「領土問題」の論じ方 (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (72ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708614

作品紹介・あらすじ

2012年は日本にとって「領土問題」の年となった。とりわけ尖閣諸島をめぐって、中国との関係は国交正常化以来最悪の状態に陥ってしまった。領土とは、国民国家にとって主権の問題であり、武力を使ってでも守るべきものとされている。しかし、衝突でも譲歩でもない平和的な解決の方法はあるはずだ。5人の論者がそれぞれの視点から考える。

感想・レビュー・書評

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  • 現在の日本での領土問題は、
     ・北海道の東側に連なる島々で、歯舞、色丹、国後、択捉の各諸島
     ・島根県の北西にある竹島
     ・沖縄の西側にある尖閣諸島
     の三つです。
     
     ロシア、韓国、中国と台湾を相手に領有権を争っていますが、何の進展もない事が平和なのかも知れません。国際司法裁判所に提訴しても双方の付託合意が無いと裁判は進まないので竹島の様に日本が訴えても韓国が付託しないから成り立たない。そもそも韓国は領土問題は無いと言っているのでそれこそ取り付く島もない状態です。尖閣諸島は竹島と違って一応日本が実効支配しているのですが昨今は中国の漁船や海軍、海上警察の船が毎日接続水域に現れています。

     戦争行為で実質的に確保するにしても竹島、尖閣諸島は人も住んでいなく資源も未確定で経済不合理です。裁判や交渉は相手がテーブルにつかない、現在の出来る事は''棚上げ''しお互い刺激しない事だそうです。

  • 【由来】
    ・不明、忘れた。

    【期待したもの】
    ・領土問題について手軽に基礎知識を得られれば。

    【ノート】
    ・5人の執筆者による我が国の領土問題についての小冊子。本書を読むことによって、我が国における3つの領土問題についての概観が得られる。

    ・3つの領土問題とは北方領土(ロシア)と尖閣(中国、台湾)、竹島(韓国)。加えて、尖閣問題には沖縄の問題も分かちがたく結びついている。アメリカはずっと沖縄を支配下に置き、日本もそれを甘受していたし、現在でも沖縄の心情からかけ離れた政策を押し付けている。


    これら3つの領土問題はアメリカの対日(そして対アジアと対ロシア)政策がいやらしく絡んでいるということ。


    更に掘り下げたかったら、ジョン・ダワーの「転換期の日本へ」や佐藤優の「新・帝国主義の時代 右巻」が面白い。

    ・ちなみに、かつて、鳩山さんが尖閣問題について、問題の所在を認め、中国の言い分も分かるというようなことを言ったら国を上げての「売国奴」「非国民」の大合唱だった。彼の言動についてはもう少し考えたら?とは思ったけど、今って戦争直前ですか?と思ってしまうような雰囲気をこの国に感じた。

    ・国家や国境というのが歴史の浅い「想像の共同体」なのであれば、棚上げというのは大変な知恵なのかも知れない。と思ってたら、そういう記述もあった。

    ・それにしても岩波ブックレットは趣旨も内容もいいけど、もうちょっと安かったらいいのに。一昔前の新書とほぼ同じ価格で、気がつけば最近じゃ新書の相場は1000円の少し手前といったところ。売上が落ちてるから単価を上げるしかないということなのかな。

    【目次】
    ・国家「固有の領土」から、地域住民の「生活圏」へ(新崎盛暉)
     中琉関係史のなかの尖閣
     中国の1950年代の尖閣記述
     1970年代の「棚上げ」
     琉球処分と尖閣問題
     沖縄と台湾の「生活圏」は重なりあう
     生活圏としてきた人びとの対話を

    ・国家主権を相対化する契機に(岡田充)
     領土ナショナリズムの魔力
     棚上げと共同利用を主張
     「反日」と「中台連携」?
     二項対立脱脂、第三の道に
     融通無碍な妥協
     親日幻想の虚妄
     思考停止に誘う魔力
     メディアの責任
     棚上げ以外の出口はない
     境界を超えて共有される意識

    ・歴史を逆行させてはならない(高原明生)
     石原発言の前から
     中国の新軍事戦略
     反日キャンペーンの背後に
     2005年との違い
     中国にとっての「主権」問題
     日中両国の努力が問われている

    ・北東アジアの領土問題解決のための三原則(東郷和彦)
     はじめに
     北方領土問題
     竹島問題
     尖閣諸島問題

    ・来るべき和解のために(最上敏樹)
     国際法的論点
     和解こそが「解決」
     まず武力行使を避ける
     平和的解決のための国際法規範
     「棚上げ」が当面の現実的方法

  • この本、領土問題を考える上でなかなかいい本です。どこから手をつけていいかわかんない人におすすめ。東郷さんの本を further reading したくなった。

  •  ナショナリズムに直結して,すぐに紛争にまで発展しそうになる「領土問題」。「歴史的にどちらものか…」と判断する前に,まずは冷静になることが大切です。
     主権国家のやりとりではなく,そこに住む,あるいは,そこで生活をする人間同士のつながりが大切なのだと思いました。
     わたしの考えていたような方向性にあう論じ方でした。
     こういうふうに考えてくれると,安心なんですがね。

  • 筆者らの主張は理解できる。
    領土問題でお互い手出しできない状態が続くよりも共同で開発したほうが双方に利益が出るとは思う。

    しかし,日本が対する相手は、共同に開発という約束をしても信用できるような所ではない・・・と思った.

  • 領土問題とりわけ中国との関係では、孫崎享さんの著書とりわけ『検証 尖閣問題』(岩波書店)や豊下楢彦さんの『尖閣問題とはなにか』(岩波書店)が出色だと思っていたが、本書はこれに新たな視点を提供してくれる。それは、国家主権を相対化する道で、たとえば琉球大学の新崎盛暉さんからすれば、沖縄や台湾の地域住民の生活圏という視点を離れて領土問題を論じることは、はなはだ迷惑な話だということになる。共同通信社の支局長として香港、モスクワ、台湾を経てきた岡田さんは日中台の共同利用、開発を提唱する馬英九の提案を評価し、武力衝突の危機がささやかれていた昨年の9月に日中両国の知識人が理性的なアピールを出したことは、この40年の両国の人々の交流の成果だと評価する。台湾漁民の「生活圏を守れ」という主張を「親日」か「反日」かで評価しようとする主張もきわめて単純な思考であるし、「領土」と聞いたとたん人々の思考が停止するのも恐ろしいことである。(ついでに言えば、韓国の人々がいかに親日であるとみられようと、竹島の問題になればそこにはわずかな妥協の余地もないことも知っておかなくてはならない)東大教授の高原さんは、反日キャンペーンの裏に国粋主義に左派の影響力を見ている。野田首相の国有化宣言のタイミングの悪さが問題にされるが、それがなくても、石原前東京都知事の煽動がなくても、日中間に尖閣を巡る紛争の危機はあったというのにも賛成である。(石原さんはあんなちっぽけな土地を巡って中国と戦火を交えたいのだろうが、そんなことで命を落とす自衛隊いや日中の若者は本当に哀れである。こんなちっぽけな島を巡っていきり立つ人々はあの戦争の悲惨さを忘れたのだろうか)ぼくも昨年12月、おそるおそる北京を訪れたが、中国の一般大衆は、日本では天皇がまだ力を握っているとか、軍国主義が復活したと思っているとか思っていて、本当に日本についてあんまりわかってないのだと思った。「国有化」以前にも所収者がいて固定資産税も払っていたことも知らないだろう。日本にも中国にもいろんな考えの人がいることを知らなくてはならない。

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著者プロフィール

1936年東京生まれ。東京大学文学部卒業、専攻は沖縄近現代史・社会学。沖縄大学名誉教授。
中野好夫主宰の沖縄資料センター研究員として沖縄戦後史を研究。沖縄大学教授を経て1989年まで同大学学長をつとめる。また石油備蓄基地反対闘争、一坪反戦地主会など沖縄の住民運動に参加。主な著書に『戦後沖縄史』(日本評論社)、『沖縄現代史』(岩波新書)など多数。

「2010年 『時代の求めにこたえて 武 建一対談集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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