未来に語り継ぐ戦争 (岩波ブックレット)

制作 : 東京新聞社会部 
  • 岩波書店
3.83
  • (3)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 35
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708263

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東京新聞で毎年終戦記念日に掲載された、戦争経験者と経験していない人の対談。
    あってはならないことを忘れないために語り継ぐ、というのが基本なんだけど対談する人の中に右翼も混じってるのが面白い。

    全員が自分の考えとそれを言葉にする力を持っていて、しかも相手の言葉をきちんと聴いて受け答えをする。
    会話が噛み合うっていいなあ…本当は、できるのが当たり前なんだけど。

    何人かの経験者が、「語れないこと」についても話しているのが印象的だった。
    思い出すこと、認めることが嘔吐を催すほど辛いとか、生き残った罪悪感や自分に語る資格があるのかという迷い。
    でも、語らなければ、伝えなければという義務感もある。
    飯田進・安田菜津紀の必死な語りと誠実な受け止め方に感動した。

    それと熱狂とも違う空気の圧力。
    賛成はしなかったけれど反対もしなかった。ただ冷ややかに見ていた。身の回りに必死で大局は考えなかった。お国のために!ではなく、なんとなく将来は戦争で死ぬんだろうなと考えていた。わざわざ政府が弾圧しなくても、空気を読んで自主規制した。
    みんななんとなく。嫌だと思ったり思わなかったりしつつなんとなーく過ごしていたらこの結果をひきうけるはめになった。
    政治の傍観者でいたら、戦争の当事者になってしまった。
    そんな、ドラマチックじゃないなあなあのリアル。

    品川・鈴木組は微妙に噛み合ってないんだけど冷静に答える品川正治と一応聞く耳を持つ鈴木邦男に、相容れないなりに譲歩できる可能性を感じられる。
    半藤一利・田口ランディは理想や思想を脇において現実問題から語る。軍って金かかるよね、それ税金だよね、現在の生活を維持したまま戦争なんてできるわけないじゃんという。身も蓋もないけどそういう切り口の計算も大事。

    "人間はね、行き詰まってくると何かこうドカーンと始まらないかなぁと、自分の内部にではなく、外部に救いを求めるもんでしょ。われわれの中にも過去にあった。それが今の若い人の中にあってもちっとも不思議じゃない。でも、それは無責任なのよ。時代に閉塞感があるときが危ないね。破壊願望というか、自分の周りがドカーンとひっくり返ってくれればいいなんていう、期待感があるとき、誘惑に乗りやすくなってるから。"p9(むの)
    ジェイムズ・リオーダン『銃声のやんだ朝に』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4198622612で下層の少年たちが現状打破を期待していたのを連想した。

    大城立裕のヤマトと米国に対する複雑な思い、集団として酷い目に遭わされていることも、親しく付き合った個人がいいやつであることも事実。迷惑も良さも身近に存在するがゆえに生々しく湧き上がる割り切れなさはcoccoの「想い事。」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4620318264にもあった。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×