震災トラウマと復興ストレス (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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  • レビュー :17
  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708157

作品紹介・あらすじ

未曽有の災害が刻んだ心の傷(トラウマ)は、時とともに思わぬストレスや人間関係のトラブルとして表れる。なぜしばしば生き延びた被災者が罪の意識に苦しみ、支援者が燃え尽き、遠くにいる人までが無力感にとらわれるのか。震災のトラウマが及ぼす複雑な影響を理解し、向き合い、支え合うための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 被災地支援を知るために手にとったブックレットでしたが、読み進めるにつれて、別の「現場」でも応用できる考え方が紹介されていることに気づきました。

    トラウマの中空構造に関しては、「語られないこと」をも大切にされていることが伝わってきて、胸がじんわりしました。

    「環状島」について知ったのは、このブックレットが初めてでした。

    「ウチ」と「ソト」に分かれていて、どこにいるかで感じることがまったく違うこと、
    「仲間」になれるのは「ウチ」の人だけで、「ソト」の人は「味方」にはなれるけど「仲間」にはなれないことなど、
    説明されると「ほんとにそうだ〜!」と、深く深く納得のいくことばかりでした。

    「環状島」は「感情島」でもあり、「感情」の取り扱いで気をつけた方がいいことも紹介されており、
    日々の支援活動で役立つ知恵をたくさん受け取ることができました。

    こんなにも複雑で、センシティブな内容を、
    こんなにもわかりやすく、すっきりと伝えることができることに、
    とてもとても驚きました。

    このブックレットを読むこと自体が、私にとってはややしんどい体験でしたので、すぐは読み返せないと思うのですが、心の元気が回復したら、繰り返し読み込んで、紹介されている内容をしっかり身につけたいと思います。

  • ▼東日本大震災は多くのトラウマ(心の傷)をもたらしました。「心のケア」の必要性についても、すでに多くの人が指摘しています。
     けれど、震災からの復興がもたらす傷つきについては、あまり気づかれていないように思います。復興はよいもの、望ましいものと思われがちだからです。(p.2)

    宮地さんは、これまでの支援経験をもとに、「環状島」というモデルを使って、被災者と支援者との位置関係、そこに起こる葛藤や変化を説明する。とくに第3章の「支援者の位置」の話が、印象的。これは被災者との関係に限らない、「支援」という場でどこでも起こりうることだと思う。

    ▼支援者が自分のこれまで未解決の問題や過去の人間関係を被災者に投影させたりすることもあります。…(略)円自己の不全感を満たそうという気持ちが支援者の無意識の中にあると、被災者を支配しようとしてしまうこともあります。被災者が自分の思いどおりに動いてくれなかったり感謝してくれなかったりすると、腹が立って被災者に批判的になるかもしれません。(p.30)

    宮地さんが大学でトラウマの授業をするときに必ず見せるという二つの写真。
    イラクのアブグレイブ刑務所で米軍によって行われた拷問で、「フードをかぶせられ、小さな箱の上に立たされ、手足にコードを結びつけられた捕虜」、そして「捕虜のすぐ前で猟犬が吠えている」という写真。コードには電気が通っていなかったし、犬は噛みつかない、そんなことに怯えていたのかと嘲笑されもするというが、こうした"疑似処刑"は有名な拷問の手法であると。

    ▼暴力が「未遂」であれば、結果的には「無事」で「無傷」に見えます。けれど、どうなるかわからない状況に長くおかれていると恐怖や無力感は強まり、脳へのダメージは大きくなります。…(略)…
     「無傷」「無事」というのは結果論です。身体的傷や物理的損害を受けなかったとしても、心は深く傷つくのです。(p.39)

    無傷に「見えること」と、「深い傷つき」… だって、結局何もなかったんやろ?と、そういうようなことを自分自身が悪意なく言ってしまいそうだと思った。そして、そういう言葉がこれまでにもかなりたくさん発せられていると思った。

    無傷に「見えること」は結果論でしかない。

    疑似処刑は拷問の手法だというのが、「目に見えない、ニオイもしない、五感では感じとれない放射性物質が、もしかしたらおよぼしているかもしれない影響・被害」と重なるように思えた。そんなことに怯えていたのかと結果的には言える未来がくるかもしれないけれど、怯えて当然だったという結果があらわれるかもしれず、「どうなるかわからない状況に長くおかれている」ことのひどさが、考えれば考えるほど、胸に迫る。

    (5/11了)

  • 【環状島=トラウマの地政学】で書かれた
    「環状島」をモデルに
    震災トラウマに焦点を絞って書かれた本

    本自体はとても薄い
    しかし 被災者のトラウマだけでなく、支援者の受けるトラウマを
    キーワードを使い簡潔に説明している
    とても分かりやすい本だと思う

    • silenciosaさん
      うぉ~そうなんですね^^

      また 読んだ後の感想、楽しみにしてます
      2013/04/22
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「環状島=トラウマの地政学」と同時に読んだので、より判り易かったです。
      意思の疎通の難しさを伝えていて、色々な人が読むべき一冊だと痛感。
      引き続き、「トラウマ」(岩波新書)と「傷を愛せるか」(大月書店)を予約しました。
      2013/05/07
    • silenciosaさん
      2冊同時に読まれたから より分かり易かったのですね
      この本は薄いけど大切なことが書いてありますよね

      というより、私はnyancomaruさん すごいな
      とても感心しました

      興味を持たれた本 実際に予約して 読んでこうしてこまめに感想を書いて下さるって なかなか出来ないコトだと思いました。

      こっちも真剣に感想を書こう←決して不真面目に書いている訳ではないのですが(汗)

      傷を愛せるかは、エッセイみたいな感じで
      また違う視点から読めると思います

      こうして読んだ本について話したり
      レスポンスがあると嬉しく思いました

      PS 先程お邪魔させて頂き 私が読んでいる本が登録されていたので その本の感想も近日中に書いてみようって 密かに思いました。
      2013/05/08
  • なぜか「自分の方が流されれば良かった」「なぜxxxを無理にでも止めなかったのか」と感じてしまう人達、それはどうしてなのか。東北の被災者でない人達も「こんなことで良いのか」と思ってしまったり、傷ついている。なぜ?東北震災から時間のたちつつある今、被災者も支援者も距離を置いている人も心に触れるところがきっと出てくる不思議な学術本。薄くて読みやすいよ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「心に触れるところがきっと出てくる不思議な学術本。」
      ブックレットだから学術書と言うより、切っ掛けのための入門手引書。宮地尚子の生真面目さに惚れて色々読み始めている。。。
      2013/07/04
  • 本書で出てくる「環状島モデル」は、たとえば被害者や支援者等、様々な存在、そしてそれらの関係性を素描しイメージするのにとてもわかりやすく、秀逸だと思った。一元的には語れない「被害」や、「こころの傷」についてどう考え、これからどんなことが必要になったり、困難があらわれるかといったことを考えるための手助けになる。
    ・・・
    「被災者、あるいは支援者はかくあるべき」という風に、想定されてるイメージに押し込められることを拒否する人だって必ずいるだろうし、そうできなくて辛い思いをする人もいる。そういった細かな部分を見ずにただひたすら「復興」へと向かうことは、小さな傷や痛みを無視した、一部分、あるいは「多数派」の傲慢や暴力になると思う。
    この本には、そうならないための「復興」への道のりをつくるためのヒントがあったと思う。
    http://blog11.fc2.com/control.php?mode=editor&process=load&eno=13

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「道のりをつくるためのヒントがあったと思う。」
      目配りが素晴しかった。
      しかし宮地尚子の本は重いので、連続して読めないし、読むのもジックリゆっくりになってします。
      2013/07/04
  •  宮地自身の著書『環状島』にある、トラウマを持つ人と支援者との関係の「環状島」モデルによる説明と、東日本大震災への適用がまず語られる。そのあとに、被災者、支援者、被災地から遠い人、と説明が続き、最後に震災トラウマと復興ストレスについて語られる。
     『環状島』はやや手ごわい本だが、その理論部分を著者本人がわかりやすくまとめてくれてあるのがありがたい。キーになる本のガイドも文中で詳細になされる。
     具体例の例示などもあるが、実際今回の震災に関わる中で同様のことを見聞きし、そもそも環状島モデルが阪神大震災の後に考え出されたことに思いをはせた。
     被災者、支援者はもちろんのこと、そのどちらにも属さず、ときにはサバイバーギルト(生き残ったことを罪と感じる)に悩まされる多くの人々にとっても、この小さな冊子からは、元気を汲み出すなにがしかがきっと得られることと思う。

  • 震災とその後の復興にも傷つき、ストレスだらけであること
    被災者、支援者、傍観者それぞれのストレスについてわかりやすく説明
    いろんな立ち位置での罪悪感を鋭く説明されていた
     
    震災の意味、自分の人生に持つ意味を考えるとあるが、具体的に対策まではさらっと書いている

  • 現状や何をすべきかがわかり、目の前が明るくなった

  • 自分自身の能天気さを思い知らされる。再読後の感想を纏めます。。。

    岩波書店のPR
    「未曽有の災害が刻んだ心の傷(トラウマ)は、時とともに思わぬストレスや人間関係のトラブルとして表れる。なぜ生き延びた被災者が罪の意識に苦しみ、支援者が燃え尽き、遠くにいる人までが無力感にとらわれるのか、震災のトラウマが及ぼす複雑な影響を理解し、向き合い、支え合うための一冊。」
    岩波ブックレット『震災トラウマと復興ストレス』moreinfo
    http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/2708150/top.html

  • 被災した人、支援する人、その周囲にいる人を環状島というモデルを使って、それぞれの立場の人たちの気持ちをわかりやすく解説している。当方が震災当時に感じた気持ちと感じたことの意味を、なぜそう感じたのか理解するヒントを得ることが出来た。

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