信用金庫の力――人をつなぐ、地域を守る (岩波ブックレット)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708508

作品紹介・あらすじ

信用金庫は小規模な銀行と思われがちだ。しかし、その歴史を紐解くと、お金のもたらす弊害を防ぎ、人の暮らしや地域を豊かにする崇高な理念が浮かぶ。市場や金融が力をもち、経済格差が拡大する現在、信用金庫だからこそできることがある。3・11以降、脱原発へ向けた取り組みなどで注目を集める城南信用金庫の理事長が、信用金庫の意義と未来を語る。

感想・レビュー・書評

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  • 自分が尊敬する城南信用金庫の名誉顧問が著者。そのご本人から直接この本を頂戴した。この名誉顧問は以前から自分の会社が主催するセミナーイベントに講師で登壇頂いており以前からお名前は知っていた。たまたま読んだ本『なぜ信用金庫は生き残るのか』の中になんとこの名誉顧問が登場してきたのだ。そこでこの名誉顧問が同庫で成し遂げてきた過去、ただの過去ではない、壮絶な過去とその実績を読んでビジネス書にも関わらず涙した。そこから大ファンになってしまった。それから幾度となく自分の会社のセミナーイベントでお見かけはするものの当然会話することもなく。先日、同庫の本店にお邪魔をしなんと名誉顧問と直接会話をする機会を頂き、ファンの旨を伝えると本書を頂戴した。そのお会いした時もものすごく熱く語られるので一気に引き込まれてしまう。そして本書もその熱さが伝わってくる内容だった。信用金庫の役割を決してブレることなくまっすぐに突き進むその姿勢、そして社会を巻き込んでいくその実行力とパワーが本当にすごいです。本書を読んでますますファンになりました。

  • 「労働者協同組合」について調べる過程でたまたま知ったので読んでみましたが、触発される部分は大きかったです。
    銀行と信用金庫、信用組合の違いを知らず、規模の大小くらいにしか考えていない経営者は心して読むといいと思います。また、ソーシャルファイナンスを考える上で、信用金庫の成り立ちは知っておいた方がいいし、将来に向けてのヒントにもなり得ると思いました。
    自助でも公助でもない、「共助」を支える地域コミュニティを金融から支えるのが信用金庫の大きな役割だと思います。地域支援に関わる者として、それぞれの地域の信金とどう付き合っていくかは、重要なポイントになるとも考えています。

  • ちょっと偏った考え方ではあるものの、信用金庫のルーツ、思想、歴史をうまくまとめてある著書だった。

  • ハイマン・ミンスキー 南海泡沫事件 ロッチデール原則 ロバート・オーウェン シュルツ式信用組合 ライファイゼン式信用金庫 加納久宜 金融は現在と未来の交換 サウンドバンキング

  • 東日本大震災後にあっぱれな宣言をした城南信用金庫の当時の理事長である著者が、信用金庫とは何たるかを述べている。信用金庫って地域のミニ銀行って思ってたけど、本当は株式会社的な経営体の向うを張って生まれた協同組織運動に基づく機関なのだそう。その理念に沿って、地域の中小企業とかの味方になっているんだね。
    東日本大震災後の活動にだいぶ紙幅が割かれていたけど、その分も信用金庫の仕組みとか働きとか書いてあったほうが自分の求めるところに沿っていたかな。

  • 著者は城南信用金庫の理事長。「信用金庫とは、株式会社に対抗してできた理想を高く掲げた協同組織運動の金融部門である。」銀行と同じようなものだと思っていたら「儲け主義の銀行に成り下がるな」を合い言葉に、お金の弊害について立ち向かい、健全な社会を作るのが金融の仕事、という著者の言葉は、すべての業種についても当てはまるのではないかと共感した。

  • 1.吉原毅『信用金庫の力』岩波ブックレット、読了。脱原発宣言で注目を集める城南信用金庫・理事長によるお金の話。人を生かし殺すお金。その弊害にどう対抗するか。信金は「小さな銀行」ではない。崇高な社会協同という崇高な理念が存在する。副題「人をつなぐ、地域を守る」歩みの回顧と展望の書。


    2.吉原毅『信用金庫の力』岩波ブックレット。始めに太古から現代に至る「お金」の歴史を概観し、「人類の歴史は、お金との戦いの歴史」と指摘する。それは人間を分断する「麻薬」との戦いである。麻薬の分断にどう立ち向かうか。「健全なコミュニティがあってこそ、健全なお金が流れる」。

    3.吉原毅『信用金庫の力』岩波ブックレット。上場株式会社のあり方を疑問視したA・スミス。銀行に対抗するために公益事業を目的とした「金融機関」としての信用金庫の歴史等々(「貸すも親切、貸さぬも親切」)……。本書は優れた社会思想史であり、協同組合事業の歴史を活写する一書でもある。

    4.吉原毅『信用金庫の力』岩波ブックレット。終章は「原発に頼らない社会に向けて」。「お金の弊害を防ぎ、人、地域を守るのが信用金庫の使命」。城南信金の取り組む「脱原発」の実践が、信金の意義や役割に誠実であることの現れであることが理解できる。短著ながら、幅広く手にとって欲しい。了。

  • 城南信用金庫のリジチョウさん。
    確かに脱原発とか推進してる社会の
    公器を実現している会社。

    他の金融機関も見習ってほしい。おかねに
    強いのが金融マンでは必ずしも
    ないはず。

  • 「信用金庫」の由来、など関係者には役立つことが多い。

  • 信用金庫を社会的な視点から語る、というものかなあと想像して読んだ。
    城南信用金庫の偉い人が書いた、地域密着型互助組織である金融機関・信金のことと、脱原発にむけて企業ができること。
    大部分は信金とは、金融機関の倫理とは、という内容で、最後のほうに原発の話がある。

    城南信金は3.11後に脱原発を表明してツイッターで話題になったらしい。全然知らなかった。
    代替エネルギー事業への積極的な融資や、東電からPPS(特定規模電気事業者)への切り替えなど実際の行動もしてる。
    電力が足りないなら他から買えばいいじゃない。東電の負担軽減になるし非原発の電力を買うという意思表示にもなる。とか、金融機関の視点で原発の不経済について語るとか、発想が現実的なのが面白い。


    ただ語り口が(特に最初のほうは)うさんくさい。
    冷たくてエリート意識バリバリの銀行マンと違って信金マンは幅広い人格を持った心の温かい人たちだよ!という前書きでまずひいた。
    内容自体がおかしいわけではない。箇条書きで書かれていたら納得できると思う。

    この語り口はどこかで見たことがあると思ったら、日本しかしらない人が語る「日本の美しさ」に似ている。
    真実が含まれていないわけではないにしろ、あまりにも一面的すぎる。
    比較対象を貶めることによって自分の主張に価値を与えようとするやりかたが繰り返されるのも気に入らない。
    「銀行と違って信金は」「理系ならできるのに文系は」「過去の自分と違って会長は」……終始こんな調子。
    批判も賛辞も主張も、もっとストレートに語ればいいのに。

    でも最後まで目を通してみたら、この人は単にプレゼンテーションが下手なだけかもしれないと思い始めた。
    口だけの信念じゃない。知識の部分と経験の部分、さらに行動が伴っている。
    あげられる文献を全部読みたくなった。ついでに信金や原発についてももっと知りたくなった。
    もっと知りたいと思わせるのは足りない本か良い本だ。

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著者プロフィール

1955年東京生まれ。77年慶応大学経済学部卒業後、城南信用金庫に入職。2010年11月理事長就任。15年6月に退任、相談役に。17年6月から顧問。東日本大震災以降、被災地支援を精力的に行うと同時に原発に頼らない安心できる社会を目指して「脱原発」を宣言。17年4月に全国組織「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」を創設、会長に就任。著書に『原発ゼロで日本経済は再生する』(角川oneテーマ21)、『幸せになる金融』(神奈川新聞社)など。

「2020年 『この国の「公共」はどこへゆく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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