、もっと根本のところで正否は成り立つものじゃないのかな。

  • ざっと見。

    本書は、2007年、アメリカ下院の決議案に反対する、歴史事実委員会なるものの意見広告に対し、その主張に反論するかたちで、事実の検証をしていく本である。

    表面的にしか過去を捉えられない素人であるにもかかわらず、よくでかでかと意見広告なんて作れたなと、その愚かさに肩を落とした。それと同時に、さすが歴史学者、さすが吉見先生といわんばかりの見識の深さを感じた。自身のイデオロギーに左右されず、中立的な視点から歴史を描くことは実績のある研究者にしかできない。

    慰安婦制度については、これまでの膨大な量の研究が蓄積されており、その実態はかなりの程度明らかになっている。なぜそれを踏まえた上での議論ができないのか。なぜそれをガン無視して自論を展開してしまうのか。自論なら適当なことを言ってもいいのか。私には理解できない。

  • 4.2/126
    『元日本軍「慰安婦」だった金学順さんが日本政府に謝罪と賠償を求めて名乗り出てから20年──「強制」ではなく「自由意志」だったとする声がいまだに多く聞かれるのはなぜだろうか.「慰安婦」制度が軍によってつくられたことを,様々な史料を用いながら説明するとともに,被害者の名誉と尊厳の回復の必要性を訴える.

    ■著者からのメッセージ
     元日本軍「慰安婦」(「従軍慰安婦」)だった金学順(キム・ハクスン)さんが日本政府に謝罪と賠償を求めて名乗り出たのが一九九一年でしたから,今年で二〇年近くがたちます(以下,日本軍「慰安婦」は軍「慰安婦」と略記します).軍「慰安婦」だった女性たちは高齢なので,つぎつぎに亡くなっています.それでも,女性たちの名誉と尊厳は回復されず,問題はまだ解決していません.……
    ……軍「慰安婦」とされた女性たちの名誉と尊厳が回復されない理由はどこにあるのでしょうか.その理由の最大のものは,軍「慰安婦」制度はどのようにつくられ,どのように維持され,拡大していったかが,日本国内でまだよく理解されていないからだと思います.
     私は,軍「慰安婦」問題とは,女性に対する性暴力と,他民族差別と,貧しい者に対する差別が重なって起きた問題だと思います.そして,この問題の根本的な解決を放置すると,世界やアジアで日本の信用を失い,将来に大きな禍根を残すことになるのではないかと思います.しかし,もしこの問題を解決すれば,被害を受けた女性たちの名誉と尊厳を回復することができるだけでなく,性暴力の根絶や他民族差別の克服という課題のために日本は大きな貢献をすることになると思います.
    ――「はじめに」より』
    (「岩波書店」サイトより)

    目次
    はじめに
    I 日本軍「慰安婦」制度とは何か
    II 五つの「事実」の検証
    1 強制はなかったか
    ――第1の「事実」の検証
    2 朝鮮総督府は業者による誘拐を取り締まったか
    ――第2の「事実」の検証
    3 軍による強制は例外的だったか
    ――第3の「事実」の検証
    4 元軍「慰安婦」の証言は信用できないか
    ――第4の「事実」の検証
    5 女性たちの待遇はよかったか
    ――第5の「事実」の検証
    補論 女性たちは募集広告をみて自由意志で応募したか
    おわりに――問題の解決のために


    『日本軍「慰安婦」制度とは何か』
    (岩波ブックレット 784)
    著者:吉見 義明
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    単行本 ‏: ‎64ページ
    発売日 ‏: ‎2010/6/10

  • 映画「教育と愛国」をみて、あらためて慰安婦問題ってなんだと立ち返りたくなって読んだ。この国は女性(はじめとするマイノリティ)の人権も尊厳もなにもかも軽んじ続けてるんやなと思うとしんどい。もうしんどいよ。
    あと、少し本題からは逸れるけど、"(強行されるものであれなんであれ)性行為が「慰安」になる"前提もほんとうに心底わからへん。慰安婦問題だけではなくて、いまの性暴力にもつながるけど、性欲を満たしたいというより、他者を踏みつけたい・蹂躙したい欲望の現れのように感じて怖い。

  • 2010年刊。それから果てしないほど後退している。

  • 1 日本軍「慰安婦」制度とは何か
    2 五つの「事実」の検証(強制はなかったか―第1の「事実」の検証;朝鮮総督府は業者による誘拐を取り締まったか―第2の「事実」の検証;軍による強制は例外的だったか―第3の「事実」の検証;元軍「慰安婦」の証言は信用できないか―第4の「事実」の検証;女性たちの待遇はよかったか―第5の「事実」の検証;補論 女性たちは募集広告をみて自由意志で応募したか)
    おわりに―問題の解決のために

    著者:吉見義明(1946-、山口県、日本史)

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