現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ (岩波ブックレット)

著者 : 川上泰徳
  • 岩波書店 (2011年5月11日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708096

現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ (岩波ブックレット)の感想・レビュー・書評

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  •  エジプト革命について、その発生から終結までを町の出来事と一緒に説明している。チュニジアからエジプトにきて、シリアでは泥沼という結果については解明できない。

  • (2011.06.05読了)(2011.05.25借入)
    【アラブの春・その②】
    2011年2月11日、エジプトを30年間支配してきたムバラク大統領が辞任しました。
    この本は、1月25日に始まったエジプトの民主化要求デモからムバラク大統領の辞任までを現地から報じた朝日新聞記者のウェブマガジンをまとめたものです。
    新聞で追いかけるのは難しいので、本にしてもらって助かります。
    中東などの場合はやむを得ないのかもしれないのですが、エジプト政府の当事者、デモを組織した当事者の声が全く聞こえてこないというのは、残念です。
    通常のドキュメンタリーだと、当事者たちというか指導者たちの思惑が述べられ、それがどう変わっていったのかを追うことによって、真相が見えてくるという形になると思うのですが、ここにはそのようなものはありません。これからどうなって行くのかもわかりません。
    ムバラク大統領の辞任を求めるデモの引き金になったのは、チュニジアで1月14日に民衆のデモでベンアリ大統領が国外に出国したことです。
    エジプトの後、リビア、シリア、バーレーン等で、民主化を求める闘いが展開されています。展開の仕方は、国によって様々です。今年の年末ごろには、中東を諸国に吹き荒れた民主化の嵐の総括ができるのでしょうか。いずれの国でも、まずは、民主的な選挙による代表者選びができるかどうかが第一関門で、選ばれた代表者が次の独裁者になってしまわないかというところが、第二関門ではないでしょうか。
    選ばれた代表者が独裁者になってしまったら、元の木阿弥です。
    エジプトはムスリム同胞団が主導権を握ることになるのでしょうか?そうなるとイスラム教に基づいて国家が運営されることになるのでしょうか?
    2000年にパック旅行で、エジプトに行ってきたのですが、かなり近代化が進み、カイロでは、働くOLも結構いるように見かけました。イスラム支配になると欧米化が悪の根源とされ、欧米文化は排除されることになるのでしょうか?興味深いところです。
    民主化運動と見えたのが、実は、イスラム化運動だったのかもしれません。

    ●インターネット停止(9頁)
    1月25日、エジプト各地でムバラク大統領の辞任を求めるデモが起こった。
    1月28日午前0時、政府の命令で、インターネットが停止した。
    昼前には携帯電話も通じなくなった。
    市民の情報連絡や外国への情報発信を阻止するためということです。
    でも、イスラム教徒には、金曜礼拝という集まりがある。
    ●2月1日のデモ(24頁)
    100万人のデモということだったが、タハリール広場に行ってみたら、20万人程度だった。老若男女、あらゆる年代の人々がいて、西洋的な身なりの若者から伝統的な身なりの老人まで様々。ムスリム同胞団関係者に、同胞団メンバーがどの程度いるか聞いたところ「6割から7割」という答えだった。
    ●エジプトは若い国(39頁)
    エジプトは8千万の人口を抱えているが、平均年齢は24歳である。日本の平均年齢は45歳。エジプトは若者の割合が多い。(寿命が短い?)
    エジプトの失業率は約10%で、若者の失業率はより高い。就職しても格差が大きい。タハリール広場で若者10人ほどに聞いてみたら、月給が460ポンドから2200ポンドまで開きがあった。
    ●辞任演説のはずが(43頁)
    2月10日夕方、ムバラク大統領が辞任するというニュースが流れた。夜11時近くに始まったムバラク大統領の演説は、9月の選挙まで見守る、というもので、辞任するとは言わなかった。(新聞によると、スレイマン副大統領との打ち合わせでは、辞任演説ということになっていたのに、演説直前に、ムバラク大統領が原稿を差し替えてしまった、ということだった。何とも往生際が悪い。)
    2月11日、結局、ムバラク大統領は辞任した。
    ●おまえはエジプト人だ(49頁)
    ムバラク大統領の辞任が発表された後、広場に稲妻のように広がった言葉がある。「おまえの頭を上げろ、おまえはエジプト人だ」という言葉である。
    ●ハラミ・ミリオン(50頁)
    ムバラク大統領の辞任が発表された後、「さらば、ムバラクよ。ハラミ・ミリオン(百万の盗っ人よ)」という声が広場で上がった。1970年にアラブ民族主義の英雄ナセル大統領が急死したときに葬儀で民衆が唱えた「さらば、ナセルよ。ハビブ・ミリオン(百万人に愛された人よ)」をもじったものだ。

    ☆関連図書(既読)
    「コプト社会に暮らす」村山盛忠、岩波新書、1974.04.22
    「スエズ運河」酒井傳六、朝日文庫、1992.01.01(新潮選書、1976.3)
    「アラブの風」牟田口義郎著、実業之日本社、1976.12.10
    「旅は道づれツタンカーメン」高峰秀子・松山善三著、潮出版社、1980.06.25(中公文庫、1994.01.10)
    「エジプト・文明への旅」小杉泰、NHKブックス、1989.11.20
    「ナイルの流れのように」ハムザ・エルディーン、筑摩書房、1990.04.25
    「写文集 ナイル」野町和嘉、講談社文庫、1997.03.15
    「カイロ」牟田口義郎、文春文庫、1999.03.10
    「イスラム過激原理主義」藤原和彦著、中公新書、2001.10.25
    「テロリストの軌跡」朝日新聞アタ取材班、草思社、2002.04.25
    「原理主義の潮流」横田貴之著、山川出版社、2009.09.30
    (2011年6月9日・記)

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